樹形をきれいに整えたり、植物の成長を適切に促したりするためには剪定が重要です。小さめの植物であればハサミで剪定すればよいですが、幹の太い木の場合には剪定のこぎりを使いましょう。剪定のこぎりの使い方や種類、選び方のポイントなどを紹介します。
剪定のこぎりとは?
一般的な工具として使われている木材用のこぎりは、切断中にノコくずが目詰まりし、スムーズに木が切れない場合があります。
剪定のこぎりはこのような問題をクリアして、枝を切り落としやすい刃になっているのこぎりです。
アサリがあるものが多い
剪定のこぎりにはほとんどの場合「アサリ」が付いています。アサリとは刃が左右交互に外側に開き、ノコくずが詰まらないような工夫のことです。
また実際の刃の厚みよりも切り口が広くなることで木との摩擦を緩和し、スムーズに前後へ動かせるようになっています。
しかしアサリがあると切断面が粗くなってしまい、仕上がりがあまりよくなりません。そのためアサリをなくして刃に特殊加工を施し、切断面をなめらかにした商品も発売されています。
剪定用ののこぎりと言っても、メーカーによって仕様が異なるため、求めているニーズに合わせて商品を選びましょう。
竹用のこぎりもある
竹を剪定する場合には、通常の剪定のこぎりではなく、竹用のこぎりを使います。繊維の詰まり方が異なるため、竹が切りやすいように専用の工夫が施された商品です。
竹は繊維が頑丈なので通常ののこぎりでは刃が欠けてしまったり、挟まったまま動かしづらくなったりしてしまいます。
竹用のこぎりは刃先が薄く頑丈です。刃がほとんどこぼれることなくスムーズに切れます。また竹用のこぎりにはアサリがついてない商品が多めです。
剪定のこぎりの種類
剪定のこぎりにはいくつかの種類があります。それぞれ得意としているポイントが異なるため、剪定しようとしている樹木に合わせて選ぶとよいでしょう。
非折りたたみ型
オーソドックスな剪定のこぎりの形で、刃が真っ直ぐなものとカーブしているものの2種類があります。
折りたためないのでややかさばりますが、しっかり力が入るので太い枝を切り落とすのに向いています。十分な強度と丈夫さを持った商品が多いため、長く使用できるでしょう。
柄は滑りにくいよう工夫が施されているものがほとんどです。例えば木製の柄に籘を巻いてあったり、樹脂でコーティングがしてあったり、さまざまな工夫がされています。しっかりグリップできるので、力を入れてカットできます。
折りたたみ型
折りたためるタイプの剪定のこぎりは、柄の付け根からふたつに折れて、柄に刃を収められる仕様のものがほとんどです。そのため鞘(さや)は必要ありません。
収納時にかさばらないので持ち運びに便利です。脚立に登りサッと取り出すのに向いています。
しかし使用していると刃と柄の接続部分が摩耗して壊れることがあります。雨の日などタオルでしっかり拭かないと、さびて動かしづらくなる場合もあるでしょう。誤って折りたたむ際に指を挟んでしまうことも考えられます。
収納場所に困らない点やコンパクトに持ち運びやすいのが利点ですが、上記のようなデメリットもあるのが、折りたたみ型の特徴といえるでしょう。
ピストル型
ピストル型はゆるやかに刃がカーブして刃渡りも短めであるため、手軽に小枝を切るのに最適です。サイズも小さめにできており枝を片手で切り落としやすいので、高所作業や枝が混み合っているシーンに向いているでしょう。
滑り止めに樹脂がコーティングされたものもあり、グローブを着用したままでもがっしり握れます。
ピストル型なので握りやすいのがメリットですが、力が伝わりにくいのがデメリットです。太い枝を切るには非折りたたみ型に比べ、時間がかかってしまったり切れなかったりする場合があるでしょう。
刃で選ぶポイント
剪定のこぎりの刃は長いものから短いもの、カーブしているものやストレートなものまで多種多彩です。のこぎりの刃によって、使い心地にどのような違いがあるのか解説します。
刃の長さ
刃が長ければ1度枝に刃を入れて引くまでの間に、切り込みを入れる回数が増えて短時間で切りやすくなります。しかしあまりにも長すぎると、狭い場所では扱いづらく危険です。そのため刃の長さは、場所や枝の太さに合わせて選びましょう。
刃の長さは一般的に25〜45cm程度の範囲内に作られています。初心者は短めの刃の方が扱いやすいため、趣味で園芸を始めたばかりの人は、まず25cm程度の刃渡りを選んだ方がよいでしょう。
場所だけでなく、切断する植物によっても適した刃の長さは異なります。頑丈な繊維を持つものであれば長めの刃が切り落としやすく、先ほど解説したとおり、竹には専用ののこぎりが適しています。
目の荒さは3種類
剪定のこぎりには「荒目」「細目」「中目」と目の荒さが3種類あります。
荒目はノコくずをしっかりかき出しながら速く切り進められるため、太い枝や幹を切るのに最適です。逆に細めの枝は切るたびに引っかかるので向いてません。
細目は細い木を切り落とすことを得意とします。きれいな切り口に仕上がり木工細工などに効果を発揮します。太めの枝は刃が止まりやすいので荒目を使用した方がよいでしょう。
荒目と細目の中間に位置するのが中目です。万能目と呼ばれさまざまなシーンに向いています。1本持っておくと便利で、初心者が扱いやすい目といえるでしょう。
直刃と曲刃
刃に直刃と曲刃があるのは、切る対象が曲線か真っ直ぐかによってメリットが異なるからです。
枝のように丸みを帯びているのであれば曲刃が向いています。刃がカーブしているため1度に通せる刃の数が多くなり、効率的に切り落とせるのです。
平で真っ直ぐな木材を切るには、直刃が適しています。直刃はさまざまな用途に適用できるので、1本あると便利です。
切る対象がどのような形をしているかを考え、刃のタイプを選びましょう。
剪定のこぎりの使い方
剪定のこぎりを使用する際は、ただ力で切ればよいというわけではありません。下手な切り方をすると植物を枯らしてしまう原因にもなります。
ここからは正しい剪定のこぎりの使い方を学んでいきましょう。
太い枝の切り方
太い枝は力任せに切ってしまうと枝の重みで折れてしまい、幹まで皮が剥がれる可能性があります。これにより雑菌がむき出しの幹に侵入し、最悪の場合には枯れてしまうこともあるのです。
太い枝を切る際はしっかり利き手で刃を通し、空いてる片手で枝を支えます。最初は軽く刃を入れ、深くなったところで力強く引きましょう。
きれいに切るポイントは、最初に枝の付け根から少し先の下側に5cm程度の切り込みを入れることです。その切り込みより先5cmを上から切り落とします。残った部分は付け根に沿って切りましょう。
先に切り込みを入れておけば、切っている最中に皮が剥がれたとしても切り込みより先は傷が付きません。
手入れの方法
剪定のこぎりは定期的にメンテナンスしないと切れ味が悪くなってしまいます。使用した後はしっかり手入れしましょう。
木を切った後はノコくずが刃に残っている可能性があるので、ブラシで取り除きます。残しておくとさびの原因にもなるため、十分に落とすことが大切です。
また樹液が固まってヤニが付いてることもあります。水で落としてもよいですが、ヤニ取りスプレーを使うときれいに落とせて便利です。
これらを終えたら、刃に潤滑油やつばき油を塗り、紙や布で拭き取ります。鞘に入れるか新聞紙などで包み、刃に負担がかからないように収納しましょう。
折りたたみ型のおすすめ
手軽に庭の枝を切り落としたいのであれば、折りたたみ型ののこぎりが便利です。おすすめの折りたたみ型剪定のこぎりを紹介します。
ユーエム工業「シルキー ゴムボーイ 万能目」
刃の素材はハードクロムメッキを使用しているのでさびにくく、ヤニも付きづらい仕様です。耐摩耗性に優れており、切断時に重く感じることはほとんどないでしょう。
人間工学に基づいて作られた柄には高品質のゴムグリップが採用され、長時間使用しても疲れにくい設計です。また刃の交換が可能なので、切れ味が落ちても長く使用できます。
ケンオー「折込鋸PCグリップ」
柄に刃を収納できるため携帯性に優れています。折りたたんだ状態でロックをかけられるので持ち運び時も安全です。
荒目で作られており、太い枝をスムーズに切り落とせるでしょう。刃の素材は高炭素鋼を使用しているので頑丈で摩耗に強く、切断時はなめらかに動かせるのも特徴のひとつです。
樹脂製でできた柄は滑りにくく、グリップしやすいようになっています。さらに滑り止めとして小さな穴が無数に設けられているため、剪定中に手から刃物が滑り落ちにくいよう工夫されている点もポイントです。
高儀「シャークソー 替刃式」
サメの鋭い刃をイメージして作られた剪定のこぎりです。刃の角度は2段階から選択でき、低い位置にある枝から高い位置にある枝まで効率よく切断できます。
無電解メッキの仕上げを施しているので高い耐摩耗性を実現し、切れ味が長持ちやすく、刃こぼれが起きにくい仕様です。
仮に切れ味が悪くなっても刃を取り替えることが可能です。アサリ付き・アサリなしの2種類の刃があるので、両方の刃をそろえると目的に応じた使い方ができます。
柄には滑りにくいソフトグリップを採用しているため、手になじみやすいでしょう。
タジマ「ジーソー折込厚刃」
柄から刃にかけ全て黒色で統一されたスタイリッシュな剪定のこぎりです。独自のフッ素ブラック塗装がコーティングにより、ヤニが付きにくく、さびづらい特徴を持っています。
アサリ付きで刃の板厚が0.9mmと厚めにできているので、太い枝を切り落とす場合に最適なのこぎりといえるでしょう。刃の角度も2段階調整でき扱いやすくなっています。
柄はしっかり握れて滑りにくいエラストマー樹脂でできています。手の力をしっかり伝えやすく、作業効率に優れた商品です。
ピストル型のおすすめ
小枝を切り落としたり、絡まった枝を落としたりするのにも便利なのがピストル型の剪定のこぎりです。ここからはピストル型のおすすめ商品を紹介します。
ユーエム工業 「シルキー ズバット」
シルキーズバットはゆるやかにカーブした曲刃が枝を自然に巻き取り、楽にカットできるように工夫された商品です。刃が効率よく食い込むので、必要以上に力を入れずに使えます。
ピストル型なので握りやすく持ち運びも簡単です。付属の鞘はロックをかけられるため刃が落ちにくくなっています。さらに鞘の口にはローラーが付いており、出し入れがスムーズです。
グリップの内部まで刃が通っており直に力を伝えられます。アサリは付いていないため、切断面を美しく仕上げられるでしょう。刃の先端には特殊な焼き入れが施され、耐摩耗性も優れています。
コンヨ「大五郎 鞘付剪定鋸」
木製の柄と鞘でできた、昔ながらのデザインです。鞘は腰につり下げられるので携帯しやすくなっています。脚立に昇ったり片手が塞がっていたりする場面でも利用しやすいでしょう。
刃渡りは210・240・270mmから選択でき、特に270mmは長めにできているので太い枝を切り落とす場合でも効率よく作業できます。
刃は目詰まりしないよう工夫され、効率よくノコくずをかき出してくれます。ピストル型の柄がなよく手になじみ、刃に力を伝えやすいでしょう。
神沢精工株式会社「サムライ 騎士」
サムライ騎士はカーブした刃が自然に枝に食い込み、効率よく切り落とせる剪定のこぎりです。特殊な研磨機で磨きあげた摩擦抵抗の少ない刃を採用しています。
切り口を美しく仕上げられるアサリなしの商品なので、庭木を傷めにくく木工細工などの切断にも向いているでしょう。
柄を滑りづらいエラストマー樹脂でコーティングし、軍手をした状態でもしっかりグリップできる特徴があります。
刃を折りたためるので持ち運びやすい商品です。オートロック機能で簡単に刃を開閉できません。安心して使える剪定のこぎりでしょう。
アルス「カーブソー 生木剪定用鋸替刃式」
刃渡りが170mmなので狭い場所での使用や小枝を伐採するのに向いています。刃はゆるやかにカーブしているため効率よく刃を木に食い込ませられるでしょう。
刃の素材に高炭素鋼を採用しているので耐久性が高く頑丈です。切れ味が悪くなったら替え刃ですぐに取り換えられます。予備の刃を持っておけば長期間いつでも使用可能です。
柄をエラストマーグリップにしており手袋を着用した状態でも滑りづらくしっかり握れます。折りたたみ式なので携帯性に優れたのこぎりです。
また開閉しづらいストッパー付きなので安心して使用できます。
竹用のおすすめ
通常ののこぎりを竹の剪定に使用すると、刃がこぼれてしまったり、きれいにカットできなかったりします。しかし専用品を使えばスムーズに剪定可能です。おすすめの商品を紹介します。
ユーエム工業「シルキー 鞘入鋸 ゴムボーイ7」
繊維が頑丈な竹を鋭く切り込む細目のこぎりです。特殊な加工により縦・横・斜めどこからでも切断できようになっています。衝撃焼入により耐久性が強化され頑丈です。
柄はピストル型でがっしり握れるようになっており、カラビナを取り付けられる穴も付いています。これを利用してベルトに取り付ければ鞘ごと落下するのを防げるでしょう。
刃は鏡面研磨仕上げで、アサリは付いていません。なめらかな切り口に仕上がります。
また片手で鞘から抜き差ししやすいので、高所でも脚立につかまりながら安全に作業ができるでしょう。
角利産業「スーパー技工 替刃式のこぎり」
竹の横びきに特化した細目の刃を持つのこぎりです。永久的な切れ味を持続させる衝撃焼入が施され刃こぼれしにくい特徴があります。
替え刃は6種類あり竹専用の刃だけでなく木材や合金に適した刃も取り替え可能です。刃の交換は工具やネジ回しなど一切いらないため、ワンタッチで手軽に安全に取り換えられます。
便利な収納ケースも付いていますが本体だけでなく替え刃を3枚収納できるので、これ一本で万能のこぎりとして使用できるでしょう。
神沢精工株式会社「サムライ 竹伐採用のこぎり」
竹だけでなく乾燥木材や細い枝などにも効果を発揮します。耐久性が高く頑丈な刃になっているため長く使用できるでしょう。
一般的なのこぎりで竹を斜めに切ろうとすると横滑りしてしまいます。しかしサムライ竹伐採用のこぎりは竹の表皮に合わせて特殊な刃を用いているので、斜め切りしてもしっかり切れるのです。
太い枝は剪定のこぎりで
剪定のこぎりは通常ののこぎりと異なり、生木を切り落とすのに適したのこぎりです。楽に剪定できるように、刃の目や材質だけでなく、刃の形やグリップにも工夫が施されています。
どの剪定のこぎりにしたらよいか迷ったら、まずは「刃の目」「アサリの有無」「刃の長さ」の3つに着目して選ぶとよいでしょう。
例えば小枝を落とす程度であれば、荒目でアサリがついた長いのこぎりは使いにくいです。コンパクトなサイズの使いやすいものが適しています。逆に太い幹を剪定したい場合に、細目でアサリなしの小さいのこぎりでは刃が立ちません。
選ぶときには、どの植物に使うのか具体的にイメージしてから購入すると失敗を減らせるでしょう。