「耐震リフォームを検討しているけど、どれくらい費用がかかるか分からない」。耐震リフォームは普通のリフォームとは違うので、どんなことをやって・何にいくらかかるのかが分かりにくいですよね。
リフォーム工事前に「耐震診断」や「耐震補強設計」などが必要になり、それらにも費用がかかります。もちろんメインとなる「耐震補強工事」にもお金がかかりますが、築年数や坪数・家の状態によって100万円以上差が出ることも。
そこでこの記事では、耐震リフォームに必要な工事や作業を含めた費用相場を解説していきます。事例を紹介してイメージしやすく、かつ費用をできる限り抑える方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
耐震リフォームにかかる費用相場は120~200万円
それでは具体的な耐震リフォームの内容とその費用についてご紹介します。
耐震リフォームには以下のような費用がかかります。
- 耐震診断(耐震リフォームが必要かどうかの調査)
- 耐震補強設計(どのように工事をして耐震性を上げるのかの設計)
- 耐震補強工事(実際の工事)
順番に見ていきましょう。
①耐震診断:5~20万円
耐震リフォームで最初にすることは「耐震診断」です。耐震診断にかかる費用は5~20万円です。主に旧耐震基準(1981年5月以前)で建てられた建物を、新耐震基準と照らし合わせたうえで耐震性があるかどうかを診断。木造建築物においては2000年にも建築基準法が改正されているので、これを基準として耐震診断を行います。
②耐震補強設計:15~30万円
そして耐震診断をしたあとに補強が必要という結果が出たとき「耐震補強設計」を行います。耐震補強設計にかかる費用は15~30万円です。ここで耐震リフォームにかかる大体の費用と工期が分かるはずです。
以下は木造住宅の耐震診断と耐震補強設計の費用相場です。
耐震診断 | 5~20万円 |
耐震補強設計 | 15~30万円
(~40坪くらいの広さ・図面ありの場合) |
例 | 在来軸組工法(主流な工法)・2階建て・36坪くらいの広さで20~50万円が目安 |
耐震診断・耐震補強設計の費用は構造や広さによって異なります。また図面がない場合は、家の間取りを図面に書き起こさなければいけません。その費用でプラス数万円かかるので注意しましょう。
業者によって数万円から耐震診断を行ってくれるところもあります。また自治体で簡易的な無料の耐震診断を実施しているところもあるので、確認してみましょう。
③耐震補強工事:100~150万円未満
耐震診断と耐震補強設計が終わったら、いよいよ耐震補強工事に入ります。
日本建築防災協会の調べによると、木造住宅の耐震リフォームの相場は「100~150万円未満」が最も多いとされています。調査した338件のうち82件がこの金額でリフォームをしていました。全体で見ると約半数の工事が200万円以下で行われているので、目安にしてみてください。
耐震診断・耐震補強設計と合わせると総額120~200万円かかることが多いというわけですね。そこまで大掛かりでないリフォームなら、少なくとも120万円程度用意しておけばOK。自治体の補助も受けつつ耐震リフォームをすることができるでしょう。
ちなみに具体的な工事内容に関しては、記事中盤の「木造建築物の耐震リフォーム内容と費用の内訳」で解説しています。
築年数や広さによって耐震リフォーム費用は大きく変わる
一般的に、築年数が古く広い建物の場合は耐震リフォーム費用が高くなる傾向にあります。以下の表を参考に、お住まいの建物と照らし合わせて大体の費用を出してみてくださいね。
【木造住宅の築年数・1階床面積でクロス集計した耐震補強工事費用の平均額】
1階床面積 | 60㎡未満 | 60~80㎡未満 | 80㎡以上 | 全体 |
築年数 | 補強工事平均額 | |||
築19年以下 | 約95万円 | 約94万円 | 約96万円 | 約95万円 |
築20~29年 | 約120万円 | 約130万円 | 約150万円 | 約131万円 |
築30~39年 | 約155万円 | 約160万円 | 約196万円 | 約170万円 |
築40年以上 | 約130万円 | 約200万円 | 約254万円 | 約190万円 |
※木造以外の住宅の場合、費用相場を確認することは難しいのでリフォーム業者に相談してみてください。
数百万円の費用を出すことができなくても、部分的な耐震リフォームで費用を抑え安全を確保することも可能です。一度業者に依頼して現地調査をしてもらい、予算内に収まるかどうか相談してみることをおすすめします。
耐震リフォームの費用は業者によっても異なります。そのため適正価格で納得のいく工事をしてもらうには、複数の業者から見積もりを取って比較するのがおすすめ。1社だけの見積もりだと、それが高すぎる/安すぎる場合に気づかないこともあるからです。
とはいえ複数業者から見積もりを取るのは大変なので、ぜひミツモアを利用してみてください。ミツモアは簡単な質問に答えるだけで、複数の業者が無料で見積もり(仮)を出してくれるサービスです。工事内容や費用・オプション・保証内容などを簡単に比較でき、より最適なところを選べますよ。
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築40年以上の建物は200万円以上かかることも
耐震リフォームが必要となる可能性が高い建物は「旧耐震基準」で建てられた建物です。
旧耐震基準とは1981年5月以前に建築確認を受けた建物(つまり築40年以上)で、震度5程度の揺れで建物が倒壊しないことを想定した設計とされています。
旧耐震基準の建物を耐震リフォームするとなると、平均して200万円ほどの費用が必要になるでしょう(一般的な木造住宅の場合)。
旧耐震基準の建物であれば補助金の対象となる可能性が高いです。手が届かない金額だと思っても諦めず、一度自治体に相談してみると良いですよ。
また鉄骨造・鉄筋コンクリート造などは丈夫というイメージがあると思いますが、構造に関係なく旧耐震基準の建物は一度耐震診断を受けてみることをおすすめします。
築20年以上経っている木造住宅は耐震診断点検を推奨
また「新耐震基準」が採用されている1981年6月以降に建てられた建物でも、一概に安心とは言えません。
特に木造住宅ではシロアリや雨漏りの被害により構造体が腐食して、新築当初の耐震性が保たれていない可能性があります。そのため築20年以上経っている木造住宅にお住まいの方は、一度耐震診断などで点検を受けてみるのもいいかもしれません。
そのまま放っておいて著しい劣化が起きてからリフォームするよりも、費用が安く済むこともあります。
築39年未満の木造住宅なら、だいたい100万円~180万円程度で耐震リフォームが可能です。同時に劣化部分のメンテナンスも行うと、安全に長く住むことができるようになりますよ。
木造建築物の耐震リフォーム内容と費用の内訳
木造建築物の耐震リフォーム内容と費用相場についてご紹介します。
※木造以外の住宅の場合、費用相場を確認することは難しいのでリフォーム業者に相談してみてください。
基本的には以下の4つの箇所を補強(取り替え)します。
- 基礎部分
- 接合部
- 壁
- 屋根
※どのような工事をするかは調査してもらわないと分からないので、参考程度にしてください。
①基礎の補強:30~40万円
基礎は建物を支える大切な部分です。旧耐震基準の住宅は基礎に鉄筋が入っていないことも多く、さらに経年劣化によってひび割れが発生していることもあるので補強が必要。
鉄筋が入っていない基礎や強度不足の基礎を補強するための工事は、30~40万円が目安です。平家は基礎の面積が大きいので、割高になる傾向があります。
さらに布基礎(地面に逆T字型にコンクリートを打ち込んだ基礎)から、耐震性が高いと言われているベタ基礎へ改修する場合は、スケルトンリフォームという特殊な工事が必要。費用は100万~300万円程度かかります。内装を全て剥がすので部屋全体のリフォームと同時に行うと良いでしょう。
ひび割れがある場合は補強のため1ヵ所につき1~2万円必要です。劣化状況にもよりますが合計10万円程度で収まることが多いでしょう。家を長持ちさせるためにも必要な工事です。
このように基礎の耐震補強は、数十万円~数百万円と費用の幅が広い工事です。またそもそも難しくてあまりよく理解できないですよね。どのような基礎の補強をするかは、業者と相談して予算内に収まるよう検討しましょう。
②接合部の補強:1ヵ所補強に数千円~数万円
部材と部材をつなぐ接合部は、旧耐震基準のものだと釘で接合されており、耐震性が低い可能性があります。そのため耐震金物などを新しく設置して補強する必要があるのです。
また2000年以前(建築基準法の改正前)に建てられた住宅も、接合部の強度が十分でないこともあります。築20年以上の住宅にお住まいの方は、接合部がしっかりと金物で補強されているか確認をしてもらった方が良いでしょう。
柱と梁・筋交いの接合部を1ヵ所補強するのに数千円~数万円、さらに壁の補修などが必要なので、10ヵ所の補強で20~40万円ほどかかります。
③壁の補強:外壁なら13~15万円・内壁なら9~12万円
耐力壁(耐震性のある壁)が少ない建物では壁の補強が必要になります。筋交いを入れたり、構造用合板で補強したりしていきます。
910cmの壁1枚で、外壁なら13~15万円・内壁なら9~12万円ほどで工事が可能です。
広く窓を取っている場合には、窓をふさいで耐震壁を設置する場合があります。この場合、採光や通風が確保できなくなるのが欠点です。室内の住環境も考慮したうえで、どこに壁を作るのか相談しましょう。
④屋根の葺き替え(ふきかえ)・軽量化:屋根1㎡につき1~2万円
瓦の屋根は耐久性があるのですが、重いので構造体に負荷がかかります。そのため軽量化された「防災瓦」や「ガルバリウム鋼板」「スレート」と呼ばれる屋根に葺き替える(ふきかえる)工事を行うことで、耐震性を上げることができるのです。
屋根1㎡につき1~2万円程度なので、30坪(屋根面積約60㎡)の住宅なら60~120万円程で工事が可能となります。
古い建物は屋根や屋根内部の劣化により気づかないうちに雨漏りしていることもあるため、その劣化部分の補修も同時にしてもらいましょう。
【耐震リフォームが安くなる】補助金制度を要確認
築年数が古い木造建築物は、自治体の補助金制度を受けられることがあります。
助成金・補助金の補助額や細かい点は自治体によって異なりますが、対象の建物は以下のような条件であることが多いです。
「1981年5月以前に建築確認が行われた木造住宅に、自ら居住している」
例として、東京都大田区の耐震化助成事業についてご紹介します。
対象となる建物 | ・大田区内にある昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手した木造建築物
・木造2階建て以下の住宅(戸建て、長屋、共同住宅、店舗併用住宅) |
助成金・補助金の金額など | 【耐震診断の助成金】
・区登録木造診断士の場合→助成額12万~16万円 ・区登録木造診断士以外の建築士の場合→助成限度額10万円(実際にかかった費用の2/3) 【耐震改修設計の助成金】 助成限度額15万円(実際にかかった費用の2/3) 【耐震改修工事の助成金】 ・前面道路が4m以上の場合、もしくは4m未満の道路を拡幅する場合/拡幅済みの場合→限度額150万円 ・前面道路が4m未満で拡幅をしない場合→限度額100万円 |
100万円前後を補助金や助成金としてもらえるところが全国的に多いようです。旧耐震基準の建物になると100~200万円以上費用がかかってくることが多いですし、半額以上負担してもらえるとありがたいですよね。
自己負担額が大きく変わってくるので申請を忘れないようにしましょう。
補助金について難しいと思ったら、申請までサポートしてくれるリフォーム業者をミツモアで探してみてください。
【知らないと損?】耐震リフォームをすることで受けられる控除・減税制度
耐震リフォームそのものを安くすること以外にも、出費を抑えられる制度が存在します。
申告や申請が必要になるのでぜひ確認してみてください。
所得税の特別控除:25万円を上限に所得税が控除
耐震リフォームをした年は、所得税の特別控除による減税が受けられる場合があります。要件を満たした耐震改修を行い確定申告をするだけで、25万円を上限に所得税が控除されます。
対象になるのは「1981年5月31日以前に建てられた住宅において、一定の耐震リフォームを行なった場合」。控除額は「住宅耐震改修に係る耐震工事の標準的な費用」の額の10%です。
工事が完了した年に確定申告が必要なので、忘れずに行うようにしましょう。
固定資産税の減税:工事完了後3ヶ月以内の申請必須
固定資産税においては、耐震リフォームが完了した翌年の税額が減税されます。
延床面積120㎡相当分までとし、固定資産税が1/2になるのです。
主な要件としては「1981年5月31日以前に建てられた住宅において、耐震リフォームにかかった費用が50万円を超えるもので一定の耐震リフォームを行なった場合」が対象になります。
工事完了後3ヶ月以内に申請が必要なので忘れずに行いましょう。
【木造】耐震リフォームの事例とかかった費用を紹介
実際に耐震リフォームをした木造住宅の実例を5つご紹介します。
事例①:基礎の打ち増しで耐震性アップ
鉄筋が入っていないタイプの古い基礎の耐震リフォームです。
- リフォーム内容:基礎の打ち増し・劣化部分の改善
- かかった費用:150万円(うち補助金40万円)
- 築年数:築42年
- 広さ:約33坪
- 評点:0.55から0.78
※評点とは
耐震診断をしたときに、構造計算によって割り出される数値のことです。数字が小さくなる(特に0.7以下の建物)ほど倒壊する可能性が高く、1.0に近いほど倒壊しにくい丈夫な建物となります。
事例②:屋根の葺き替えで構造体への負担を減らす
雨漏りの補修も兼ねた、瓦屋根から軽い金属製の屋根への耐震リフォームです。屋根が軽くなることで柱や壁などへの負担が減り、地震に強くなります。
- リフォーム内容:屋根を瓦から金属製の屋根へ葺き替えて軽量化・基礎ひび割れの補修
- かかった費用:114万円(うち補助金50万円)
- 築年数:築45年
- 広さ:約20坪(平家)
- 評点:0.83から1.24
事例③:屋根の軽量化と壁の補強による耐震リフォーム
屋根を葺き替えて軽量化し壁の補強も行なった例です。壁補強は1階で11ヵ所、2階で4ヵ所行っています。
- リフォーム内容:屋根の軽量化と壁の補強
- かかった費用:270万円
- 築年数:築53年
- 広さ:約18坪(2階建て)
- 評点:0.53から1.01
事例④:簡易補強で低予算にて耐震リフォーム
耐震リフォーム前が評点が0.21ととても耐震性が低い建物でした。評点1.0まで引き上げるには大きな費用がかかってしまうため、部屋のリフォームはせずできる範囲での耐震補強を行いました。
- リフォーム内容:金物による接合部の補強・構造用合板による補強
- かかった費用:200万円
- 築年数:築42年
- 広さ:約36坪(2階建て)
- 評点:0.21から0.86
事例⑤:耐震シェルターを設置して安心して眠れる家に
建物全体の耐震リフォームはせずに、寝室に耐震シェルターを設置して安全を確保した例です。
- リフォーム内容:耐震シェルターの設置
- かかった費用:111万円(うち補助金40万円)
- 築年数:築42年
- 広さ:約36坪
- 評点:0.36から0.36
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