外国人労働者の受け入れは、人手不足に悩む日本企業の解決策として長年議論されてきました。
しかし、いざ受け入れたくても「どうやって受け入れたら良い?」「トラブルは起こらない?」など不安も多いのではないでしょうか。
この記事では外国人労働者受け入れの現状や制度、メリットや具体的な手順などをわかりやすく解説します。
日本の外国人労働者受け入れの現状
少子高齢化における人手不足が慢性化している日本では、政府が外国人労働者の受け入れに積極的です。
日本の生産年齢人口は1997年から減少し続け、状況は他の先進国と比べて特に顕著に悪化の一途。今後も減少傾向は続き、2017年~2030年の13年間で約600~800万人ほど減少すると言われています。
そのため、労働力の確保が急務と言われており、国外からの優秀な労働者をどう採用するか、政府を中心に議論が進められているのです。
外国人労働者は年々増加している
増加の理由は
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などが挙げられます。
また国別に見るとベトナムやフィリピン、中国からの労働者が多く、アジア圏の方が多いことも特徴です。
近年は新型コロナウイルスの影響もあって増加率は下がっているものの、日本にやって来る外国人労働者は増え続けています。
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外国人労働者受け入れを可能にする制度
現在、日本では外国人が国内で生活・労働をするための在留資格が複数種類存在しています。
多い順にそれぞれ以下の在留資格が主です。
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身分に基づく在留資格
「永住者」「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」「定住者」を総称して身分に基づく在留資格と定めています。この在留資格は、居住期間や職種に制約を受けることがありません。
「永住者」は生涯を日本に生活基盤を有して過ごす者とされています。10年以上継続して日本に滞在しているやその他素行が善良であるなどの要件を満たし、法務大臣が永住を認めた者のみ「永住者」としての資格を与えられます。
また「定住者」は特別な理由を考慮し、一定の在留期間移住を認める者です。
難民や日系人などの地位に該当する外国人が「定住者」としての資格を与えられます。
専門的・技術的分野の在留資格
専門的・技術的分野の在留資格とは、学歴要件や知識・経験などを基準に与えられる在留資格です。
この資格は職業によって在留可能期間が異なりますが、基本的には更新が可能で通年での採用もできる資格となるでしょう。
以下の職業が活動例とされています。
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技能実習
技能実習とは、外国人技能実習生を企業が受け入れ、労働で習得した技術と知識を母国の発展に活かしてもらうための在留資格のことを指します。1993年に創立されました。
技能実習制度は、企業単独型と団体管理型の2つに分かれています。
日本の企業が単独で現地の人材を受け入れる企業単独型制度と、管理団体が受け入れ、会員企業に実習を行わせる団体管理型です。
最長5年の在留期間となりますが、技能実習生第1号→第2号→第3号に実習生の在留資格を更新させる必要があります。
都度職種や作業内容で更新できるかどうかが変わるため、注意が必要です。
詳しくは厚生労働省のホームページを確認してみてください。
資格外活動
資格外活動とは本来の在留資格で許可された活動以外の名目で、労働できる制度です。
例えば「留学」として日本にやってきた外国人をアルバイトとして、採用することができます。
ただしこの在留資格は、1週間で28時間以内しか労働できないなど、制約があるため注意が必要です。
基本的に別の在留資格を持っていて、資格外活動の許可を申請していないと労働が認められないため、雇う場合は在留カードで許可を受けているかを確認しましょう。
特定活動
特定活動とは、法務大臣が外国人の活動を指定し、その活動の内容により在留期間や就労の可否が定められている在留資格です。
主に大学や専門学校を卒業した留学生が就職活動を希望した場合や、外国の大学からインターンシップとして訪日した場合などに適応されるでしょう。
この「特定活動」は以下3種類に分かれています。
- 法定特定活動
- 告示特定活動
- 告示外特定活動
主に種類によって、労働の可否や働くことのできる職種が異なるため、どの特定活動に該当するのかはチェックをしましょう。
新たな在留資格制度、特定技能1号と特定技能2号
入管法改正により2019年4月1日から、外国人労働者は新しい在留資格「特定技能1号」または「特定技能2号」を持って日本で働くことができるようになりました。
特定技能1号と特定技能2号の新設
特技技能1号と2号の違いは以下の通りです。
特技技能 | 1号 | 2号 |
在留期間 | 5年 | 上限なし |
必要な技能 | ある程度 | 熟練された技能 |
日本語能力 | 業務に必要な日常会話 | なし |
対象業種 | 自動車整備業、介護、農業、外食業、航空業、宿泊業、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、素形材産業、産業機械製造業、電気電子情報関連産業 | 建設業、造船・舶用工業の2業種に限定 |
特定技能を有する外国人労働者の受け入れを行うことで、一定の技能水準が保証されるため、より一層優秀な外国人労働者を受け入れることが可能になります。
まだ施行から年数が経っていないため、該当する外国人労働者は少ないですが、今後即戦力の確保に対して非常に注目されている制度といえるでしょう。
上記以外の在留資格や詳しい情報を確認したい場合は、以下を参照にしてください。
外国人労働者を受け入れるメリット
外国人労働者の採用は企業に様々なメリットをもたらします。
意欲的な人材を確保できる
企業の人手不足の解消と、スムーズな労働力の確保を実現できるのが、外国人労働者受け入れのメリットです。
とりわけ慢性的な人手不足に陥っている業界は、言葉の壁や文化の違いはあるものの、少しでも労働力を確保したいと考えています。
外国人の中には日本で働くことに意欲的な人材も多いため、専門技能やスキルを有している外国人労働者を雇用すれば、生産性の向上にもつながるでしょう。
海外とのビジネスに対応できる
日本にやって来る外国人労働者は、母国語だけでなく、英語を含む複数の外国語を話せる人材も珍しくありません。
語学に秀でた人材を雇用すれば、日本を訪れる海外のビジネスパーソンとのコミュニケーションが活性化され、結果として自社の顧客層を広げられる可能性があります。
さらに海外展開を考えている企業にとっては、自社と海外企業との橋渡し役として活躍してもらうこともできるでしょう。
発想力や技術力が高まる
外国人労働者の積極的な受け入れによって、組織に多様性が生まれ、発想力や技術力が高まるメリットがあります。
自国の文化を尊重するのはもちろんですが、海外の文化や考え方を積極的に取り入れることで、商品やサービスのイノベーションに繋げていくことも可能です。
事実、さまざまな国の文化や長所を学び、事業に導入することで、国際競争力の高いサービスを生み出している企業は少なくありません。
外国人労働者受け入れの方法
次に、外国人労働者を受け入れるための具体的な手順を解説します。日本人を雇用するよりも時間はかかりますが、手順はそれほど複雑ではありません。
求人広告や公的機関を利用して募集する
まずは求人広告やハローワーク、外国人雇用サービスセンターをはじめとした公的な期間を利用して人材を募集します。近年は人材紹介会社でも、外国人労働者の紹介を行っているケースは少なくありません。
外国人専門のマッチングサイトもあり、派遣やアルバイトを募集するのに便利です。大学や日本語学校などから紹介を受ける方法もあります。
在留資格の有無を確認する
雇用したい人材が見つかったら、必ず在留資格の有無を確認しましょう。日本の場合、出入国管理及び難民認定法(いわゆる「入管法」)に規定されている在留資格の範囲でのみ、外国人の就労が認められています。
採用したい外国人が所持している在留資格のカテゴリーが、職種や就労内容と合致していなければいけません。カテゴリーが異なる場合、在留資格の変更手続きが必要となります。
日本で就労する外国人のカテゴリーについては、厚生労働省のホームページを確認しましょう。
労働条件を決定し雇用契約を結ぶ
在留資格を確認したら、採用する外国人と話し合いの上で労働条件を決定し、雇用契約を結びます。雇用契約書の内容は、日本人を雇用する場合と同じで問題ありませんが、採用する外国人の母国語や英語などでも記載しておくのがベストです。
厚生労働省が外国人向けの労働条件通知書(雇用契約書)の例と、具体的な記載項目を解説した資料を公開しているので、こちらを参考にすると良いでしょう。
外国人雇用状況の届出を提出する
外国人を雇用した場合は、インターネットやハローワークなどを介して「外国人雇用状況の届出」を提出する必要があります。
これはすべての雇用主に義務付けられており、当該外国人の氏名と在留資格、在留期間などの必要項目を記載して提出しなければいけません。
提出を怠ったり虚偽の情報を記載して提出したりすると、30万円以下の罰金が科せられます。被保険者の場合と、被保険者以外の場合とで書式などが異なるため、詳しくは厚生労働省のパンフレットを確認しましょう。
外国人労働者を受け入れる際の注意点
最後に、外国人労働者を受け入れる際に注意すべきポイントを解説します。日本人の雇用に比べて手続きが複雑なので、事前にしっかりとルールを確認しておきましょう。
意思疎通の齟齬が起こりやすい
雇用する外国人労働者の日本語レベルによって、現場での意思疎通が難しい場合があることを想定しておかなければいけません。言語の違いに加えて、習慣や文化の違いにも配慮する必要があります。
日本人だけの職場では起こりづらい意思疎通の齟齬(そご)が発生する可能性もあるため、はっきり正確に伝えることが大切です。雇用する外国人の国や文化の特徴を理解し、コミュニケーションの方法に工夫をしましょう。
手続きが煩雑になる
日本人を雇用する場合に比べて、外国人労働者の雇用手続きは煩雑になります。在留資格のカテゴリーによっては就労できない職種もあるので、雇用主は就労のルールを必ず確認しておきましょう。
十分な知識や手続きを経ずに外国人労働者を雇用すると、不法就労の助長とみなされてしまう可能性があります。ルールや手続きが分からない場合は、公共機関や社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。
外国人労働者の受け入れに成功している企業
実際に外国人労働者の受け入れを行い、成功している企業を紹介します。
楽天株式会社
2010年に社用公用語を「英語」に切り替え、外国人労働者の受け入れを積極的に行っている企業です。
2014年入社の開発職は、約100人中8割以上が外国籍であり、出身国は60カ国以上と幅広い採用を行っています。
企業の基準をグローバル基準にすることで、新しい視点を得られるそうです。
パナソニック電工株式会社
日本人のグローバル化と伴い、本社におけるグローバル化が必要だという考えのもと、積極的に外国人労働者の受け入れを行い、現在では300人以上の外国人労働者を受け入れています。
国籍も中国、アメリカ、コロンビア、イタリア、インドネシアなど様々であり、多様な人材の確保を行っています。
おすすめの外国人材管理ツール
外国人材の管理を効率的に進められる、おすすめのツールを紹介します。
AIRVISA
「AIRVISA」は外国籍従業員のビザ管理や申請をオンラインで行えるサービスです。コンプライアンス体制の強化と管理担当者の負荷削減をサポートします。
たとえば在留カードをアプリで読み取れば、氏名や資格情報などを自動でテキスト化することが可能。ICチップを通じた本人確認も行えます。また就労条件も入管法で定められた在留資格に応じて自動で判定します。
深い専門知識がなくても正確な情報管理を実現し、法令違反を防止します。
dekisugi
「dekisugi」は使いやすさに定評のある外国人材管理ツールです。技能実習と特定技能にかかる管理業務をシステムで一元管理できます。
マスター登録によるデータの自動反映や、受入状況やスケジュールを確認できるダッシュボードなど、豊富な機能を搭載。現場の業務フローをシステム化できるので、マニュアルとしての運用も可能です。
データの自動化や可視化によって、業務効率化を実現します。
外国人労働者を受け入れて人材不足の解消を
外国人労働者を受け入れるメリットや具体的な手続き、守るべきルールについて解説しました。外国人労働者の受け入れは、意欲的な人材確保や海外展開の後押しになるなど、さまざまなメリットがあります。
ただし、日本人の採用より手続きが煩雑で、守るべきルールも多くあります。正しい知識を持っておかなければトラブルに発展する可能性があるので、十分に準備をした上で外国人労働者の受け入れを行いましょう。
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