入社後しばらくの期間として設定されることの多い「試用期間」。しかし「正直、どのような期間なのかわからない」「何のためにあるの?」という方も多いのではないでしょうか。
解雇の有無や給料の支払いなど、試用期間の気になるポイントをわかりやすく解説します。
試用期間とは採用者の適正を見極める期間のこと
試用期間とは、採用者の適正を見極める期間のことです。「業務を遂行する能力・スキルが十分で、会社の戦力になりそうかどうか」「業務内容や社風が合っていて、これからも継続的に勤務できそうかどうか」を企業と採用者の双方が判断します。
3ヶ月や6ヶ月など一定の期間を終え、企業と採用者のそれぞれが「問題ない」と判断すれば本採用にいたります。試用期間は長期雇用を前提とした「相互理解を深めるための期間」だと考えるとよいでしょう。
期間の目安は3ヶ月【1ヶ月~6ヶ月での設定がほとんど】
試用期間は3ヶ月に設定されるケースが最も多く、ほとんどの企業が1~6ヶ月の範囲内で期間を設定しています。労働基準法による明確な定めはないものの、最長限度は1年と解釈されています。
人材の採用にあたっては、筆記テストや面接などを通じて応募者が自社にとってふさわしいか確認しますが、それだけでは本当に求める能力や適性があるか判断するのは難しいのが実態です。
そのため実際に働いてもらいながら、日々の仕事ぶりや勤務態度、ビジネス上の課題への取り組みなどを評価します。期間終了後の本採用をスムーズに迎えるためにも、企業と採用者の双方が適正をはかる姿勢が求められます。
研修期間との違いは通常業務を行うかどうか
試用期間とよく似ている研修期間。しかし、両者には「通常業務を行うかどうか」といった明確な違いがあります。
試用期間 |
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研修期間 |
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試用期間では業務の適性をはかるために通常業務を行いますが、研修期間においてはその通常業務をこなすための教育を実施します。
たとえば研修期間では、接客マナーや業務のロールプレイングなど、業務に関する基礎的な部分を学ぶことが主な業務内容です。新卒採用者が対象となる場合が多く、中途採用者は即戦力の人材として研修期間が設定されない場合も少なくありません。
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試用期間でも正当な理由が無い限り解雇・クビにはならない
試用期間であっても「継続的な雇用が適当でない」と判断できる正当な理由がない限り、企業は採用者を解雇やクビにはできません。
試用期間中は使用者と採用者において労働契約が締結している状態なので、不当な理由で契約を破棄すると企業が労働基準法に違反することになります。
たとえば「なんとなくイメージと違った」「期待していた能力と違う」などは不当な理由です。また正当な理由がある場合でも第三者からみた正当性が担保されている必要があり、社会通念上相当と認められなければなりません。
つまり、採用を決定するまでに知られなかった事実を確認し、客観的にみても解約権を使うのが適切だと判断できる場合のみ試用期間中の解雇が認められるのです。
「ミスをするとすぐにクビになるのでは…」と思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。
試用期間中の解雇が認められるケース
「継続的な雇用が適当でない」と判断され、試用期間中の解雇が認められるケースは以下のものが例として考えられます。
- 正当な理由がなく遅刻や欠席を繰り返し、改善がみられない
- 履歴書や職務経歴書の内容に虚偽があり、社内の秩序を乱している
- 勤務態度が常軌を逸するほど悪く、業務担当が困難
- 病気や怪我によって一時的に休職した後も継続的な就業が難しい
いずれの場合においても第三者が見て正当だと認められる必要があり、具体的な事実を証明する証拠が必要です。具体的な事実や証拠がないにも関わらず、試用期間だからといって解雇に結びつけることは認められていません。
退職したい場合は退職の2週間前までに伝える【就業規則もチェック】
もしも試用期間を経て退職を決めた場合は、退職日の2週間前までに伝える必要があります。これは労働基準法によって定められたルールです。
また会社によっては「退職の1ヶ月前までに申し出る」などの内容を就業規則として定めているケースもあります。
雇用契約が結ばれている以上、企業が採用者を正当な理由なくクビにできないのと同様に、採用者も正式な手続きをせずに会社を辞めることはできません。
試用期間の給料は本採用と同様【残業代も支払われる】
試用期間の給料は本採用と同様の水準で支払われます。企業と採用者の間で正式な労働契約が結ばれている以上、残業や休日出勤、深夜労働を行った場合は割増賃金も発生します。
採用者と企業双方の合意がないと減額は認められない
「まだ仕事を覚えていない」「まだひとりで仕事を任せられない」などの理由による、試用期間中の給料減額や残業代の未払いは認められていません。
雇用契約の際に採用者と企業双方の合意があってはじめて、本採用時の給与より低い金額水準での設定が認められます。
特例が適用されるケースも
労働者の賃金について定めた最低賃金法では、試用期間中の報酬は最低賃金額を一定額まで下回ってもよいと規定されています。
これは最低賃金法第7条2項に定められている「最低賃金の減額の特例」で、次の条件を満たしたときに、最大20%まで給与額の減額が可能です。
- 最長で6カ月以内であること
- 本採用後の賃金水準が最低賃金と同程度であること
- 本採用後の労働者に比べ、対象者の給与を低く定める慣行(合理的な理由)があること
- 給与額を就業規則や労働契約などに定めていること
上記の条件を満たしたうえで特例を受ける場合には、許可申請書を各都道府県の労働局長(労働基準監督署)に提出し、許可を得なければいけません。また、企業と従業員間の合意も必要となります。
このことからも、試用期間中の給与を最低賃金以下にするケースはほとんどありません。
試用期間でも社会保険の加入は必須
試用期間であっても社会保険への加入は必須です。健康保険と厚生年金は、いわば強制加入の保険です。採用者自身や企業の都合で加入しない判断を取ることはできません。
また加入手続きはいずれも採用者本人ではなく、企業(事業主)が行う必要があります。これは義務であり、意図的に加入させないことは論外といってよいでしょう。
これらは健康保険法上で定められており、違反した事業主は6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が課せられます。
試用期間中にトラブルが起きたらまずは確認と相談を
試用期間でも会社と採用者の間には労働契約が成立しています。そのため「給料や残業代が適切に支払われない」「保険に加入させてもらえない」「一方的な解雇を示される」などの事態は本来あってはなりません。
しかし、中には試用期間の解釈を履き違えた状態で採用者に対応する企業がいるのも事実です。
もしも試用期間中のトラブルが発生したら、まずは会社の関係部署に確認と相談を行いましょう。それでも改善にいたらない場合は、労働基準監督署など行政への相談を進めることとなります。
就業規則によって定められているケースもあるので、まずは確認を進めてから関係各所に相談をしていきましょう。
ミスマッチを防いで納得のいくパフォーマンスを
試用期間は使用者となる会社と採用者の双方が、適正を見極めるための期間です。決して「お試し期間」ではなく「本採用に向けた見極め」の期間である点を、それぞれが正しく認識しておく必要があるでしょう。
「本当に採用に値する人材かどうか」といった観点よりも「今後、活躍するためにはどうすればよいのか?」といった側面から、企業と従業員がお互いに歩み寄っていく姿勢が求められます。
今後を共にするメンバーだからこそ、手厚い指導とそれに応える気概を持って双方が真摯に向き合うことが大切です。試用期間を活かしつつ適正を高めていくことができれば、それぞれが気持ちよく働ける職場環境が実現するのではないでしょうか。
ミスマッチを防ぐべく相互理解に務め、納得のいくパフォーマンスを発揮していきましょう。
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