永代供養(えいたいくよう)とは喪主や遺族の代わりに、お寺が故人の供養してくれる祭祀方法です。納骨堂は複数の遺骨を安置し、保管するための施設で収蔵の概観を示した言葉です。
永代供養は形のないサービスで、納骨堂は遺骨を納める場所のため、そもそも比較する対象ではありません。納骨堂のなかには、永代供養のスタイルで納骨できる場合があります。
永代供養とはどういう方法か、また納骨堂がどのような納骨場所であるのか、それぞれのメリットやデメリットに触れながら詳しく解説します。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔
永代供養とは
永代供養とは、喪主や遺族に成り代わって、主に寺院がその供養や管理をしてくれる納骨形態で、遺骨の保管や祭祀についての手法の1つです。文字通りお寺が「永代」にわたって供養してくれるので、子孫の祭祀承継を前提としていません。
家庭の事情で遺骨の管理や祭祀が困難である、また現状のお墓の管理や供養継続ができないなどの場合に役立つでしょう。また子どものいない人や、子どもたちに供養の負担をかけたくない人にとって、永代供養は最適な方法といえます。
現代は子どもを持たない世帯が増えており、永代供養のニーズも高まりつつあるのです。
永代供養にかかる費用目安
永代供養を前提としたお墓のことを永代供養墓といいます。一般的に永代供養墓の費用は、合祀などの集合墓の場合は一般の区画での建墓にくらべて安い傾向です。
主な永代供養墓の種類と費用の目安は、以下の通りです。
- 合祀(ごうし)墓・合同墓・集合墓
- 遺骨を他者と合葬する場合:1万円~30万円
遺骨を個別に収蔵する場合:20万円~60万円
- 遺骨を他者と合葬する場合:1万円~30万円
- 完全に個別墓の場合:50万円~150万円
合祀・合同・集合墓は他の人と一緒に収蔵するお墓のことです。「合葬」は併せ持って葬るということで、そこには特に供養の敷設はありません。「まとめて埋葬する」という意味だけです。そこで共に祭祀される(供養)という場合を「合祀」といいます。
なお遺骨の取り扱い方は、2種類あります。遺骨を容器から取り出して、他者との区別なく埋葬する場合は費用が安い傾向です。また場所は共有するものの収蔵は個別に行う場合、納骨スペースを用意する分だけ費用がかかります。
遺骨を他者との区別なく合葬すると、後から特定の回収が難しいため注意が必要です。どのように納骨されるのかは、事前に確認する必要があるでしょう。
個別墓はその名の通り個別のお墓のことです。スペースの形態は一般的な墓石やマンション形式のスペースなどがあります。マンション形式のスペースは納骨堂の一種です。個別の墓石やスペースを必要とするため、費用は合葬墓よりも高いです。
なお永代供養の場合、個別で安置できる期間が決まっている点に注意しましょう。一定期間を過ぎると合葬のうえ合祀され、全体として慰霊されるケースも多くあります。
永代供養のメリット
永代供養の3つのメリットを解説します。永代供養は現代のライフスタイルにマッチした、合理的な納骨方法といえます。
管理や供養を任せられる
永代供養の1番のメリットは、子どもや孫の世代に負担をかけずに済む点です。一般的なお墓よりも費用が安く、合祀墓なら供養のための費用もかからないので、金銭的な負担も少なく済みます。
子どもたちは慣例的な墓参行事にかかわりなく、好きなタイミングでお墓参りに行けばよいため、精神的な負担も少ないでしょう。また子どもがおらず、祭祀承継者がいない単身者や夫婦にとっても、自分たちの供養がなされていくので安心です。です。
宗派が不問
納骨時の宗教や宗派を問わず受け入れてもらえる可能性が高いのも特徴です。永代供養は基本的に寺院が行っていますが、神道やキリスト教の信徒も受け入れてくれるケースもあります。また霊園によっては無宗教的な慰霊行事を行い、これを供養対応とすることもあります。
無宗教の人も利用可能です。夫婦それぞれの実家が違う宗派だった場合、お墓をどうするかをめぐって、トラブルになることがあるかもしれません。そんなときは永代供養が解決策になり得ます。
自分の宗教や宗派でも受け入れが可能か、寺院に問い合わせてみるとよいでしょう。
檀家にならなくても良い
檀家とは特定の寺院で、先祖祭祀や葬儀、法要などにおける供養行為をお願いしている家のことです。普段から年間の「護寺会費」など檀家としての義務を果たしています。一般的に寺院境内にお墓を建てる場合は、檀家になる必要があります。
しかし永代供養をお願いする場合は、後継者がいないことが前提ですので、供養料などは前もって支払っておくケースがほとんどです。これを「永代供養料」として、以降は供養のための支払いはありません。
ただし寺院や施設の形態によってさまざまな経費の体系システムがあるため注意が必要です。
永代供養のデメリット
メリットが大きい永代供養ですが、注意すべき点もあります。永代供養の注意点を解説するので、メリットと比較して判断しましょう。
永代=永久ではない
永代と聞くと、未来永劫ずっと供養をしてもらえると思う人もいるかもしれませんが、残念ながら永代と永久は異なります。
永代供養では、集合墓での個別安置や個別墓を選んだ際は、固有にスペースの占有や個別の祭祀がなされます。
ただし期限を定めての対応になることがほとんどで、習俗的には33回忌を供養の区切りとして、その後は合祀として供養されることが多いようです。そこで終わるわけではなく、合祀されての供養は継続します。
合祀した後は遺骨を取り出せなくなる
一度遺骨の合葬・合祀がなされ他の遺骨と混在すると、その後に個別の遺骨を取り出すことはできません。
もし将来「お墓を移したい」といった要望が生まれた際に、不都合が生じるでしょう。子どもや孫の世代になって、新たにお墓を購入するケースもあるかもしれません。その場合に両親や祖父母の遺骨を、同じお墓に移したいと思ってもできなくなってしまいます。
自分たちの子孫がどのような対応を取るかは、そのときになってみないと分かりません。永代供養をするときは、この点を留意していく必要があります。
納骨堂とは
納骨堂とは多くの人の遺骨を、1つの施設でまとめて安置・保管する建物を指します。通常のお墓が一軒家だとすると、納骨堂はマンションにたとえられます。
納骨堂は通常のお墓と異なり、屋内で遺骨を保管することが大きな特徴です。1人用や夫婦、家族用といった収蔵プランが用意されており、少子高齢化や核家族化が進んだ、現代のニーズに応える供養方法と言えます。
納骨堂は納める期間が決まっていて、期間を過ぎたら合祀墓に移される場合が多いです。この点で永代供養と似ているため、混同されたり比較されたりすることがあります。なお初めから納骨堂で永代供養のサービスを受けることも可能です。また無期限で納骨堂に納めたい場合は、無期限の供養に対応している納骨堂を別途探す必要があります。
納骨堂はもともと、墓石へ納骨するまでの期間、一時的に遺骨を保管するための施設でした。時代が進むにつれ、お墓代わりとして利用したいというニーズが大きくなったことで、今のような利用スタイルが確立されたといわれています。
納骨堂の費用の目安
納骨堂の利用費用は、収容する遺骨の数や施設のタイプによって異なります。代表的なタイプと料金相場は、以下の通りです。施設にも寄りますが、ここに1万~2万円程度の年間管理費が追加でかかります。
- ロッカー型:20万~80万円
- 仏壇型:50万~150万円
- 自動搬送型:80万~150万円
- 位牌型:10万~20万円
ロッカー型とはその名の通り、ロッカーのようなスペースに、遺骨容器を保管する形式です。礼拝物は共有することが多く、作りがシンプルなことから、費用は抑えめになっています。
仏壇型は上段に仏壇、下段に遺骨容器を収納するタイプです。複数の骨壺を安置・保管できることから家族での利用も可能で、スペースが広い分ロッカー型よりも費用は高くなっています。
自動搬送型はICカード等で読み込むと、故人の遺骨が自動で祭祀窓口まで運ばれてくるタイプです。広い土地を確保できない都心部に多く見られ、機械や土地のコストから、費用が高くなる傾向にあります。
位牌型は位牌と遺骨を別々に保管するタイプです。遺骨はまとめて保管するか、合祀され、位牌も複数を並べられます。費用は四つの中では一番リーズナブルかもしれません。
納骨堂のメリット
納骨堂のメリットを2つ解説します。費用が安く済み、一般的にアクセスしやすい点がメリットでしょう。
お墓を立てるより安価
納骨堂の大きなメリットは、一般的なお墓よりも安価に利用できることです。一般的なお墓を建てる場合、150万~200万円程度の予算が必要です。
納骨堂なら一番安くて10万円程度から利用できます。ただし利用する人数や、施設のタイプによって金額は変動するので、実際に見積もりを出して比較するのが確実です。
お参りしやすい
納骨堂のもう1つのメリットは、お参りしやすい点です。納骨堂は駅から近い好立地に建てられていることも多く、利便性が高いことも特徴です。
また室内は空調も効いており、バリアフリーも整備されているので、高齢者も安心して利用することが可能です。中にはエレベーターが付いている場所もあります。
思い立ったときに気軽にお参りできるのは、納骨堂の長所と言えるでしょう。年間管理費を支払う分、施設管理が行き届いています。
納骨堂のデメリット
納骨堂の注意点を解説します。期限を過ぎた遺骨は、合祀される点には特に注意が必要です。
保管期間が過ぎると合祀される
永代供養と同じく、納骨堂にも個別の利用期間が決められています。多くの場合は33回忌までで、期限が過ぎたら合祀されます。合祀後は合葬されるので、個別の遺骨は取り出せません。
無期限で納骨できる納骨堂もありますが、基本的には管理費を払い続ける必要があるでしょう。
スペースに制限がある
スペースの問題もあります。納骨堂に納骨できるスペースは十分とはいえず、多くても4個までしか納められないケースが多いでしょう。
家族代々を祀りたいと思っている人には不向きですが、夫婦や子どもたちのみ利用できればよいという人には、十分と言えます。
建物や施設の劣化
納骨堂の場合、遺骨は建物内に保管されるので、建物の劣化を考慮しなければなりません。基本的に納骨堂は耐震設計がされていますが、災害が発生した際の不安が残る人は多いでしょう。
万が一建物が倒壊した場合、遺骨を紛失してしまうリスクもあります。非常時の対応や費用、また建物が老朽化した際の費用負担について、事前に確認しておくとよいでしょう。
永代供養と納骨堂は異なる概念
永代供養は故人の祭祀に対してのサービス、納骨堂は単に遺骨を収蔵する施設形式のことです。そもそもカテゴリーが異なるため、比較の対象にはなりません。
これまでは亡くなったらお墓に入り、子孫がそれを守っていくスタイルでした。現代では子どもを持たない世帯や、お墓の供養承継や管理が難しいケースも増えています。そのような人にとって、永代供養や施設としての納骨堂はよい選択肢となるでしょう。
永代供養のような供養スタイルを選ぶかどうか、墓石ではなく納骨堂に納骨するかどうかは、家族とよく相談して決定することが大切です。
監修者:二村 祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
埋葬というのは字のごとく遺骨を土中に埋めることですが、現在ではコンクリート製のカロートという箱が墓石基壇の下にあり、そこに骨壺を納めることになります。これに対して、納骨堂では「埋めない」ので、「収蔵」といいます。どちらも墓地埋葬法という法律の中で定められた言葉遣いです。ただ私たちには「土に還る」という、死後観が根強くよくあり、直に土に触れないことに違和感をもつ人も多いようです。