ピラミッドアジサイは夏に花を咲かせる植物です。庭に咲く涼しげな花は、眺めているだけで夏の暑さを忘れさせてくれます。きれいに咲かせるためには、季節に適した水やりや施肥、剪定が欠かせません。ピラミッドアジサイの上手な育て方を紹介します。
ピラミッドアジサイってどんな植物?
暑い季節に庭で花を楽しみたい人には、「ピラミッドアジサイ」がおすすめです。きれいな花色と独特な花房の形は、普通のアジサイとは一味違った魅力があります。
ここではピラミッドアジサイについてよく知らない人のために、一般的なアジサイとの違いや特徴について解説します。
夏に開花するアジサイ
ピラミッドアジサイは「アジサイ科アジサイ属」の植物で、原産地は日本と中国です。国内では北海道から九州にまで自生しています。
暑さに強く、7~10月に花を咲かせます。一般的なアジサイの開花時期が5~7月なので、夏に花を楽しめる庭木としても人気です。落葉低木に分類されており、2~3mにまで成長します。
花の形が特徴的
アジサイと言えば、花房が丸いボールのようなイメージを持つ人が多いでしょう。しかしピラミッドアジサイの花房は、ボール状ではなく三角錐状です。その姿がピラミッドに似ていることから名付けられました。
ピラミッドアジサイは同じアジサイ属のノリウツギを、園芸用に改良して誕生した品種です。山などに自生しているノリウツギは花房が小さく、素朴な雰囲気です。一方ピラミッドアジサイは花が密集したボリュームのある花房を付けるため、存在感があり華やかな印象を与えます。
品種ごとに楽しめる花の色
ピラミッドアジサイは品種ごとに花の色が異なるため、自分好みの品種を見つけてみましょう。以下が主な品種と花の色です。
- ミナヅキ:淡いクリーム色
- ライムライト:黄緑から白、ピンクへと変化
- バニラストロベリー:白から徐々にピンクに変わり、グラデーションが楽しめる
- ピンキーウィンキー:白から徐々にピンク、ダークピンクへと変化
- シルバーダラー:白からピンクや深い赤へと変化
ピラミッドアジサイの育て方
ピラミッドアジサイは初心者でも庭木として育てやすい植物ですが、いくつかの点に注意しなくてはなりません。夏にきれいな花を楽しむために、ここでは育てる環境と施肥、そして植え方についてそれぞれ解説します。
日当たりと水はけのよい環境を用意
ピラミッドアジサイは日光を好む植物です。日当たりのよい場所で育てれば、元気に育ちます。もし自宅の庭があまり日当たりがよくない場合には、最低でも1日に数時間程度は日に当てるようにしましょう。
ただし強い日差しに当てると、葉焼けを起こす可能性があるので注意が必要です。とくに夏の西日に弱いため、直射日光や西日が当たらない場所で育てるとよいでしょう。
また水はけをよくするために、地植えでは堆肥と腐葉土を混ぜる方法もあります。鉢植えでは草花用の培養土がおすすめです。
水やりと肥料は季節に適したやり方で
鉢植えは暑くなると水切れしやすくなるので、夏場の水やりはこまめにしましょう。冬場は土中が乾燥しにくくなるため、夏場ほど頻繁に与える必要はありません。土の表面が白く乾燥してきてから与えます。
地植えの場合は、植え付けから2年未満の若い株は水切れに弱いので、土の表面が乾いたら水やりをします。表面の土が乾かないように、枝元の土面をビニールで覆ってマルチングするとよいでしょう。保水のほか、雑草対策や害虫防止にも役立ちます。植え付けて2年以上経ったら、水やりの必要はありません。
肥料は1月と7月に与えてください。冬場の土中は温度が低いため、成長期に向けてゆっくりと分解される有機肥料がおすすめです。開花時期の7月に与える肥料は、速効性のある化成肥料がよいでしょう。
植え付けや植え替えの適時は1月
ピラミッドアジサイの植え付けや植え替えに最適な時期は、落葉期の1月です。落葉は11月頃からはじまります。遅くても3月には作業を終えておきましょう。鉢植えも地植えも、時期は同じです。
地植えの場合には植穴、鉢植えの場合には鉢土の底に、有機質肥料もしくはゆっくりと効果を発揮するような、緩効性化成肥料を入れておきます。肥料に土をかぶせてから株を入れ、株まわりと株上に土を投入すれば作業完了です。
ピラミッドアジサイの剪定方法
剪定とは不要な部分の枝や葉を切って、整える作業のことです。植物は枝や葉、茎などが自然と伸びていきます。生い茂ると風通しや見栄えが悪くなるため、剪定が必要です。ここではピラミッドアジサイの剪定時期とやり方について解説します。
剪定する時期は8月から3月の間
ピラミッドアジサイの開花時期は7~10月、落葉時期は11~3月です。剪定は開花したあとの8月から、新芽が出る前の3月までならばいつでも可能です。
ただしピラミッドアジサイの花は開花直後から徐々に色が変わるので、開花後すぐに切ってしまうと色の変化を楽しめません。ゆっくりと花色を楽しんでから、作業を開始しましょう。
剪定のやり方
剪定には「強剪定」と「弱剪定」があります。強剪定とは地面に近い枝の根元から切る方法です。太い枝を切ることで、枝数が減ってサイズが小さくなります。そのため木全体に栄養分がいきわたり、大きな花が咲くのです。
弱剪定は枝先のみを切る方法です。形を大きく変えずに、混みあった枝葉を取り除いて、より花を多くつけたいときに行います。その年に花が咲いた枝を選ぶのがポイントです。
ピラミッドアジサイの増やし方
水やりや剪定などの手入れ方法に慣れてきたら、さらに株を増やして満開の花を楽しんでみましょう。ここからはピラミッドアジサイを増やす「挿し木」と「取り木」のやり方について、それぞれ解説していきます。
挿し木で増やす方法
挿し木とは切り取った枝を土に挿して増やす方法です。3~4月もしくは梅雨の期間に作業しましょう。手順は以下のとおりです。
- 春に行う際には前の年に伸びた枝を、梅雨に行う際にはその年に伸びた新しい枝を用意する
- 先端部分の葉を1~3枚ほど残し、下の葉はすべて取る
- 残した葉を半分に切る
- 斜めにカットした枝の切り口を1~2時間ほど水に浸して、十分に吸水させる
- 水はけのよい土に棒で穴をあけて枝を挿す
- 水やりをして、手で土表面を軽く押し固める
挿し木した鉢は、直射日光が当たらない明るく風通しのよい場所に置き、根が張るまで待ちましょう。
取り木で増やす方法
茎や枝の表皮をぐるっと1周剥離することを「環状剥離(かんじょうはくひ)」といいます。環状剥離した部分を発根させてから、切り取って増やす方法が「取り木」です。
取り木にはいくつかの方法がありますが、ピラミッドアジサイには「盛土法」がおすすめです。盛土法は枝元部分を環状剥離し、盛り土で覆って発根させる方法のことを指します。以下の手順で作業をしましょう。
- 発根させたい枝元に、きれいなナイフで3cmほど縦に切り込みを入れる
- 切り込みから環状剥離して、発根剤を塗布する
- 剥離部分が隠れるまで土を盛り、水やりをする
- 雨風で盛り土が少なくなってきたら、土を加える
- 十分に発根したら、根を傷つけないよう切り離して植える
ピラミッドアジサイを育てて花を楽しもう
ピラミッドアジサイは風通しと日当たりのよい環境を好む植物です。サイズ調整や元気な花を咲かせるためには、剪定作業も欠かせません。
季節に応じた手入れをすれば、夏から秋にかけて大きな花を咲かせます。上手に育てて徐々に変化する花色を楽しみましょう。