故人との最後のお別れを告げる式である、告別式。たましいに対する宗教的な意味合いよりも、故人や遺族の社会的(世間的)対応のために行われます。
以前は葬儀の後に時間を区切って実施されていましたが、現在では「お葬式」として葬儀と告別式を併せ持って行われるのが一般的です。
告別式の意味や流れ、マナーを確認し、参列する際に困らないようにしましょう。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔
告別式とは?通夜・葬儀との違い
現代では「葬儀」と「告別式」をまとめて執り行うため、違いがわかりにくいかもしれません。
基本的には開式から親族の焼香までが葬儀、一般会葬者の焼香からが告別式にあたります。
それぞれの儀式の意味を理解して、気持ちがこもった時間にしましょう。
故人とのお別れの儀式
告別式とは文字通り故人との最後のお別れを告げる式です。
告別式の始まりは、明治時代にさかのぼります。明治時代までは通夜や葬儀が終わると、葬列を組んで寺院や墓地に向かうのが一般的でした。
しかし当時、一般的な会葬を望む人々から集まりやすい式典が求められ、宗教儀礼とは別に行われたと言われています。
告別式の目的は大きく3つです。
1:故人生前の社会的対応
2:遺族の社会的対応
3:社会から故人に向けた対応
お通夜や葬儀との違い
お通夜と告別式の大きな違いは、行われる日程です。
お通夜は故人との最後の夜を過ごす意味があり、葬儀・告別式の前夜に行われます。昔は文字通り夜通し行われていましたが、現代では日没の前後で2時間程度開催するのが一般的です。お通夜の後は「通夜振る舞い」として参列者をもてなす慣習もあります。
葬儀・告別式が行われるのは、通夜の翌日の日中です。
葬儀と告別式の違いは、宗教的な儀礼の有無です。葬儀は導師(僧侶)が主体的な司祭となり、宗教的な儀礼を行います。本来参加するのは家族や親族のみでした。
一方告別式は宗教的な儀礼とは無縁で、遺された人々の社会的な決別を公けにする行事です。現代では葬儀・告別式が同時進行されるため、その区別があまり意識されていません。
葬儀は導師が中心に行う、故人の「往生」や「成仏」のための儀礼儀式です。一方告別式は、参列者や周囲に対する世間的な対応として行われます。
無宗教葬の場合「告別式」のみを行うケースもあります。
告別式にかかる時間
告別式は葬儀と同時進行なので、現在では1時間ほどで済みます。
葬儀・告別式は時間通りの進行が大事です。一般の会葬者も葬儀から参加するため、開式に遅れないよう15分前には到着しましょう。
時間の関係で出棺まで見送れない場合は、焼香後に席に戻らず帰っても問題ありません。
告別式は誰が参列する?
基本的に告別式には誰でも参列できます。訃報の連絡を頂いた人が会葬するかどうかを判断するのが一般的です。
人数を絞りたい場合には、故人との親密度によって訃報連絡の範囲が調整されます。家族だけで葬儀のみを営む場合、訃報連絡をしないこともあるでしょう。
そのため弔問や会葬するかどうかは、訃報を受け取った人が判断します。本来は、喪主や遺族から制限するものではありません。
お通夜と告別式、参列すべきなのは?
故人や遺族と特別親しい関係ではなく、一般的なお付き合いの場合は、お葬式の中の告別式に参列するのが普通です。
ただし実際には、仕事の関係で日中に行われる葬儀・告別式ではなく、お通夜にのみ参列する人も多くいます。案内が届いているのであれば、どちらか一方、または両方とも参列して問題ありません。
告別式の流れ
告別式の一般的な流れを解説します。事前にどのように式が運ばれるかをイメージしておくことで、当日も迷うことなく参列できるでしょう。
受付 | 芳名帳に記帳 香典を渡す ご案内があれば式場内に着席 |
葬儀 | 導師入場 読経・導師焼香 喪主・遺族・親族の焼香 |
告別式 | 一般会葬者の焼香 導師退場 弔電拝読 お別れの儀 釘打ちの儀(省略が多い) 喪主や親族代表挨拶 出棺 |
火葬 | 火葬場へ移動 |
受付・開式
告別式の開催時間は日中であることが多いです。遺族は開式の1時間ほど前には集合しておき、当日の流れの打ち合わせを行っています。
受付開始は開式の約30分前からです。参列者として告別式に参加する場合は、時間に遅れないよう注意しましょう。告別式後は火葬を控えているため、スケジュールを守ることが大切です。
受付ではお悔やみの言葉を述べ、香典を手渡します。お通夜に参加して既に香典を渡している方は、告別式では必要ありません。
芳名帳に住所・氏名を記帳したら、式場内で着席します。知り合いへの挨拶や私語は慎み、導師入場を待つのがマナーです。
導師(僧侶)が入場したら葬儀が行われます。
読経・焼香
導師による読経の後、焼香をご遺族から親族、一般会葬者の順に行います。
焼香の手順はお焼香台の設置によりさまざまなため、葬儀社の指示に従いましょう。一般的な作法は以下の通りです。
- 焼香台の少し手前で、僧侶に一礼をする
- 左手には数珠を掛ける
- 右手の親指・人差し指・中指で額のところまで抹香を持ち上げる
- 抹香を静かに香炉の上に落とす
- 合掌をし、席に戻る
焼香後に帰宅する場合は席に戻らず、そのまま退席しましょう。
お別れの儀
一般会葬者による焼香が終わったら、残った参列者でお別れの儀にのぞみます。喪主をはじめ、遺族から故人の棺に花を入れていきましょう。
葬儀社のスタッフから1輪ずつ花を渡されるので、顔周りから体を覆うように手向けていきます。
お別れの儀は故人との最後の決別です。思いを込めて見届けるとよいでしょう。口元に少しお酒を注いだりすることもあります。
副葬品をこのタイミングで入れても良いでしょう。副葬品は火葬に不向きのものもあるため、葬儀社に聞いてから入れます。
釘打ちの儀・出棺
お別れの儀が終わったら、釘打ちをして棺を閉じます。釘打ちとは棺の蓋に釘を打ち込む儀式です。決別儀礼の1つですが、現代ではあまり行われていません。また宗派によっては実施しない規定もあり注意が必要です。浄土真宗では実施しません。
慣例としては、喪主から順番に、小石で釘を数回軽く叩きます。
釘打ちが終わったら喪主挨拶があり、閉式の辞をもって葬儀および告別式が終了です。
その後火葬場へと出棺します。近親やご縁の深かった方々で棺を霊柩車まで運びましょう。火葬場同行者は、所定の車に乗車し、火葬場へ移動します。
火葬場に同行しない参列者は、ここでお見送りをして、解散です。
告別式に参列する際のマナー
告別式に参列する際には、いくつか守るべきマナーがあります。告別式での服装と喪主の挨拶について、解説します。
遅刻は厳禁
出棺の時間が決められているので、葬儀・告別式はスケジュール通り進行していきます。そのため参列者は開始時間に遅れないように、開式15分ほど前には到着しましょう。
服装や身だしなみのマナー
参列者は、告別式では準喪服を着るのがマナーです。喪服には以下の3種類があり、上から順に格式が高くなります。
- 正喪服
- 準喪服
- 略喪服
正喪服とは文字通り正式な喪服のことで、最も格式が高いタイプです。準喪服とは最も一般的な喪服のことで、ブラックスーツと呼ぶこともあります。略喪服は主に通夜で着用する喪服で、平服とも呼びます。
アクセサリー類は付けず、髪の長い方は1つにまとめましょう。髪色が明るい場合、可能であれば黒く染めます。
なお喪主として告別式に参列する際は、正喪服か準喪服を着るのがマナーです。近年ではお葬式の簡素化や正喪服を持っている人が少ないことから、喪主を含む3親等までの遺族は、準喪服を着るのが一般的になっています。
火葬場までの同行は遺族の同意を
告別式が終わった後は、参列者は出棺を見送って解散するのが一般的です。出棺の際は、黙礼か合唱をして送り出しましょう。
火葬にはご遺族や特別親しい知人が参列します。もし火葬場に同行したい場合は、前日までに遺族に申し出て、同意を得ておくことが大切です。
最後のお別れの時間を大切に過ごす
告別式は宗教的な儀礼色が強い葬儀と異なり、参列者一同が故人との別れを惜しむ、社会的な式です。葬儀と同時進行で行われることが多く、基本的には誰でも参列できます。
告別式は、一般参列者が故人と決別する最後の機会です。儀式の流れや意味をしっかり押さえた上で、最後のお別れの時間を大切に過ごしましょう。
監修者:二村 祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
お葬式が「葬儀」と「告別式」の2つのカテゴリーから構成され、それぞれ目的や意味、意義が異なるという意識が希薄になってきました。施行する側も会葬する側も、あらためてそれぞれの意味合いを理解することで、充足感のあるお見送りができます。簡単に説明すると葬儀は遺体と魂に関する「儀礼・儀式」で、告別式は遺族の社会的(世間的)な対応「式典(行事)」です。