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老人ホームの選び方のポイントは?希望条件を洗い出し情報収集を

最終更新日: 2024年02月07日

老人ホームを選ぶときは、以下に着目しましょう。

  • 公的施設か民間施設か
  • 費用はいくらかかるか?
  • 介護・医療、緊急時の対応は?
  • 設備や立地、防災対策は?
  • 雰囲気やレクリエーションの内容は?

老人ホーム選びに失敗すると「毎日ストレスがかかる」「希望のサービスが受けられない」「予算オーバーする」「家族が面会しにくい」など、さまざまなデメリットが生じる恐れがあります。

長く暮らしていく老人ホームだからこそ、希望に合った施設を探したいものです。

老人ホームを選ぶ時のポイント、老人ホーム選びの相談先、入居までの具体的な流れを紹介します。

この記事を監修した専門家

ケアタウン総合研究所 代表
高室 成幸

公的施設か民間施設か

老人ホームに入居している人とスタッフたち

老人ホームの種類は大きく分けて公的施設と民間施設の2種類があります。公的施設は比較的費用を抑えやすい点、民間施設はさまざまなサービスが充実している点が特徴です。それぞれのメリットを正しく理解し、どちらに入居したいか決めておきましょう。

公的施設の特徴と費用

「公的施設(介護保険施設)」は社会福祉法人や医療法人、地方自治体などが運営する施設です。代表的には以下の施設があります。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院
  • 養護老人ホーム
  • ケアハウス

公的施設のメリットは比較的費用を抑えやすい点です。入居する部屋の仕様(多床室、個室、ユニット)とホテルコスト(光熱費や日用品代)、要介護度、食事代、さらには入所する利用者の所得にもよりますが、月額10~15万ほどと考えておきましょう。

一方で入居までの待ち時間が長い点がデメリットです。とくに特別養護老人ホームは待ち時間が長いでしょう。

介護保険施設を利用するときの利用者負担は、「施設サービス費の1割+居住費+食費+日常生活の費用」を合計し算出します。

たとえば要介護度5の入居者が特別養護老人ホームの「多床室」と呼ばれる相部屋(4人部屋)に入居した場合の、1カ月の費用は以下の通りです。

施設サービス費の1割 約25,410円(847円×30日)
居住費 約25,650円(855円×30日)
食費 約43,350円(1,445円×30日)
日常生活費 約10,000円(施設により異なる)
合計 約104,410円

公的施設の場合、利用者の負担が重くなり過ぎないよう、低所得者や利用料が高額になった人には、負担を軽減する措置が用意されています。

民間施設の特徴と費用

民間企業が運営している老人ホームは「民間施設」と呼ばれています。代表的な民間施設は以下の通りです。

  • 介護付き有料老人ホーム
  • 住宅型有料老人ホーム
  • 健康型有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • 認知症グループホーム
  • シニア向け分譲マンション

民間施設のメリットは、公的施設と比べさまざまなサービスが充実している点です。入居する高齢者が質の高い日常生活を送れるよう、各施設で特徴のあるレクリエーションやイベント、ケアを行っています。

サービスが充実している分、費用は比較的高額になりがちです。一般的に月額10万~30万円はかかります

予算に収まる費用か

計算機と車いすの模型

大幅に予算を上回る老人ホームでは、利用を続けられません。そのためまずは、用意できる予算に合う施設かどうかを確認しましょう。

老人ホームは「入居金+月額費用」がかかる

老人ホームに入居する際の費用は、「入居金+月額費用」が一般的です。なお入居金が少額である・敷金程度・必要ないケースも増えてきています

公的施設、民間施設それぞれの費用相場を確認しましょう。

公的施設の費用相場 入居金 月額費用
特別養護老人ホーム(特養) 0円 5万~15万円
介護老人保健施設(老健) 0円 8万~14万円
介護医療院 0円 0万〜14万円
養護老人ホーム 0円 0万〜14万円
ケアハウス 数十万〜数百万円 10万~30万円
民間施設の費用相場 入居金 月額費用
介護付き有料老人ホーム 数百万円~1千万円以上 15万~30万円
住宅型有料老人ホーム 数十万円〜数百万円 15万〜30万円
健康型有料老人ホーム 数百万円~数千万円 10万~40万円
サービス付き高齢者向け住宅 0〜数十万円 10万〜30万円
認知症グループホーム 0〜数十万円 15万〜20万円
シニア向け分譲マンション 数千万〜数億円 10万〜30万円

介護保険が適用されるかどうかは施設によります。有料老人ホームの場合はとくに、介護保険適用外の場合があるため、事前に確認しておきましょう。

地域によっても「相場」は異なる

老人ホームのある地域によっても相場は異なります。全体的な傾向として都市部ほど、費用は高額になりやすいでしょう

大手老人ホーム検索サイトによると、東京都の有料老人ホームへの入居金額は約900万円で全国4位です。月額費用も東京都、愛知県、京都府の順に高くなっています。

お金のかからない老人ホームはある?

現在、費用が全くかからない施設はありません。ただし特別養護老人ホームなどの公的施設や料金の安い民間施設を利用することで、費用負担を最小限に抑えられます。

特別養護老人ホームの月額費用は約5~15万円です。もし入居者が単身の生活保護者であれば、9割の10~13万円が受給されます。

完全に無料というわけにはいきませんが、多くの民間施設と比べて出費をかなり減らせるでしょう。

介護・医療、緊急時の体制

立派な施設の外観

介護や医療が生活に欠かせない人の場合は、入居後にどのような介護や医療を受けられるか、施設に必要な体制が整っているか、緊急時の対応はどうかどこまでの医療的ケアが可能なのか、看とりはできるのかは重要です。

また現在は介護や医療ケアが必要なくとも、将来的に必要になるかもしれない点を踏まえておくと良いでしょう。

入居者数に対し十分なスタッフがいるか

介護付き老人ホームには「人員配置基準」が定められています。入居者3人に対し1人以上の介護職員、もしくは看護職員が必要という基準です。入居を検討している施設が基準を満たしているか確認しましょう。

スタッフ数が多いほど、サービスは手厚い傾向があります。基準を満たしているだけではなく、サービスに対してスタッフが十分かどうかと、スタッフの定着率にも着目しましょう。

必要な医療的ケアに対応しているか

医療行為の中でも日常的に継続して行われている医療行為を、「医療的ケア」といいます。医療的ケアへの対応は施設ごとに異なるため、入居者が必要としている医療的ケアを受けられるかの確認は重要です

また介護福祉士と看護師では、実施できる医療的ケアが異なります。それぞれが行える主なケア内容は、以下の通りです。

  • 研修を受けた介護福祉士:喀痰(かくたん)吸引・経管栄養
  • 看護師:インスリン注射・人工呼吸器の管理・在宅酸素療法・中心静脈栄養・褥瘡(じょくそう)ケア・ストーマの貼り替え・バルーンカテーテルの管理

介護福祉士が十分に配置されている施設でも、看護師の人数に余裕がなければ受けられないケアもあるでしょう。

自身で行えない医療行為がある場合、対応できるスタッフがいるかどうかも確認する必要があります。

看取りに対応しているか

終身利用を考えている場合には、看取りへの対応についても確認が必要です。最期のときまで安心して過ごせる施設かを確認します。

たとえば亡くなるまでの時間がはっきりしたときに、最期の日々を穏やかに過ごすための「ターミナルケア」を取り入れている施設なら、看取りの体制は充実しているといえるでしょう。

老人ホームの設備や立地

老人ホームの中の様子

設備の充実度や立地は、入居者の暮らしの質を左右します。安全や楽しみにつながる設備が整えられているか、入居者やその家族にとって便利な立地にあるか、また地震や水害などの防災上のリスクをチェックしましょう。

設備の充実度

設備がバリアフリー完備であれば、要介護となった場合でも安心して暮らせます。たとえば廊下や居室の出入り口が車いすで通れる十分な幅と広さがあるか、手すりがついているかが確認ポイントです。

娯楽設備もチェックしておくと良いでしょう。入居者同士でコミュニケーションをとれる場があるかは重要です。高級な老人ホームの場合、映画館やプール、カラオケルームが備わっていることもあります。入居する本人が趣味を楽しめそうな設備があれば、日々の楽しみにつながるでしょう。

また家族の宿泊が必要になった際のゲストルームや、食事の提供があるかという点も確認しておきましょう。

立地が都合に合っているか

老人ホームは立地も重要なポイントです。入居する本人が住み慣れている土地であれば、生活の場が施設へ移っても安心感があるでしょう。

また家族にとっては通いやすさがポイントです。子どもたちにとって気軽に立ち寄れる距離にあり、駅からアクセスが良好な立地の施設であれば、面会や用事で訪問しやすいでしょう。

人が暮らしやすく、家族も訪問しやすい立地の老人ホームを選ぶのがおすすめです。

雰囲気やレクリエーション

老人ホームの入居者とスタッフ

入居後にどのような暮らしができるかという点は最終的な確認ポイントです。本人がなじみやすい雰囲気で、穏やかに楽しみながら生活を送れそうかどうか、実際に見学してチェックしましょう

雰囲気が合っているか

施設の雰囲気が入居する本人に合っているかどうかは、老人ホーム選びで重要です。入居したいと考えている老人ホームを見学し、スタッフと会話をしたり、すでに入居している人たちのやりとりを見たりして、全体の雰囲気を確認しましょう。日常の様子をチェックするには、昼食の1時間前~1時間後などできるだけ人が多い時間帯に見学するのがおすすめです。

空き室を見学してベッドやタンスの位置、テレビや車いすの位置を確認するのも良いでしょう。

入居者全体の男女比・年齢・要介護度・認知症の人の構成なども確認しておくと、入居する本人に合いそうか判断するのに役立ちます。

どのようなイベントやレクリエーション・趣味活動が行われているか

老人ホームでは運動機能の維持・低下予防、認知機能の向上を目的として、イベントやレクリエーション、趣味活動が行われています。

内容や頻度などは施設によって異なるため、入居する本人が楽しんで取り組めそうな活動がある施設を選ぶとよいでしょう

イベントやレクリエーション、趣味活動(例:絵手紙、フラワーアレンジメント、習字、合唱・合奏、囲碁・将棋、健康麻雀など)を通して、他の入居者とコミュニケーションを取るきっかけになります

私物は何をどれくらい持ち込めるか

生活に必要な日用品以外にもテレビ、ラジオ、CD、本や雑誌などの娯楽用品を持ち込むと、日々の楽しみにつながります。たとえば囲碁や将棋が趣味なら、愛用の囲碁盤や将棋盤を持ち込めないか、確認してみても良いでしょう。

またお気に入りのタンスや置物、装飾品などもどれだけ持ち込めるか、確認しておくと安心です。

車や自転車といった車両は、多くの施設で持ち込みを許可されていません。ただし外出に制限のない自立した高齢者向け施設の場合は、自家用車を駐車できるケースもあります。

ペットと一緒に入居できるか

「老人ホームにペットと一緒に入居したい」と希望する方も増えています。この場合ペットとの入居が許可されている施設を探すことになります。ただし衛生管理の難しさから、施設の数は多くありません。

またペットと入居する上で、守らなければいけない規約が設けられています。その内容は施設ごとにさまざまです。同居できるペットの数や種類が制限されていたり、ペットと過ごせる場所が決まっていたりします。

規約をよく確認した上で、入居を決めるとよいでしょう。

老人ホーム選びの相談先

施設のスタッフの男女

一般的に老人ホーム選びに迷ったときの相談先には担当の「ケアマネジャー」、近隣の「地域包括支援センター」、そして「紹介センター」が挙げられます。

介護を利用中ならケアマネジャー

普段から介護サービスを利用しているなら、担当のケアマネジャーに相談すると良いでしょう。日ごろの会話の延長で、気軽に老人ホームについて話を聞けます。

介護についてはもちろん、施設の情報についてもよく知っているため、有益な情報を得られるはずです。

入居する本人の健康状態や介護の度合いや人柄・性格などをよく知っているケアマネジャーなら、本人に合った施設の情報を提供してくれる可能性が高いでしょう。

地域包括支援センターや自治体

地域包括支援センターも、老人ホームを選ぶ際に相談できる場所です。担当する地域の施設に精通しているため、住み慣れた地域で探したい場合に向いています。

近くに地域包括支援センターがないなら、自治体の福祉課に相談してもよいでしょう。

どちらも公的な機関なので、公的施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院など)については具体的な情報を提供してもらえます

情報網が広いのが民間の紹介センター

より幅広く老人ホームの情報を知りたいなら、民間の紹介センターも利用できます。情報網が広いため、地域包括支援センターや福祉課では得られない、民間の老人ホームに関する情報を得ることが可能です。

民間のサービスではあるものの、紹介料は入居が決まった老人ホーム側が支払う仕組みのため、利用者は無料で利用できます。

老人ホーム選びから入居までの具体的な流れ

ノートとペンが置いてある様子

それでは老人ホームを選び入居するまでの具体的な手順を確認しましょう。

希望条件の決定と情報収集

まず予算や設備・立地、介護・医療体制の希望を明確にして、条件に合致する施設を探します。ネットで検索して合いそうな施設があれば、資料請求を行うと詳しいことが分かるでしょう。

介護・医療体制の希望を洗い出すためには、入居する本人の健康状態を把握しなければいけません。認知症の発症・レベルや要介護度、疾患や障害の状態、必要な医療的ケアも確認します。

その上で入居する老人ホームに求めるケアやサービスなどを、具体的に挙げます。たとえばストーマの貼り替えが必要な場合には、看護師が医療的ケアを実施する体制が整っている施設を選ぶ必要があるでしょう。

見学・仮申し込み

希望条件に合う老人ホームを見つけたら、必ず施設を見学しましょう。見学すると、実際の雰囲気や、設備の状況、どのようなスタッフや入居者がいるかを確かめられます。自身が老人ホームでどう過ごしたいかを含めて確認するのがおすすめです。

体験入居(お試し入居)ができる施設なら、実際に一泊してみて、入居後の生活を本人に体験してもらうと良いでしょう。訪問して見学した施設は、後から情報を整理して比較できるように、メモや写真で記録しておくのがおすすめです。

見学や体験入居で気に入ったなら仮申し込みをしましょう。この時点ですぐに入居できるわけではなく、仮押さえしている状態です。

必要書類の用意

仮申し込みを済ませたら、必要書類を用意します。必要書類は入居する施設ごとに異なるため、わからない場合は問い合わせましょう。

「診療情報提供書」と「健康診断書」があれば、用意しておくとスムーズです。必ずしも全ての老人ホームで必要になるわけではありませんが、一般的に必要な書類とされています。

診療情報提供書とは主治医が患者を紹介するときに発行する、診療の経過や服薬の内容などについて記載した書類です。診療情報提供書は医療保険の対象のため、1割負担なら250円で作成可能です。

健康診断書は病院で健康診断を受けると発行されます。取得までに1~3週間かかり、有効期限は90日間です。検査も書類の作成も自費である点に注意しましょう

本人との面談

書類を送った後は、入居する本人の健康状態や希望を確認するため、面談が行われます。希望条件があるならこのタイミングで伝えるとよいでしょう。要介護者の面談の場合、入居担当の生活相談員(支援員)と施設のケアマネジャーが同席します。

面談が終わったら入居審査です。面談内容と要介護度・健康状態・経済状況により、入居の可否が決まります。

身元保証人の有無は重要です。身元保証人がいない場合は、身元保証会社や成年後見人を利用して入居できる施設を選びましょう。

契約して入居費を決める

審査に通過したら、施設から「重要事項説明書」の説明を受け、入居契約を結び、実際の入居日が決まります。入居までには引越し準備が必要なため、余裕を持ったスケジュールで進めるとよいでしょう。

契約後は入居日までに持ち込む私物の用意や、自宅の片付け・必要な手続きなどを行います。入居日になったら住まいを施設へ移す流れです。

終活の準備も早めに始めよう

老人ホームの入居者とスタッフ

老人ホームの選び方で大切なのは、本人にも家族にも合う施設を選ぶことです。入居する本人の健康状態や、認知症の発症などを把握して、必要なケアやサポートが受けられる施設を選びましょう。

老人ホームの選び方や探し方に迷った場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センター・民間の紹介センターなどへ相談するのもおすすめです。

また老人ホームを選び終えたら、終活の準備を始めるのも良いでしょう。終活とは、人生の最期を迎えるための準備です。葬儀の準備に関しても、生前に相談しておいた方が満足できたという声がミツモアのアンケートでも上がっています。

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監修者:高室 成幸(ケアタウン総合研究所 代表)

全国のケアマネジャーから「わかりやすくて元気が湧いてくる講師」として人気。市町村の地域包括支援センターなどでは地域包括ケアシステムをテーマにした講師として活躍。介護施設の施設長・管理職向けの研修も実績も多い。著書・監修書多数。雑誌の介護特集のコメンテーターとしても活躍。 ※詳細:https://caretown.com/