シュロの木は比較的に手間をかけずに育てられる常緑樹として知られており、一般家庭でも広く親しまれています。
育て方によっては大きく生長させられ、見映えがする点でも人気です。栽培するうえでの注意点や、剪定・伐採の仕方などについて解説します。
シュロの木を伐採する場合の費用相場は?
3m以内であれば1本あたり10,000円~、5m以上は1本あたり15,000円~です。幹の大きさや庭業者によって値段が変わるため、見積もりを取るとよいでしょう。
シュロの木の使い道は?
皮はタワシやほうきに使われます。幹は撞木(しゅもく)というお寺で鐘をつく棒として重宝されています。
シュロの木はどんな植物?
細長い葉が大きく広がるシュロの木は、幅広い層の人々から人気を集める品種です。南国をイメージする人も少なくありませんが、どのような樹木かよく知らない人もいるでしょう。
そこで国内の一般家庭でもよく目にするシュロの木の概要について解説します。
シュロの木の基本情報
植物名 | シュロ |
学名 | Trachycarpus fortunei |
科名 / 属名 | ヤシ科 / ヤシ属 |
原産地 | 九州南部 |
開花期 | 5月 |
花の色 | 黄、緑 |
花言葉 | 勝利、不変の友情 |
樹高 | 3~7m |
葉の形 | 扇状円形 |
特性 | 常緑高木、耐火性、耐潮性 |
シュロの木は幹径が10~15cm、高さは3~7mまで生長します。幹は直立した状態で上に向かって伸び、上部を枯れた葉と繊維状の葉鞘(ようしょう/鞘状になった葉の基部で茎を包む部分)が覆う形状です。
葉は幹先に集中して密生しています。径が50~80cmとなる扇状の葉は、一定の間隔で先端から葉の基部に向かって2/3程の深さにまで裂けています。そのためパッと見ると細い葉が扇上に広がっているように見えるのです。
5月になると、葉の基部から肉質の花を咲かせるでしょう。枝分かれした小さな花が集まった円錐花序(えんすいかじょ)が現れ、薄く黄色に染まった小花をたくさん付けます。秋に熟す果実は青黒く、小鳥たちの餌になっています。
シュロはヤシの仲間
ヤシ科シュロ属に分類され、国内で広く知られる品種は「ワジュロ」です。「ワジュロ」と中国でよく見られる「トウジュロ」の交雑種は「アイジュロ」です。
森や公園、家など本来ならシュロが生えない場所にあるシュロのことを「ノラジュロ」と呼びます。鳥がシュロの種子を遠くに運ぶことで、ノラジュロが育つのです。
シュロの木が勝手に生える場合は、鳥の仕業である可能性があります。木を根元から掘り上げて対処してください。
ノラジュロが増えすぎると生態系や環境に悪影響を及ぼすため、害樹として伐採されることが多いです。
生長は遅いが寿命は長い
ジュロの生長速度は遅く、1m育つのに30年以上かかります。夏のイメージを抱かれやすい品種ですが、耐寒性があるので冬でも伸び続けます。
育てるうえで手間はさほどかからず、水やりも冬場はほぼ不要です。庭植えであれば、自然に降る雨だけで十分といえます。
寿命はとても長く、100年以上は育ちます。基本的に一度植えたら枯れることはないので、慎重に検討してから育てましょう。
花言葉とその由来
シュロの木の花言葉は「勝利」や「不変の友情」です。他にも「戦勝」や「祝賀」があります。
花言葉の由来ですが、古代ギリシャ時代の競技大会が関係しています。大会の優勝者には「シュロで作った枝」と「オリーブの葉でできた冠」が贈呈される、という決まりがありました。
シュロの寿命が長く、葉が肉厚であることから「勝利」「不変の友情」という花言葉がつけられた説もあります。
シュロは縁起が悪い木ではない
シュロは縁起が悪い木ではありません。神社の釣鐘(つりがね)をつく撞木(しゅもく)として使われることが多いため、「怖い」「凶木なのではないか」と感じる人がいるのでしょう。
昔からの言い伝えもないので、安心してくださいね。
名前が似ているシュロチクは別の種類
「シュロチク」という種名を、耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。シュロとよく似た名前ですが、別の品種です。
植物名 | シュロチク |
科名 / 属名 | ヤシ科 / ラピス属 |
原産地 | 中国南部 |
樹高 | 5m程 |
葉の形 | 細長い |
美しく清潔感のある緑色の葉を付けることから「緑の宝石」とも称され、ショップや各家庭のインテリアとしても活用されています。
2m程の樹高の品種もあり、室内にも収まることから観葉植物としても人気です。耐陰性もあり、日本の気候にとても合うシュロチクは、育てやすさも魅力といえます。
シュロの木の剪定/伐採/処分方法
シュロの木の剪定方法や伐採方法、処分方法について説明します。シュロの木の伐採は非常に難易度が高いので、無理なときは剪定業者に依頼してくださいね。
自力での剪定・伐採は難しい
「伸びすぎて邪魔だから剪定したい」「丁度よい高さで生長を止めたい」と考える方もいると思いますが、シュロの木の生長スピードをコントロールすることは非常に難しいです。
木の表面は、繊維状の皮で覆われた状態です。剪定や伐採でチェーンソーなどを使用する際に、繊維に刃が引っかかりやすいため、作業にはある程度の慣れと慎重さが必要になります。
高い木を切り倒すには技術と広いスペースが必要ですが、一般的な住宅の庭だと、何度かに分けて切っていかなければなりません。また、伸びたシュロを切るにあたっては、電線にも注意が求められます。
繊維が詰まった幹はとても堅く、重さもあります。自力で作業をすることに不安がある方は、庭の業者に依頼し、剪定をしてもらいましょう。シュロの木の伐採を依頼する場合、費用相場は以下の通りです。
1本あたりの伐採費用 | |
3m以内 | 10,000円~ |
5m以上 | 15,000円~ |
ミツモアは簡単な質問に答えるだけで、複数の庭業者から無料で見積もりが送られてくるサービスです。それぞれを比較してより安いところを選べるので、最適な業者に依頼できますよ。
自力で剪定・伐採する手順
シュロの剪定や伐採作業にあたって、必要な道具は以下の通りです。
|
剪定や伐採の手順は、おおまかに次の通りです。
|
剪定・伐採の注意点
剪定や伐採をするときの注意点は3つあります。
その①:2人以上で作業をする
シュロは高く伸びる木であるため、1人で作業せず必ず2人以上で行いましょう。特に、ハシゴが外れケガをするケースが多いため、サポートは不可欠です。
その②:ヘルメットを着用する
シュロの幹はとても重さがあります。伐採で落ちてくる際に頭を打つ事故も想定されるため、作業する人は全員ヘルメットを着用してください。
その③:切り倒す角度を慎重に決める
切り倒す場合は、最も安全な方向に向けて倒すことが重要です。角度を誤ると、外壁や塀を破損しかねません。
伐採処分するときのコツ
シュロの木を伐採処分するときのコツを2つ紹介します。
コツ①:伐採の前に皮むきをする
シュロの表面は繊維状になっているため、ナタで皮むきをしてからチェーンソーで伐採しましょう。皮むきをせずに切ると、チェーンソーの刃が壊れてしまうので注意してください。
皮の繊維は基本的に柔らかいですが、中には鋭い繊維もあります。作業前に軍手をつけてから作業をしましょう。
その②:枯らすと処分しやすくなる
シュロの木を枯らしてから伐採すると処分しやすいです。木の上半分に生えている枝や花、葉を残さず切り落とすと、徐々に枯れていきます。また、根切りのこぎりで伐根する方法もあります。
自治体の方針に沿って処分を
シュロの木は基本的に可燃ごみとして出すことができます。庭業者が剪定した枝や木は「事業系資源」に分類されるため回収できません。
自治体によって異なりますが、シュロは50cmほどの大きさに切ってから捨てましょう。病害虫の被害を受けている場合は、ゴミ袋に「シュロ食虫」とペンで書いてください。
シュロの木の使い道
「処分したシュロを有効活用できないか」と考えている方もいるのではないでしょうか。シュロの木は古来より、余すことなく全てを使える木として、人々の生活に役立ってきました。あまり知られていない活用法について紹介します。
皮の繊維はタワシやほうきに
シュロの幹の繊維は、とてもしなやかで伸縮性を備えています。また、水にも強く丈夫です。そのような特性を活かし、繊維を束ねてタワシやほうきを作れば家事に活用できます。
シュロのほうきは、使うほどに風合いが増していき、掃除をする人の手にも馴染んでいきます。そのため、10~20年という長きにわたって使い続けられるものなのです。
柔軟な特徴は、タワシにすると食器や炊事道具を傷つけることなく洗える利点があります。繊維が細かい部分にまで届くため、汚れをしっかり落とす効果もあるのです。
加えて、幹の皮にはワックス効果も期待できます。植物性油脂が含まれているため、皮で畳やフローリングを掃除すると、表面に油膜を張り、保護効果が生まれるでしょう。
幹は鐘つきの棒になる
繊維はしなやかで柔らかい性質を持っていますが、幹そのものはとても堅くて丈夫です。頑丈で太さも手頃な幹は、撞木(しゅもく)といって、お寺の鐘をつく棒として昔から使用されてきました。
繊維が詰まっている幹は、重さも程よく扱いやすいものです。また、柔軟性も備わっていることから、鐘をついたときの音がとてもよいと評価されてきました。
このように、シュロの木は、生活のさまざまな面で幅広く活用されてきた樹木なのです。
シュロをうまく育てるには
栽培の経験がない人にとっては、不安がつきものです。そこで上手に育てるコツについて解説しましょう。
植え方で気をつけること
シュロを植える際に気をつけるべき点は4つあります。
その①:幼木の時期は日陰で育てる
耐陰性があり、陰樹に分類されるため、幼木の時期はできるだけ日の当たりすぎない場所に植えることが大切です。生長後に植え替えをする場合は、日当たりのよい場所でも問題ありません。
その②:上部に何もない場所を選ぶ
真っ直ぐに上へと伸びるため、上部にはなにもない場所に植えなければなりません。玄関回りのシンボルツリーにしようと軒先などに植えてしまうと、失敗の原因になります。
その③:育ちすぎないで欲しい人は鉢植えにする
「家の中で育てたい」「2m以上育つのはちょっと…」と考える方は、鉢植えを選びましょう。鉢植えは根が張れる範囲が限られているので、生長しすぎる心配はいりません。
その④:地植えでは、1本1本に高低差をつけて植える
地植えでは、1本1本に高低差をつけて植えると、育ったときに見栄えのする光景となります。シュロが並んだときに、ビジュアルに立体感が生まれるでしょう。
水の与えすぎに注意
シュロの木全般にいえることですが、水やりにはさほど神経を使わなくても大丈夫です。日本の気候であれば、自然による降雨のみで十分でしょう。
土壌には腐葉土などを使い、水はけのよい状態を保つことが大切です。水気が多すぎると吸収が追いつかず、その結果根が腐ってしまう可能性があります。
必要以上の水気や湿気は、害虫を引き寄せる原因にもなりかねません。ハダニなどが発生することがあるのです。
肥料は2月から3月に
肥料を与える回数は、年に1度だけです。与えすぎは、逆効果をもたらしてしまいます。鉢植え・直植えに関わらず、肥料を撒く時期は2~3月が適しています。
堆肥や鶏糞、腐葉土や緩効性の固形肥料を用意し、樹木の根元を取り囲むように溝を掘り、そこに撒いていきましょう。生長の速度と合わせるために、液肥を使用しないこともポイントの一つです。
もしも植えた場所の水はけが悪ければ、鹿沼土と赤玉土を混ぜることで土壌を改善できるでしょう。