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遺産分割協議書の作成費用は?相場や状況別におすすめの依頼先を解説

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最終更新日: 2024年06月28日

遺産分割協議書は相続人全員で遺産分割方法や分割割合について話し合う、「遺産分割協議」の合意内容をまとめた文書です。作成の依頼先として弁護士・司法書士・行政書士・税理士が挙げられます。遺産分割協議書作成の費用相場や、おすすめの依頼先を紹介します。

【専門家別】遺産分割協議書の作成費用

遺産分割協議書は相続財産の名義変更などに必要な書類です。作成代行を依頼できる相手として、弁護士・司法書士・行政書士・税理士のいずれかが挙げられます。依頼先別の相場費用や、依頼できる内容を見ていきましょう。

弁護士に依頼した場合

弁護士は紛争や事件の予防・対処法についてサポートする「法律の専門家」です。法律事務一般も手掛けていますが、遺産分割協議書の作成のみを受け付けているケースは多くありません。弁護士を選択する場合は、遺産分割協議に関わる調査や調整まで依頼するのが一般的です。

弁護士費用は依頼主が遺産分割協議によって得た利益によって、変動します。費用は事務所によって異なりますが「旧弁護士報酬基準」に準じているケースが少なくありません。

旧弁護士報酬基準を適用する事務所の場合、遺産分割協議書の作成にかかる費用は以下のように想定されます(経済的な利益の額が300万円以下の場合)。

  • 着手金: 8%
  • 報酬金:経済的利益の16%
  • 郵便切手代や書類の取得費・交通費などの実費
  • 日当:3万円~(半日拘束)・5万円~(1日拘束)

日当とは案件処理のために、弁護士が時間的拘束を受けた場合に発生する費用です。「調査で弁護士が遠方に出張した」といった場合に発生します。

司法書士に依頼した場合

司法書士は主に登記業務に携わる、法律事務の専門家です。相続財産に不動産が含まれている場合、司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼できます

司法書士の報酬については、各事務所が自由に決めてよい決まりです。日本司法書士連合会による「司法書士の報酬と報酬アンケート(2018年1月実施)」によると、遺産分割協議書の作成報酬の相場は6~8万円となっています(※)。

司法書士の場合も、「遺産分割協議書の作成のみ」を受け付けているケースはまれです。遺産分割協議書の作成では、相続登記費用・調査費用なども含めて算出されます。

(※)所有権移転登記手続きの代理業務・戸籍謄本等5通の交付請求・登記原因証明情報の作成及び登記申請の代理をした場合

行政書士に依頼した場合

行政書士は官公署に提出する書類作成や、手続きの代行を行う専門家です。各種書類の作成を専門的に受け付けているため、「遺産分割協議書の作成のみ」という依頼にも対応しています

日本行政書士連合会が2020年に実施したアンケートによると、行政書士事務所に遺産分割協議書の作成を依頼した場合の平均費用は、6万8,325円です。最も多かったのは4~6万円未満の価格帯で、次いで2~4万円未満となっています。

行政書士による遺産分割協議書の作成費用は、他の士業と比較して安価になる傾向です。

税理士に依頼した場合

税理士は税理事務に関する専門家です。遺産分割協議書の作成はもちろん、財産の調査・評価・準確定申告や相続税に関する手続きなども依頼できます

税理士への報酬は、税理士法に基づく「税理士報酬規定」が適用されていました。しかしこれは2002年に廃止されたため、現在では各税理士事務所が自由に料金を設定しています。

依頼内容が「遺産分割協議書の作成のみ」であれば、費用相場は5~10万円です。ただし税理士に相続財産の評価や相続税に関する事務まで依頼する場合、税理士報酬として遺産総額の0.5~3%を支払わなければなりません。

例えば税理士報酬が「遺産総額の3%」で5,000万円を相続したと仮定した場合、報酬は150万円になります。

遺産分割協議書の作成を専門家に依頼すべきケース

遺産分割協議書は専門家に頼らなくても作れます。しかし何らかの懸念材料がある場合は、専門家に依頼した方が安心です。遺産分割協議書を専門家に依頼すべきケースを紹介します。

相続人が2名以上で遺言書がない場合

相続人が2名以上で法的に有効な遺言書がない場合は、民法が定める法定相続分に基づいて、遺産分割が実施されます

遺産の取り分について「相続人同士で話し合って決めたい」という場合は、遺産分割協議の実施と、合意内容を適切にまとめた遺産分割協議書の作成が必要です。

素人が見よう見まねで遺産分割協議書を作成した場合、信頼性・法的有効性に不安が残ります。将来的なトラブルを防ぎたいのであれば、専門家に作成を依頼した方が安心です。

相続税申告・相続登記が必要な場合

不動産の相続登記では、遺産分割協議書が必要となるケースがあります。このほかに預金の名義変更や株式の名義変更でも、遺産分割協議書の提出を求められる場合が少なくありません。専門家に作成を依頼して、法的に有効な遺産分割協議書を用意しておくことが必要です。

また相続税の納付が必要な場合、遺産分割協議書の提出により「配偶者の税額軽減」「小規模宅地等の特例」の適用を受けられます。特例措置を適用したい場合は、専門家に依頼して信頼性の高い遺産分割協議書を作成しましょう。

相続税を申告しない場合でも、後日税務署から確認を受けたり税務調査が入ったりする可能性は、ゼロではありません。専門家が作成した適切な遺産分割協議書を作成しておくことは、税務トラブルを防ぐ上で有益です。

相続トラブルが懸念される場合

遺産分割協議は相続人全員が出席して行われます。相続人同士の関係が良好とはいえない場合、合意を形成するのが難しいケースがあるかもしれません。

公平かつスムーズに遺産分割協議を終わらせたいのであれば、専門家を立てて遺産分割協議を実施し、遺産分割協議書を作成してもらった方が安心です

遺産にまつわるトラブルは、遺産分割における合意形成の過程・内容を正しく記録して残すことにより防ぎやすくなります。専門家が作成した遺産分割協議書であれば、後から異議を唱える人も出にくく、親族同士が揉めたり不仲になったりという事態を防ぐことが可能です。

【状況別】遺産分割協議書作成の適切な依頼先

遺産分割協議書の作成は、さまざまな専門家に依頼できます。ただしそれぞれ専門分野が異なるため、遺産相続における課題や悩みにマッチした専門家を選ぶことが必要です。遺産分割協議書の作成の依頼先を、状況別に紹介します。

遺産分割で紛争の可能性がある場合は弁護士

遺産相続に関わる紛争やトラブルについて仲裁できるのは、弁護士のみです

「相続人同士の主張が食い違っていて、遺産分割がスムーズに進まない」「遺留分の申立を行って、取り分を確実に相続したい」といったケースでは、遺産分割協議の立ち会いから遺産分割協議書の作成まで、弁護士に依頼しましょう。

弁護士は遺産相続においては、最もポピュラーな相談先の1つです。遺産相続を専門に扱う弁護士なら、司法書士や税理士ともつながりを持っているケースが少なくありません。複数の専門家を渡り歩く必要がなく、遺産相続におけるあらゆる課題を、ワンストップで解決できます。

税関連の不安がある場合は税理士

遺産相続手続きにおいて、税務処理を行えるのは税理士のみです。「相続税が発生する」「準確定申告を行う必要がある」といったケースでは、税理士が頼りになります。

税理士に遺産分割協議書の作成を依頼する場合の注意点は、「なるべく早めに動くこと」です。

準確定申告の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内」、相続税の納付期限は「被相続人が死亡したことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10カ月以内」と定められています。

早急に相続人や相続財産の確定から遺産分割協議書の作成までを終わらせないと、期限内の申告・納税は困難です。

不動産を相続する場合は司法書士

司法書士は不動産登記を代行できる唯一の専門家です。相続財産に不動産が含まれている場合は、司法書士が有力な依頼先候補といえます

不動産を相続した場合の相続登記は、2024年4月1日より義務化される予定です。相続人が不動産を引き継いだ場合、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請を行わなければなりません。

正当な理由がなく相続登記を怠ると、10万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。不動産を相続した場合は司法書士に依頼して、速やかに名義変更まで済ませるのがおすすめです。

心配事が「書類作成だけ」の場合は行政書士

官公署に提出する書類を代行作成できるのは、行政書士のみです。相続関連の書類作成に不安がある場合は、行政書士に依頼できます

行政書士への依頼がおすすめなのは、「相続税申告・準確定申告が不要」「不動産相続がない・負担が少ない」「相続について紛争の可能性がない」など、スムーズに相続が終わりそうな人です。

行政書士なら必要な書類の作成のみを切り取って依頼できるため、コストも比較的安価になります。

遺産分割協議書の作成費用は誰が負担する?

遺産分割協議書の作成を専門家に依頼した場合、気になるのが「誰が費用を負担するか」という点です。「相続人全員で負担するケース」と「依頼主が負担するケース」を紹介します。

相続人全員で負担する

遺産分割協議書の作成について、費用負担に関する取り決めはありません。相続人同士の合意を得て専門家に依頼した場合は、費用も相続人全員で負担するのが一般的です

費用の分担方法は自由ですが、大きな金額を相続した人と少額を相続した人の負担が同じだと、相続額が少ない人から不満の声が上がるかもしれません。

個々の相続割合に応じて負担費用をあん分すると、不満が出にくくなります。

弁護士費用は依頼した人が負担する

基本的に弁護士は依頼主の利益を最優先して、各種調査や調停を実施します。弁護士を雇うことによって、利益を得られるのは依頼主のみで、他の相続人にメリットはありません。

遺産分割協議にまつわるトラブルなどで弁護士を立てた場合、費用負担の義務を負うのは依頼主のみです

一方で弁護士が「遺産分割協議書の作成のみ」を請け負った場合は、相続人全員にメリットが生じます。弁護士が中立な立場で実施した業務については、相続人全員で費用を負担してもよいでしょう。

ただし弁護士の主要業務は紛争の解決や予防であり、書類作成は付随業務にすぎません。弁護士が遺産分割協議書の作成のみを引き受けるケースは、極めてまれです。

遺産分割協議書の作成は専門家に依頼しよう

遺産分割協議書の作成費用は、依頼する専門家によって異なります。

選択できる依頼先として、弁護士・司法書士・行政書士・税理士があります。依頼先を選ぶ際には「紛争の可能性があるか」「不動産登記が必要か」「税務処理が必要か」「遺産分割協議書の作成だけでよいのか」といった点を考慮して、最適な依頼先を選択しましょう。

遺産分割協議書は税の申告や不動産・預金の名義変更などで必要になります。専門家に依頼して適切な協議書を作成しておけば、相続に関するトラブルを回避しやすくなるはずです。

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