配偶者の不倫が発覚した後も、夫婦関係を続けるつもりなら、不倫相手のみに慰謝料を請求しましょう。証拠を押さえたり示談書を作成したりすれば、スムーズに請求を進められます。慰謝料を不倫相手のみに請求する方法や、注意点を理解しておきましょう。
不倫相手だけに慰謝料を請求できる?
配偶者の不倫や浮気が発覚した場合、不倫相手や浮気相手のみに慰謝料を請求できるのでしょうか。法律ではどのような解釈がされているか、解説していきます。
法律上は配偶者と不倫相手の連帯責任
不倫は民法第770条で定められた、不貞行為に該当します。不貞行為とは夫婦のどちらかが、配偶者以外の異性と性的関係を持つ行為のことです。
不法行為に該当する不貞行為を行うと、民法第752条や民法第709条により、貞操義務違反とみなされて損害賠償請求の対象となります。
不倫の場合は共同不法行為とみなされるため、配偶者と不倫・浮気相手の連帯責任です。慰謝料の支払い義務は配偶者に発生しますが、不倫相手や浮気相手にも責任があるため、配偶者と相手の両方に慰謝料を請求できます。
慰謝料を不倫相手のみに請求することも可能
不倫慰謝料は配偶者と不倫・浮気相手の、双方に請求することが可能です。不倫の発覚後に婚姻関係を解消しない場合も、配偶者には不法行為を理由として、慰謝料を支払う義務が残ります。
しかし夫婦は経済面で一体となって生活しているため、夫婦間での慰謝料のやりとりは、世帯としてみれば意味がありません。また夫婦関係を改善しようとする状況で、配偶者に慰謝料を請求すると、さらに関係がこじれる恐れもあります。
配偶者に対する請求を望まないケースでは、不倫相手のみに慰謝料の請求が可能です。実際の不倫の対応としても、不倫相手や浮気相手だけに慰謝料請求することは、広く行われています。
不倫相手に慰謝料請求するための要件
不倫慰謝料を不倫相手や浮気相手に請求するためには、以下の条件を全て満たしていなければなりません。
- 不倫行為について不倫相手に故意または過失がある
- 不倫開始時に配偶者側の夫婦関係が破綻していない
- 消滅時効が完成していない
配偶者が既婚者であることを知っていた場合や、注意すれば既婚者であることが分かった場合は、不倫相手に故意または過失があるため慰謝料を請求できます。
消滅時効とは慰謝料を請求できる期限のことです。不倫や浮気の事実が発覚してから3年が経過している場合、不倫に関する慰謝料は請求できないことが、民法第724条で定められています。
不倫相手だけに慰謝料を請求する際の注意点
慰謝料を不倫相手のみに請求する場合は、いくつか気を付けるべきポイントがあります。スムーズに請求を行うためにも、以下の注意点を理解しておきましょう。
不倫の証拠を押さえておく
不倫相手や浮気相手に慰謝料を請求する際は、不貞行為の事実を証明できる証拠を押さえておくことが重要です。不貞行為がなければ、慰謝料は請求できないため、配偶者と不倫相手の間に、肉体関係があったことを証明しなければなりません。
肉体関係をはっきりと示せる、証拠があるに越したことはありませんが、確たる証拠ではなく肉体関係を推定できる事実でも、慰謝料を請求できる場合があります。
例えばメールやSNSのやりとりに、肉体関係があったと推測できる内容が記載されていれば、証拠として有効です。2人でホテルに出入りする写真や目撃情報も、証拠としての有効性は高くなります。
配偶者の同意は不要
慰謝料を不倫相手や浮気相手だけに請求する場合、配偶者から同意を得ておく必要はありません。ただし相手から配偶者に対し、慰謝料請求を受けたことが伝わる可能性は、十分にあります。
配偶者によっては、事前に相談を受けていなかったことに対し、「信頼されていない」「メンツをつぶされた」などと、不快に思うケースもあるでしょう。夫婦関係の悪化にもつながりかねません。
不倫相手のみに慰謝料を請求する際は、配偶者の同意を得るべきかどうか、配偶者の性格も踏まえて慎重に検討する必要があります。
求償権を行使されることがある
慰謝料の請求を受けた不倫や浮気の相手には、求償権を行使できる権利があります。求償権とは不貞行為の相手が配偶者に対して、慰謝料の一部を返還請求できる権利です。
不倫による不貞行為では配偶者と不倫・浮気相手が連帯責任を負うため、本来は2人で損害を賠償しなければなりません。不倫相手のみに慰謝料を請求した場合、配偶者も慰謝料の一部を負担すべきであることを、相手側が主張できるのです。
不倫相手に求償権を行使させないようにするためには、事前に求償権の放棄を約束してもらう必要があるでしょう。あらかじめ慰謝料の負担割合を計算し、不倫相手が負担すべき割合分のみ請求する方法も、有効です。
誓約してほしい事項の決定
不倫相手に慰謝料を請求する場合は、誓約してほしい事項を決めておくことも重要です。話し合いの際に約束を取り付けるべき内容について、解説します。
不倫相手に誓約してもらう内容
不倫相手に誓約してもらう主な内容としては、慰謝料の支払いに関することや、不倫関係を完全に終わらせることなどが挙げられます。
不倫発覚後も離婚しない場合は、配偶者と不倫相手の関係が、続かないようにすることが必要です。配偶者との関係を解消することや、配偶者に今後接触しないことを、不倫相手に誓約してもらいましょう。
場合によっては誓約事項に違反した際の、違約金について約束を交わすこともあります。違約金の設定は必須ではないものの、そこまでしておけば安心感も増すでしょう。
過度な要求はNG
慰謝料の支払いに関して誓約を交わす際は、請求金額が高額になりすぎないように、注意が必要です。あまりにも高額な慰謝料を請求すると、相手が交渉に応じなくなるリスクがあります。
配偶者との関係についての誓約も、過度な要求はNGです。例えば配偶者と不倫や浮気の相手が同じ職場で働いている場合、相手に対して退職を要求するようなことは、控えなければなりません。
不倫による損害を賠償してもらう場合は、金銭のみで解決を図るのが基本です。被害者だからといって行き過ぎた要求をすると、新たなトラブルが発生する恐れもあります。
取り決めは書面で行う
不倫・浮気相手との取り決めは書面で行い、示談書として残しておきましょう。口約束だけで終わらせてしまうと、約束したことを守ってもらえないリスクがあります。
口頭注意のみで済ませるケースより、示談書として誓約内容を残しておいたほうが、重大な取り決めだと認識して、不倫相手が行動を改めやすくなるでしょう。
適切に作成した示談書には、法的効力があることもポイントです。示談書の内容に違反した場合、条件によっては裁判を起こして、履行を求めることもできます。
慰謝料が分割払いになるケースでは、公正証書によって示談の契約を結ぶとよいでしょう。慰謝料の支払いが滞った場合に、裁判をしなくても差し押さえの手続きができます。
不倫相手への慰謝料請求方法
不倫や浮気の相手のみに慰謝料を請求する方法には、以下の3種類があります。それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。
直接交渉
相手の素性が分かっており連絡を取れる状況なら、対面による直接交渉が可能です。慰謝料の金額や支払い期限、配偶者に二度と接触しないことなどを、取り決めましょう。
相手と直接会って話し合う際は、カフェやレストランなど、できるだけ周囲に人がいる状況で行うのがおすすめです。2人きりで交渉すると、「強制的に契約された」などと、後から言いがかりをつけられるリスクがあります。
取り決めた内容は書面に残しておくことも重要です。交渉中のやりとりを録画・録音しておけば、裁判に発展した場合も、有力な証拠として使用できます。
内容証明
相手の名前や住所が分かっている場合は、内容証明郵便で請求することも可能です。内容証明郵便を利用すれば、郵便の発送日・受取日・内容などを郵便局に証明してもらえます。
不倫相手に心理的なプレッシャーを与えられることが、内容証明郵便で請求する大きなメリットです。めったに受け取ることがない種類の郵便を送ることで、自分の本気度を相手に伝えられます。
消滅時効の完成を猶予できることもポイントです。不倫慰謝料請求の時効は不倫の事実を知ってから3年間ですが、内容証明郵便により、時効の完成を6カ月間延ばせます。民法第150条で定められているルールです。
民事訴訟
直接交渉や内容証明でも、相手が慰謝料の支払いに応じない場合は、民事訴訟により問題を解決する方法があります。訴訟を起こす際は、訴状を作成して裁判所に提出しなければいけません。
裁判により慰謝料の金額が決まっても、相手が支払わないケースでは、強制執行の申立てを行って、相手の財産を差し押さえることが可能です。ただし差し押さえられる財産がない場合、請求を諦めるしかないでしょう。
民事訴訟は自分で行うことも可能ですが、弁護士に依頼したほうが証拠の準備や主張の組み立てを、スムーズに行ってもらえます。
慰謝料請求を行政書士に依頼するメリット
不倫相手だけに慰謝料を請求する場合、示談書の作成は行政書士に依頼しましょう。行政書士に書面作成をお願いするメリットを紹介します。
適切な示談書を作成できる
行政書士は書面作成の専門家です。不倫慰謝料請求の示談書作成にも対応しているため、行政書士に依頼すればより適切な内容で作成してもらえます。
離婚問題を専門に扱う事務所が多いこともメリットです。さまざまな事例を見ているため、今の状況を説明すれば、実績を生かした最適な提案を受けられるでしょう。
内容証明郵便の差出通知人が行政書士になっていれば、示談書の信頼性も高められます。行政書士が作成した示談書であることを相手が知れば、より強いプレッシャーを与えられるでしょう。
弁護士より費用を安く抑えられる
費用をより安く抑えられることも行政書士のメリットです。慰謝料問題は弁護士に相談することも可能ですが、行政書士なら、弁護士より費用が大幅に安くなります。
行政書士のできることが書面作成に限られる一方、弁護士なら書面作成以外に代理交渉も可能です。しかし直接交渉や内容証明での解決を図る場合は、書面のみプロに依頼すれば、交渉は自分だけでも十分に進められます。
初期の段階では費用が安くなる行政書士に相談し、話し合いで交渉がまとまらない場合、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
初期の不倫慰謝料問題は行政書士へ相談
不倫相手や浮気相手だけに慰謝料を請求する場合、最初は直接交渉や内容証明で請求するのが一般的です。より確実に慰謝料を獲得するためにも、やりとりの内容は示談書に記載しましょう。
不倫慰謝料問題に強い行政書士を探す場合は、一括で見積もりを集められる「ミツモア」を活用するのがおすすめです。行政書士から最適な提案を受けられる上、チャットによる直接相談もできます。