自宅の庭でアズキナシを育ててみようと思い立ち、購入を検討中の人もいるかもしれません。アズキナシは丈夫で育てやすく、シンボルツリーとしての鑑賞もおすすめの樹木です。基礎知識と育て方を知り、実際に植え付けをしてみましょう。
アズキナシについて
アズキナシは春にたくさんの白い花をつける高木です。花が咲き終わった夏に鮮やかに生い茂った緑の葉が秋には黄色く色づき、冬になると今度は渋い赤色をした実がつきます。季節ごとに移り変わる色彩を、1年を通して楽しむことができるでしょう。
アズキナシの品種は2種類で、オクシモアズキナシとフギレアズキナシがあります。
アズキナシとはどんな植物?
アズキナシは4月下旬から6月にかけて、1~1.5cmの小さな白い花をたくさん咲かせる落葉性の高木です。
日本をはじめ中国・朝鮮半島・台湾に分布していて、バラ科アズキナシ属に分類されます。低山の斜面や雑木林などに自生しており、日当たりの良い場所を好む樹木です。
アズキナシの名前はその実の形と小ささに由来します。アズキナシは花が咲き終わった後に、梨に似た形をした小さな実をつけます。これが秋から冬にかけて赤くなり、最後には暗赤色になるのです。
アズキナシの実は食べることもでき、果実酒にするとほんのり甘くなります。生のままでも食べられますが、酸味や苦みが強いといわれています。
アズキナシの品種
アズキナシには2種類の品種があります。
ひとつは「オクシモアズキナシ」という品種で、主に北海道や日光、赤城山などに分布しています。葉の裏面に白くて短い毛が密集して生えており、葉の裏が白っぽく見えるのが特徴です。
もうひとつは「フギレアズキナシ」という品種で、こちらは主に東北地方・関東地方・中部地方・対馬地方に分布しています。ハート型をした薄い切れ込みのある葉が特徴です。
ほかにアズキナシと同属の類似品種として「ウラジロノキ」が挙げられます。葉の裏やガクに白い毛が密生しているのが特徴ですが、そのまま放っておくと樹形が崩れやすい点がアズキナシと大きく異なる特徴です。
アズキナシの各部位の特徴
アズキナシの花、実、葉にはそれぞれ際立った特徴があります。どれも美しい色彩なので、鑑賞するのも楽しいでしょう。
白く清楚な花が咲く
アズキナシは4月下旬頃から6月頃にかけて、直径1~1.5cmほどの白い小さな花をたくさん咲かせます。花びらは5枚あり、丸い形がとてもかわいらしく清楚な印象を受ける花です。
ひとつの花序につく花の数は6~25個ほどで、鮮やかな緑色の葉の中にたくさんの小さな白い花が集まって咲く様子は、とても鮮やかで美しく見えるでしょう。
小豆のように小さい果実
開花時期が過ぎた10~11月の秋頃には、名前の由来となった小さな果実が現れます。果実の大きさは直径1.5cmほどの小豆大で、梨に似た形をしていることが「アズキナシ」という名称の由来です。
赤い色の中に白い点が入っているのも特徴で、冬になるにつれその赤みは深く、くすんだ色になっていきます。枝いっぱいに実がついた様子からは自然の美しさが感じられることも、近年人気の理由です。
鑑賞用として楽しむアズキナシの葉
アズキナシの葉の特徴は、等間隔に規則正しく並んだ深い側脈です。葉の裏には隆起した葉脈が目立ち、表面には葉脈に沿ったくぼみが見られます。両面とも光沢があり美しく、観賞用として楽しめます。
秋になると少しくすんだオレンジ色に黄葉し、こちらも自然の風情を感じさせる美しさです。
アズキナシの育て方
アズキナシはほとんどの環境に適応できるうえ、水や肥料もほとんど与える必要がなく、大変育てやすい植物です。
植え付けも複雑なことはなく、最適な時期に正しい方法で行えば簡単に根付きます。挿し木をすれば簡単に増やすこともできるでしょう。
育てる環境
アズキナシはほとんどの環境に適応できる育てやすい植物ですが、理想的な環境は日当たりと水はけの良いところです。
暑さや寒さにも強くさまざまな気候下でも育ちますが、乾燥には弱いため真夏の強すぎる日差しや西日が株元に当たることを嫌います。庭に植える際には、西日が当たらない場所を選んで植え付けましょう。
水やりと肥料
アズキナシは水も肥料もそれほど必要ではありません。水やりは根付いた後であれば必要なく、雨水だけで十分です。ただし乾燥には弱いため、気温が高く日照り続きの夏場には、たくさんの水を与えた方がよいでしょう。
肥料もほとんど与えなくてよく、1~3月の落葉期に寒肥を与えるだけで十分です。寒肥としては固形の油かすや骨粉などの、有機質系肥料や緩効性肥料がよいでしょう。アズキナシの株の周辺に穴を掘り、肥料を埋め込む形で与えます。
寒肥を与えることで春先からの成長を促進させられるでしょう。
植え付けの方法
アズキナシの植え付けに最適な時期は1~3月の落葉期です。
根鉢の2~3倍ほどの大きさの穴を掘って植え付けます。植え付けの際は堆肥や腐葉土をたっぷり混ぜ込んだ土を使って植えるとよいでしょう。植え付けが終わった土には、たっぷりの水を与えて落ち着かせて完了です。
倒れてしまわないか心配な場合は、しっかり安定するまで支柱を立てておくとよいでしょう。
挿し木でアズキナシを増やす
アズキナシは挿し木をして増やすことができます。挿し木をするのに最適なのは、6~7月上旬にかけての梅雨の時期です。挿し木をする手順は以下のとおりです。
- 枝を10~15cmほどの長さに切って挿し穂を作る。切り取る枝はその年に伸びた若いものが適している
- 枝についた葉を横に半分切って除去すれば挿し穂は完成
- 挿し穂の切り口を水に1時間ほどつけておく
- 挿し木用の土に挿し穂を挿す
- 発根するまでは明るい日陰に置いておき、水を切らさないように管理する
アズキナシの剪定と対策方法
自然の樹形が魅力のアズキナシは、基本的に剪定する必要はありません。しかし限られたスペースで栽培している場合などは、剪定せざるをえません。成長とともに剪定が難しくなる樹木なので、下手に切ってしまうのは危険です。
またアズキナシは丈夫なため、病気や害虫のために枯れる心配はほとんどないですが、害虫によって食害を受けると見た目が悪くなるので、対策を施しておく方がよいでしょう。
大きくなるにつれ剪定が難しくなる
アズキナシは自然の樹形が魅力の樹木です。大きくなるにつれて剪定が難しくなり、下手に剪定すると樹形を崩してしまいかねないので、基本的には剪定しないのが無難でしょう。
しかし庭が狭いなどスペースに余裕がない場合は、定期的に剪定を行う必要があります。剪定をする場合は落葉し休眠期に入った12~3月頃が適期です。
太い枝を短く切ってしまったり、たくさんの枝を切り落としてしまったりする、いわゆる強剪定は樹形が乱れるためNGです。密集している箇所や長く伸びすぎた枝を中心に切り落とす、くらいにとどめておくのが無難でしょう。
美しい形に剪定するためにはある程度美的センスも必要になるため、自信がない場合は、業者などプロにお願いしてやってもらう方が安心できるかもしれません。
毛虫とアブラムシに注意した病気、害虫対策を
アズキナシに発生しがちな害虫として、毛虫やアブラムシ、カイガラムシが挙げられます。丈夫な樹木であるアズキナシは、病気や害虫の発生によって枯れてしまうことはありません。しかし食害を受けることで、見た目は悪くなってしまいます。
害虫は幼虫のうちに発見しオルトラン液剤を散布すれば、比較的楽に駆除できます。特に毛虫が発生しやすい春先や秋口には、注意して観察するようにしましょう。
毛虫が発生してしまった場合は、数が少ない場合であれば樹木用の殺虫スプレーを使えば簡単に駆除できます。
たくさん発生してしまっていたり、広範囲にわたって発生したりしている場合は、スミチオン乳剤などの液体殺虫剤が有効です。葉の裏についていることもあるので、全体に行き渡るよう丁寧に散布します。
毎年発生する場合は春先や秋口の幼虫が発生する時期に、早めにオルトラン液剤を全体に散布すれば予防できるでしょう。心配な場合は2週間ほど間を空けて、再度散布すれば安心です。
アズキナシを楽しむ
アズキナシは自然な樹形と、季節の移り変わりとともに穏やかに色彩が変化していく様子が魅力的な樹木です。
あまり知られていませんが「平和」という花言葉もあります。その花言葉が象徴する通り、控えめであらゆる景色と調和する姿からシンボルツリーとして鑑賞するのも人気です。
アズキナシの花言葉
アズキナシの花言葉は「平和」です。アズキナシには前述の通りオクシモアズキナシとフギレアズキナシの2種類の品種がありますが、どちらも花言葉は同じです。
小さく白い清楚な花がたくさん集まって咲く様子や、自然に溶け込み季節の移り変わりとともに穏やかに姿を変えていく様から、ぴったりともいえる花言葉ではないでしょうか。
鑑賞していると静かな優しい気持ちにしてくれそうです。
シンボルツリーとして鑑賞
アズキナシはシンボルツリーとしても人気です。
春には葉の緑色の中に際立つ花々の白色、真夏の力強く深い緑色から冬に向かう頃に黄色に変わる葉、落葉後につける実の赤色と、1年を通して豊かな色彩の鑑賞を楽しめます。
また水やりや肥料といった手間もほとんどかからず、高い適応能力によりどんな環境でも育てやすいので、庭のシンボルツリーとして最適です。
控えめで主張せず自然な形が魅力のアズキナシは、どんなお家や風景とも調和し、その魅力を引き立ててくれるでしょう。
アズキナシを育てて自宅に飾ろう
アズキナシは丈夫でほとんど手間がかからない、育てやすい樹木です。自然な形の樹形や季節を感じさせる色彩の移り変わりは、鑑賞にも適しているでしょう。
ほんの少し基礎知識を持っておくだけで簡単に育てられるアズキナシを実際に植え付けることで、自宅の風景をさらに素敵なものにしてみましょう。