ミツモアメディア

宗派による戒名の違いを解説。スムーズに戒名を授かるための注意点も

最終更新日: 2024年06月28日

戒名は、日本で仏式葬儀を執り行う際、故人につける名前です。戒名は宗派により呼び方や構成が異なります。

「戒名」は仏戒と呼ばれる、仏教上の戒律に由来した呼び名です。多くの宗派では戒律が存在しますが、浄土真宗といった一部の宗派では戒律が存在しません。そのため浄土真宗では「戒名」ではなく「法名」と、日蓮宗では「法号」と呼ぶなど呼び方が異なるうえ、名前を付ける意味合いも変わってきます。

あらかじめ宗派別の違いと特徴を把握しておくと、いざという時に戸惑わないでしょう。宗派ごとの費用や、トラブルなくスムーズに戒名を授与するためのポイントについても解説します。

この記事を監修した専門家

葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
岩田昌幸

戒名(かいみょう)とは

読経する僧侶

戒名(かいみょう)の授与は、日本の仏式葬儀における独自のしきたりです。

故人が浄土に迷わず行くための名前

仏教思想では人が亡くなると、仏の世界に行くと考えられています。仏の世界で迷わず、浄土に往生できるよう付けられるのが戒名です

もともと戒名は出家して仏弟子になった証として、生前に授けられていましたが、現在では出家の有無に関わらず、全ての故人に付けられます。戒名にはランクがあり、宗派や社会への貢献度に応じて定められるほか、お布施の金額も、ランクを決定する要因の1つです。

仏式葬儀で戒名は必須

宗派を問わず仏式葬儀では戒名(法名・法号)の授与が必須です墓地埋葬等に関する法律の解釈では、菩提寺は宗派の典礼を要求することができ、それに従わない場合、つまり戒名を授からないと、納骨ができない可能性があります。戒名を付けて生前の名前と区別することは、遺族が故人の死を受け入れていくためにも、重要なプロセスです。

一方で無宗教の霊園に納骨するケースや散骨するケースでは、戒名の授与は不要です。仏教でも菩提寺がない場合また納骨先がまだ決まっていない場合、葬儀は俗名であげていただいても良いでしょう。

基本構成は「院号・院殿号」「道号」「戒名」「位号」

戒名の基本的な構成は、「院号・院殿号」「道号」「戒名」「位号」の4つです

院号・院殿号は宗派や社会への貢献度が高い人にだけ付けられます。道号は故人の人柄を表す漢字2文字、戒名は仏の世界での呼び名としての漢字2文字です。

最後の位号は2~3文字で付けられます。位号は故人の寺院や社会への貢献度を表すランクです。ランクが高い順に「居士・大姉」「定門・禅定尼」「信士・信女」を用います。

宗派による戒名の違い

寺の門

各宗派ごとの戒名の特徴を確認しましょう。4つの構成要素を基本として、細かな構成、戒名の呼び方、名前を付ける意味合いが異なります。

天台宗・真言宗・浄土宗では、院号の前にご本尊や菩薩を表す、梵字(ぼんじ)が付けられるのが特徴です。梵字は宗派によって文字が異なるほか、字体も異なります。

天台宗

  • 呼び方:戒名
  • 構成例:○○院△△□□信士

天台宗における戒名は、基本の構成です。「院号・院殿号」「道号」「戒名」「位号」から構成され、院号・院殿号の前には大日如来を表す「ア」の梵字が記されます。大日如来のほかに阿弥陀如来を表す「キリーク」や、釈迦如来を表す「バク」の梵字が刻まれるケースも、多く見られます。

天台宗は戒律を重視していることから、多くの信徒に対して、生前に戒名を授けるのが特徴です。授戒会に参加して戒律を守ることを誓うと、戒名を付けてもらえます。

真言宗

  • 呼び方:戒名
  • 構成例:○○院△△□□信女

真言宗の戒名も「院号・院殿号」「道号」「戒名」「位号」の基本構成で、院号・院殿号の前に、大日如来を表す「ア」の梵字が入ります。

阿弥陀如来を表す「キリーク」や、釈迦如来を表す「バク」の梵字は使われません。また真言宗では亡くなった幼児に戒名を付けるときに、地蔵菩薩を表す「カ」の梵字が刻まれます。

浄土宗

  • 呼び方:戒名
  • 構成例:○○院▽誉□□大師

浄土宗では道号の代わりに誉号を用います。あるいは「院号・院殿号」「道号」「誉号」「戒名」「位号」の構成です。戒名に「誉」の文字があれば、浄土宗の戒名だと分かるでしょう。

「院号・院殿号」の前には、阿弥陀如来を意味する「キリーク」の梵字が刻まれます。浄土宗には分派がいくつもあり、戒名の付け方は、さらに複雑性を増しているのが実態です。

たとえば西山派では空号が付くほか、名越派では良号が付きます。浄土宗の戒名を付けるときは、故人が帰依していた分派を確認して、細かくルールを確認することが重要です。

浄土真宗

  • 呼び方:法名
  • 構成例:○○院釋□□

浄土真宗は基本構成とは大きく異なり、「院号・院殿号」「釈号」「法名」の6文字です。釈号は釈迦牟尼の弟子となった証で、男性の場合は「釋」女性の場合は「釋尼」と記されます。ただし現在は女性も「釋」が使われることが多いです。

また浄土真宗で故人に授けられるのは、戒名ではなく「法名(ほうみょう)」です

浄土真宗では阿弥陀様を信じていれば、死後すぐに極楽浄土に往生できるとされています。そのため極楽浄土に行くための戒名は必要なく、阿弥陀如来の教えを守る証として、法名が与えられるのです。平等の思想の下、位号もありません。

日蓮宗

  • 呼び方:法号/日号
  • 構成例:○○院△△日▽居士

日蓮宗で故人に授けられる名前は、「法号」あるいは「日号」です。日蓮宗が重要視している『法華経(ほけきょう)』を守る証として、授与されます。

構成は「院号・院殿号」「道号」「法号/日号」「位号」の7~9文字です。法号の1文字目には「日」の字が使われます。

そのほか道号の1文字目は、男性は「法」で女性だと「妙」の字です。また院号・院殿号の前に梵字は入りませんが、法華経の正式名称「妙法蓮華経」から2文字を取って「妙法」と記すケースも多く見られます。

曹洞宗・臨済宗

  • 呼び方:戒名
  • 構成例:○○院△△□□信士

曹洞宗・臨済宗の戒名は「院号・院殿号」「道号」「戒名」「位号」の基本的な構成です。院号・院殿号の頭に、釈迦牟尼仏を表す「バク」か「空」の梵字が刻まれます。

なお臨済宗では院号・院殿号の代わりに、「軒号」「庵号」「斎号」などを付ける場合もあります。

曹洞宗・臨済宗は禅宗に属していて、戒律を重んじる一派です。そのため戒名に聖典の言葉を用いることも多く見られます。

戒名授与にかかる費用

お布施と紙幣

戒名を付けてもらう場合、戒名料を含むお布施の金額は30万~50万円に落ち着くのが一般的です。しかし戒名の授与にかかる費用は、位号のランクによって変動するほか、宗派によっても異なります。

位号のランクは低い方から主に「信士・信女」「居士・大姉」「院信士・院信女」「院居士・院大姉」が挙げられます。信士・信女の費用目安は30万~50万円、居士・大姉は50万~70万円、院居士・院大姉は80万円~が目安です。

浄土真宗では「釋・釋尼」「院釋・院釋尼」にてランクが設定されていて、それぞれ20万円以上と50万円以上が一般的です。

戒名は誰が付ける?

戒名と数珠

戒名は誰が付けるのが適切なのでしょうか。勝手に付けても戒名として認められない点に注意しましょう。

菩提寺の住職に付けてもらう

原則として戒名は、菩提寺の住職に付けてもらうものです。菩提寺の僧侶に読経してもらったり、寺院の土地を借りて墓を建てたりすることから、基本的には菩提寺にお布施を渡して、戒名を付けてもらいます。

現代では別の寺院の僧侶に戒名授与を依頼するサービスもありますが、菩提寺に理由を明確に話したうえで同意を得る必要があるでしょう。もし費用面が課題なのであれば、先に菩提寺に、その旨を相談するべきです。

菩提寺の僧侶以外の人に戒名を付けてもらった場合は、葬儀や納骨を拒否される恐れもあるため注意しましょう。

自分で付けることは可能?

戒名は仏弟子になった証として与えられる名前であることから、原則自分では付けられません

ペンネームのような形で自分で考えることは可能ですが、あくまでも個人の範疇に留まり、本来の宗教的な意味合いは含まれないです。無宗教の公営墓地や、海洋散骨で葬送する場合であれば、自分で付けても問題ないでしょう。

仏式葬儀の場合、自分で戒名を付けるとせっかく考えた戒名が菩提寺に認められない場合があります。原則菩提寺の住職、または葬儀を行う寺院の住職に付けてもらいましょう。入れたい文字がある場合は、事前に相談するのがおすすめです。

戒名授与のトラブルを避けるために

人さし指を立てる女性

戒名を付けてもらう際は、戒名の文字やランクのほか、お布施の金額においてトラブルが発生するパターンが想定されます。戒名をスムーズに授与してもらうために、以下のポイントに気を付けましょう。

  • 費用や名前に希望があれば、事前に菩提寺に相談する
  • 菩提寺の有無を親戚に聞く
  • 生前戒名は必ず親戚に伝える

戒名は菩提寺の僧侶がつけるものです。そのため費用や付けたい名前など希望があれば、自己判断せず何事も相談しましょう。相談した上で、どうすべきかを決めていくプロセスが大切です。

また菩提寺があるか自分で分からない場合は親戚に尋ねて、きちんと確認しておきましょう。菩提寺があることを知らずに別の寺院の僧侶から戒名を授与した場合、後から戒名を付けなおす可能性もあります。

また生前戒名を依頼した場合は、必ず親戚に共有しておきましょう。故人が生前戒名していたことを知らないと、改めて戒名を依頼してしまうかもしれません。

事前の相談や親戚への確認を忘れずに行えば、無用なトラブルを避けられます。

宗派別の戒名の違いを知ろう

手を合わせる人たち

戒名は宗派により、呼び方と付け方が異なります。宗派ごとの戒名の違いや意味をきちんと理解しておけば、遺族にとっても安心して故人を見送れるでしょう。

戒名に関して迷った際には、まずは葬儀社に相談するのもおすすめです。ミツモアなら最大5社の葬儀社から見積もりを取れます。費用や口コミ、チャットでの対応を比較すれば、信頼できる葬儀社を見つけられるでしょう。

お近くの葬儀屋・葬儀社を探す

監修者:岩田昌幸

葬送儀礼マナー普及協会 代表理事

葬送儀礼(臨終から葬儀、お墓、先祖供養等)が多様化している中で、「なぜそのようにふるまうのか」といった本来の意味を理解し、そうした考え方や習慣を身につけられるよう「葬送儀礼マナー検定」を実施しています。メディア監修多数、終活・葬儀・お墓関連セミナーも実施しています。

コメント
宗派による違いだけではなく、戒名にはそれぞれに意味があります。戒名を住職に付けてもらったら、その意味をしっかりと聞くと、浄土に向かう故人により想いを馳せられるでしょう。

参考:一般社団法人葬送儀礼マナー普及協会