イタヤカエデは大きな葉が特徴的な、ムクロジ科カエデ属の落葉高木です。
日本全国の山地を中心に分布し、環境によって様々な変種や亜種が存在しています。
「イタヤカエデってどんな樹木?」「シンボルツリーとして育ててみたい!」そんな方のために、この記事では特徴や種類、育て方や手入れ方法を解説します。
イタヤカエデの生態!葉や花の特徴を解説
植物名 | イタヤカエデ |
学名 | Acer pictum |
科名 / 属名 | ムクロジ科 / カエデ属 |
原産地 | 日本 |
開花期 | 4月~5月 |
花の色 | 黄色 |
樹高 | 15~20m |
特性 | 落葉性 |
イタヤカエデはムクロジ科カエデ属の落葉樹です。亜種や変種など種類がたくさんあるので、総称名として「イタヤカエデ」と呼びます。
別名はコハウチワカエデ、オオバモミジやトキワカエデ、ツタモミジなど。大きく育ち葉も広がってたくさん生える特徴があります。
育てる際には一般的に庭木として地植えしますが、鉢植えや盆栽として育てることも可能。光があまり差さない森の奥でも生息することができるほど、生命力が強い樹木です。害虫が付きにくく成長速度も早いので、最近ではシンボルツリーにする方も多いですね。
雨の日に雨宿りができるほどにしっかりとしていることが有力な命名説なんですよ。分厚く大きな葉がまるで「板で作られた屋根のよう」というところから、板屋楓と呼ばれるようになったのですね。
北は北海道から南は九州まで、日本各地の山地に分布しています。
15cmほどの大きな葉が特徴
イタヤカエデはたくさんあるカエデやモミジの中でも葉が圧倒的に大きく、分厚いものがたくさん生えるのが特徴です。葉幅10~20cm、長さ7~13cmほどの見ごたえのある葉をつけます。
葉と葉は重ならないように生える特徴があり、これは日光が当たらない場所でも効率的に光合成できるようにするためです。
葉は手のひら状で切れ込みの数は5~7つ程度です。カエデ属の中では珍しく、ふちがギザギザではありません。日本で最も多いイロハモミジに比べると切れ込みは浅く、遠くからでは五角形や円形に見えることも。葉先は鋭く尖っています。
多くの植物は新緑の後に花を咲かせるのが一般的です。これに対してイタヤカエデは、春に花を咲かせたあと葉を出します。
葉が大きくたくさん茂るので、花が葉に隠れてしまわないようにしているのですね。花粉を動物や虫に運んでもらうための知恵でしょう。
イタヤカエデの紅葉
イタヤカエデの葉は秋になって落葉直前にになると、葉の色を黄色く変化させます。
赤色に変色することはほとんどなく、紅葉シーズンの直前まで葉を緑色に保ち続けるのが特徴です。
4月~5月に黄色い花を咲かせる
イタヤカエデは4月~5月に、大きな黄色い花を枝いっぱいに咲かせます。
カエデ・モミジ類では珍しく花がよく目立ちます。雄雌同株で、花の集まりの中で雄花と雌花の両方咲くのが特徴。花茎は長めで花びらは5枚あり、平たい形で開花します。
実と種子の特徴
花が枯れると実ができます。実は無毛で1.5cm程度の大きめの羽が付いており、羽の付け根のぷっくりと膨らんだところが種子です。風に揺られて落ちる時にはできるだけ遠くへ届くように、くるくる回って落ちていきます。
種を採取する時には、秋になって羽の色が褐色に変わってからにしましょう。緑色の時はまだ早く、植えても芽が出ません。また種子に穴が開いていれば、虫に食われている証拠。このような種子は採取しないでくださいね。
幹と枝の特徴
イタヤカエデの幹は白くて美しく、弾力性に富んでいます。そのため建材や家具、楽器など木材として様々なものに使われます。国産の楓材のほとんどがイタヤカエデなのですよ。
また大きな特徴としては、カエデの仲間らしく樹液が採取できること。早春に幹に傷をつけると甘いシロップが出てきます。この樹液はタバコの香料として使われることもあります。
イタヤカエデの樹液の取り方
2月頃になったら、カエデ類は休眠期を終えて活動を始めます。水分を根から吸い上げて全体に回す時に糖分が染み出るのですね。これを幹から摂取します。
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メープルシロップを作る業者であれば専用の器具を用いて大量に摂取しますが、家庭でシロップの味を確かめてみたいという方であれば、この方法で十分です。
樹液は人間の体液と同じで、傷口を塞ぐためにもあります。ストローを抜けばまた固まって穴を自分で塞ぎますので、味見をするだけであれば大きな穴は空けないようにしてください。
ちなみにこの樹液を私たちがよく知るメープルシロップにするには、1/40程度まで煮詰める必要があります。たとえば15ℓの樹液であれば18時間程度煮詰めることで、やっと300ml程度のシロップができます。
庭に地植えしたイタヤカエデがとても大きくなった場合には、ぜひ自家製のメープルシロップを作ってみてくださいね。
イタヤカエデの種類
イタヤカエデは生育地が広く、環境にあわせて様々な亜種がこれまでに誕生してきました。
葉の形や色がそれぞれで異なるため、イタヤカエデを発見した際はぜひチェックしてみてくださいね。
黄金イタヤカエデ
黄金イタヤカエデはその名の通り、黄金に輝く葉を持つ品種です。その葉の特徴から別名を「キンカクレ(金隠れ)」とも呼びます。
季節の移り変わりに合わせて葉色を変化させていくのが特徴で、春の萌芽は発色のよい黄緑色、夏は爽快感あふれる若緑色、秋は橙から黄色へと色が変わり、様々な姿を楽しむことができます。
ベニイタヤカエデ
ベニイタヤカエデは紅紫色の若葉をつけるのが特徴の品種です。別名を「アカイタヤ」とも呼びます。
新葉の赤色から夏には葉を緑色へと変化させ、秋には黄色に黄葉します。
またイタヤカエデは7つの裂片の葉を持つ種類が多い中、ベニイタヤカエデは5烈の葉をつけるのが特徴です。
エンコウカエデ
エンコウカエデは深く分かれた葉が特徴のイタヤカエデです。
葉が深く切れ込んだ姿が猿の手の姿に似ていることから「エンコウカエデ」という名がつけられました。
本州や四国、九州に分布しており、関東地方の山地などでもその姿を確認できるイタヤカエデです。
オニイタヤカエデ
オニイタヤカエデは、イタヤカエデの中でもひときわ大きな葉をつけるのが特徴の品種です。
葉の大きさは10~25cmほどで、裂け目が浅く、葉先はとがっています。
北海道から沖縄まで日本全国に分布しており、山地などの湿り気のある場所に生息しています。
イタヤカエデの育て方!健康に育てるための管理方法は?
庭木・鉢植え・盆栽などで楽しめるイタヤカエデ。年間の手入れスケジュールや普段の水やり頻度などを紹介します。
イタヤカエデの植え付け・植え替え・剪定などは、いずれも休眠期である冬に行います。そうすることで株が傷まず、イタヤカエデの負担が少なくなりますよ。
植え付け
植え付けは12月~3月の間ですが、北海道など寒冷地では極寒期の12月~2月は避け、11月に行ってください。
イタヤカエデはどんな土壌でも適応して育ちますが、庭木・鉢植え・盆栽ともに植え付け時には土を肥やしましょう。植える土に対して堆肥と腐葉土を2割ほどしっかり混ぜてください。
土が痩せていると白紋葉病(しろもんぱびょう)が発生しやすくなってしまいます。残念なことにこの病気は治療できないので、土を肥やして保湿力を上げておきましょう。
※白紋葉病:土壌伝染病の一種。根が白色の菌糸で覆われて全体が衰弱する。
イタヤカエデは丈夫で成長も早い植物ですが、乾燥には弱く日が長時間当たると葉が焼けてしまいます。日当たりを好みますが、育てるなら半日陰から日陰への植え付けがおすすめ。
さらに地植えで長時間直射日光が当たる場合には、マルチング(ビニールなどで覆うこと)をして根本に日が当たらないようにしましょう。西日は厳禁です。鉢植えや盆栽であれば長時間直射日光が当たらないように、季節ごとに場所を動かす方も多いですよ。
植え替え
地植えは植え替えの必要はありません。
鉢植えの場合には、2~3年に1回程度で植え替えをしましょう。休眠期の冬であれば大丈夫ですが、最適なのは1月頃です。
あまり大きくしたくなければ鉢サイズは同じで大丈夫ですが、一度土を丁寧に落として根の整理をしてください。古い根や黒ずんでしまっている根は、この時に切り落とします。
剪定
イタヤカエデは剪定の必要はありませんが、大きく育ちすぎたと感じたら剪定を行いましょう。適期は12月の休眠期です。
カエデ類は1月末頃にはすでに休眠を終えて、水分を吸い上げ始めます。そのため2月以降の剪定はNGです。春先に枝を切ってしまうとそこから樹液が垂れて止まらず、株が弱ってしまうので注意しましょう。
風通しを良くする目的で剪定を行う場合は、徒長枝を2~3芽残して切り落としていきます。ただし夏場に剪定すると、そこからより伸びようとするため逆効果に。夏場の剪定は我慢してください。
イタヤカエデやその他の植物の剪定に不安があるのであれば、プロの業者に頼むのがおすすめです。依頼する際には、ぜひミツモアを利用してみてください。無料で複数の業者から見積もりを取れるので、比較してあなたにピッタリの業者を選べますよ。
肥料
イタヤカエデの肥料は開花(4~5月)の前後に与えましょう。油かすと腐葉土を混ぜ、株周りの土を掘って入れ込みます。
開花後に施肥するのは、秋の黄葉を見事にするため。施肥を忘れずに行えばツヤツヤで美しい黄色い葉になりますよ。
水やり
イタヤカエデは他の植物と同様、地植えの場合には自然の降雨に任せて大丈夫です。しかし乾燥には弱く、葉が乾燥するとちりちりに丸まって茶色くなってしまいます。
地植えでも夏場には頻繁に水をやってくださいね。シャワーにして木全体に水をかけるとよいですよ。
鉢植えや盆栽も水切れに注意をしましょう。土表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。夏場にしっかりと水をやっておけば、黄葉は綺麗になります。
イタヤカエデを育てるうえで注意したい害虫一覧
イタヤカエデは頑丈な植物で生命力も強く、病害虫のリスクはあまりありません。しかし絶対に大丈夫というわけではありませんので、注意したい害虫について紹介します。
名前 | 種類 | 発生時期と症状 | 対処法 |
トビモンオオエダシャク | 蛾(ガ)の仲間 | 4月~5月頃
葉を食害 |
春に農薬を散布もしくは捕殺 |
モンクロシャチホコ | 蛾(ガ)の幼虫 | 8月~10月頃
葉を食害 |
夏場に農薬を散布もしくは捕殺 |
テッポウムシ | カミキリムシの仲間 | 春~秋
幹に穴を空けて中を食い荒らす |
成虫の捕殺もしくは穴に殺虫剤を吹き入れる |
モミジニタイケアブラムシ | アブラムシの仲間 | 4月頃
新芽から吸汁加害 すす病の誘発 |
剪定で風通しを良くする
農薬散布 |
いずれも初期に発見すれば大きな被害は受けません。普段の水やりの時に幹や葉を注意して見るようにしてくださいね。
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