面会交流は離婚・別居などにより、離れて暮らす親と子どもが接する機会で、子どもが成長していく上で重要な役割を持っています。面会交流の基礎知識やトラブル回避の方法、調停を申し立てられたときの対応など、円満な面会交流のポイントを解説します。
面会交流とは?
子どもがいる夫婦が離婚する際、面会交流に関するルールを定めるのが一般的です。まずは面会交流の基本的な意味と、面会ルールの設定について解説します。
離婚・別居中の親と子どもが面会すること
面会交流とは子どもと別居中にある父母のどちらか一方が、子どもと会うことを意味します。夫婦間に何らかの問題があって別居に至ったとしても、子どもからすれば、どちらも親であることに変わりはありません。
そのため子どもが自分の親と交流を続けるのは、法律で権利として認められています。離婚時には親の都合ではなく、子どもの都合・意向を尊重しながら、さまざまなルール作りを進めていかなければなりません。
面会交流の基本的な進め方
面会交流に関するルールを作る際には、夫婦はいずれも「子どもの親」という立場を自覚し、子どもにとって最も良い方法を考えていくことが大切です。
一般的に面会交流のルール作りには、以下の三つの段階があります。
- 協議:夫婦間で話し合いを重ね、ルールを構築していく
- 調停:協議を重ねても双方の合意が困難な場合は、家庭裁判所に面会交流調停の申し立てを行う
- 裁判:第三者である家庭裁判所の調停委員を介しても、合意に至らない場合は、面会交流審判に移行し、裁判でルールが決められる
面会交流ルールには主に、交流前後の連絡方法や、面会の頻度・時間・場所に関する取り決めが含まれます。それぞれの家庭の事情によるものの、面会頻度は月1回程度、1回の面会時間は2~3時間程度が平均的なラインです。
面会交流を実施する期間は、親の監護が必要な成人までとするのが一般的です。成人年齢が引き下げられた2022年4月以降は、18歳までが実施対象となります。
面会交流に際して知っておくべき三つのポイント
法律の観点から面会交流ルールを定める際に、知っておくべきポイントを解説します。基本的な考え方や、面会交流を拒否するリスクについて確認しましょう。
「子どもの福祉」という考え方
法律で定められている面会交流は、子どもの権利です。民法第766条において、面会交流ルールの設定には「子どもの利益を最優先して考えなければならない」とされているためです。
ここでいう「子どもの利益」とは、「子どもの福祉」とほぼ同義であり、「全ての子どもたちは、心身ともに健やかに育成できる生活を保証されなければならない」という、児童福祉の理念にもとづいています。
そのため面会交流に関するトラブルが発生したり、ルール内容の是非を問う必要があったりする場合、基本的には「子どもの福祉」という基準を最優先に、判断・判決が下されます。
円滑に面会交流を進めるためには、「子どもの福祉」の考え方を基準に、ルールの設定をすることが大事です。
面会交流を拒否できるケース
面会交流は法律で定められた「子どもが親に会う権利」であるため、その申し入れに対して、原則拒否することはできません。
ただし以下のような例外に該当する場合は、拒否が認められます。
- 子どもが面会を拒否する
- 子どもが連れ去られる可能性がある
- 子どもが暴力・精神的苦痛などの虐待を加えられる可能性がある
- 面会相手が子どもに監護者(同居している親権者)の悪口を吹き込む・洗脳する
- 面会相手が精神疾患やギャンブル・アルコール依存症などを患っている
- 面会相手が子どもを不適切な場所へ連れていく
- 面会相手が子どもに金をせびる
上記以外でも「子どもの福祉」の考え方に準じ、子どもの心身の健全な育成において、悪影響を及ぼす恐れがあると考えられる場合は、面会交流を拒否することが可能です。
面会交流を拒否するリスクは?
面会交流は「子どもの福祉」を著しく害するケースを除き、基本的には拒否できません。
正当な理由がないまま一方的に面会交流のルールを破ったり、音信不通といった拒否行動を取ったりすることは、以下のようなリスクを招きます。
- 履行勧告:家庭裁判所よりルールを守るよう勧告される
- 間接強制:金銭的ペナルティーが発生する
- 親権変更:相手が変更申し立てをした場合、審判にかけられる
- 損害賠償請求:慰謝料の支払いを命じられる
いずれにせよ連絡に一切応じないといったように、面会交流権を著しく侵害するような行為は、監護者・子どもの双方にデメリットしか生まないので注意しましょう。
面会交流でのトラブル回避策
離婚時に双方が合意の上、面会交流に関する約束を交わしていたとしても、後々トラブルに発展してしまうケースは少なくありません。面会交流にまつわるトラブルを回避するための対策を、三つ解説していきます。
明確なルールを設定する
離婚・別居後も、双方が円満に面会交流を実施するためには、しっかりとルールを定めておくことが重要です。面会交流に関するルールとしては、以下の内容が代表的です。具体的な取り決め例とともに、押さえておきましょう。
- 定期的な面会交流の頻度・場所・時間・受け渡し場所:(例)月に一度、午前9時から午後2時まで、監護親の自宅で面会交流ができる
- 連絡方法:(例)原則として電話あるいはメールで行う
- 宿泊の可否:(例)子どもが12歳になった際、夏期休暇中に5日間の宿泊付きの面会交流を認める
- 学校行事・イベントへの参加可否:(例)入学式と卒業式に限り、子どもの学校行事に参加できるものとする
- プレゼントの可否:(例)子どもの誕生日に限り、プレゼントのやり取りができるものとする
- 祖父母との面会可否:(例)監護親が同席する場合のみ、祖父母の面会を認める
面会交流のルールを設定する際には、しっかりと夫婦間で協議を重ねるのはもちろん、合意事項を口約束ではなく、きちんと書面に残しておくことが大事です。
合意事項を書面化する際は、個人で作成する離婚協議書では法的な強制力がないため、協議書の内容をもとに「公正証書」を作成しておきましょう。公正証書とは公証人が作成する公文書で、法的な拘束力を持つのが特徴です。
離婚協議を行う時点で弁護士に依頼しておけば、公正証書の作成はもちろん、法律上のポイントを押さえながら、適正な条件で離婚手続きを進められます。
第三者機関を利用する
父母間に感情的な対立やDV、精神的虐待などの問題があり、当人同士で面会交流に関する協議を進めるのが難しい場合は、第三者機関の利用を検討しましょう。
第三者機関の形態としては、NPO法人の支援団体と、各自治体の支援という形が代表的です。
コミュニケーションを取るのが難しい父母の間に第三者機関が入り、面会交流の日程・場所などの連絡・調整から、面会交流当日の付き添いや子どもの送迎、受け渡しなどもしてくれます。
ただしNPO法人を含む民間の支援団体の場合、支援の内容によっては料金が発生します。依頼する場合は、料金と支援内容はもちろん、子どもの安全保証についても、しっかりと確認・検討することが大事です。
定期的に内容を見直す
面会交流に関するルールは、子どもの成長・意志によって変更が可能です。子どもが成長するにつれて、習い事や友達付き合いなどに割かれる時間が増えると考えられます。そのため離婚時に定めたルールでは、面会交流の実施が難しくなる場合があります。
また、監護者と非監護者のいずれかが再婚するタイミングにおいても、子どもの心身の安定を最優先に考慮すれば、面会交流のルールの見直しが必要となるでしょう。子どもの成長に伴い、柔軟にルールの変更をさせていくのが理想です。
子ども自身の意志が年齢とともに明確になり、面会交流に及ぼす影響力も、徐々に大きくなっていく点を考慮しなければいけません。
一般的に子どもが15歳以上になると、面会交流の審判において本人の意思・意見が必要となります。それ以前の10歳前後でも、最低限の意思表示が可能な年齢であるとして、実施の判断材料とされます。子どもの生活状況や意思を尊重した上で、定期的なルールの見直しや変更をすることが大事です。
面会交流を申し立てられたときの注意点
面会交流調停を申し立てられた場合は、どのように対応すればよいのでしょうか?監護者が有利な立場で調停を進めていくために、注意すべきポイントを解説します。
無視はしない
面会交流を無条件で拒否するのはもちろん、申し立てに対して一切無視することも、さまざまなリスクが付きまといます。メリットは一つもないので、無視はしないようにしましょう。
申し立てを無視し続けて調停への欠席が続くと、面会交流調停は不成立となります。不成立になると裁判官による審判が行われ、相手に有利な条件で、判決が下る可能性が高くなります。
どうしても相手に会いたくない場合であっても、まずは裁判所に連絡し、直接会うことなく調停を進められないか相談しましょう。
周囲を味方につける
面会交流のルールを有利な条件で決めるには、調停を担当する調停委員や、双方の主張を調査して報告書を作成する調査官に対し、好印象を与えることが重要です。
父母間の協議を仲裁し、適正な面会交流条件を策定するのが役割の調停委員に対して、非常識で無礼な言動は避けなければいけません。子どもの福祉を守るに値する親として、認められない可能性があるからです。
礼儀正しく、はっきりと自分の主張の正当性を伝えることで、調停委員や調査官に対して、親としても人間としても良い印象を与えられます。その結果、有利に調停を進められるようになるでしょう。
感情的にならない
調停委員や調査官に良い印象を与え、有利なルールの設定をするために、感情的になることは避けましょう。
面会交流調停においては、相手が一方的にでっち上げのような主張をしてくるケースも、決して少なくありません。その際に、売り言葉に買い言葉で感情的になってしまっては、調停は前に進まず、「子どもの親」としての品格も疑われる恐れがあります。
もし面会交流を拒否したいのであれば、その理由を裏付ける証拠とともに、自分の主張を論理的に伝えることが重要です。
いかなる状況であっても、冷静に対応ができるという点は、好印象・高評価につながります。調停相手だけではなく、調停委員や調査官に対しても、常に冷静に接するようにしましょう。
子どものことを考えた面会交流の形を考えよう
面会交流は子どもの福祉を守ることを最優先とした、子どものための権利です。
離婚・別居に至るまでに、さまざまな葛藤・不和が父母間で生じていたとしても、2人が子どもの親であることに変わりはありません。
子どもにとって心地よい面会交流のあり方は、千差万別です。子どもが成人するまでの貴重な時間を、どのように過ごすのが最良となるのか、しっかりと考えることが親としての責務です。子どもの事情を最優先に考慮した、面会交流の方法を考えましょう。