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火葬の流れや準備することは?火葬前、火葬後の流れも詳しく解説

最終更新日: 2022年11月29日

火葬とは現代の日本において主流となっている、ご遺体を焼く「葬法」で、ご遺体の処置手段です。火葬するためには何を準備して、どのような流れで行うのでしょうか。

火葬前に準備しておくべきこと、火葬の流れ、火葬前後の流れまで詳しく解説します。

この記事を監修した専門家

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔

火葬とは?火葬の意味と歴史

喪服姿の男女

火葬は故人のご遺体を焼却し遺骨にする「葬法」の1つです。仏教用語で、火葬することを「荼毘(だび)に付す」と表現します。

火葬はもともとインドで始まった、仏教に由来する文化です。仏教では魂が輪廻転生を繰り返すと考えられていることから、新しい肉体に魂を宿すためにご遺体になるまで焼却します。

日本では明治時代から主流に

日本には飛鳥時代ごろに火葬が伝来していたものの、明治時代より前は土葬が主流でした。火葬する施設などが整っておらず、煙や異臭が問題であったためです。

しかし明治時代以降に火葬施設が登場し、葬送の方式が火葬へと移り変わりました。現代では火葬が最も一般的な葬送方法となっています。

ただし現在の日本において、土葬は法律で禁じられているわけではありませんへき地や離島など、火葬施設のないところでは土葬も行われています。ただ土葬を条例で禁止している地方自治体もある点を把握しておきましょう。

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火葬前に準備しておくこと

役所に提出する届出書類

故人を火葬するためには、書類の手続きといった準備が必要です。当日までに準備しておくべきポイントを5つ紹介します。

火葬許可証の取得

日本で火葬を行うには、あらかじめ「火葬許可証」の取得が必要です。「死亡届」「死亡診断書」「火葬許可申請書」を役所に提出して、火葬許可証を受け取りましょう

「死亡届」「死亡診断書」は医師から、「火葬許可申請書」は役場の窓口でもらえます。火葬許可申請書などは、自治体のHPからダウンロードできる場合もありますが、たいていは窓口に備えられているでしょう。

一般的に死亡届は、故人が亡くなったことを知ってから7日以内までに、故人の死亡場所・本籍地、届出人の住民登録がある土地いずれかの役所で届出します。火葬許可証も、その場で同時に取得しましょう。

書類の記入は原則遺族が行う必要がありますが、役所への提出のみであれば、葬儀社に代行を依頼できます

関連記事:火葬許可証はどんな書類?埋葬許可証との違いや再発行についても解説

火葬にかかる費用の把握

火葬を行うには費用がかかります。火葬代は火葬施設のホームページなどに公開されているため、しっかりと確認しておくことが大切です。

自治体が運営する公営火葬場であれば、地域の住民は安い料金で利用できます。公営火葬場の火葬代は、無料から1万円前後が多いでしょう。遺体安置する場合、1日数百円~数千円です。

民間企業が運営する火葬場は、公営火葬場より費用が高い傾向にあります。民営の場合は火葬代だけでも、5万円以上かかることが多いです。

火葬場を予約する

葬儀一式を葬儀社に依頼する場合、基本は葬儀社が火葬場を予約してくれるでしょう。ただし葬儀社を経由しない場合は、ご自身で火葬場を予約する必要があります。

火葬場の連絡先は、市区町村のHPなどに公開しているケースが多いため、あらかじめ問い合わせることも可能です。主に葬儀社が、空き時間を確認の上、予約します。

火葬場に参列する人を決める

火葬場には一般的に故人と近しい親族や、特別親しかった友人が参列します。同行する人数は10名前後が多いようです

葬儀・告別式の後に火葬場に移動する場合はとくに、車やマイクロバスに乗れる人数が限られています。火葬場に参列すべき人、参列してほしい人を決めておくと、当日スムーズです。

遺影、位碑、お茶菓子を用意

火葬場では読経や焼香があり、炉前に遺影や位碑を安置する場合もあります。出棺の際には、持ち忘れないように気を付けましょう。

また荼毘中の待ち時間には、同行者に茶菓の準備をしておきます。施設内に売店がある場合もありますが、事前に持ち込むことも可能ですので、準備しておくのがおすすめです。

地域によっては、待ち時間中に軽食を振る舞うこともあります。

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火葬の流れ

火葬の施行は、逝去後すぐには行えません。墓地埋葬法の法律で、死亡時間から24時間を経ないと実行できないです。

一般的には、ご遺体を安置後、お通夜、葬儀・告別式を経て、火葬する流れで進行します。式後、出棺の挨拶のあと霊柩車にて火葬場に移動しましょう。

その後の火葬の流れを解説します。

火葬許可証を火葬場に提出する

火葬に着いたら、まずは火葬場に火葬許可書を提出します。提出しないと火葬ができないため、持ってくるのを忘れないようにしましょう。

なお死亡届の提出から火葬許可書の受け取りを、葬儀社に代行してもらった場合、そのまま火葬場へ持ってきてくれるケースが多いです。

葬儀前の打ち合わせで、誰が持参するべきか確認しておきましょう。

納めの式を行う

火葬場で行う最後のお別れが「納めの式」です。地域によってはこの手順を省き、すぐに火葬を行うケースもあります。

納めの式では火葬炉の前で、僧侶が読経を行うのが一般的です。喪主は持ち込んだ位牌や遺影を祭壇に飾りましょう。

読経の後は喪主から順に遺族、親族と焼香・合掌をします。最後のお別れなので、気持ちを込めて行いましょう。

納めの式が終了したら、棺が火葬炉へと入れられます。

火葬する

火葬炉に棺を入れて、点火して火葬します。点火は喪主が行う場合もあれば、スタッフが行う場合もあるでしょう。

火葬時間は1〜2時間かかるのが一般的です。同行スタッフや火葬場の係員の指示に従って、施設内の控え室や休憩室で待機しましょう。

複数の葬家がいることもありますので、施設内では騒がしくせず、しめやかな態度で振る舞うのがマナーです。控室では、故人の思い出話などをすると良いでしょう。喪主が持参した軽食やお茶菓子を振る舞うこともあります。

骨上げ・収骨の儀式

火葬が終わったら「骨上げ」「収骨」を行います。遺骨を参列者で拾い上げ、骨壺に入れる儀式です骨上げは地域により風習が異なるので、火葬場の係員の指示に従いましょう

まず参列者は案内によって、拾骨室と呼ばれる部屋へ移動し、遺骨を囲みます。参列者でそれぞれ交代して、順番に遺骨を拾い、容器へと入れていきましょう。

足、腕、腰、背中、頭蓋骨のように、体の下から上へという順番で行うことが多く、最後に喉仏を拾い上げ、骨壺に納めたら終了です。

渡し箸、挟みあいなどの地域慣習もありますので、火葬場の係員の指示に従います。

関連記事:骨上げの方法とマナーを紹介。地方によって風習が異なる場合も

埋葬許可証を受け取る

骨上げが全て終われば、火葬済みの印が押された火葬許可証(埋葬許可証)が渡されます。書類を受け取ったら、火葬は完了です。

なお遺骨を複数の骨壺に分けて供養する「分骨」を希望する場合には、火葬の前日までに火葬場に希望を伝えておきます。火葬終了後に「分骨証明書」をもらえるので、保管しておきましょう。分骨証明書は分骨した遺骨が故人本人であることを証明する、重要な書類です。

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火葬後の流れ

法要後の会食

火葬と拾骨が終わったあとに、葬儀場に戻って法要を行ったり、会食を行ったりすることがあります。一般的に行う儀式を確認しておきましょう。

還骨法要

還骨法要とは、遺骨になって帰ってきたときに行う法要です。仮の祭壇に遺骨、遺影、位牌などを安置し読経、遺族や参列者はお焼香をします。現代では繰り上げての「初七日忌法要」と重ねて行うのが一般的です。

還骨法要を行う場所は、葬儀場や自宅、またはお淨めの場所(料理店やホテル)などがあります。入り口で塩や手水で浄めてから室内に入ることが多いです。ただし施設や宗派によっては「淨め塩」を使用しないこともありますので、あらかじめ確かめておくようにしましょう。

繰り上げ初七日忌法要

「初七日法要」は家族や身内が逝去した7日に行う法要です。その日に故人は三途の川にたどり着くといういわれや、仏教作法のしきたりもあります。しかし近年では、葬儀施行の日程から7日目が近接していることにより、葬儀当日に法要を行う「繰り上げ初七日法要」も一般的な傾向です

繰り上げ法要の場合、火葬後に葬儀場へ戻り、改めて僧侶の読経と遺族の焼香を行います。場合によっては、葬儀読経に引き続いて、式中に営まれるケースもあるようです。

精進落とし

「精進落とし」は法要の後に行う会食です。本来は忌引き明けにとる食事の意味がありましたが、現在は参列者や僧侶をもてなす席とされています。

精進落としを行うタイミングは、火葬後や、初七日法要の後など、葬家によりさまざまです。もてなすことが目的のため、僧侶に上座に座ってもらい、喪主や遺族側は末席に座りましょう。

精進落としの参加者は、菩提寺の住職や故人との縁が深い人々です。したがって葬儀・告別式の後、火葬場への同行者と重なることも多く、また同行者以外で直接会食場へ来てもらう、お手伝いの方々なども交えて行います

人数の把握はしっかり確認しておくことが重要です。

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火葬場はどう選ぶ?

棺を運ぶ人喪服姿の人たち

火葬場をご自身で選ぶ際は、まずは葬儀場に近い場所から探し、そこに利用できる公営の火葬場があれば、空きがあるか確認するという方法がスムーズでしょう。

葬儀場から近い火葬場を選ぶ

葬儀・告別式の後火葬を行う場合、通常は式の施行場所に近い場所にある火葬場を選びます。移動距離が長いと、時間の余裕を十分見なくてはなりません。

葬儀社に依頼するなら葬儀場と合わせて火葬場も手配してくれますが、立地や移動手段、所要時間などは確認しておきましょう。

葬儀や告別式を行わない「直葬」や「火葬式」の場合は、直接火葬場に集合します。駅からのアクセスやそのご案内、道路や駐車場の状況についても確認したいポイントです。

公営か民営か

火葬場には公営と民営の2種類があります。

公営火葬場は地域の自治体が運営する施設です。故人や喪主の住所が自治体内の地域であれば、費用を抑えて利用できます。自治体によっては無料で火葬できますよ。ただし費用が安い分、茶菓や飲物など自分たちで準備しなければならないこともあります。また施設が小規模の場合、予約が重なることも多い点に注意しましょう。

自治体の地域以外の方の場合、地域住民より火葬費用が割高になる場合や、利用できなかったりすることもあります

民営の火葬場は葬儀社、あるいは他の企業が運営している施設です。火葬料金は公営に比べて高く、施設的には仮眠宿泊の設備や売店、ロビーなどが完備されたりして充実しています。

民営・公営に関係なく、火葬場の予約が埋まっていたら、式の予定や都合の合う日程では利用できません。どうしてもその日程でということになると、近隣の火葬場を探すことになります。葬儀社とよく相談することが重要です。

関連記事:斎場・火葬場おすすめ【料金・評判で比較】

「直葬」「火葬式」における火葬の流れ

納棺

昨今は火葬だけを行う「直葬」「火葬式」を選択する人も増えています。お通夜や葬儀・告別式を行わず、直接火葬場に行き、火葬する流れです。

火葬許可証が発行された後24時間を経て火葬できますが、その間、ご遺体の安置や保管をしなければなりません。火葬場に安置施設があれば、逝去場所から直接移動することも可能です。時間になったら荼毘に付し収骨します。

一般的な葬儀に比べると費用を抑えられるため、経済的な事情によって選択されるケースもあるでしょう。

また直葬や火葬式を行えば、遺族の金銭面以外の負担も減らせます。葬儀を執り行うには、打ち合わせや各所との調整など、何かと手間や時間がかかるものです。しかし火葬のみであれば、最小限の工程で済むため、遺族側の負担も大幅に軽減できます。ただしあとから悔恨するようなことのないような心構えも重要です。

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葬儀の前に火葬する地域も

白い花と数珠

お通夜の翌日、葬儀の前に火葬する「前火葬」の地域もあります。この場合はお骨を安置して行われるので「骨葬」と言います。

地域により細かな慣習が異なるため、事前に親戚や葬儀社に確認しておくと良いでしょう。

葬儀後の「後火葬」が一般的

通夜の翌日に葬儀・告別式を行い、その後に火葬を行うことを「後火葬」と呼びます。関東や関西、九州地方などでよく見られる形式です。

葬儀・告別式と火葬は同じ日に行われるケースが多く、時間的には午前中に葬儀・告別式を、午後に火葬を行うスケジュールが主流となっています。

葬儀前に火葬をする「前火葬」の「骨葬」

お通夜の翌日、葬儀・告別式の前に火葬を行う「前火葬」を風習とする地域もあります先に火葬を行うため、遺体ではなく遺骨で葬儀を執り行うのが特徴です。

故人の顔を最後に見ることができるタイミングが、後火葬よりも早まる点に注意しましょう。

北海道の一部の地域や東北地方では、前火葬の「骨葬」が行われるケースが多いとされます。しかし同じ東北地方でも地域により異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

たとえば青森県や秋田県では前火葬を行う場合が多く、岩手県や宮城県、山形県では後火葬のケースが多いようです。

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故人との最後のお別れの場を大切に

線香と花とろうそくが並んでいる様子

火葬前は、故人の顔を見られる最後の場です。あらかじめ火葬前後の流れを把握し、事前準備をして「お別れの儀」に臨めば、悔いがないでしょう。

葬儀に関して分からないことは、葬儀社に相談しながら進めるのがおすすめです。ミツモアなら簡単な質問に答えるだけで、ぴったりのプランを最大5社から提案してもらえます。見積もりを比較検討すれば、信頼できる葬儀社を選べるでしょう。

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監修者:二村 祐輔

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)

著書・監修

  • 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
  • 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
  • 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
  • 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載

など多数

コメント
「骨葬」の由来は、もともと「死の決定」が白骨化したことで成立していた名残といわれています。通夜は生死の境で、生きているものやら亡くなったものやら、この世とあの世の境をさまよっています。万人がそこから死を認めるためには、遺体の形状変化の究極としての骨化が一番明確な判断です。つまり白骨になることで死が確定し、それをもとに葬儀を執り行う風習から先にお骨にするという説があります。