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不動産査定の基礎知識を総まとめ。売却を成功させるためのコツは?

最終更新日: 2024年04月10日

不動産の売却を不動産会社に依頼する場合は、不動産査定が行われるのが一般的です。不動産の査定価格は売却価格に影響するため、不動産の売却を検討しているなら、不動産査定をしっかりと理解しておきましょう。不動産査定の基本について詳しく解説します。

不動産査定の意味と目的

不動産査定は不動産の売却における重要なプロセスです。具体的にどのような意味があるのか、不動産査定の目的と併せて解説します。不動産査定の種類も理解しておきましょう。

推定売却価格を算出すること

不動産査定とは不動産が売却できそうな価格を算出することです。土地や建物の現在の価値はどのくらいなのか、実際にいくらで売れそうなのかを、不動産査定で調査します。

不動産を売却する際は、売り出し価格を決める必要があります。売り出し価格は購入希望者が購入を検討する際の参考になるため、不動産査定は売り出し価格の目安を決める重要なプロセスなのです。

また、住宅の買い替えを検討している場合、売り出し価格の目安は資金計画を立てる際の参考になります。新居を購入するためにいくら足りないのかが分かれば、資金を準備しやすくなるでしょう。

不動産が売れるまでには数カ月かかる場合もあります。実際の売却価格に基づいて資金計画を立てるより、不動産査定の段階で計画を立てた方が、より早く準備に取り掛かることが可能です。

不動産の査定価格は、不動産会社により大きく異なるケースがあります。売却したい不動産の相場をきちんと把握するためにも、不動産査定の基本を理解しておくことが重要です。

不動産会社・不動産鑑定士・銀行による査定がある

個人が不動産を売却する場合は、不動産会社に査定を依頼するのが一般的です。不動産会社による査定の方法には、AI査定・簡易査定・訪問査定の3種類があります。不動産会社が査定を行う際、基本的に費用はかかりません。

裁判や離婚調停で不動産を調査するケースでは、不動産鑑定士が査定を行います。不動産鑑定士の査定は非常に細かく複雑である上、不動産会社の査定と異なり有料です。

不動産会社の査定は遅くとも2週間程度で終わりますが、不動産鑑定士の査定は結果が出るまでに1カ月以上かかる場合もあります。手間や時間をかけて精度の高い調査を行うのが、不動産鑑定士による査定の特徴です。

不動産鑑定士に査定を依頼する

不動産会社や不動産鑑定士以外に、銀行が不動産査定を行うケースもあります。住宅ローンの対象となる不動産に対して行われるのが、銀行の不動産査定です。各銀行で独自の方法で調査を行うため、査定結果も銀行ごとに異なります。

本記事では不動産会社による査定について解説していきます。

不動産査定の方法3種類とメリット・デメリット

不動産の査定方法は、AI査定・簡易査定・訪問査定の3種類です。不動産や売主の状況により、適した査定方法は異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、状況に合った査定方法を選べるようにしておきましょう。

AI査定

AI査定は過去の売却事例を基にAIが行う査定です。物件情報やメールアドレスなどをウェブ上に入力するだけで、AIが物件情報と過去の膨大な売却事例を照らし合わせて算出します。

AI査定のメリットは査定価格が短時間で分かることです。大まかな査定価格をすぐに知りたい場合は、AI査定が適しています。個人情報の入力が少ないことや、不動産会社と直接やり取りせずに済むことも、AI査定のメリットです。

一方で、AI査定はあくまでも簡易的な調査であるため、他の2つに比べ精度が低くなります。特に一戸建ては条件の差が大きく、品質や性能に大きな差がないマンションに比べて似たデータが集まりにくいことから、査定結果の精度が落ちる恐れがあります。

昔からある簡易査定や訪問査定と違い、AI査定は比較的新しいタイプの査定方法です。不動産の査定価格を参考程度に知りたい方や、査定後に不動産会社とやり取りしたくない方は、AI査定を利用してみるのもよいでしょう。

簡易査定

不動産会社の営業担当者とやり取りを行い、査定価格を算出してもらう方法が簡易査定です。営業担当者が机上で査定を行うことから、机上査定とも呼ばれます。わざわざ不動産会社に足を運ぶ必要はなく、営業担当者とは電話やメールでのやり取りが可能です。

簡易査定の結果は数時間~数日で分かります。AIではなく人が査定を行う上、過去のデータ以外に最新情報も加味して調査してくれるため、AI査定に比べ精度が高いこともメリットです。

また、簡易査定は一戸建てとマンションの両方に対応しています。一戸建ての調査が向かないAI査定と異なり、簡易査定では一戸建てもきちんと査定してもらうことが可能です。

簡易査定のデメリットとしては、訪問査定に比べ精度が低いことが挙げられます。訪問査定では物件を実際に訪れて調査を行いますが、簡易査定ではあくまでも簡易的な情報のみを利用するため、どうしても精度が低くなってしまうのです。

また、簡易査定は営業担当者が調査を行うことから、営業担当者とのやり取りも発生します。不動産会社とコミュニケーションを取りたくない方には向いていないといえます。

訪問査定

訪問査定は不動産会社の営業担当者が、実際に物件を訪れて行う査定です。不動産そのものに関する詳細な調査を行うほか、周辺環境や立地条件も査定の対象になります。

簡易査定よりさらに高精度の結果を得られることが、訪問査定のメリットです。簡易査定では利用できないデータも調査で使われるため、簡易査定とは大きく異なる査定価格が算出される場合もあります。

訪問査定では実際に営業担当者と顔を合わせることから、価格の相談を行うことも可能です。売主のさまざまな事情に対し、柔軟に対応してもらえる可能性があります。

一方で、訪問査定は結果が出るまで時間がかかります。1週間~2週間は見ておかなければならないため、査定価格を早く知りたい方には不向きです。

不動産を急いで売却したかったり、正確な査定価格を知りたかったりする人は、訪問査定を選ぶとよいでしょう。

不動産査定を受ける前の準備と必要書類

不動産査定を依頼する際は、以下に挙げる書類の準備を求められます

  • 権利証または登記識別情報通知書
  • 確定測量図(一戸建てや土地の売却時のみ)
  • 間取り図(一戸建ての売却時のみ)
  • 分譲時のパンフレット(マンションの売却時のみ)

また次の書類を用意しておくと、物件の価値が高まる可能性があります。

  • リフォームの履歴が分かる書類
  • 新耐震基準に適合していることを証明できる書類
  • インスペクションの結果報告書
  • 瑕疵(かし)担保保険の付保証明書

訪問査定を依頼する場合は、物件や周辺環境の魅力をまとめておくのがおすすめです。営業担当者に魅力を直接アピールできるため、査定価格アップにつながりやすくなります。

マンションを売却する際は、管理費や修繕積立金の滞納を解消しておきましょう。滞納があっても売却は可能といわれていますが、売却後に買主が滞納額を一括で支払うことになるため、売れにくい原因にもなりかねません。

不動産会社により査定価格は異なるため、売却額の相場を自分で調べておくことも大切です。相場を調査して基準を設けておけば、妥当な金額かどうかを判断しやすくなります。

不動産査定の流れ

簡易査定や訪問査定を受けるためには、最初に不動産会社へ査定を申し込む必要があります。不動産会社に直接電話、またはメールで問い合わせれば、査定を依頼することが可能です。

訪問査定を受ける場合は、営業担当者が現地調査を実施する日時を決めておく必要があります。現地調査の日時が決定したら、必要書類を準備して手元に置いておきましょう。

訪問査定当日は基本的に立ち合いが必要です。ただし調査対象となる不動産が土地のみ・空き家の場合は、立ち合いが不要なケースもあります。現地調査が行われる一般的な時間は1~2時間程度です。

現地調査が完了したら、1週間程度で不動産会社から不動産査定書が提示されます。不動産査定書とは査定結果が記載された書類のことです。不動産査定書の内容を確認した上で、不動産会社に売却を依頼するかどうかを決めることになります。

訪問査定を受ける前にAI査定や簡易査定を受け、査定価格を確認した上で訪問査定を受ける会社を絞れば、何度も複数社の訪問査定を受けずに済みます。

不動産の査定価格の計算方法

不動産の査定価格は不動産の種類により、3種類の計算方法のうち適したものを用いて算出されます。売主が計算方法を決めるわけではありませんが、不動産査定に関する理解を深めるためにも、査定価格の計算方法について見ていきましょう。

  • 取引事例比較法
  • 原価法
  • 収益還元法

取引事例比較法

取引事例比較法は周辺の似た物件の取引事例を参考に査定する方法です。あらゆる不動産の査定で利用でき、特に中古の一戸建ての土地部分やマンションの査定でよく用いられます。

取引事例比較法で考慮されるのは、主に以下の4つです。

  • 事情補正:離婚や転勤といった事情により急いで売却された事例を排除する
  • 時点修正:直近の取引のトレンドを見極めて査定価格を修正する
  • 地域要因:渋滞・騒音・治安などに関する地域格差を考慮する
  • 個別的要因:リフォームの有無や日当たりなど不動産の個別の違いを考慮する

このように取引事例比較法では、不動産のさまざまな要素が査定価格に影響を及ぼします。最初に過去の取引事例から価格を算出し、上記4つを考慮して査定価格を修正していきます。

新しい取引事例が多いほど査定の精度が高くなるため、取引事例を豊富に抱える不動産会社に依頼すれば、より高精度な査定をしてもらえるでしょう。

原価法

現在の建物を取り壊して同じ建物をもう一度建てた場合に、いくら必要なのかを計算して査定する方法が原価法です。主に一戸建てや土地の査定で利用されます。

原価法による一戸建ての建物部分の具体的な計算方法は次の通りです。

査定価格=再調達単価×面積÷耐用年数×残存年数

耐用年数は木造22年や鉄筋コンクリート造47年など、税法で定められたものを使います。また残存年数とは耐用年数から築年数を引いたものです。つまり原価法で査定価格を求める場合は、築年数に応じた減価修正が必要となります。

以下の条件の物件で実際に査定価格を計算してみましょう。

再建築した場合の坪単価:40万円

面積:30坪

構造:木造

築年数:10年

40万円×30坪÷22年×(22-10)=約655万円

土地も一緒に売却する場合は土地の査定価格も別途計算し、上記の金額との合計が査定価格の総計になります。

収益還元法

収益還元法は物件の収益力に基づいて金額を算出する査定方法です。収益が発生する投資用不動産の査定時に用いられます。収益還元法で使われる計算方法は、直接還元法とDCF法の2種類です。

直接還元法では1年間の純利益を還元利回りで割り、不動産の査定価格を算出します。例えば、家賃15万円で年間の管理費が15万円の区分マンションを売る場合、還元利回りが6%なら査定価格の計算式は以下の通りです。

(15万円×12カ月-15万円)÷6%=2,750万円

DCF法とは将来の純利益と売却予想価格を、現在の価値に変えて合計する計算方法です。複雑な計算を行う必要があり、一般的には直接還元法が用いられます。

不動産査定で見られるポイント

不動産査定では不動産の売却理由を聞かれるのが一般的です。売却理由により販売戦略が変わってくるため、正直に伝えることが重要です。

ローンの残債があるかどうかも確認されます。不動産を売却してもローンを完済できない場合、不足分を自己資金から捻出しなければなりません。

物件の状況については、主に以下のようなことが見受けられます。

  • 築年数:基本的には古いほど価値が下がる
  • 室内や設備の状態:リフォームの有無や設備交換、瑕疵があるかどうかなど
  • 外装:劣化・破損があると価値が下がる

雨漏りや建物の傾き、シロアリ被害といった瑕疵は、売却後のトラブルになりやすいため隠さずに伝えましょう。しっかりと調査・検査などを実施している場合は、結果報告書を見せることで売却時のアピールにつながります。

営業担当者は不動産の周辺環境もチェックします。実際に住んでいる人でなければ分からないことも多くあるため、周辺環境の魅力をまとめておき、訪問査定の際に伝えるのがおすすめです。

不動産査定書の見方

不動産査定の結果は不動産査定書で分かります。不動産査定書には決まった書式がありません。一般的な不動産査定書には以下のような項目が記載されています

  • 査定した不動産の概要:住所・面積・築年数・間取りなど
  • 査定価格:担当者が見積もった金額
  • 査定価格の根拠:加点・原点のポイント
  • 売り出し価格:実際に売り出す際のおすすめ価格
  • 参考にした取引事例:査定価格の算出時に用いられた事例
  • 営業担当者のコメント:不動産の強み・弱みや販売戦略など

不動産査定書を見る際は、査定価格の根拠が明記されているか確認しましょう。査定のポイントを丁寧に記載している査定書は信頼できるといえます。一方で「当社に任せれば安心です」のようなうたい文句を並べているだけの査定書には、注意が必要です。

担当者に会わずに査定書のみで判断する場合は、担当者のコメントに説得力があるかをチェックする必要があります。

査定書を見極める際に見るべきポイントとしては、売却活動におけるリスクの有無も挙げられます。不動産の売却には何かしらのリスクがつきものです。リスクがきちんと記載されている査定書なら信頼できるといえます。

不動産査定を受けるときの注意点

不動産査定にはいくつか気をつけておくべきポイントがあります。不動産会社選びで失敗しないためにも、不動産査定を受けるときの注意点を押さえておきましょう。

  • 査定価格で売却できるとは限らない
  • 査定は営業手段である

査定価格で売却できるとは限らない

不動産査定で算出された査定価格は、最終的な売却価格を保証するものではありません。査定価格はあくまでも売り出し価格の目安にするものであり、売り出し価格で売却できるとも限らないのです

最初に設定した売り出し価格でなかなか売れないケースでは、不動産会社から値下げを提案される場合があります。最終的に売り出し価格より安い価格で売れた場合、高い査定価格を提示した不動産会社を選んでも、無意味になってしまうでしょう。

値下げを強いられると、資金計画の見直しも余儀なくされることにつながります。不動産査定の結果で不動産会社を選ぶ際は、より適切だと思われる査定価格を見極めることが重要です。

どうしても査定価格で売却したいと考えるなら、買主を探して売却する『仲介』ではなく、不動産会社に不動産の『買取』を依頼する方法もあります。不動産会社の買取なら、最初に売却価格を確定できるため、すぐに不動産を売却することが可能です。

ただし不動産会社の買取を選択した場合、売却金額は相場の60~70%程度まで下がるといわれています。不動産をできるだけ高く売りたい場合は、買取ではなく仲介により買主を探してもらう方がよいでしょう。

査定は営業手段である

不動産査定は不動産会社の営業手段の1つです。不動産会社にとっては媒介契約の締結が最終的な目的であるため、査定は無料で行われます。

提示額が高い不動産会社は、自社を選んでもらいやすくするために、将来的な値下げを見越し、査定価格を高めに設定している恐れがあります。

相場や他社より査定価格が高い査定書を見る場合は、査定価格の根拠をしっかり確認することが大切です。信頼できる不動産会社なら、査定価格が高くなる根拠を丁寧に示してくれるでしょう。

不動産の売却を成功させるコツ

不動産の売却を成功させるためには、信頼できる不動産会社の選定が大切です。余裕を持った計画を立てることの重要性も理解しておきましょう。

  • 複数社の査定から信頼できる会社を選ぶ
  • 余裕を持った売却計画を立てる

複数社の査定から信頼できる会社を選ぶ

不動産の査定価格は不動産会社により異なります。査定調査の方法が不動産会社ごとに異なるほか、契約を取るためにあえて高い価格を提示する会社も存在するためです。

不動産の売却を成功に導きたいのなら、複数の会社に査定を依頼しましょう。集まった査定から最も高い価格を選ぶのではなく、より適切な価格を提示する会社を選ぶことが重要です

高い査定価格を提示する会社に対しては、価格の根拠をきちんと確認する必要があります。自分でも相場を調べておけば、査定価格を判断する際の参考になるでしょう。

余裕を持った売却計画を立てる

不動産は売却を依頼してからすぐに売れるわけではありません。仲介による売却は、一般的に3カ月~1年程度かかるといわれているため、余裕を持った計画を立てることが大切です

早期で売却する計画を立てた場合、なかなか売れなければ値下げせざるを得ない状況にも陥りかねません。できるだけ早く不動産を売却したい場合は、以下に挙げるポイントを考慮しましょう。

  • 適正な売り出し価格を設定する
  • 複数の不動産会社に仲介を依頼できる『一般媒介』で売り出す
  • 買取を選択して不動産会社に買い取ってもらう
  • 不動産が売れやすい引越しシーズンに売り出す

不動産査定を理解し適切な価格設定を

不動産査定とは不動産が売れそうな価格を導き出すことです。不動産会社に査定を依頼すれば、無料で査定を行ってもらえます。不動産査定の方法はAI査定・簡易査定・訪問査定の3種類です。

査定価格はあくまでも売り出し価格の目安であり、査定価格で売却できるとは限りません。そのため、最も高い価格を選ぶのではなく、適正な価格を提示する不動産会社を選ぶことが大切です

不動産査定は不動産売却における重要なプロセスであり、資金計画にも大きな影響を与えかねません。適切な価格設定にするためにも、不動産査定のことをしっかりと理解しておきましょう。

不動産鑑定士に査定を依頼する

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