ヒラドツツジは公園や街路の植栽に使われている、親しみやすい樹木です。住宅の庭木としても人気があり、春に咲く花は道行く人の目を楽しませてくれます。
ヒラドツツジのお手入れ方法や、きれいな花を咲かせるコツを解説します。
ヒラドツツジの花言葉は?
「節度」や「慎み」です。花言葉はヒラドツツジの花色によって異なります。赤色は「恋の喜び」、紫は「美しい人」、白は「初恋」を意味します。
ヒラドツツジの開花時期は?
4月下旬~5月中旬にかけて開花します。ヒラドツツジの種類や栽培環境によって開花時期が異なります。
ヒラドツツジの特徴
ヒラドツツジの基本情報や名前の由来、花言葉など特徴について紹介します。
ヒラドツツジの基本情報
植物名 | ヒラドツツジ |
学名 | Rhododendron var. |
科名 / 属名 | ツツジ科 / ツツジ属 |
原産地 | 長崎県平戸 |
開花期 | 3~4月 |
花の色 | ピンク、赤、白、紫 |
花言葉 | 節度、慎み |
樹高 | 1~2m |
葉の形 | 楕円形 |
特性 | 常緑、耐寒性、耐暑性 |
ツツジは日本や中国が原産の、常緑性の低木です。日本の気候風土に合っていて、あまり手がかからないため、観賞用として昔からさまざまな場所に植えられてきました。
ヒラドツツジは「キシツツジ」「モチツツジ」「ケラマツツジ」など琉球産の野生ツツジが自然な交雑をし、改良された園芸品種です。
ヒラドツツジの中にもたくさんの品種があり、花の色もバラエティに富んでいます。
大型の花を咲かせるツツジ
ヒラドツツジは、ツツジの中でも大型の品種です。葉は長さが約4~11cm、花は大きなものだと、直径約10cmになります。
花の色は赤・ピンク・紫・白が多く、ピンクや紫に濃淡が付いていたり、花びらが重なるように咲いたりする品種もあります。違う品種を並べて植え、色のコントラストを楽しめるのもヒラドツツジの魅力です。
開花時期は4月~5月
4月下旬から5月中旬にかけて、各地の公園や道路脇にはヒラドツツジの鮮やかな花が咲きます。
ヒラドツツジの開花時期は気候や品種、生育度合いによって多少ずれることもありますが、ほとんどの品種はゴールデンウイークが始まる前には見頃を迎えます。
ヒラドツツジがたくさん植えられている公園や、古くからヒラドツツジが名物となっている神社仏閣では、「ツツジ祭り」などのイベントが開催されることも珍しくありません。
花言葉は色により異なる
ヒラドツツジの花言葉は「節度」や「慎み」で、どこか控えめで生真面目な雰囲気を感じさせる言葉です。ただしヒラドツツジの花言葉は、色によって異なります。
赤/濃いピンク | 恋の喜び |
紫 | 美しい人 |
白 | 初恋 |
例えば赤や濃いピンクの花言葉は「恋の喜び」です。鮮やかな花が一斉に咲く様子は、まさに情熱的な恋を表しているといえます。
紫のヒラドツツジには「美しい人」、白には「初恋」という花言葉が付いています。紫は昔から高貴な人や美しいものを表す色といわれており、実物もそのイメージ通りです。
純白の花は初めて恋をするときの、純粋でまっすぐな気持ちを象徴しているかのようです。
色別の花言葉には、ツツジ全体に見られる大人しい雰囲気だけでなく、元気で前向きな言葉が多いといえるでしょう。
ヒラドツツジに毒性はない
一部のツツジには毒がありますが、ヒラドツツジは無毒です。毒があるツツジの中で有名なのは「レンゲツツジ」です。
もし以下のような特徴のツツジを見つけたら、離れて鑑賞しましょう。
- 葉がカールしている
- 葉の数が少ない
- 花が赤や黄など鮮やかな色をしている
長崎県平戸市が名前の由来
ヒラドツツジの名前は、長崎県の平戸市で栽培されていたことに由来します。古くから外国との交易が盛んだった平戸では、在来種と外来種が自然に交雑する機会が多く、他の地域にはないオリジナルの品種ができたといわれています。
当時も寺の境内や武家屋敷の庭の、植栽用植物として人気があったようです。元々のヒラドツツジの中から特に美しい品種を選び出し、園芸品種として増やしたものが、現在主に植えられているヒラドツツジです。
ヒラドツツジの種類
ヒラドツツジには約300以上の品種があります。代表的な3種類を紹介します。
大紫(オオムラサキ)
オオムラサキは「ケラマツツジ」と「キリシマツツジ」「リュウキュウツツジ」が交配した花です。約10cm~15cmのかなり大きな赤紫色の花を咲かせます。
白妙(シロタエ)
シロタエは、3cm前後の小ぶりな白い花です。他のヒラドツツジの種類と比べて、病気や害虫、寒暖差に強く、初心者でも育てやすいでしょう。
曙(アケボノ)
四国・九州でよくみられるアケボノは、6cm程のピンクの花を咲かせます。他の種類とは異なり、高温多湿な環境に弱いです。
ヒラドツツジの育て方
植物にはそれぞれ、生育に適した環境があります。ヒラドツツジを自宅で栽培する場合は、どのような環境を用意すればよいのでしょうか。日当たりや土壌の条件を見ていきましょう。
栽培スケジュール
ヒラドツツジを栽培する方は、栽培カレンダーを参考にしてみてください。
特に「肥料をあげるタイミング」「剪定をするタイミング」は、ヒラドツツジの成長に大きな影響を与えるので、手入れを忘れないようにしましょう。
用意するもの
ヒラドツツジを育てるために必要なものは以下の4つです。全て購入する場合、初期費用は5,000円前後です。
- 用土
- 肥料
- 苗
- プランター
酸性の土壌を好む
ヒラドツツジは酸性の土壌を好む植物です。アルカリ性の土壌では、うまく育たないこともあるので注意しましょう。
とはいえ日本では弱酸性の雨が降ることも多く、土壌も酸性に傾きがちです。基本的には、土壌のphを気にする必要はほとんどありません。
ただし自宅の庭が、元々あった土ではなく、庭用の土を盛って作られている場合は注意が必要です。自宅の庭土がどうなっているか分からない人は、念のため市販のphメーターを使って、酸性かどうかを確かめておくとよいでしょう。
もし庭土が酸性でない場合、ホームセンターでツツジ用にブレンドされた用土を購入するか、土のphを酸性に調整できる「ピートモス」などを混ぜてから植えます。
手入れのポイント
ヒラドツツジは病気や害虫に注意すれば、あまり手をかけなくても元気に育ちます。育った枝を切って、挿し木で増やすことも可能です。お手入れのポイントを解説します。
真夏以外は水やり不要
ヒラドツツジはよく水を吸う上に、やや乾燥に弱い植物です。水切れには十分注意して管理しましょう。ただし庭植えの場合は、必要な水分は降雨でまかなえるため、毎日の水やりは不要です。
真夏に何日も雨が降らず、土が乾いてしまったら、適度に水やりして湿らせておけば問題ありません。
鉢植えは水不足になりやすいので、毎日水やりします。夏は朝晩1回ずつ、春秋は1日に1回、冬は土の表面が乾いたら与えるようにしましょう。
日当たりのよい場所に植える
ヒラドツツジを日陰に植えると、茎や葉ばかりが大きくなり、花の付きが悪くなることもあります。また日陰はジメジメして蒸れやすく、根腐れをおこす可能性も否定できません。
たくさんの花を楽しみたいなら、日の当たる風通しのよい場所に植えてあげましょう。庭が建物の影になるなど、1日中日に当てることが難しい場合は、午前の数時間だけでも問題ありません。
またヒラドツツジは庭植えだけでなく、鉢植えにしても楽しめる植物です。日当たりのよい場所が少ない庭でも、鉢植えなら移動させながら日に当てることができます。
冬は室内で育てる
冬は霜の影響で葉が枯れる可能性が高いため、室内で育てましょう。
豪雪地帯でなくても、プランターをできるだけ暖かい室内に移動させてくださいね。
増やす場合は挿し木で
ヒラドツツジは挿し木で簡単に増やせます。順調に育ってきたら、チャレンジしてみるとよいでしょう。挿し木は6月から7月頃に行います。手順は以下の通りです。
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秋には根が出て、春になる頃にはしっかりと伸びてきます。根が育ったら、庭や大きな植木鉢など、好きな場所に植え付けましょう。
ツツジ剪定のコツ
植物の剪定は見栄えがよくなるだけでなく、病気や害虫の予防にもなります。無駄な枝を切り落とすことで、株が若返る効果も期待できます。
ヒラドツツジも定期的に剪定して、形を整えてあげましょう。ツツジの剪定のコツを紹介します。
開花後なるべく早く実施
ヒラドツツジの剪定は、花が咲いた後のできるだけ早い時期に行います。ツツジは花が終わってから1カ月程で、次の花芽を付け始めます。このため剪定の時期が遅れると、付いたばかりの花芽ごと切り取ってしまう可能性があるのです。
花芽は翌年花を咲かせるための、大事な芽です。花芽を守るためにも、なるべく早く実施しましょう。ヒラドツツジの開花は4~5月なので、5~6月には剪定できるように準備します。花が8割程度咲き終わり、もう見頃を少し楽しめそうな時期が目安です。
丸く整えるように剪定を行う
ヒラドツツジは大きく成長するため、すぐに樹形が崩れてしまいます。毎年剪定して、きれいな見た目をキープしましょう。
そもそも樹形は自分の好みに合わせて自由に行ってよいものですが、ツツジは丸く整えるのが一般的です。
剪定方法は以下の通りです。
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内側をきれいに剪定すれば、風通しがよくなって病害虫を予防する効果も期待できます。最後は外観を整えて完成です。
刈り込みや最後の調整のときは、数m離れた場所に立って、全体の形をチェックしながら進めると失敗を防げます。
剪定に使う道具
剪定の際は、事前に以下の道具をそろえておきましょう。持っていない場合はホームセンターやネットで購入できます。
- 刈り込みバサミ
- 剪定バサミ
- 植木バサミ
- 軍手
定期的にプロに依頼するのもおすすめ
剪定には、ある程度の知識やテクニックが必要です。自己流で剪定した結果、見栄えが悪くなったり、植物の元気がなくなったりすることも十分考えられ、庭の植木が弱っていると、家全体の雰囲気も左右する可能性もあります。
剪定に自信がない人や、忙しくて剪定のタイミングを逃してしまう人は、プロに依頼するのもおすすめです。樹木の専門家に定期的に来てもらうことで、庭の外観が美しく保たれるだけでなく、植物の健康状態も管理できます。
剪定のコツや普段のお手入れの仕方を聞けることもあり、植物の知識が身に付くでしょう。業者によっては剪定した後の枝を処分してくれるため、自分で処分する手間も省けます。
【花が咲かない/枯れた】よくあるトラブルと原因
きれいなヒラドツツジが咲くのを楽しみにしていたのに、思うように咲かないと残念な気持ちになります。ヒラドツツジの花が咲かない原因と、有効な対策を見ていきましょう。
①日当たりが悪い
庭のヒラドツツジが花を咲かせない原因は、日当たりの悪さが原因かもしれません。ツツジの花をきれいに咲かせるためには日光が必要です。
日陰のほとんどない公園や道路脇などで、たくさんの花を咲かせる様子からも、ヒラドツツジは太陽の光を好むことが分かります。もし庭が日陰になっているならば、できるだけ日当たりのよい場所に植え替えてあげるとよいでしょう。
②肥料を与え過ぎている
ツツジは元々、過剰な栄養を必要としない植物です。野生のツツジは、山の山頂のような、砂や小石だらけの土地で生きてきました。このため栄養分が豊富な土壌では、逆に元気がなくなることもあるのです。
花をたくさん咲かせたいからと、肥料を与え過ぎると逆効果になってしまうでしょう。1年間で肥料を与えるタイミングは以下の3回です。
- 花が終わった後の6月頃
- 株が成長する9月頃
- 休眠期の1月
容量を守って緩効性の化成肥料を与えてください。
ヒラドツツジは基本的に水やりをする必要がありません。しかし、夏の猛暑日など土が完全に乾きそうな日は、根や葉が枯れる前に水を与えてください。水不足は枯れる原因につながります。
④病害虫の被害を受けている
ヒラドツツジに限らず、植物を育てる際は病気や害虫に注意してください。
病気では特に「うどんこ病」に注意が必要です。
うどんこ病は土の中にいるカビが、何らかの原因で葉に付着して増えることで発症します。
土の水はけをよくしてカビの発生を抑えるほか、葉に付いた土は速やかに洗い流すようにしましょう。特に激しい雨や強風の後は要注意です。
カビはジメジメした環境で繁殖するため、通気性をよくして葉を乾かしておくのも有効です。もし病気にかかった葉を見つけたら、他の葉に移らないよう取り除いておきましょう。
また春から秋にかけては、「ハダニ」や「ツツジグンバイムシ」「ベニモンアオリンガ」などの害虫が発生しやすくなります。
放っておくと葉から栄養を吸い取られ枯れてしまったり、新しい花芽を食べられたりするので、殺虫剤などを使って早めに駆除しましょう。
春はヒラドツツジを楽しもう
桜が散り新緑の季節になるとヒラドツツジの出番です。手を伸ばせばすぐに届く近さで、枝いっぱいに花を付けるヒラドツツジはとても親しみやすく、あたたかな春の陽気によく似合います。
ヒラドツツジを上手に育てて、満開の花を楽しみましょう。