1年を通してきれいなグリーンを楽しめるオリーブは、初夏にはかわいい花をつけます。花だけではなく実も楽しめるため、家庭で栽培するのに向いている植物です。おしゃれな雰囲気が人気のオリーブを育てるコツや、品種による違いを紹介します。
オリーブの特徴を知ろう
オリーブオイルや塩漬け、ピクルスなどの姿で食卓を彩るオリーブは、家庭でも育てられる人気の植物です。おしゃれなグリーンの葉や白くてかわいい花など、家のシンボルとして植える木としても好まれています。
そんなオリーブについて、栽培をする前に特徴や魅力をチェックしておくとよいでしょう。どのような種類があるのか、花の特徴や品種について解説します。
オリーブには多くの種類がある
玄関のシンボルツリーや観葉植物としてインテリアの一部にもなるオリーブですが、その種類は数百から1,000種類ともいわれるほど豊富です。多くの種類の中でも、日本の気候で育てるのに適した品種は60種類以上あります。
葉の形や樹形、実や花など、品種によってさまざまな違いのあるオリーブですが、なぜそんなにも種類が多いのでしょうか。それはオリーブの受粉に秘密があります。
オリーブは自らの花粉で受粉する自家受粉タイプと、異なる品種の花粉で受粉する種があり、後者はそれぞれの遺伝子が混ざるため別の品種として育ちます。オリーブは異なる品種のかけ合わせで受粉する品種が多く、そのために種類が増えたのです。
オリーブの花の特徴は?
オリーブの花は5~6月ごろに開花します。白をベースに薄い黄色が混ざった色合いの花で、3mmほどの小さな花が集まって咲く姿は上品な愛らしさを感じさせるでしょう。
オリーブというと、1年中楽しめるグリーンの葉や、オリーブオイルの原料になる実の方が目立ちますが、かわいい花も見どころです。開花している期間が短く、満開になったと思ったらすぐに散ってしまうはかなさも特徴といえます。
地面に散った白い花が作る花びらの絨毯はとても美しく、目を楽しませてくれるでしょう。
オリーブのいろいろな楽しみ方
空間をおしゃれに演出してくれるオリーブは、インテリアやエクステリアにこだわりのある人におすすめの植物です。オリーブがあるだけで、地中海のテイストを感じさせる海外風の雰囲気を味わえるでしょう。
また、オリーブは観葉植物としてだけではなく、食用としての楽しみ方もあります。料理好きな人や、食べられる植物を育ててみたい人にもおすすめです。
葉や花の観葉植物としての魅力や、オリーブの実を食用として楽しむ方法についてチェックしてみましょう。
観葉植物として楽しむ
オリーブは地中海沿岸、南ヨーロッパの雰囲気を感じさせる観葉植物です。観葉植物として高い人気を誇る理由は、インテリアによく映えるおしゃれな見た目でしょう。
葉表の濃いグリーンと葉裏の薄いグリーンのコントラストや木の形など、置いてあるだけで空間がおしゃれになります。地中海が原産の植物ということもあり、白い壁やナチュラルなインテリアともよく合ってコーディネートの邪魔になりません。
テラコッタ素材の鉢に植えれば、南欧風テイストが楽しめます。インテリアになじむおしゃれなシルエットや、花や実のかわいらしさが魅力です。
実を収穫して楽しむ
オリーブは、その名の通り実の部分がオリーブオイルの原料として知られています。家庭でも完熟した実を収穫し、手絞りでもオリーブオイルの抽出が可能です。
オリーブの実はそのままでは渋みがあるため食べられませんが、さまざまな方法で渋抜きを行うことで食べられるようになります。種を抜いたオリーブの実を重曹水に漬けたり、塩漬けにしたりすることで渋が抜けるため試してみましょう。
塩漬けやオリーブオイル漬け、ピクルスなどの料理やサラダなど、さまざまな味わい方があります。観賞用と食用の2通りの楽しみ方ができるのも、オリーブが人気の理由といえるでしょう。
栽培におすすめの品種
オリーブを家庭で栽培するにあたり、どのような種類を選ぶのがよいのでしょうか。栽培に適した育てやすい品種を紹介します。
見た目や実が食用に適しているかなど、育てやすさと合わせて自分好みのオリーブを見つけてみましょう。
マンザニロ
世界各地で育てられている品種で、実がしっかりとして特徴的なのが「マンザニロ」です。スペインが原産地で、他の品種よりも大きめの丸みを帯びた実がつきます。
2~3cmほどの実は食用に適していて、オリーブオイルの原料としても広く使われている品種です。実をつけるための受粉に適した品種で、小さく育てやすいため家庭での栽培に向いています。
ネバディロブランコ
「ネバディロブランコ」はスペインが原産で、柔らかな葉が密集したボリュームのある樹形が人気です。マンザニロと同様に受粉に向いていますが、こちらの品種は実が小さく柔らかいため、食用よりもオリーブオイルに適しています。
花粉の量が多いため受粉させやすく、シルエットがかわいいため観葉植物としてもおすすめです。比較的に栽培が簡単な品種なので、初心者はネバディロブランコを選ぶと育てやすいでしょう。
ミッション
アメリカ原産・スペイン系の品種で、日本でも長い歴史を持つオリーブが「ミッション」です。日本では明治41年から小豆島で栽培されてきた品種で、最もポピュラーなオリーブといえるでしょう。
実が硬くオイルをたっぷりと含んでいるため、オリーブオイル用としても食用としても使われています。ハート型の実や葉裏の銀白色、スラッと直立したシルエットなど見た目もおしゃれな品種です。
オリーブの花について知ろう
小さくて繊細な白い花は、可憐でおしゃれな印象を与えます。そんなオリーブの花の、開花時期や期間を見ていきましょう。
知っているとよりオリーブの魅力を感じられる、花言葉についてもあわせて紹介します。
オリーブの花が咲く時期と期間
オリーブは5~6月の初夏になると、白く小さな花を咲かせる植物です。3mmほどの花が10~30ほどまとまって房状に咲き、目を楽しませてくれます。
花の見た目はキンモクセイに似ていて、初夏に適した爽やかな印象が魅力的です。開花した後4~5日ほどですぐに落ちてしまうため、花を楽しめる期間はとても短いでしょう。
しかし、地面に落ちた花の見せるはかない様子もオリーブの美しさといえます。
オリーブの花言葉
オリーブにはいくつかの花言葉があります。「平和」や「知恵」「勝利」など、どれも前向きで明るい印象の花言葉です。
最も有名な花言葉である「平和」は、由来が旧約聖書という古い歴史を持っています。ノアの方舟に出てくる話で、鳩がオリーブの枝を持って戻ってきたことで、40日間続いた洪水が収まったというエピソードが由来です。
また「知恵」や「勝利」はギリシア神話がその起源で、海の神であるポセイドンと争っていた女神アテナが「最も人の役に立つ贈り物」としてオリーブを作ったことが由来です。
全知全能の神ゼウスが、馬を作ったポセイドンではなくオリーブを作ったアテネに、エーゲ海の町「アテネ」の支配権を授けたことから花言葉になりました。
古代オリンピックでは、オリーブの冠が勝者に贈られていたという話もあります。平和や勝利のシンボルとして使われることが多いオリーブは、明るい意味の花言葉が多くプレゼントとしても人気がある植物です。
オリーブの花を咲かせるポイント
せっかくオリーブを育てているのに、花が咲かずにがっかりしてしまうことがあります。オリーブは葉や実だけではなく、花も楽しめる植物です。
愛らしい白い花を咲かせるためには、開花させるための注意点を確認しておきましょう。オリーブの花を上手に咲かせるコツを紹介します。
雨風にあててはいけない
オリーブの花は咲いている期間が短いため、開花している間に雨風にあたらないように気をつけることが大切です。鉢植えの場合は軒下など雨のあたらない場所に移動させるとよいでしょう。
また雨に濡れると花粉が飛びにくく、受粉の妨げになりうまく実がなりません。できるだけ花が雨風にあたらないように、天候が悪い日はシートをかぶせるようにすると安心です。
2種類以上の品種を植えよう
オリーブは異なる品種の花粉によって受粉する種類が多く、花や実をつけるためには2種類以上の品種を植えなくてはいけない場合があります。自家結実性が弱く、1種類で花を咲かせる自家受粉タイプの品種の少ない植物です。
開花のタイミングが近い品種を2種類以上植えることで受粉しやすくなり、花をつけるようになります。植える際はなるべく近い範囲に植えるようにするとよいでしょう。
オリーブの花が咲かない原因
2種類以上の品種を植えて雨風にも気をつけているのにオリーブの花が咲かない場合は、以下のような原因に心当たりがないかチェックしてみましょう。花が咲かない原因を確認して、ひとつずつ改善していくことが大切です。
よくあるオリーブの花が咲かない原因をまとめて紹介します。
適温でない
温かい場所を好むオリーブは、日本の温暖な気候で育てやすい植物です。耐寒性もあり-2℃の気温にも耐えられますが、花を上手につけたい場合は温度の変化にも気を配りましょう。
オリーブの花をつけるためには、寒い地方では冬場に霜がおりないように気をつけることも大切です。逆に温暖な気候の場所では夏の暑さで枯れないように、水やりを早朝や夕方に行う必要があります。
季節や育てる土地の気温に合わせて、適温で育てるようにしましょう。
栽培を始めて間もない
オリーブの花が咲かない理由のひとつとして、栽培を始めたばかりの若い木であることがあげられます。オリーブは1年目には開花せず、4~5年かけて花をつけるようになるため、栽培をして間もないものは咲かないのです。
すぐにオリーブの花を楽しみたい場合は、ある程度樹齢の高いものを購入して植えるとよいでしょう。
日光不足
オリーブは温暖な気候の地中海が原産の植物です。暖かい気候を好むため、1年を通して日当たりがよく風通しのよい場所で育てる必要があります。
樹齢が高いものを2種類以上植えても花が咲かない場合は、日照不足を疑いましょう。鉢植えで育てる場合も、暗い場所に置かないように気をつけることが大切です。
オリーブを育てるコツ
家庭でも育てやすいオリーブですが、上手に育てるためには以下のポイントを心がけるとよいでしょう。せっかくのオリーブを枯らしてしまったり、見た目が悪くなってしまったりしないように育て方のコツを紹介します。
水やり
オリーブは水やりがとても重要な植物です。水のやりすぎは育ちにくくなるため、水を与えたときはしっかりと土を乾かすようにしましょう。
しっかりと乾かすといっても、乾燥させすぎることも避けなければいけません。オリーブが弱らないように、土が乾いたら水をたっぷりと与えるようにします。
気温が高く乾燥しやすい初夏から秋にかけては水やりを行いますが、冬場などは水やりをしなくても大丈夫です。夏の水やりは気温の高い日中に行うと、土の中の水分が熱くなり根を弱らせるため、早朝か夕方に行いましょう。
植え付け、植え替え
オリーブを植え付けるのに適しているのは、3月末~4月中旬ごろの暖かく晴れた日です。基本的に1年中可能ですが、オリーブは5~6月の初夏に花をつけるため、春のうちに植え付けておくことで立派に成長するでしょう。
真夏や真冬は避け、根腐れや根詰まりなどを起こさないように注意します。鉢植えからの植え替えも春に行い、傷んだ根は取り除いて大きめの鉢を使用しましょう。
また、植え付けや植え替えを行うときは土の深い位置に植えないことも重要です。風の影響を受けないように支柱で支えるようにして、元から土に埋まっていなかった部分には土がかからないように気をつけましょう。
自力で植え替えるのが難しい場合は、庭の手入れを専門とする事業者に依頼してみましょう。「ミツモア」ではカンタンな質問に答えて依頼を出すことで、お近くの事業者をすぐに見つけられます。
剪定
オリーブが花や実をつけるためには、剪定をしっかり行うことが重要なポイントです。春から夏にかけて伸びた新梢を残して剪定を行いましょう。
新梢には翌年に花が咲くため、できる限り残して切ることがポイントです。風通しがよくなるように間をあけて切り、重なった枝や上下に伸びきった枝も剪定します。
内側に向かって伸びている枝や、根元から生えた枝なども切っておきましょう。剪定を行うことで花が多く咲き、花粉の量が増えて受粉しやすくなり、立派な実がつくようになります。
自分で剪定をするのが不安な方や、忙しくて時間がとれない方は、剪定業者に依頼するのがおすすめです。
オリーブの花と実を楽しもう
オリーブならではの葉の色や繊細な印象の葉のつき方は、部屋をおしゃれに見せてくれる効果を見込めます。葉だけではなく花や実も楽しめるため、育てていてとても楽しい植物でしょう。
初夏の訪れを感じさせる白い花は、自宅で栽培している人だけが楽しめる魅力のひとつです。育て方のコツや開花のポイントなどを参考にして、オリーブの魅力を堪能してみてはいかがでしょうか。