サネカズラとは
植物名 | サネカズラ |
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学名 | Kadsura japonica |
科名 / 属名 | マツブサ科サネカズラ属 |
分布 | 日本、中国南部、台湾 |
開花期 | 7月~8月 |
実がなる時期 | 10月~12月 |
花の色 | 白 |
特性 | 赤い実をつける、つる性の植物 |
サネカズラの栽培カレンダー
サネカズラは、自宅で育てる植物としてよく選ばれている品種です。まずはサネカズラの概要から見てみましょう。
美しい赤色が魅力的な実が特徴
サネカズラは日本をはじめ、台湾や中国南部に分布するつる性の植物です。国内では、西日本のエリアの山でその姿が多く見られます。
特徴的なのは秋になると実る、赤くて丸い果実です。ツヤツヤとしたなめらかな表面が輝きを放っています。実(さね)が目立つつる性の植物としてサネカズラ(実蔓)と名づけられたそうです。
同じような赤い実を付ける植物として有名なのがガマズミやスグリなどです。似ていますが、よくよく見ると実の大きさや付き方が違います。また花や開花時期なども異なります。それぞれの違いを理解すると街中を歩くのがより楽しくなるかもしれませんね。
サネカズラの実は食べられる?
サネカズラの実は、キイチゴのようで美味しそうに見えます。しかしサネカズラの実は口にすると渋みや苦み、えぐみが感じられるため、食用にはなりません。ただし、無毒なので食べることに問題はないです。
鳥や動物たちにとっても同様で、その実を好む生き物はほとんどいません。それゆえ外敵に食べられてしまうことも少なく、美しい姿を維持し続けられるのです。
花は白く可愛らしい
サネカズラの花は初夏に咲きはじめ、7~8月頃に見頃を迎えます。白い花びらを持ち、その奥にある雄しべは赤く染まっています。赤と白のコントラストがとても可愛らしい花ですね。
花のサイズはさほど大きくはないため、花としての存在感を強く主張するものではありません。奥ゆかしいたたずまいや控えめな雰囲気が、可憐さとして受け止められることが多いようです。そのような特徴から、愛らしい花として人気があります。
サネカズラの豆知識
サネカズラの別名や花言葉など、知っていたら少し自慢できる豆知識を紹介します。
サネカズラの別名とその由来
別称を「美男葛(ビナンカズラ)」といいます。つるから採取できる粘液を、かつて男性が整髪料として活用していたことに由来した呼び方です。
その他にも、サネカズラは生活のさまざまな場面で活用されていました。
例えば中国においては、漢方薬として重宝されていました。咳止めとしての効果が期待されていたようです。また枝の切り口から出る液は、傷口に塗る消毒薬としても使用されました。
花言葉は「再会」「好機をつかむ」
花言葉の一つである「再会」は、春には真っすぐ伸びるつるが夏になると絡み合うことに由来しています。
もう一つの花言葉は「好機をつかむ」です。赤く染まった実はポジティブな印象を与えることから、チャンスの到来を予期させるものと捉えられてきたようです。
万葉集・百人一首にも登場する
サネカズラはその美しい果実で古くから人々を惹きつけてきました。その証拠として『万葉集』や『百人一首』に登場します。ここで『百人一首』に登場するサネカズラの歌を紹介します。
名にし負はば 逢坂山のさねかづら 人に知られで くるよしもがな (藤原定方) |
「逢って共に寝るという名を持つ逢坂山のサネカズラをたぐり寄せるように、誰にも知られず、あなたの所に行く手段があったらいいのになあ。」
という歌です。サネカズラは小寝(さね=男女が一緒に寝ること)との掛詞として使われています。逢うことが困難な相手への切ない恋文ですね。
サネカズラに適した栽培環境
サネカズラを育てる際に、どのような環境が望ましいのでしょうか。適切な状態で育成してこそ、美しい花や実を見ることができます。元気に育てるための栽培環境について解説しましょう。
日当たりのよい場所で育てる
サネカズラを栽培するうえで最も大切なことは、日当たりのよい場所で栽培することです。1日のうちで、できるだけたくさんの日が当たる場所に植えましょう。半日陰でも成長しますが、毎日数時間は日光を当てることが望ましいです。
寒さに弱い点についても、よく理解しておくことが肝心です。1日のうちで日影となる時間が多く寒気に包まれる場所では、葉が赤く色づいてしまい、場合によっては落葉してしまうこともあります。なるべく暖かい場所で栽培しましょう。
土は水はけがよく保湿性のあるものを
サネカズラはできるだけ水はけがよく、かつ水持ちのよい、保湿性の高い土で栽培することが理想的です。そのようなコンディションを意識して、用土作りをしましょう。
家の庭で栽培したり鉢植えで育てたりする場合は、落ち葉や虫の死骸のおかげで養分が豊富な山間の土を基準に土づくりをすると上手に育てることができます。草花向けの培養土や小粒の赤玉土に、腐葉土を混ぜると、サネカズラ向きのよい土になります。
植え付けは春か秋に行う
植え付けは温暖さが感じられ、気候の安定した季節が適しているので、春もしくは秋に行いましょう。気温が高い夏場は根を傷付けてしまう可能性があります。また養分の少ない冬場もサネカズラに負担がかかってしまうため、植え付けに適した季節とはいえません。
地面に直接穴を掘って苗を植え付ける「地植え」を行う場合、穴を掘るサイズは根鉢よりもひと回りほど大きくしましょう。
植え付けを行う際、根鉢の土をきれいに全て取り除く必要はありません。腐った根以外はそのままの状態にしておき、堆肥や腐葉土と混ぜ合わせた土と一緒に植えましょう。
サネカズラの育て方
続いて、可憐な花を咲かせ、美しい実を付けるための育て方について解説します。正しい方法で栽培を楽しみましょう。
水やりは「鉢植え」の場合のみ必要
水やりの仕方は、「地植え」と「鉢植え」で異なります。それぞれの方法について知っておきましょう。
「地植え」は地面に直接穴を掘って苗を植え付ける方法です。この場合、根付いた後の水やりはほとんど必要なく、ひと夏に1~2回程度で十分です。ただし最初に植え付ける時は十分水をあげておきましょう。また夏場に猛暑が続き、あまりにも乾燥が気になる場合は、水やりをしましょう。
それに対して鉢に植えている「鉢植え」の場合は、乾燥に気を配ることが必要です。土の表面が乾いてしまったら、その都度水をあげましょう。土全体に水が行き渡り、底のトレーに水が漏れ出てくるくらいが適量です。ただし冬場はサネカズラの休眠時期にあたる季節なので、吸水する力が弱っています。水のあげすぎに注意してください。
追肥は「鉢植え」の場合のみ年に2回施す
植物の苗を植え付ける時などに事前に肥料を与えておくことを「元肥」といいます。それに対し、植物の成長に応じて追加で不足している肥料を足すことを「追肥」といいます。
「地植え」をする際は元肥が行われており、この状態から根付いてしまえばスムーズに成長するでしょう。そのため「地植え」の場合は、追肥する必要はほとんどありません。ただし日光をよく浴びさせること、冷気に当たりすぎないようにすることに注意を払いましょう。
一方、「鉢植え」は追肥が必要です。プランターの底から肥料成分が流れやすいため、春と秋で年に2回行いましょう。穏効性の固形肥料を、それぞれの時期に少しずつ与えます。
サネカズラの手入れ方法
かわいい花を咲かせ、実を付けるまでに育てるためには、こまめなメンテナンスが重要です。
つるを支柱などで誘引する
成長が著しい場合、伸びすぎるつるに悩むケースも出てくるでしょう。サネカズラのつるは伸びるスピードとは裏腹に、巻き付く力があまり強くないのが特徴です。
そのためつるを放っておくと、地面を這うようにあちらこちらに伸び進んでしまいます。対処方法としては、支柱を使ってつるを誘引する方法があります。麻ひもを使用するなどして、支柱にらせん状に絡むように誘引します。
その際、すっきりとした見た目になるように余分なつるは剪定し、必要なものだけを残すよう心掛けましょう。
2~3月に剪定で樹形を整える
剪定とは、形を整えたり成長を促進するために樹木の枝を切ることをいいます。サネカズラの栽培にも剪定は不可欠です。サネカズラの剪定に適した時期は2~3月です。冬越しの時期に合わせて不要な枝やつるを取り除きましょう。
枝を剪定する際は、長い枝を選んでカットします。短い枝は花を付ける性質があるため、残しておきましょう。
植え替えは1〜2年をめどに行う
何年も同じ鉢に植えていると枝や葉が貧弱になり、花や実ができなくなってしまいます。植物を長期間、順調に成長させるためには、植え替えを行って生育環境をリセットすることが大切です。
「地植え」では、植え替えの必要はほとんどありません。これに対して、「鉢植え」の場合や盆栽で仕立てる場合には、一定期間ごとに行う必要があります。
栽培を始めたばかりの時は根詰まりを防ぐためにも、1年に1回は植え替えをすることが重要です。ある程度希望のサイズになったら、毎年行う必要はなくなりますが、2年に1回は生育環境をリセットした方が良いでしょう。
注意すべき病害虫
植物を育てるにあたって注意すべきは、病害虫から植物を守ることです。サネカズラがかかりやすい病気や、つきやすい虫について解説します。
サネカズラがかかりやすい病気
サネカズラは、「うどんこ病」にかかるケースがあります。葉や茎の表面に、うどん粉のような白い粉状の異物がついてしまう病気です。うどんこ病にかかると、光合成が妨げられ、樹木の生育が阻まれてしまいます。そのため薬剤の塗布などで、できるだけ早めの対処が必要です。
「すす病」も、かかってしまいやすい病気のひとつです。黒っぽい、すすに似たものが葉の表面に現れます。多湿な環境で生じやすい病気で、植物全体の活力を奪ってしまいかねません。完治させにくい病気のため、黒くなった部分を取り除いて対処しましょう。
サネカズラにつく害虫
とても小さな「ハダニ」は、人の目に見えにくいため繁殖を招きやすい害虫です。体長が小さいながらも、群れをなして発生し、葉にダメージを与えます。布などで拭き取るだけで済む場合もありますが、しつこく発生するようなら、薬剤を使用した方がいいでしょう。
また「キクイムシ」にも警戒しましょう。キクイムシ科に属する害虫の総称で、国内で300種類以上が生存するといわれています。体長は数mmと小さいですが、一度害を被ると一気に広がってしまいます。専用の薬剤で駆除しましょう。
サネカズラの増やし方
サネカズラはかわいらしい花ときれいな実を付け、その見た目はとても華やかです。上手く育っているサネカズラを、さらに増やしていくための方法について解説しましょう。
「挿し木」で増やす方法
基本的な増やし方には「挿し木」があります。挿し木は株の一部を切り取り、発根させて増やす方法です。サネカズラを「挿し木」で増やすのに適した時期は、5~6月頃です。
剪定バサミを使い枝を10cm程度の長さに切り取り、水に数時間浸けた後「挿し木」用の土を入れた鉢や育苗ポットに挿しておきます。
根が出て苗がしっかり育つまでは、日光には直接当てず風の強くない場所に置いておきます。乾燥に注意し、水をこまめにあげましょう。
「取り木」で増やす方法
「取り木」も、サネカズラを増やすにはとても有効な手法です。枝の切り口から根を出す「挿し木」に対して、「取り木」は枝の途中で根を出させる方法です。この場合も5~6月頃に行うのが最適です。
「取り木」を行う際は前の年に育った枝を使用します。枝を20cm程切り、ナイフで枝の樹皮を切り込んで剥がします。そこに水で湿らせた水苔を巻き付け、その上をビニールで覆いヒモで固定しましょう。
直射日光を避け、日陰に置いておくと、しばらくすると発根します。時おり水苔に水を補充しつつ、根が伸びてきたら土へと植え付けます。
サネカズラを育てて美しい実を楽しもう
見た目がかわいい植物で庭を飾りたいと願う人は多いものです。サネカズラは、そのような人にぴったりな品種といえます。
比較的手入れが簡単なうえに、可憐な花やきれいな実を付けるため、幅広く支持されている植物です。上手に育てて、美しい姿を楽しみましょう。