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労務費とは?内訳や労務費率を使った正しい計算・仕訳を解説

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最終更新日: 2024年03月07日

製造業や建設業では「労務費」という言葉が出てくることがあります。人件費とどう違うのか、労務費の内訳は何なのか、字面だけでは中々判別が難しいですよね。

そこで本記事では労務費と人件費の違い、労務費の内訳、計算方法や仕訳方法から「労務費とは何か?」をわかりやすく解説します。労務費について理解し、働きやすい環境をしっかり整えましょう。

労務費とは製品の製造にかかる人件費

チェックリスト

労務費とは製品を製造するためにかかった人件費のことです。基本的には製造部門の従業員に対する人件費だと考えるとわかりやすいでしょう。

労務費は製品作りにかかる労働力の原価なので、製品作りに伴い発生します。そのため製造業や建設業など、もの作りをする企業で金額が大きくなる傾向にあります。

労務費と人件費の違い

労務費は人件費の一部で具体的には、人件費の中でも労務費は「製造部門の従業員に対し支払われる給与や賞与」と限定されます。

ちなみに人件費は労務費、販売費、一般管理費の3種類に分けられます。労務費とは異なり、販売費と一般管理費は人件費以外も含みます。

人件費の種類 定義 具体例
労務費 製品の製造に直接かかる費用
  • 賃金
  • 雑給
  • 従業員賞与手当
  • 退職給付費用
  • 法定福利費 等
販売費 製品の販売・宣伝・営業に直接かかる費用
  • 販売部門・営業部門の社員に対する人件費
  • 広告宣伝費
  • 配達費・荷造発送費
  • 販売店舗の家賃 等
一般管理費 会社の経営・管理業務にかかる費用
  • 総務・経理・人事などバックオフィスの人件費
  • 経営層の給与・報酬
  • オフィス賃料・管理費・共益費・地代
  • 水道光熱費・通信費 等
ソフトウェア比較のイメージイラスト

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労務費の内訳

労務費の内訳

労務費には賃金や従業員賞与手当、退職給付費用などが当てはまります。しかし製造に直接関わった際に発生した賃金かどうかで、直接労務費・間接労務費という2つの区分が存在します。

労務費の具体的な内訳5つ

労務費の具体的な内訳は賃金、雑給、従業員賞与手当、退職給付費用、法定福利費の5つです。

  1. 賃金
    • 製造部門に関わる正社員と派遣社員の給与のこと。残業や休日出勤などにかかる割増賃金分も含まれる。
  2. 雑給
    • 製造部門に関わる従業員のうち、時給で働くパートタイマーやアルバイトなどの給与のこと。
  3. 従業員賞与手当
    • 製造部門の従業員に支払われるボーナスや、通勤費や扶養手当などの各種手当。
  4. 退職給付費用
    • 製造部門の従業員における退職金の積立費用
  5. 法定福利費
    • 健康保険や雇用保険、労働保険や厚生年金保険など、製造部門の従業員に対する社会保険の会社負担分

労務費は直接労務費と間接労務費に分けられる

労務費の内訳は支払う対象や製造との関連度によって直接労務費と間接労務費の2種類に分かれます。

直接労務費とは

直接労務費とは直接工が製品を直接製造した分の賃金・雑給」のことです

製造において製品の組み立てや加工などに直接関わる従業員を「直接工」と呼びます。直接工には正社員や契約社員のみならず、アルバイトやパートも含まれます。つまり内訳のうち直接労務費に当てはまるのは、1.賃金2.雑給で直接工に支払われる部分のみです。直接労働費の多くは直接工に支払う賃金が中心と考えるとわかりやすいでしょう。

例えば製品Aの製造ラインのみを担当する直接工Bさんがいるとします。このときBさんに毎月支払われる給与が、直接労務費に該当する費用です。

ただし機械のメンテナンスや清掃・製品運搬などの間接作業を直接工が行った際に発生した賃金は「間接労務費」にあてはまることに注意が必要です。

間接労務費とは

製品の製造に直接は関わらないものの、製造のために必要な費用が「間接労務費」です。直接労務費に含まれない労務費はすべて間接労務費、とも考えられます。

機械のメンテナンスや清掃など製造業務を間接的に行う従業員、工場で働いているものの直接製造に携わらない監督者や事務職員を「間接工」と呼びます間接労務費のほとんどは「間接工の賃金」です。

機械の不具合や停電など、やむを得ない事情で作業ができない時間に発生する賃金も、間接労務費の一種です。また従業員が休みのときに支払われる賃金や、賞与・各種手当・退職給与・福利厚生費なども該当します

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直接労務費・間接労務費の計算方法

直接工

直接労務費の計算方法

直接労務費は以下の計算式で求められます。

直接労務費=直接工の賃率÷製品製造の直接作業時間
賃率=直接工の賃金×製品製造にかかる時間

先に求めるべきは「賃率」です。前述の例でBさんは製品Aの製造のみ担当していたものの、通常は単一の業務ではなく、複数の業務に携わることが多いでしょう。

そこで賃金のうち製品ごとにかかった費用を明らかにします。賃金を製造の直接作業時間で割り賃率を求めるのです。求めた数値を当てはめ「賃率 × 製品製造にかかる時間」で計算すれば、直接労務費が明らかになります。

ただし直接作業時間や製造にかかる時間を正確に把握しなければ、正しい数字を出せません。式はシンプルであるものの、実際に求めようとすると複雑です。原価計算にも関わる数値のため、正確さがポイントといえるでしょう。

【具体例】建設業における直接労務費の計算

建設業で労務費を計算する場合、下記の計算式に基づいて算出します。

労務費= 所要人数 (設計作業量 × 該当作業の歩掛) × 労務単価(基本日額+割増賃金)

歩掛」とは、作業ごとにかかる手間を数値にて表したものです。手間を正確に把握するための指標であり、国土交通省による公共建築工事標準単価積算基準を参考にしている企業が多いです。

材料の種類やサイズ別に、標準となる歩掛が設定されているためチェックしてみましょう。建設業の労務費は、作業の難易度・職人の熟練度によって変化しやすいとされています。

なるべく標準化した計算をするためにも、上記の計算式を用いて早期の段階から労務費を算出するよう意識しておくことが大切です。

参考:国土交通省 | 公共建築工事標準単価積算基準

間接労務費の計算方法

間接労務費は次の計算式で求められます。

間接労務費=労務費-直接労務費

労務費のうち直接労務費以外が間接労務費のため、労務費と直接労務費が明らかになっていれば引き算だけで比較的簡単に算出可能です。

また間接労務費の対象となる項目を足しても求められます。このとき注意が必要なのは、直接工である従業員の賃金の中にも間接労務費がある点です。

製造に直接関わっている時間の賃金は直接労務費です。しかし修繕や事務処理を行っている時間の賃金は間接労務費のため、忘れず合算しなければいけません。

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労務費率とは建設業における労災保険料の計算に使う比率

手のひらを広げる男性

間接労務費のうち、法定福利費にあたる労災保険料を計算するときに用いられる値が労務費です。主に建設業界で労務費を計算する際に必要な値です。

一般的な事業の場合は「賃金総額 × 労災保険率」で労災保険料を計算できます。しかし建設業などの場合は請負によって事業がおこなわれることが多く、また数次に渡って請負がされるため、正確な人数・作業時間などを把握するのが難しいとされています。

つまり「賃金総額」が把握できないため、一般的な事業と同じ計算式では労災保険料が算出できないのです。そのため建設業などにおいては労災費率を用いた計算が実施されています。

参考:労務費率について|厚生労働省

労務費率と労災保険料の計算方法

建設業の労災保険料は下記の計算式で算出します。

労災保険料= 請負金額 × 労務費率 × 労災保険率

請負金額は企業ごとに異なる部分です。

また令和3年度の場合、建設業における労務費率と労災保険率は下記の通り定められています。

業種番号 事業の種類 労務費率 労災保険率
31 水力発電施設、ずい道等新設事業 19% 0.062
32 道路新設事業 19% 0.011
33 舗装工事業 17% 0.009
34 鉄道又は軌道新設事業 24% 0.009
35 建築事業(既設建築物設備工事業を除く。) 23% 0.0095
38 既設建築物設備工事業 23% 0.0012
36 機械装置の組立て又は据付けの事業
  • 組立て又は取付けに関するもの:38%
  • その他のもの:21%
0.0065
37 その他の建設事業 24% 0.0015

実施している事業の内容によって労務費率が異なることを知り、自社のケースに基づいて労災保険料を計算しましょう。

参考:労務費率表|厚生労働省
参考:労災保険率表 | 厚生労働省

【注意】労務費率・労災保険率は厚生労働省が定期的に見直している

労務費率と労災保険率は、厚生労働省によって約3年ごとに定期的な見直しがおこなわれています。理由としては建設業の賃金実態を把握するためです。工事の請負金額だけでなく、協力企業に雇用されている人に対する賃金を含む全ての支払い賃金総額が調査されます。

労務費率と労災保険率は最低でも3年に1度はチェックするようにしましょう。

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労務費の仕訳のやり方

仕訳

工業簿記における原価計算の流れは、

①費目別計算 → ②製造間接費の配賦 → ③製造原価の計算

の3段階に分けられます。今回は①における労務費の仕訳を解説していきます。

【具体例①】賃金の支払い

[例題]

製造工場で働く工員の労務費50万円を現金で支払った。この場合の仕訳はどうなるか。

製品を製造する工員の労務費を支払っているので、勘定科目も労務費となります。仕訳は以下の通りです。

借方 金額 貸方 金額
労務費 500,000 現金 500,000

【具体例②】労働力の消費

労働力を消費した際、直接労務費は「仕掛品」、間接労務費は「製造間接費」に振り替えます。

[例題1]

当月の直接工の賃金消費額は1,500円であった。

実際作業時間は90時間で内訳は下記のようになる。

  • 直接作業時間60時間
  • 間接作業時間30時間

当月の直接工の賃金消費額の仕訳はどうなるか。

この場合、直接作業時間50時間分は直接労務費(勘定科目は仕掛品)、間接作業時間30時間分は間接労務費(勘定科目は製造間接費)として計算します。

仕掛品:1,500円 × (60時間 / 90時間) = 1,000円

製造間接費:1,500円 × (30時間 / 90時間) = 500円

よって例題1の仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
仕掛品 1,000 賃金 1,500
製造間接費 500

[例題2]

次の間接工の賃金と事務職員の給料に関する資料に基づくと、当月の消費額の仕訳はどうなるか。

当月支給 当月未払 前月未払
間接工の賃金 1,000 400 300
事務職員の給料 600 300 300

まず間接工の賃金も事務職員の給料も共に間接労務費なので、製造間接費として仕訳します。

間接工の賃金:1,000 + 400 – 300 = 1,100円 (当月の消費額)

事務職員の給料:600 + 300 – 300 = 600円 (当月の消費額)

よって例題2の仕訳は次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
製造間接費 1,700 賃金 1,100
給料 600

賃金が貸方で減少する理由は、賃金が最終的に売上原価になるから

工業簿記における賃金は、最終的には売上原価になります。しかし製品を製造するための賃金を消費した時点では、まだ製品は未完成です。

そこで未完成品を一度「仕掛品」として振り替え、その後再度「売上原価」として振り替えるという工程を踏むのです。

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労務費を計算する際の注意点

注意

実際に実務で労務費を計算する際には、複数の製品やプロジェクトを同時進行する場合の計算方法、早めに見積もりを行っておくことなど、いくつか注意点があります。労務費に関する注意点をしっかり把握し、仕訳や決算の時に慌てないようにしましょう。

複数の製品・プロジェクトが同期間に進行する場合は労務費の計算方法が異なる

複数の製品・プロジェクトが同期間に進行する場合はプロジェクト単位の労務費計算が求められます。1つの作業を完了するまでにかかる時間や1つの製品を作るためにかかる時間を算出し、プロジェクトごとに異なる賃金率をかけて試算します。

特に労務費の割合が高いとされている製造業・コンサルティング業・IT業においては、正確な労務費を把握することが今後の工数・コスト計算の要となります。全て一律で計算してしまった場合、プロジェクトごとの実態とズレが生じた労務費になってしまい、工数やコストを正確に把握できなくなるため注意しましょう。

早期の見積もりで適切な額の労務費を管理する

正確な労務費は製品が完成してからではないと計算できませんが、製造中におよその金額だけでも見積もりをしておくことが大切です。

過去に製作した別の製品にかかった時間や労務費を算出しておけば、大幅なズレがあったときに作業途中でも気づきやすくなるでしょう。

業務効率の改善を図ったり人員を調整したり改善することで、労務費の削減が叶います。労務費の早期見積もりをせず完了後の計算のみに徹した場合、労務費の膨れ上がりに気づくタイミングが遅くなります。

原価管理にも大きく響き会社の収益を悪化させてしまう原因となるため、特に配慮しておきましょう。

労務費は固定費にも変動費にもなり得る

一般的に労務費は固定費とされていますが、一部を変動費にすることもできます。例えば繁忙期のみ臨時で外部人材を雇う、正社員の賃金形態を変更する、賃金を業績と連動化する、といった手が考えられるでしょう。

労務費を変動費とみなすメリットとしては、固定費が減るため製造原価を下げられるという点がひとつ挙げられます。

一方で豊富な経験や実績を持つ従業員が自社外へ流出してしまうというデメリットも想定されます。自社の状況を慎重に鑑みてから、導入を検討すると良いでしょう。

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労務費の基本を理解してより正しい管理を

労務費は人件費の中のひとつで、製造に関わる人の給与・賞与・手当などです。

中でも直接特定の製品の製造に携わっているときの賃金が直接労務費、直接労務費以外の労務費が間接労務費です。直接製品の製造をしている従業員の賃金であっても、製品製造以外の事務処理や修繕などをしている時間の賃金は間接労務費に加えられる点に注意しましょう。

また似た言葉である労務費率は、建設業における請負工事の労災保険料算出に使われる数値です。厚生労働省が事業ごとかつ定期的に定め直しているため注意しましょう。

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