火葬許可証は火葬を行うために必要な、非常に重要な書類です。火葬許可証と火葬後の埋葬許可証があわさって「埋火葬許可証」となっている場合もあります。
火葬許可証の基礎知識や発行に必要な書類、発行手順を確認しましょう。火葬許可証を扱う上での注意事項と、再発行の手順についても解説します。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔
火葬許可証とは?埋葬許可証との違い
火葬許可証とは故人の遺体を火葬する許可を、公的に証明する書類です。火葬当日に火葬場の事務所に提出することで、故人を荼毘(だび)に付す、つまり火葬することができます。
一般的に火葬は葬儀当日に行うケースが多いです。そのため、葬儀前に火葬許可証を取得しておく必要があります。
火葬許可証と埋葬許可証の違い
埋葬許可証とは火葬した遺骨を、墓地などに納骨する際に必要な書類です。「埋葬」は本来「土葬」を意味しますが、「埋葬許可証」の埋葬は、遺骨をお墓に納める行為も指します。
火葬許可証と埋葬許可証は、役割は異なりますが同一の書類です。「埋火葬許可証」として取り扱われています。
故人が荼毘に付された後、火葬場から火葬済みの押印をもって、火葬許可証が返却される流れです。この火葬日時や証印が押された火葬許可証が、埋葬許可証にあたります。
埋葬許可証は紛失しないように注意
一般的に四十九日や一周忌、三回忌など、葬儀から時間が経ったのちに納骨を行うケースが多いです。納骨の際に埋葬許可証を墓地や霊園の管理者に渡すため、それまで紛失しないように注意しましょう。
埋葬許可証の紛失を防ぐためには、骨壺と一緒に桐箱に入れておくのがおすすめです。
また納骨するとき、お骨を分けて管理する「分骨」を行う場合は「分骨証明書」も必要になります。火葬前に、火葬場に分骨することを伝えれば「分骨証明書」を発行してもらえます。
火葬許可証の発行手順
火葬許可証の発行は、以下の流れで行います。
①ご逝去後、医師から死亡診断書(死体検案書)をもらう
②死亡届・火葬許可申請書を記入する
③市区町村役場の窓口に提出する
具体的な手順や注意点を確認しましょう。
発行に必要な書類
市町村役場で火葬許可証を発行してもらうために必要な書類は以下3種類です。
- 死亡診断書(死体検案書)
- 死亡届
- 火葬許可申請書(死体埋火葬許可申請書)
「死亡診断書(死体検案書)」は、臨終に立ち会った医師、もしくは遺体を検案した医師が作成します。病院やご自宅で、医師から受け取りましょう。
「死亡届」は死亡診断書(死体検案書)と1枚になっています。A3用紙の左側が死亡届、右側が死亡診断書です。
「火葬許可申請書(死体埋火葬許可申請書)」は市区町村役場で入手するか、自治体のホームページからダウンロードできます。
亡くなってから7日以内に書類を提出する
市町村役場に死亡届を提出する期限は、届出人が故人が亡くなったことを知った日から7日以内です。あわせて火葬許可申請書も提出します。
死亡届の必要事項は原則、届出人が記入します。項目は故人の氏名や生年月日、死亡場所、故人と届出人の関係、届出人の住所や本籍地、戸籍の筆頭者、捺印欄などです。
火葬許可申請書(死体埋火葬許可申請書)も届出人が記入します。項目は故人の本籍地や住所、死亡年日時などです。こちらも捺印欄があるため、役場で記入する際は印鑑を忘れないようにしましょう。
提出先は故人の本籍地か死亡地、もしくは届出人の住民登録がある自治体の窓口です。手数料はかかりません。
書類に不備がなければ、すぐに火葬許可証を発行してもらえるでしょう。
手続き代行を依頼できる葬儀社もある
死亡届の届出人は、戸籍法で定められた人のみしか行えません。故人の親族や親族以外の同居者、家主、地主、後見人、任意後見人などです。
ただし提出のみであれば代理人が行えます。そのため葬儀の依頼と同時に、葬儀社に書類の提出を代行してもらうケースが増えています。葬儀の手続きの一環で、火葬場の予約をする必要があるためです。
信頼できる葬儀社に火葬許可証の代行手続きまでお願いできれば、ご遺族の負担を少しでも減らせるでしょう。ただし記載内容は個人情報の重要な内容であるため、細心の注意が必要です。
火葬許可証・埋葬許可証を紛失した場合は?
火葬許可証・埋葬許可証を紛失した場合は、再発行も可能です。発行後5年未満と、それ以上経過している場合では、再発行の申請手順が異なります。それぞれの再発行の手順について確認しましょう。
発行してから5年未満の場合
発行後5年未満の火葬許可証・埋葬許可証であれば、火葬許可証を受け取った窓口で再発行できます。再発行できるのは死亡届の届出人や、故人の直系の親族、祭祀継承者です。
死亡届の届出人が再発行の手続きを行う場合は、本人確認書類と印鑑を用意して窓口へ行きましょう。死亡人以外が手続きをする場合は、本人確認書類と印鑑に加えて、故人との関係を証明できる書類が必要です。
代理人に依頼する場合は、自治体によって委任状が必要になるケースもあります。あらかじめ自治体に問い合わせておきましょう。
発行してから5年以上経っている場合
発行後5年以上経過している火葬許可証・埋葬許可証を再発行する場合は「火葬証明書」が必要です。火葬証明書は火葬を実施した火葬場で取得できます。
公営の火葬場では火葬簿が30年間保管されており、火葬証明書も30年間発行可能です。民間の火葬場では保管期限のルールがないため、問い合わせてみましょう。
火葬場で発行してもらった火葬証明書を持参し、死亡届を提出した市町村役場で再発行を依頼します。火葬証明書が必要な点以外は、発行後5年未満の再発行手順と同様です。
火葬許可証と埋葬許可証は紛失に注意
火葬許可証とは市町村役場で発行される、故人の遺体を火葬する許可を証明する書類です。火葬を実際に行う際に、火葬場に提出します。納骨の際に必要な埋葬許可証は、火葬許可証に火葬日時が明記、または証印がなされた書類です。
火葬許可証・埋葬許可証は大切に保管しておく必要がありますが、なくしてしまった場合は再発行できます。発行後5年未満と5年以上では、再発行の手続き方法が変わるため、注意しましょう。
監修者:二村 祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
火葬許可証の申請は夜間窓口でも取り扱っているので24時間対応です。その際、提出する前に死亡届・死亡診断書は必ず数枚コピーをとっておきます。また手続きを葬儀社に代行してもらう場合は、故人と喪主など(届け人)の「個人情報」が委ねられるわけですから、十分な守秘管理を重ねて確認するようにしましょう。難しい手続きではありませんので、できれば遺族がしみじみと「死の受容」をふまえて、届け出をすることが望まれます。