喪中とは故人との別れを偲び、悲しみを乗り越えるまでの期間です。
喪に服すべき続柄の範囲は、一般的に二親等までと言われてます。また喪中の期間は一般的に1年間ですが、続柄により異なるとも言われておりさまざまです。
喪中ではどこまでの範囲がどのくらいの期間を過ごすのか、把握しておくと喪中はがきを出す際などに困りません。また喪中に避けるべきことと、行ってもよいことも解説します。
この記事を監修した専門家
葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
岩田昌幸
喪中の範囲は二親等まで
喪中を過ごすべきとされている人の範囲は、一般的に二親等までです。ただし故人との関わりの深さによっては、三親等の親族まで含まれることもあります。
親等ごとの続柄は以下の通りです。故人本人と配偶者をゼロとして、世代が1つ移動するごとに数字が加算されます。
0親等 | 配偶者 |
---|---|
一親等 | 父母・配偶者の父母・子・子の配偶者 |
二親等 | 祖父母・配偶者の祖父母・兄弟姉妹・兄弟姉妹の配偶者・孫・孫の配偶者 |
三親等 | 曾祖父母・配偶者の曾祖父母・伯父伯母・叔父叔母の配偶者・甥姪・甥姪の配偶者 |
なお、養子は子と同じ一親等となり、異母兄弟姉妹や異父兄弟姉妹も、兄弟姉妹と同様の2親等となります。
喪中の期間は約1年間
喪中の期間は、一般的に1年間です。故人との続柄の関係性によって、期間が異なるとも言われていますが、基本的には1年間と考えると良いでしょう。
配偶者・一親等 | 12~13カ月 |
---|---|
二親等 | 3~6カ月 |
喪中はあくまでも慣習上の考え方であり、絶対に期間を守らなければいけないわけではありません。遺族や親族の悲しみが続く限りにおいて、より長く喪に服しても構わないとされいます
忌引き休暇の範囲と期間は?
忌引き休暇とは家族や親族が亡くなったときに、葬儀に参列するため学校や会社を休むことをいいます。一般的には配偶者や両親などの三親等までが、忌引き休暇を取れるとされている範囲です。
なお忌引き休暇が取れる日数は、故人との関係性で異なります。配偶者の場合は10日間、一親等の場合は5日ほど、二親等の場合は2日ほどが一般的でしょう。
故人の近親者であるほど忌引き休暇の日数は長くなる傾向にありますが、労働基準法で定められているわけではなく、日数は企業の就業規則によります。
そもそも喪中とは
そもそも喪中とはどのようなものでしょうか。喪中の意味と喪に服すべき期間や、宗派による違いを解説します。
親族が故人を偲ぶ期間
「喪」もしくは「喪中」とは、近親者が亡くなったことを偲び、悲しみを乗り越えられるまでの期間を指します。
喪中の「喪」は、故人の死を悲しみ、日常生活がままならない状態を表しています。喪中の期間は残された人の悲しみが癒えて、日常の生活を取り戻せるまでの期間、という考え方があります。
日数の根拠は江戸時代の服忌令から
現在喪中期間を約1年とする根拠は、江戸時代に定められた服忌令にあると言われています。明治時代には太政官布告として正式に定められました。
【明治時代の服忌令の喪中の期間】
- 父母・夫:13カ月
- 義父母・父方の祖父母・夫の父母:150日
- 妻・子供・兄弟姉妹・母方の祖父母・伯叔父母・曾祖父母:90日
明治時代は男尊女卑の考え方が社会通念としてあり、性別や立場によって喪中期間が異なっていました。服忌令は昭和22年に廃止されましたが、近親者を亡くした場合の遺族の在り方として、慣習という形で残されています。
忌中との違い
喪中と忌中は、どちらも故人を偲ぶ期間ですが、日数が明確に異なります。
- 忌中:亡くなってから49日(神道では50日)
- 喪中:亡くなってから約1年
忌中は忌み籠る期間のことで、故人に対して遺族や親族が法要や祀りに専念します。そのためお祝い事は控え、神道の場合は神社へのお参りも行いません。忌明けのタイミングで四十九日法要を執り行い、皆で精進落しを食べた後は、ご遺族は日常生活に戻ります。
喪中では日常生活を送りつつも、故人を悼み、悲しみを癒す期間です。お祝い事は避けるべきとされていますが、忌中ほど厳しくはとらえません。
考え方は宗派によって異なる
仏教の宗派の1つである浄土真宗では、喪中や忌中といった考え方がありません。浄土真宗の教えでは、故人の霊は死後直ちに浄土に迎えられ、仏に生まれ変わるとされています。故人はすでに浄土にいるので、故人に対して忌中に念仏や追善供養などの儀式は執り行わず、普段通りの生活を送ります。
一方、神道では故人が亡くなってから、50日目の五十日祭で故人が神様になるまでは、仮霊舎(かりみたまや)に故人の霊璽を置くのが習わしです。五十日祭の清祓いの儀(きよはらいのぎ)で、忌中が終わるとしています。
喪中はがきの書き方
故人が亡くなった後に初めて迎える正月は、年賀状の代わりに喪中はがきを送りましょう。
喪中はがきに使用するはがきは、通常のはがきか、私製はがきを使います。通常はがきは切手部分に胡蝶蘭が印刷されたものを選びましょう。
また私製はがきの場合、花文様が印刷された「弔事用63円普通切手」を貼ります。弔事用の切手は郵便局の店頭で購入するか、郵便局の販売サイトで購入しましょう。
喪中はがきを送る時期
喪中はがきは相手方が年賀状を用意する前に届くように、11月頃から配り始めるとよいでしょう。もし年末に亡くなって喪中はがきが間に合わなかったときは、慌てて訃報連絡をする必要はありません。
後から寒中見舞いなどで、喪中である旨を伝えましょう。
喪中はがきの書き方と例文
喪中はがきの本文には故人の名前と亡くなった時期、日ごろお世話になっている相手へのお礼、幸せを願う気持ちを記載しましょう。
記載するペンは薄墨でなくとも構いません。また宛名書きや本文は、手書きと印刷どちらでも大丈夫です。
【喪中はがきの例文】
喪中につき年末年始のご挨拶をご遠慮申し上げます
(故人名)が〇月に〇歳で永眠いたしました
生前のご厚情に厚く御礼申し上げますとともに
皆様が健やかなる新年をお迎えになりますよう
心よりお祈り申し上げます
令和〇年十二月
氏名
喪中に避けるべきこと
期間中に特定の行いを慎むことで、故人に対する哀悼の意を示すのが喪中の考え方です。喪中には「おめでたいこと」は避けるようにしましょう。
結婚式にはなるべく参列しない
喪中に結婚式に招待された場合は、なるべく参列しないのがマナーとされています。ただし忌明けを過ぎていて、喪中であることを主催者側が承知しているのであれば、参列しても差し支えありません。
また自分の結婚式を挙げる際も、喪中は避けた方がよいとされています。どうしても先延ばしにできない場合は、親族で話し合ったうえで行いましょう。
正月のめでたい行為は控える
忌中や喪中は年末年始の過ごし方にも、配慮が必要です。おせち料理の中でも鯛や紅白のかまぼこなど、いわゆる「めでたい」とされる料理は避けましょう。また正月飾りや門松、鏡餅なども飾らないようにして、お年玉をあげるのも控えることがあります。
さらに正月の挨拶は「明けまして」「おめでとう」といった言葉は使わないように、心がけましょう。
死を穢れであると考えることから、お参りを避けるべきとする神社も多いため、喪中の初詣は控えた方が無難です。
一方で仏教は穢れを嫌っていないので、寺院への初詣は問題がないとされています。ただしお祝いムードあふれる松の内にわざわざ行くのも気が引けるものです。年末年始はお墓参りをしてゆったり過ごしてみてはいかがでしょう。
喪中にしても良いこと
喪中に行っても問題ないとされている事柄は「正月以外の季節行事」や「お中元」です。
正月以外の季節行事
めでたさを表す意味がない風習や、忌中・喪中と関係がないイベントは行っても問題ないでしょう。たとえば以下のイベントが該当します。
- 年末の年越しそば
- 年始の雑煮や餅つき、書初め
- 節分の豆まき、節句のひな祭りやこどもの日
- クリスマスやハロウィン
なお七五三や厄祓の際に行う御祈祷は、神社によって捉え方が異なります。たとえば「忌中を過ぎれば喪中でもお払いが可能」とする場合や、「社殿に入らなければ良し」とする神社もあります。御祈祷については、あらかじめ神社に確かめておいた方がよいでしょう。
お中元
お中元やお歳暮は普段お世話になっている方に感謝を伝えるものなので、喪中に関係なく贈り合っても問題ないとされています。
ただし贈る側の気持ちとして、深い喪失感や悲しみから、お中元やお歳暮を贈るような気持ちになれない可能性もあるでしょう。その場合はいつも通りに贈る必要はありません。気持ちが落ち着いてから再開すると良いでしょう。
一方で、受け取る側が死に対してマイナスのイメージを抱いている場合、喪家からの贈答品を縁起が良くないものとして捉えることもあります。普段のお付き合いから察して、気になる場合はあらかじめ意向を聞いておくと、失礼にならずに済むでしょう。
故人への思いを大切に喪中を過ごそう
幕府や政府が喪中に関して規定していた時代とは違い、喪中の考え方は慣習として残っているにすぎません。しかし依然として、喪中は行動を慎み、静かに暮らすべきと考える人も多くいます。
故人の死を悼むことはとても大切なことです。形式にとらわれ過ぎる必要はありませんが、故人への思いを大切にしながら、臨機応変に対応していきましょう。
監修者:岩田昌幸
葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
葬送儀礼(臨終から葬儀、お墓、先祖供養等)が多様化している中で、「なぜそのようにふるまうのか」といった本来の意味を理解し、そうした考え方や習慣を身につけられるよう「葬送儀礼マナー検定」を実施しています。メディア監修多数、終活・葬儀・お墓関連セミナーも実施しています。
コメント
喪に服す期間は実は明確には決まっていませんが、一般に半年から1年間と考えられています。近年は喪中はがきを受け取ったら「喪中見舞い」としてお悔やみ状やお悔やみの品を送る人が増えています。