イチゴノキを育てるときには、どのようなポイントを押さえておくとよいのでしょうか?この記事では、栽培方法や枯らさないための注意点・剪定の仕方などを紹介します。
イチゴノキの基本情報
詳しい栽培方法を確認する前に、まずはイチゴノキの特徴をチェックしましょう。
植物名 | イチゴノキ |
学名 | Arbutus unedo |
科/属 | ツツジ科 |
原産地 | 地中海沿岸、アイルランド |
開花時期 | 11~12月 |
実をつける時期 | 9~11月 |
樹高 | 2~3m |
特性 | 常緑性 |
栽培カレンダー
イチゴノキの植え付け時期や開花期などをカレンダーにまとめてみました。
イチゴノキの特徴
地中海沿岸やアイルランドが原産のイチゴノキは、ツツジ科の常緑木本植物です。イチゴノキの仲間には、1.5mほどコンパクトな「ヒメイチゴノキ」や、紅色の花が特徴の「ベニバナイチゴノキ」など15種類があります。
開花期には、ブルーベリーに似たつぼ型の小さな花を咲かせるのが特徴です。花後の実はイチゴに似た見た目で、名前の由来になっています。
かわいらしい花や実はもちろん、成木になると樹皮が赤く染まる美しい植物です。1年を通して鑑賞でき、庭植えにも人気があります。
「ヤマモモ」との見分け方
イチゴノキと間違いやすい植物として「ヤマモモ」があります。どちらの実も赤く色づき、形も丸く表面がデコボコしてる点でも似ているので外見で見分けるのは難しいでしょう。
そこで花や実をつける時期の違いで見分けるとよいでしょう。
種類 | 開花時期 | 実をつける時期 |
イチゴノキ | 11~12月 | 9~11月 |
ヤマモモ | 3~4月 | 5~6月 |
バラ科の「イチゴ」との違い
イチゴノキという名前から「イチゴ」と混同されがちですが、異なる植物である点に注意しましょう。食用として販売されているイチゴはバラ科の植物で、イチゴノキはツツジ科です。
実のデコボコした印象は似ていますが、イチゴが先端に向かって細くなっていくのに対し、イチゴノキは丸い球形をしており、形状も異なります。
またイチゴは春に、イチゴノキは秋に実がなるため、実ができる季節からも違う種類の植物だとわかります。
イチゴノキの実は食べられる?
11月~12月ごろにかけて花が咲くイチゴノキは、花後に直径1.5~2cmほどの緑色の実を付けます。徐々に緑からオレンジ、そして赤に色づいていき、熟すのは開花から1年後の秋です。
イチゴノキの実は鑑賞用として用いるだけでなく、生食や加工用として食べられます。ただしイチゴのような甘酸っぱさはなく、ほんのり甘い程度で味はほとんどありません。
生でそのまま食べるよりは、ジャムや果実酒などに加工して食べる方が美味しく食べられるでしょう。
イチゴノキの育て方とコツ
イチゴノキは、どのようにお手入れすればよいのでしょうか?ここでは健康に育てるために押さえておきたいポイントを解説します。
イチゴノキの栽培環境
元気なイチゴノキを育てるために以下のような環境を意識しましょう。
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イチゴノキはひなたから半日陰の場所を好みます。ただし西日は苦手なため、できるだけ午前中に日の当たる場所を選ぶとよいでしょう。
くわえて水はけがよいことも成長の条件です。地植えするときに水はけが悪いと感じるなら、土を盛り高植えにするなどの工夫をします。
寒さには弱いため、できるだけ北風の当たらない場所に植えるとよいでしょう。特に若木のうちは耐寒性が低く注意が必要です。
またイチゴノキには耐塩性があるので、潮風の当たる沿岸部でも比較的栽培しやすい植物です。
イチゴノキの植えつけ方
植え付けの適期は霜が降りなくなる「3~4月」ごろと、暑さがやわらぐ「9月下旬~11月」ごろです。寒さに弱い若木を植えるときには、暖かくなっていく3~4月の植え付けが向いています。
植え付けの手順
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イチゴノキは細根性で、根を傷付けると根付きにくくなってしまいます。移植に向いていないため、植え付ける場所をよく見極めることが大切です。
イチゴノキに適した水やり方法と肥料
地植えのイチゴノキの場合、根付いた後は基本的に水やりの必要はありません。ただし気温が高く何日も雨が降らない日が続くなら、1日2回朝夕に水やりをします。
肥料を与える時期は「2月上旬~3月下旬」が目安。冬に肥料を与えると、春先にかけて土に栄養が浸透し木の生長につながります。使う肥料は油かすや緩効性化成肥料がよいでしょう。
鉢植えで育てるなら水やりを忘れずに
地植えのイチゴノキの場合、基本的に水やりを行わなくても問題ありません。しかし鉢植えで育てている場合は、土が乾いたのを確認したらたっぷりと水をやって乾燥させないようにしましょう。
また地植えの場合と同様、気温が高い時期は水切れしやすいため、小まめにチェックしましょう。
イチゴノキが枯れる原因と対処法
イチゴノキは寒さや害虫が原因で枯れてしまうことがあります。ここではイチゴノキを枯らさず元気に育てるための方法を紹介します。
寒すぎない環境で育てる
イチゴノキは成木であればー15度の環境でも育ちますが、まだ苗が若いうちは寒さが原因で枯れてしまうこともあります。
栽培する時は強く冷たい風が当たらない場所を選びましょう。
害虫は駆除する
害虫が原因でイチゴノキが枯れてしまうこともあります。
イチゴノキでは樹液を吸う「カイガラムシ」や「アザミウマ」という害虫が発生することがあるので、見つけたら殺虫剤を使いすぐに駆除することが必要です。
害虫の対策については後に詳しく説明します。
イチゴノキの実がならない原因と対処法
イチゴノキは栽培し始めてから数年間は実がならないこともあるため、慌てなくても大丈夫です。しかし何年も経過してイチゴノキの実がならないならば原因を知り対処することが必要です。
受粉させて実をつける
庭や鉢植えで栽培されているイチゴノキは自然の中で育つイチゴノキと比べて、花粉の媒介となるハチとの接触が少なくなります。そのため果実をつけるために必要な受粉が十分行われず、実がならないといったケースが考えられるでしょう。
そこで人工的に受粉させ、イチゴノキを実らせることが可能です。方法は筆や綿棒を使って雄しべの花粉を雌しべにつけるだけです。
水やりで乾燥を防ぐ
水が足りず、イチゴノキが乾燥してしまっているため実がならない可能性も考えられます。
特に夏などの気温が高くなる時期は、普段は水をやる必要のない地植えのイチゴノキでも乾燥していないかこまめにチェックしましょう。
逆に水をやりすぎて枯れてしまうこともあるので株元の土が本当に乾いているかどうか確かめてから水やりをするとよいでしょう。
イチゴノキの害虫、病気対策
病害虫の被害には遭いにくいイチゴノキですが、注意すべきこともあります。被害を与える代表的な害虫や病気について知り、適切な対策を取ることでイチゴノキを守りましょう。
カイガラムシとアザミウマに注意
害虫に対してそれほど気を使う必要のないイチゴノキですが、樹液を吸う「カイガラムシ」と「アザミウマ」には注意が必要です。気付かず放置するとどんどん増え、樹液を吸われすぎてイチゴノキが枯れてしまう可能性もあります。
抵抗力の弱い若木は特に被害を受けやすいため、注意深く観察することが大切です。害虫を見つけたら、早い段階で薬剤処理しましょう。
ただしカイガラムシの成虫は、殻ができて薬剤が効きにくくなります。ブラシでこそげ落とすようにして駆除しなければいけません。カイガラムシの排泄物は「すす病」の原因にもなるため、早めに取り除きましょう。
以下の記事ではカイガラムシの予防方法や駆除方法を詳しく解説しているので参考にしてみて下さい。
病気にも注意しよう
イチゴノキはまれに病気にかかることもあるため、日ごろから様子をチェックしておきましょう。代表的な病気に「うどんこ病」が挙げられます。
「うどんこ病」にかかると葉や茎の表面に白いカビが繁殖し、うどん粉をまぶしたようになります。葉の表面がカビでびっしり覆われると、植物は光合成ができず栄養が作れません。
さらにカビが葉から栄養を吸収するため、生育不良になって枯れてしまう可能性もあります。4~11月に発生しやすいため、見つけたら殺菌剤を散布しましょう。
このほかに、先に説明したカイガラムシの排泄物が原因で引き起こされる「すす病」にも注意が必要です。
イチゴノキの剪定方法
剪定は見た目を整えるだけでなく、風通しや日当たりを良くして木の健やかな生長を促すことにつながります。
イチゴノキはいつ、どのように剪定するとよいのか見ていきましょう。
剪定は初春がおすすめ
剪定は果実が落下した後の「2~3月」の初春が最適です。
また秋の開花や結実前の剪定は、花や実の数を減らす可能性があるため避けた方が無難です。適期以外の時期に剪定するときには、枯れた枝を軽く切る程度にとどめます。
イチゴノキの剪定方法
イチゴノキは何もしなくても樹形が整いやすいため、不要な枝を切り落とすだけの弱めの剪定で十分です。枯れ枝や徒長枝などが伸びて混みあった部分を間引くように剪定しましょう。
また太い枝を切り落としたり枝を切りすぎたりすると、木に負担がかかり弱る原因になるので注意してください。
切り落とす枝
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枝を切るときは根元から切り落とすことがポイントです。
イチゴノキの増やし方
挿し木の方法
挿し木を行うことでイチゴノキを増やすことができます。適期は枝が固くなる「6~7月」ごろです。
挿し木の手順
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そのままの状態で数ヶ月ほど育て、しっかりと根が出たら鉢に植え替え育てます。また先ほど説明したとおり、イチゴノキは細根性です。根を傷付けないように十分注意しましょう。
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