死亡通知とは故人が亡くなったことや、葬儀の日時などを故人と親しかった人や勤務先、家族の勤務先に知らせるものです。
通常は葬儀の前に送りますが、葬儀後に送る場合もあります。記載する内容や注意点を、文例とともに確認しましょう。
この記事を監修した専門家
HIROKO MANNER Group 代表/一般社団法人 マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会 代表理事
西出ひろ子
死亡通知とは
死亡通知とは、故人が亡くなったこと(訃報)や、葬儀に関することを速やかに知らせるための通知です。
かつては死亡通知状といえばはがきでした。しかし近年では亡くなった翌日に通夜、2日後に葬儀というスケジュールが一般的です。そのため葬儀前の場合は、電話やFAX、メールなどスピーディーな方法も用いられています。
葬儀が終わった後に送る場合は、特に急ぐ必要がないため、はがきの連絡でも問題ありません。
死亡通知は誰に送る?
死亡通知は故人と関係のあった方に送るのが一般的です。家族・親族から親しい友人、知人、会社の関係者、町内の方の順に送ります。
関わりの深い方には、葬儀の前に素早く連絡しましょう。一方日頃あまりやり取りのない方には、葬儀後に報告という形で送ります。
喪中はがきとの違い
喪中はがきは、年賀状の送付を控える旨を連絡するはがきです。死亡通知状は故人が亡くなったことを知らせるものなので、送るタイミングや用途が異なります。
死亡通知を行うタイミング
死亡通知を送るタイミングは、葬儀の前か後かで異なります。また知らせる内容にも違いがあるので、それぞれのケースについて知っておきましょう。
故人が亡くなったらできるだけ早く送る
通夜や葬儀の日時、会場などを知らせる場合は、故人が亡くなったらできるだけ早く行うのが基本です。特に故人と親しかった人には、葬儀に参列できるよう優先的に知らせましょう。ただし参列の可否を問うものではありません。
通夜や葬儀に参列いただく場合は、故人や家族の勤務先に対しても早めに連絡します。勤務先が会社や団体として、香典や供物を用意する場合があるためです。
故人や家族の意向で、香典や供物を辞退する際も早めに知らせましょう。
葬儀の後にするなら落ち着いてからでも
付き合いの深くない親戚や知人に対する死亡通知は、葬儀が終わってからでもよいでしょう。その場合は、はがきを用いるケースがほとんどです。
葬儀後なるべく早く出すのが理想ですが、人が亡くなると、保険や年金周りのさまざまな手続きが発生します。また家族が仕事をしていると、平日に休みが取りづらいなど、時間的な制約があるでしょう。そのため死亡通知まで手が回らないという可能性もあるかもしれません。
すぐに死亡通知を出すのが難しい場合は、三十五日や四十九日(宗派によって異なる)、納骨などの節目に行います。亡くなったのが11月以降であれば、喪中欠礼の挨拶状と兼ねてもよいでしょう。
死亡通知に記載する内容
死亡通知に記載する内容は、葬儀前に送る場合と葬儀後の場合で多少変わります。基本の文例と合わせて、一般的な書き方を確認しましょう。
葬儀の前に知らせる場合
葬儀の前に行う死亡通知の、主な内容は以下の通りです。
- 故人の名前と亡くなった日(時刻は必須ではない)
- 葬儀の日時や会場(住所や電話番号も記載)
- 故人の宗派(宗旨と書いても良い。宗派と同意)
- 差出日
- 喪主の住所・氏名
【文例】
父〇〇儀 病気療養中のところ 〇月〇日〇歳にて永眠致しました
ここに生前のご厚誼に感謝し 謹んでご通知申し上げます
尚 葬儀告別式は仏式にて左記の通り執り行います
一、日時 〇月〇日(〇) 午前〇時から
一、場所 〇〇葬祭 〇〇ホール
〇〇市〇〇町〇-〇
電話 000-0000-0000
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇-〇
喪主 〇〇〇〇
香典や供物、弔問を辞退する場合は、葬儀の日時・場所の後に「尚 誠に勝手ながら故人の遺志により ご香典 ご供物 ご弔問の儀は固くご辞退申し上げます」の一文を加えます。
また参列者が戸惑わないように、宗旨(宗派と同意)も必ず記載するようにしましょう。
葬儀の後に知らせる場合
葬儀の後に死亡通知を行う場合の内容は、葬儀の案内以外は同じでも構いません。代わりに葬儀を済ませたことと、知らせるのが遅くなったことを、詫びる文章を添えます。
【文例】
父〇〇儀 病気療養中のところ 〇月〇日〇歳にて永眠致しました
葬儀は故人の遺志に従い 〇月〇日 近親者のみで滞りなく相済ませました
本来ならば早速お知らせするべきところ ご通知が遅れましたことを深くお詫び申し上げます
ここに謹んでご通知申し上げますとともに 生前のご厚誼に心より御礼申し上げます
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇-〇
喪主 〇〇 〇〇
こちらも香典や供物、弔問を辞退する場合は、文末に「尚 誠に勝手ながら故人の遺志により ご香典 ご供物 ご弔問の儀は固くご辞退申し上げます」の一文を加えます。
死亡通知を書く際の注意点
葬儀会社や印刷会社では死亡通知のフォーマットを用意しているため、案内に沿って文章を決めれば問題ありません。
自分で死亡通知を書きたい際には、以下の点に注意しましょう。
時効の挨拶や句読点は省いてよい
死亡通知には時候の挨拶は不要です。「故人が生前お世話になった人に、状況を取り急ぎ知らせる」ことが目的なので、簡素な内容で構いません。
句読点や文頭の1字下げも使わないようにしましょう。1字下げの由来は毛筆で書状を書いていた頃の名残りや、「葬儀を滞りなく行う」という意味を込めて文章に区切りを付けない、など諸説あります。
近年では読みやすさを重視されるため、あまりこだわらなくてもいい傾向です。しかし死亡通知を含むフォーマルな挨拶状では、基本的に時効の挨拶や句読点は使わない点は知っておきましょう。
薄墨を用いる
死亡通知をはじめ、弔事には薄墨を用いるのが望ましいとされます。「悲しみの涙が硯に落ちて、墨が薄くなってしまった」「亡くなったことを知って、墨を十分する間もなく駆けつけた」などの意味があるためです。
近年では薄墨の筆ペンも販売されているので、活用するとよいでしょう。薄墨の用意が難しい場合は、黒いペンでも構いません。
「逝去」や忌み言葉を使わない
死亡通知に使う言葉にも注意しましょう。たとえば「逝去」は尊敬語なので、故人に対して家族が使うのは誤りです。「死去」や「永眠」が適しています。
また「重ね重ね」「度々」などの重ね言葉や、「再び」「また」のような、不幸が続くことを暗示するような言葉も避けましょう。
不安な場合は専門業者に相談する
やはり死亡通知を自分で書くのは不安がある、または時間が取れないという場合は、専門業者に相談しましょう。印刷会社なら文例やデザインが豊富で、1枚から注文できるところもあります。文例の変更も可能なので、問い合わせてみるとよいでしょう。
葬儀前に行う死亡通知は、葬儀社が用意してくれるケースがほとんどです。葬儀の打ち合わせをする際に確認しておきましょう。
死亡通知のマナーを抑えて速やかに送ろう
死亡通知は故人が亡くなったことを知らせ、親しかった人がお別れのために葬儀に参列したり、生前を偲んだりしてもらうために行うものです。
しかし気持ちの整理がつかない、葬儀の準備やさまざまな手続きで忙しいなど、家族はなかなか気が回らないかもしれません。
「自分たちでは時間がなくて難しい」という場合は、葬儀社や印刷会社に依頼するのも1つの方法です。故人を滞りなく見送るためにも、検討するとよいでしょう。
監修者:西出 ひろ子
HIROKO MANNER Group 代表
ウイズ株式会社 代表取締役会長
HIROKO ROSE株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会 代表理事
葬儀会社などの企業にて、お客様の心に寄り添う営業接客・接遇研修や、マナーコンサルティング、マナー研修を行う。「めざせ!会社の星」 (Eテレ)、「芸能人品格チェックスペシャル」 (ABC朝日)、「なないろ日和」(テレビ東京)などのテレビ番組にてお葬式や喪服のマナーについての出演、監修など多数。NHK大河ドラマや映画、CMなどでは超一流俳優や女優へのマナー所作指導実績数日本NO.1。
- 『お悔やみのマナー』 (アドレナライズ) 2013/9/24発行
- 『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(ワニブックス) 2020/8/25発行
- 『気くばりにいいこと超大全』(宝島社)2022/6/15発行
など多数
コメント
「死亡通知状」という言葉は、馴染みが少ないかもしれませんが、訃報を知らせる通知のことです。亡くなってすぐにその通知をお知らせすることは大変なことかと思いますが、それが届かなかったことで「最後のお別れに伺えず残念」という声をよく耳にしますから、死亡通知状は大切です。
通夜や葬儀、告別式前にお知らせする場合は、その場所の記載も大切なことですが、マナーの観点からは、宗旨の記載が重要と考えます。宗旨によって、不祝儀袋の表書きが異なるからです。一般的には、『御霊前』と書けばどの宗旨でも使えると言われていますが、浄土真宗やプロテスタントでは使用しません。
死亡通知状も受け取る側に手間を取らすことのないよう、死亡通知状にも、受け取る側の立場に立ったマナーの心で、必要な情報を書いて差し上げることが大切ですね。