現在自治体から要介護・要支援認定を受けている方や、介護保険被保険者証を持っている65歳以上の方は、引越し時に介護保険の手続きが必要になることがあります。
状況によって手続きの内容が異なるので、自分や家族がしなければならない手続きを把握しましょう。
引越し時は介護保険の手続きが必要
引越しをしたときの介護保険の手続きは、個人の状況や引越し先によって異なります。まずは、自分に介護保険の手続きが必要となるのか確認していきましょう。
介護保険の手続きが必要になる人
引越したときに介護保険の手続きが必要かどうか、以下の表で確認してみましょう。
同じ市区町村に引っ越す場合
要介護・要支援認定を受けている | 手続き不要 |
---|---|
介護保険被保険者証を持っている | 転居届の提出・被保険者証の住所変更が必要 |
介護保険は市区町村単位での加入なので、同じ市区町村内で引っ越す場合は特段の手続き不要です。
転居届の提出と同時に被保険者証の住所変更だけ行いましょう。
異なる市区町村に引っ越す場合
要介護・要支援認定を受けている | 認定を引き継ぐ手続きが必要 |
---|---|
介護保険被保険者証を持っている | 転出元への返却・転入先からの再交付が必要 |
手続きが正しく行われないと、行政によるサービスを受けられないことがあります。特に今現在介護サービスを利用している人は、引越しの際の手続き内容や流れを把握しておくことが大切です。
引越し先によって手続き内容が変わる
介護保険の手続き方法は、引越し先によって次の3パターンに分かれます。
- 引越し先が同じ市区町村内
- 引越し先が現住所の都道府県外、または市区町村外
- 住所地特例対象の介護施設
介護保険制度は市区町村ごとに運営されているため、引越し先が同じ市区町村内かそれ以外かによって、必要な手続き内容が異なります。特定の介護施設への入居の場合は、また違う手続きが必要です。
どのような手続きをしなければいけないのか正確に知るためにも、まずは自分がどれに当てはまるのかチェックしておくとよいでしょう。
同じ市区町村内で引越しする場合の手続き
引越し先の住所地が同じ市区町村内の場合、介護・医療関係で必要な手続きは多くありません。簡単に済むとはいえ手続きは必須であるため、確実に届出をしておきましょう。
被保険者の転居届を提出する
同じ市区町村に引越しする場合は自治体も変わらないため、役所への転出届や転入届は必要ありません。しかし、住所地が変わることを知らせる『転居届』を提出する必要があります。
転居届は、介護保険に関わりのない人でも必須の届出です。住民基本台帳法の第23条により、転居届の提出期限は引越し当日から14日以内と決められています。
転居届を出し忘れていると、5万円以下の罰金が科されることがあります。不要な出費を増やさないよう、必ず期限内に転居届を提出しましょう。
なお転居届は主に以下の書類があれば、代理人による提出も可能です。
- 転居届
- 委任状
- 代理人の本人確認書類
- 代理人の印鑑
必要書類は自治体によって異なるため、手続きに行く前に確認しておくことをおすすめします。
介護保険被保険者証の住所を変更する
転居届を提出したら、介護保険被保険者証に記載の住所も変更しなければいけません。自治体の介護保険担当課で手続きができるため、転居届を提出したその足で手続きを済ませるとよいでしょう。
一般的な必要書類は、介護保険被保険者証と被保険者の本人確認書類です。代理人が手続きを行う場合は、代理人の本人確認書類と委任状も用意します。
自治体によっては、転居届を出せば、介護保険被保険者証の手続きを別途で行わなくてもよい場合もあります。事前に電話で確認するか、転居届を出す際に介護保険被保険者証の手続きが必要かどうか窓口で質問してみましょう。
多くの自治体では、新しい介護保険被保険者証は後日に郵送されます。ただし、転居届を提出したその日に手渡しで受け取れるケースもあるようです。いつ受け取れるのかは、それぞれの自治体の介護保険課での確認が必要です。
別の市区町村へ引越しする場合の手続き
要介護・要支援認定を受けている場合
要介護・要支援認定を受けている人が、引越し前の住所と別の市区町村へ引越しする場合は、転出元・転出先の両方で受給資格証明書の手続きをしましょう。
転出元で受給資格証明書を取得する
受給資格証明書とは、被保険者が要介護・要支援を受けられる状態であることを証明するものです。要介護認定を引越し先で引き継ぐために、まずは転出元で受給資格証明書を受け取りましょう。
手続きの詳細は以下の通りです。
- 提出書類:介護保険被保険者証・資格喪失届
- 提出場所:自治体の介護保険担当課
- 受取書類:受給資格証明書
提出書類と一緒に、自治体に出向く人の本人確認書類も用意しておきましょう。介護保険担当課で、介護保険被保険者証を添えて資格喪失届を提出すると、受給資格証明書が交付されます。
マイナンバーを利用して転出先で手続きを行う場合は情報連携できるため、受給資格証明書の提出は省略が可能です。
転入先に受給資格証明書を提出する
受給資格証明書の提出やマイナンバーでの情報連携によって、これまでの要介護状態区分を引き継ぐことができます。住民票が異動されていないと地域の介護サービスを受けられないため、引越しを終えたら転入先に受給資格証明書を提出しましょう。
提出期限は転入届と同じく14日以内となっているので、転入届を出す際に一緒に手続きしてしまうと余分な負担がかかりません。なお、マイナンバーカードがあれば、受給資格証明書がなくても手続きできる自治体もあります。
介護保険被保険者証を持っている場合
介護保険被保険者証を持っている状態で別の市区町村に引っ越す場合、まずは転出元の役所に介護保険被保険者証を返さなければなりません。
引越しが済んだら、14日以内に転入先の市区町村に転入届を提出します。転入届に記入した新住所に基づき、転入先の市区町村から新しい介護保険被保険者証が届きます。
要介護・支援認定者が引越しする際の注意点
要介護・要支援認定を受けている場合は、引越しに必要な手続きについて十分な注意が必要です。引越しによって起こる可能性のある、4つの変更点について見ていきましょう。
転居後14日を過ぎた場合は再認定が必要
転居前の自治体で受けていた要介護・要支援認定を引き継げる期限は、14日以内です。万が一、この提出期限を過ぎてしまった場合は、再認定を受けなければいけません。
要介護認定の申請手続きには、平均して約1カ月程度かかります。認定されるまでの期間に介護サービスを利用すると、利用料は全額自己負担となってしまいます。新たに受けた要介護度が転居前の認定内容と変わり、それまでと同等のサービスを受けられなくなることもあるでしょう。
体調不良などにより要介護認定を受けている本人が動けないときは、代理人による手続きも可能です。
転出元で事前に要介護認定の更新をする
要介護認定は半永久的なものではなく、有効期限があります。自動更新ではないため、新規で要介護認定を取った場合は6カ月後、その後は12カ月ごとに更新手続きをしなければいけません。
更新の際には訪問調査とかかりつけ医の意見書が必要になるため、引越し前に要介護認定の更新手続きをしておくのがおすすめです。要介護認定の申請に必要なものは以下の通りです。
- 申請書
- 介護保険被保険者証
- マイナンバーカード
- 医療保険証
- 本人確認書類
- かかりつけの病院の診察券
要介護認定は、更新期限の60日前から手続きできます。必要書類や手続きについての詳細は、各自治体に問い合わせましょう。
ケアマネジャー・ケアプランが変わる
転居元の市町村外に引越しする場合、ケアマネジャーも変わります。ケアマネジャーが変われば、ケアプランも変更になるでしょう。転出先ですぐサービスを利用したい場合は、引越し前からケアマネジャーを探しておく必要があります。
市区町村の介護保険課や地域包括センターから介護支援事業所を紹介してもらい、そこに従事するケアマネジャーに依頼するのが一般的です。
ただし人間同士の付き合いとなるため、利用者とケアマネジャーにも相性があります。信頼できるケアマネジャーが見つかるまで、変更する可能性があることも、視野に入れておきましょう。
負担限度額認定も変更になる可能性がある
介護保険施設を利用した場合、行政から低所得者への食費・住居費の助成があります。しかし引越しにより世帯の総所得額が変わると、介護サービスの負担上限額が変わる可能性があります。
例えば、これまで一人暮らしだった要介護認定された高齢者が、家族と同居する場合などが挙げられるでしょう。
負担上限額が引き上げられることにより家計が苦しくなるのであれば、同居する親子で世帯分離をするという方法もあります。世帯分離には、本人・世帯主・代理人のいずれかによる自治体への申請が必要です。
引越し後に介護施設などに入居する場合
親族との同居でなく、介護施設へ入居するケースもあるでしょう。入居施設が『住所地特例対象施設』である場合、通常の引越しとはまた違う手続きが発生します。
住所地特例の対象施設かどうかで手続きが変わる
住所地特例の対象施設には、以下のような種類があります。
- 介護保険施設
- 有料老人ホーム
- 軽費老人ホーム
- 養護老人ホーム
介護老人ホームには、『特別養護老人ホーム』『介護老人保健施設』『介護療養型医療施設』が含まれます。
有料老人ホームのうち、特定施設入居者生活介護の指定を受けていない、サービス付き賃貸住宅は対象外です。
住所地特例対象施設とそれ以外の施設では手続き内容が異なるため、入居する施設がどこに分類されるのか把握しておく必要があります。
介護保険料は転居前と変わらない
介護保険は各自治体が管理しているため、通常は引越し先の自治体で定められている介護保険料を支払います。しかし、住所地特例対象施設に入居した場合に限っては、引越し前の住民票があった自治体から介護保険が給付されることになります。
これは、住所地特例対象施設がある市区町村だけ、介護保険料の負担が増えることを防ぐための措置です。
個人の住宅や対象外施設に入居した場合は介護保険料が変わる可能性がありますが、住所地特例対象施設に入居した場合は、介護保険料はそれまでと変わりません。
入居するときに必要な手続き
住所地特例対象施設に入居した場合は、住所変更の手続きは必要ありません。代わりに、転出元の市区町村に『住所地特例適用届』を提出します。
また、入居する施設に『施設入所連絡票』の転出元の自治体へ送付してもらえるよう依頼しましょう。提出期限の有無については自治体によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。
なお、住所地特例対象外の施設に入居する場合の手続きは、通常の引越しと同じく住所変更手続きが必要です。
介護保険の手続きについて相談できる人・場所
介護保険の手続きについて相談する相手として、『ケアマネジャー』『地域包括支援センター』『役所・医療施設の介護相談窓口』が挙げられます。それぞれについて詳しく紹介します。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは、要介護・要支援者の身近な場所にいる介護のプロフェッショナルです。ケアプランの組み立てから、要介護者本人だけではなく、家族の困りごとの相談にも乗ってもらえます。
ケアマネジャーは必要な知識を習得し、十分な経験を積んだ人だけがなれる役職です。そのため介護業界全体に明るく、引越し手続きの相談相手としても頼もしい存在です。
要介護認定や介護保険の申請、更新手続きも依頼できるので、どうしても都合が付かないときは相談してみるとよいでしょう。
地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、福祉の専門家が地域全体のケアシステムを管理している施設です。主な業務は次の4つです。
- 介護に関する総合相談窓口
- 介護予防支援
- 要介護者の権利擁護
- 包括的なケアマネジメント
介護や支援が必要な人のサポートのほか、福祉・医療に関する相談も受け付けています。引越し先のケアマネジャー探しも、地域包括支援センターに相談が可能です。
役所や医療施設の介護相談窓口
ケアマネジャーや地域包括支援センター以外にも、次のような場所や人に介護に関する相談ができます。
- 自治体の介護保険担当課
- 近隣の居宅介護支援事業所
- かかりつけ医療機関の医療相談室
- 地域の民生委員
- 老人ホーム紹介センター
引越し手続きに限らず、介護の悩みは深いものです。身内だけで悩むのではなく、手に負えない部分は行政や医療機関のサポートを活用しましょう。
段取りを確認してスムーズな介護保険の手続きを
引越しをする際には、介護保険の手続きを行う必要があります。手続き内容は転居先によって異なるため、自分がどのケースに当てはまるか確認し、正しい手順を踏まなければなりません。
適切な介護サービスを受けられるようにしておくことは、要介護・要支援者だけではなく、その家族の助けにもなるはずです。スムーズに新生活を始めるために、当てはまる手続きを期限内に行えるよう準備をしておきましょう。
以下の記事では、介護保険の手続きを含む、引越し時にやらなければならないことを一覧でまとめています。やることが多く大変な引越しをスムーズに進めるためにも、ぜひご覧ください。