かわいがっていた大切なペットが亡くなってしまったとき、
「少しでも長く一緒にいて、時間をかけてお別れしたい」
「葬儀屋の予約がとれず、火葬まで時間が空いてしまう」
といった理由で、ご遺体を数日間安置しておく必要が出てくるかもしれません。
ペットとの最後のお別れまできれいな姿で安置する方法や、遺体を保存できる期間の目安について解説します。
ペットの遺体の保存期間は1~3日が目安
命を終えたペットの遺体を保存できる期間は、夏場だと1~2日、冬場で2~3日が目安です。
気温が高いと遺体の腐敗が進みやすくなります。遺体を保存している間、夏は冷房を常につけた状態に、冬はなるべく暖房の温度を上げないようにしましょう。
少しでも長く状態を保つには、遺体を冷やすために保冷剤やドライアイスを用意しましょう。体が小さな小動物ほど冷やした状態を保ちやすいので、上記よりも長く保存できるかもしれません。
遺体の腐敗が進むと、悪臭や虫の発生につながってしまいます。旅立つペットも飼い主も、つらい思いをしてしまうでしょう。1日でも長く一緒にいたいかもしれませんが、なるべく早めに葬儀を行うことをおすすめします。
ペットの遺体の安置に必要なもの
ペットの遺体を安置するために必要なものを紹介します。
- ティッシュや脱脂綿・コットン
- ブラシ
- 棺や箱
- ペットシーツ・新聞紙・ビニール
- バスタオル・シーツ
- 保冷剤
遺体を納めるための棺や箱は、ペットよりもひと回り大きいものにしましょう。保冷を考えると発泡スチロールが向いていますが、専用の棺やダンボールでも構いません。ペットシーツ・新聞紙・ビニール・バスタオルなどは、体液が漏れ出たときや冷却するときの水濡れ対策として、棺内に敷きます。
またバスタオルやシーツは、ペットの遺体を包んであげる際に役立ちます。ペットが生前気に入っていたものがある場合は、それらを使用するとよいでしょう。
保冷剤は遺体の腐敗を防ぐために必須です。氷は保冷剤を手に入れるまでのつなぎとしては使えますが、すぐに溶けてしまう上に水濡れリスクが高いのでおすすめしません。
ペットの遺体を安置する手順
ペットの遺体を短期間だけ保存する場合の、ケア方法と保冷方法を紹介します。愛するペットをきれいな姿にして、お別れの時間まで穏やかに過ごしましょう。
手足を優しくたたんで丸まっている体勢にする
ペットが亡くなって2時間ほど経つと死後硬直が始まります。手足が伸びた状態だと、棺に収まらなくなってしまうので、死後硬直が始まる前に、手足を胸のほうにたたんで姿勢を整えてあげましょう。
眠っているような自然な体勢をイメージし、遺体の手足を優しく内側に曲げ、丸まっている体勢にします。口が開いているときはそっと閉じ、まぶたが開いている場合は優しくなでて、閉じてあげましょう。
死後硬直が始まっている場合は、無理に曲げる必要はありません。気温の影響や個体差で異なりますが、半日程度で死後硬直が解けるので、その後に処置しましょう。
体を清浄し毛並みを整える
ペットが死んでしまった後、出血や排せつ物など、体液が出てくることがあります。時間の経過により落ち着く現象なので、遺体が汚れてしまわないように、ティッシュや脱脂綿で都度拭き取りましょう。量が多いときは、その部位に脱脂綿やコットンを詰める処置が必要です。
死後硬直で身体が硬くなっている間はなるべく触らないようにしましょう。死後硬直が解けたら、雑菌の繁殖を防ぐために、お湯で濡らしたガーゼや、柔らかいタオルで全身を拭いて汚れを取ります。
なおガーゼやタオルにお湯を含ませすぎてしまうと、遺体が濡れてしまい、腐敗が進行する原因にもなり得ます。濡らしすぎないように注意しましょう。
きれいに拭き取った後は、生前使っていたブラシを軽く当て、毛並みを整えます。
棺となる箱に遺体を納める
遺体を納める前に、箱に体液がしみ出すのを防ぐ処置を施します。まずは箱の中にペットシーツ・新聞紙・ビニールなどを敷きます。大きめのバスタオルやシーツでもよいですが、水分を効率よく吸い取るペットシーツの方が、遺体を汚しにくいでしょう。
薄いタオルやガーゼで包んだ保冷剤をあらかじめ箱の中に並べておくと、ペットの遺体を効率よく冷やせます。特に夏場には必要な処置です。
肌寒く感じる程度の室温で、直射日光の当たらない場所に棺を安置します。なお夏場にクーラーのきいた部屋に安置する場合は、棺に風が直接当たらないようにしましょう。
身体の周りに保冷剤を当ててしっかり冷やす
遺体が傷むのを遅らせ、腐敗を防ぐために、保冷剤や氷パックでしっかり冷やす必要があります。
薄いタオルやガーゼで、保冷剤や氷パックを包み、頭・首元・胸・おなか・背中に当てます。特に頭の周辺や、おなかは腐敗しやすい場所といわれているので、保冷剤を多めに設置しましょう。
目安として氷は約3時間、保冷剤は約6時間で効果が低下していきます。氷は保冷剤が準備できるまでのつなぎと考え、保冷剤が溶けてきたら新しいものに交換し、くり返し凍らせて使います。
保冷処置をしたペットの遺体を、きれいなバスタオルやシーツで包みましょう。包んでおくことで保冷効果が高まります。
おもちゃ・おやつなどを供える
棺の中にペットが生前気に入っていたおもちゃや、おやつなどを供えると、最後の時間をやすらかに過ごせるでしょう。
お供え品としておすすめなのは、保冷が不要なおやつや、プラスチック・ゴム製ではないおもちゃ・生花です。
プラスチック・ゴム製・金属製のものや造花などは、火葬の際に棺に入れるのを禁止している業者もいます。葬儀業者によって、棺の中に入れられるものに違いがあるので、事前に必ず確認し、NGとされるものは避けましょう。
ペットの遺体を4日以上保存したい場合の対処法
近い日程でペットの葬儀業者の予約が取れない、または一緒に見送りたい家族がそろうまでに時間がかかるなど、ペットの遺体を長期間保存したいケースもあるでしょう。
ドライアイスを使用すれば、夏場は4~7日程度、冬場なら1週間~10日程度は遺体を安置できます。
ドライアイスを交換する頻度の目安は2日に1回ですが、気温や室温によって取り換え頻度を調整します。また冷却性を高めるために、発泡スチロールのような保冷性の高い箱を、棺にするとよいでしょう。
ペットの遺体に直接ドライアイスが触れてしまうと、損傷につながってしまいます。タオルでドライアイスを包んで、添えるように置きましょう。
なおペットの大きさによって、ドライアイスの必要量は変わります。ドライアイスは気化し続けるため、切らさない量を用意しておきます。3日以上保存する場合の目安として、10~20kg程度が必要です。
ドライアイスを販売している業者から購入することになるので、購入目的を伝えると、適切な量を教えてもらえるでしょう。
ドライアイスを扱うときの注意点
ドライアイスは二酸化炭素を固体にしたもので、約-79℃です。素手で触ると凍傷になる恐れがあるため、必ず軍手や手袋を着用して扱いましょう。
棺に入れておくと、中に二酸化炭素が充満していきます。高濃度の二酸化炭素を吸ってしまうと、中毒になる危険性があります。ドライアイスでペットの遺体を保冷しているときは、棺に顔を近づけるのは避けましょう。
また部屋に二酸化炭素が充満しないように、遺体を安置している部屋の換気を十分に行います。
なお購入したドライアイスが、紙状のドライアイスパックに巻かれている場合は、そのまま使用する方がおすすめです。ドライアイスパックがタオルの代わりになり、保冷効果の維持・遺体への接触を防いでくれます。
小さいペットの遺体なら冷凍保存も可能
ハムスターや小鳥など、家庭用の冷凍庫に入る大きさのペットなら、遺体を冷凍保存することも可能です。
小型のペットの遺体を冷凍保存する際、まずは遺体をタオルで包みます。厚手のビニール袋を二重にしたものに入れ、遺体が出てしまわないように、しっかりと袋の口を縛りましょう。小型のペットの遺体が入る大きさの容器があるなら、ビニール袋の代わりに利用できます。その際もふたをしっかりと閉じます。
ただしペットの身体は細菌を持っている可能性があるので、冷凍庫内に保管している他の食品と接触しないように注意が必要です。どうしても長期間保存したい場合以外はおすすめしません。
遺体を正しく安置してきれいな姿でお見送りしよう
ペットの遺体を保存できる期間は、季節によって異なりますが、通常1~3日程度です。
大切なペットとのお別れはつらいですが、遺体を長期間そばに置いておくのはおすすめしません。きれいに手入れをして、遺体が傷んでしまう前にかわいらしい姿のまま見送ってあげましょう。
監修者:谷口史奈
獣医師
猫の診療室モモ 院長
安達文化学園 専門学校ビジョナリーアーツ 非常勤講師
動物病院に3年、猫専門病院に2年半勤務したのち、2016年8月に猫専門病院「猫の診療室モモ」を開院。
主な監修書籍
- 「NyAERA 2023」(朝日新聞出版)2023年2月発行
- 「ネコお得技大全2022 完全版」(晋遊舎)2022年5月発行
- 「ネコとの新生活完全ガイド」(晋遊舎)2022年4月発行
- 「ネコDK the Best 2021-22」(晋遊舎)2021年11月発行
など多数
コメント
たくさんの楽しい時間をくれたペットとのお別れは、出来る限り笑顔で送り出してあげたいものですね。いざという時に慌てないように、また、大切なペットとの別れが辛い思い出になってしまわないように、ひととおりの心構えがあると安心です。なお、ご遺体のことで困った時は動物病院にもご相談頂けます。