イヌツゲとは、モチノキ科モチノキ属の常緑樹で、庭木として人気があります。


芽吹く力が強く、刈り込みにも耐えられるので、玉散らし仕立てや角仕立てなどさまざまな樹形を楽しめます。
美しい樹形を保つには、正しい方法で定期的に剪定を行わなくてはなりません。
この記事ではイヌツゲの剪定時期や仕立てのコツについて紹介します。
イヌツゲの剪定に適した時期
イヌツゲの剪定は、2月~4月上旬、5月中旬~7月、9月~11月に行います。1年のうち「新芽が伸びる春先」「真夏」「真冬」を避けると覚えておきましょう。
常緑樹であるイヌツゲは冬の寒さを好まないため、冬季の剪定は避けます。そのほか、新芽の生長にエネルギーを集中させる春先と、気温が高い真夏も、枝を切ったダメージから回復しづらく、剪定に向かない時期です。
イヌツゲは枝分かれしやすく、綺麗に刈り込んだ樹形から枝がよく飛び出してしまいます。生垣や玉仕立てで整えている場合は、年2~3回のペースでこまめに剪定しましょう。
イヌツゲの剪定方法
イヌツゲの剪定は以下の手順で行います。
1. 樹冠から飛び出している枝を付け根から切り落とす
樹冠(樹木の枝葉が広がる部分)から出ている枝は根元から切り落とします。
そのまま刈り込むと、飛び出していた枝の断面が表面に出てしまい、きれいに仕上がらないからです。
- 樹冠から大きく飛び出している枝は、付け根からしっかりと切り落とす
- 切断面は、枝の付け根の少し外側で斜めに切る
- 切り口は、枝の分岐点や芽に対して45度程度の角度で行う
- 大きな枝は、下から2〜3回切り返し、ストレスを軽減する
- 大きな枝は、下から支持枝を切り、最後に本体を切る
2. 枯れた枝、ふところ枝などの不要な枝を間引く
枯れた枝や樹形を乱す不要な枝を剪定して取り除いておきましょう。
カサカサに乾いていたり、樹皮の中まで茶色く変色している枝は枯れています。枯れ枝を放置すると病気や害虫の原因になるので、最優先で取り除きましょう。
次に、以下のような生え方をしている不要な枝を切り落とします。
不要枝の種類 | 不要枝の特徴 |
---|---|
ふところ枝 | 樹冠の内部で生えた細かく小さな枝。 |
かんぬき枝 | 左右の枝が主幹を貫いて一直線になるように生えたもの。 |
逆さ枝 | 幹に向かって伸びた枝。 |
立ち枝 | 真上に向かって伸びた枝。 |
下り枝 | 下に向かって伸びた枝。 |
絡み枝 | まっすぐ伸びず、他の枝に絡むように伸びた枝。 |
徒長枝 | 極端に勢いよく伸びた枝。上に向かって伸びることが多く、ほとんど花芽をつけない。 |
車枝 | 幹の同じ高さから4本以上の枝が水平に伸びたもの。 |
平行枝 | 同じ方向に伸びる上下2本の枝。 |
胴吹き枝 | 幹から新たに直接伸び出した枝。 |
ひこばえ | 地際から主幹の隣に新しく伸びてくる枝。 |
不要枝の中での剪定の優先順位は以下の通りです。
- 逆さ枝・立ち枝・下り枝・絡み枝・徒長枝・車枝
- 樹形を乱す可能性が高いので、優先して切り落とす
- 平行枝・胴吹き枝
- 樹形を乱す可能性が比較的低いので、他の枝とのバランスを見て切るか決める
- ひこばえ
- 株立ちの幹を更新する場合は残し、それ以外の場合は切り取る
3. 刈り込み剪定で樹形を整える
刈り込んで仕立てている場合は、最後に刈り込みバサミで表面を整えましょう。
形を整えるときは、下部を少し広く、上部をすぼまる形に刈り込むことで、下部まで日光が届きやすくなります。
葉のないところまで深く刈ってしまうと、木が枯れこんでしまうことがあるので注意しましょう。
イヌツゲの剪定に必要な道具
イヌツゲの剪定に必要な道具は下記の通りです。
どれもインターネットショッピングで購入可能ですし、園芸店やホームセンターでも販売されています。
剪定用手袋
剪定用の手袋を準備しましょう。
普通の軍手ですと剪定中に枝や葉が刺さってケガをする場合があります。
手のひら側が樹脂コーティングになっているものがおすすめです。
剪定バサミ
イヌツゲの枝を切断するための専用ハサミで、片刃が鋭利な刃物、もう片方の刃は平らな受け刃になっています。
植物の枝を傷つけることなく、きれいに切断することができ、高炭素鋼やステンレス鋼などで作られているので長期間、切れ味を保つことができます。
サイズは色々あるので手の大きさ、左手用など自分にあったものを選びましょう。
植木バサミ
普通のハサミと同じような形をしています。
刃先が細く、小回りが利くため、込み入ったところにも入りやすいです。
細かい枝や最後の仕上げに使用します。
剪定ノコギリ
剪定バサミでは切れないような直径2cm以上の太さの枝を切るのに使います。
通常の木工用ノコギリとは異なり、刃が引く方向にのみ鋭利に切れる一方向切断刃が特徴です。
脚立
脚立は背の高い樹木を剪定するときに使用します。
剪定では幹や枝の隙間に足をねじ込んで脚立を立てることが多いので、三脚を使いましょう。
脚立を使う際には、以下の注意点を守って使用してください。
- 登る前に調節器具がロックされていることを確認する
- 一番上の段に載って作業しない
- 上を向いて作業しない
- 悪天候下では使わない
癒合剤
イヌツゲの太い枝の剪定後の切り口に塗ることで病気や菌から守ることができます。
保護剤を塗ることを忘れると病気や菌が侵入し、多大なダメージを受ける可能性があるので、清潔なハケ等で塗りましょう。
イヌツゲの仕立て方
イヌツゲは、それぞれの仕立て方により、異なる景観や雰囲気を演出できます。
円筒形
木全体を1本の筒状にしたものです。
均一な高さと幅を持つ形状で、シンプルな印象が好きな方に人気があります。
仕立て方のポイント
- 基本的に真っ直ぐな形状を目指す
- 下部を少し広くし、上部をやや細くすると、均等に日光が届きやすくなる
- 電動ヘッジトリマーを使用すると、均一な形に整えやすい
- 年に2〜3回の刈り込みで、美しい形状を維持できる
玉仕立て・玉散らし仕立て
玉仕立ては、全体を球形に刈り込む仕立て方法です。
玉散らしは、幹から出るいくつかの枝ごとに、楕円形に刈り込んで仕立てる方法です。
柔らかな印象を与え、背が低めの植え込みなどにおすすめです。
仕立て方のポイント
- 球体の形になるよう、均等に刈り込む
- 底部から上部にかけて、なだらかな曲線を描くように整える
- 枝の内側も適切に間引きし、全体的な球形を保つ
- 庭園の他の植物とのバランスを見ながらサイズを調整する
角仕立て
角仕立ては、イヌツゲを四角く仕立てる方法です。
仕立て方のポイント
- 完全な直角と平面を意識して刈り込みをする
- 上部と側面を定規で測るように正確に整える
- 下部を広く、上部を狭くして、日光を均等に届けやすくする
- 定期的な微調整で、鮮明な角を維持する
トピアリー
トピアリーは、イヌツゲを動物や幾何学的な形状に刈り込む芸術的な仕立て方です。
個性的な庭園にしたい方におすすめです。
トピアリー制作のポイント
- 骨組みや型枠を使用して形状をガイドする
- 根気強く、長期間をかけて形を整える
- 難しい形はプロに依頼する
イヌツゲのお手入れ方法
イヌツゲの基本的なお手入れ方法について詳しくご紹介します。
水やり
水やりは健康と美しい樹形を維持するために必要ですが、過度の乾燥や過剰な水分は、ストレスを与える可能性があります。
ポイント
- 土の表面から5〜10センチほどの深さが乾いたら、たっぷりと水を与える
- 朝や夕方の涼しい時間帯に水やりを行う
- 根元に水が溜まらないよう、排水性の良い場所に植える
- 夏の暑い時期は、週に2〜3回の水やりを行う
- 冬季は、土壌の乾燥に注意して、水やりの頻度を減らす
肥料
イヌツゲの健康的な成長と美しい樹形を維持するためには、適切な施肥が欠かせません。
年に2〜3回、異なる時期に肥料を与えることをおすすめします。
施肥のポイント
- 早春(芽吹き前)は、緩効性の有機質肥料(窒素、リン酸、カリウムをバランス良く含む)を与える
- 初夏に追肥を行い、新芽の成長を支援する
- 秋は、木の越冬準備のためにカリウムを多く含む肥料を与える
注意点
- 肥料は根元から30〜50センチほど離れた場所に均一に撒く
- 肥料を直接根元に触れさせないよう注意する
- 有機質肥料を使用する場合は、緩効性のものを選ぶ
植え付け
適切な場所選びと植え方で、健康的なイヌツゲを育てることができます。
ポイント
- 半日陰〜日向の場所を選ぶ
- 排水性と通気性の良い土壌を準備する
- 植え穴は、根の広がりよりもやや大きめに掘る
- 植え付け後は、たっぷりと水を与え、土壌にしっかりと馴染ませる
イヌツゲの病気・害虫対策
イヌツゲの健康を守るためには、病気や害虫への適切な対策が不可欠です。
イヌツゲによく見られる代表的な病気と害虫について、その特徴と対処法を詳しくご紹介します。
病気:ツゲ枝枯(えだかれ)病
ツゲ枝枯病は、イヌツゲにとって最も深刻な病気の一つです。
糸状菌による感染症で、イヌツゲの枝や葉に大きなダメージを与えます。
特徴
- 枝や葉に褐色の斑点や病変が現れる
- 感染が進むと、枝が枯れ始めて樹勢が低下する
- 湿度が高く、通気性が悪い環境で発生しやすい
対策
- 症状が出た枝は、早めに切除し、適切に処分する
- 銅剤や有機系殺菌剤を使用する
- 植物の通気性を改善し、過度の湿気を避ける
- 定期的な剪定を行う
害虫:ハダニ
ハダニは微小な害虫で、葉の裏側に寄生し、植物の樹液を吸収します。
特徴
- 葉に黄色や白い斑点を作り、葉の光合成を妨げる
- 大量発生すると、植物全体の健康に深刻な影響を与える
- 夏季の暑く乾燥した環境で繁殖しやすい
対策
- 高圧水で葉の裏側を洗い流し、個体数を減らす
- 殺ダニ剤を使用する場合は、有機系の製品を選ぶ
- 植物に十分な水分と栄養を与え、抵抗力を高める
害虫:ハマキムシ
ハマキムシは、葉を巻いて内部で生活する小型の蛾の幼虫です。
特徴
- 葉を糸で巻き、その中で生活し、葉を食べる
- 幼虫は緑色で、葉の表面を這い回る
- 大量発生すると、イヌツゲの葉が損傷を受ける
対策
- 巻かれた葉は、手で取り除き、駆除する
- 生物農薬を活用する
- 樹勢を強く保ち、ストレスを減らして抵抗力を高める
害虫:カイガラムシ
カイガラムシは、樹皮や枝に寄生する厄介な害虫です。
特徴
- 樹皮や枝に固着し、樹液を吸収する
- 大量発生すると、樹木の栄養吸収を妨げ、樹勢を弱める
- 黒い煤状のカビ(すす病)の原因になる
対策
- 冬季に樹皮を擦り、越冬中の個体を除去する
- 園芸用油剤を使用し、成虫と卵を駆除する
- 樹勢を強く保ち、抵抗力を高める
イヌツゲの剪定はプロに依頼するのもおすすめ
「自分でうまく剪定する自信がない」「忙しくて定期的に剪定する時間がとれない」という方は、植木屋や庭師と呼ばれる剪定のプロに依頼するのもおすすめです。
庭木の剪定料金相場
単価制で依頼した場合、一般的な庭木の剪定料金の相場は以下の通りです。
庭木の高さ | 1本あたりの料金相場 | 剪定ゴミの回収料金 |
---|---|---|
1m以下 | 950~1,200円 | 950~1,200円 |
1~2m以下 | 1,900~2,400円 | 950~1,200円 |
2~3m以下 | 2,900~3,600円 | 950~1,200円 |
3~4m以下 | 4,200~5,400円 | 1,400~1,800円 |
4~5m以下 | 5,700~7,200円 | 1,900~2,400円 |
5~6m以下 | 8,600~10,800円 | 2,900~3,600円 |
6~7m以下 | 12,400~15,600円 | 3,800~4,800円 |
7~8m以下 | 16,200~20,400円 | 5,000~6,000円 |
※ミツモアの過去3年間(2022年1月1日~2024年12月31日)の見積もり依頼データから算出
庭木の剪定をプロに依頼する流れ
庭木の剪定をプロに依頼するには、まず自宅に訪問してくれる近くの庭師を探す必要があります。
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