五葉松は日本の庭園で人気が高い常緑針葉樹で松の一種です。


葉が5本で一房になっていることから五葉松と名付けられ、庭木や盆栽として広く親しまれています。
樹高は最大20m程度まで成長し、葉の長さは他の松に比べて短く3~6cmほどなため、剪定の方法にも注意が必要です。
この記事では、五葉松の剪定の時期やポイントについて解説します。
五葉松の剪定時期は4~5月と11~12月

五葉松の剪定は、春と秋が最適な時期です。
春は4月から5月上旬、秋は11月から12月がおすすめ。
これらの時期は木の成長サイクルに合わせて、最も負担が少なく剪定できる絶好のタイミングですが、春と秋で剪定内容が違うので確認してください。
「芽摘み(ミドリ摘み)」は4~5月
春の剪定「芽摘み(ミドリ摘み)」は五葉松の管理において大事な作業です。
新芽が伸び始める4月中旬から5月上旬にかけて行います。
五葉松は松の中でも成長が緩やかですが、放っておくとどんどん枝が伸びていき、樹形を崩しやすい松なので、樹勢を抑える必要があります。
時期を逃すと芽摘みしにくくなるため、この時期に必ず行いましょう。
「もみあげ」と「透かし剪定」は11~12月
秋の剪定「もみあげ」と「透かし剪定」は11月から12月にかけて行います。
「もみあげ」は松の下部から中央部にかけて、不要な枝や芽を手で摘み取って風通しをよくする、松特有の剪定作業です。
ただし、五葉松に関しては古い葉を軽くむしる程度で、ほかの松のようにきれいに葉をなくしてしまうことはしません。
手で摘み取るのに時間がかかる、五葉松特有の葉が細かく短いのでやりづらいことが理由として挙げられます。さらに五葉松は、もみあげをやりすぎると他の松よりも弱りやすいです。
「透かし剪定」は五葉松の内部に日光を届きやすくしたり、風通しをよくするための剪定作業です。枝の内側や交差する枝、弱っている枝を取り除いて、五葉松の病気や害虫のリスクを軽減します。
五葉松の剪定に必要な道具
五葉松の剪定に必要な道具を紹介します。
剪定用手袋
剪定用の手袋を準備しておきましょう。
普通の軍手ですと剪定中にトゲやささくれが刺さってケガをする場合があります。
手のひら側が樹脂コーティングになっているものがおすすめです。
剪定バサミ
剪定バサミは枝や植物の枝を切断するための専用ハサミです。
片刃が鋭利な刃物、もう片方の刃は平らな受け刃になっているため、植物の枝を傷つけることなく、きれいに切断することができます。
高炭素鋼やステンレス鋼などで作られているので長期間、切れ味を保つことができます。
植木バサミ
普通のハサミと同じような形をしています。
刃先が細く、小回りが利くため、込み入ったところにも入りやすいです。
細かい枝や最後の仕上げに使用します。
剪定バサミでは切れないような枝を切るのに使います。
通常の木工用ノコギリとは異なり、刃が引く方向にのみ鋭利に切れる一方向切断刃が特徴です。
脚立
脚立は背の高い樹木を剪定するときに使用します。
剪定では幹や枝の隙間に足をねじ込んで脚立を立てることが多いので、三脚が使われます。
脚立を使う際には、以下の注意点を守って使用してください。
- 登る前に調節器具がロックされていることを確認する
- 一番上の段に載って作業しない
- 上を向いて作業しない
- 悪天候下では使わない
ゴミ袋
切り落とした枝をまとめるのに使用します。
五葉松の剪定方法

五葉松の剪定方法は3つあります。
それぞれ剪定方法が異なるので確認してくださいね。
芽摘み
五葉松の芽には「コンペイトウ芽」と「ロウソク芽」の2種類がありますが、これら2つの新芽をかき取る作業を芽摘みと言います。

ロウソク芽
成長力がある若い木にたくさん生える。
見た目はロウソク状の形をしていて、のちに枝となるボツボツがたくさんついている。
コンペイトウ芽
樹齢を重ね成長期が落ち着いた完成樹や老樹にたくさん生える。
見た目は小さな芽が密集し、コンペイトウのような形をしている。
これら2つの芽を2分の1~3分の1程度残して指で摘み取ります。

芽の勢いがあるものは深めに摘み、芽の勢いが弱いものは長めに摘むことを意識してください。
枝を長くのばしたい場合は浅く摘むかそのままにしておいても良いです。
4~5月は芽が柔らかく指でつまめるので、芽摘みは必ずこの時期に行いましょう。
この時期を逃すと芽が固くなり、ハサミ等で行う必要性が出てきます。
ハサミで行うと切り口が赤く変色し、外観を損なうので芽摘みのタイミングを逃さないようにしましょう。
葉透かし
葉透かしは五葉松の束の数を調整する作業のことです。
芽が成長するのが1月頃からなので、必ずそれまでにすましておく必要があります。
五葉松は5本ずつの葉の束が枝先に5~10束ほど生えているので、束の数を調整して芽の生長を均等にします。
5~10束ほどある束が3束になるように束ごと引っこ抜いてください。
このとき、残す3束の位置が三角形になるように、他の束を抜くのがポイントです。
強い芽には葉を多めに残し、弱い芽の葉は少なめに剪定することで、葉の長さが揃い引き締まった樹形になりますよ。
もみあげ
もみあげとは、枯れたり古くなった葉を手で取っていく作業のことです。

五葉松の葉は古くなると自然に落ちていきますが、落ちずに残ったままの葉があると、葉下の枝に日が当たらず弱ってしまいます。
他の松はもみあげで古葉をきれいにしごき取りますが、五葉松は傷みやすいうえ、葉が短くつまみにくいので、軽く古葉をむしる程度にとどめます。
五葉松を剪定するときの注意点

五葉松の剪定時には、見た目の美しさと健康を維持するために慎重な作業が求められます。
特に「新芽を切らない」「風通しを良くする」に注意して剪定を行う必要があります。
新芽を切らない
五葉松の新芽は、将来の生長を担う重要な部分です。
新芽の生長方向と五葉松全体のバランスを常に意識して剪定作業を行うようにしましょう。
風通しを良くする
風通しのよさは五葉松の健康維持と病害虫の予防に必要不可欠です。
密集した枝や葉は湿気がこもりやすく、カビや病気の温床となるため、適切に枝を間引き、内部に光と風を通すことで、健康的な生長を促進できます。
剪定時には風通しのよさを意識して行ってください。
五葉松の病気・害虫対策

五葉松は松の一種のため松特有の病害虫にかかりやすいです。
日ごろから注意して観察しましょう。
害虫:マツノカサアブラムシ
マツノカサアブラムシは、五葉松の新梢や若い葉に集中的に寄生する害虫で、特に春から初夏にかけて現れます。
体長1-2mmの緑色または黄緑色の小さな昆虫で、集団で五葉松の新芽や葉の裏側に寄生します。
吸汁による樹勢の低下、葉の変形、黒い煤病の発生などを引き起こすので、予防策が必要です。
予防策
- 周辺の雑草を除去する
- 通気性を良くする
- 黄色の粘着トラップを吊るす
害虫:マツケムシ
マツケムシは、五葉松の葉を食害する毛虫の一種で、体長3-5cmほどで、茶色や灰色の体に特徴的な毛が生えています。
幼虫は集団で行動して松の葉を食べつくすほどの破壊力があり、夏に大量発生すると五葉松の葉を短期間で食べ尽くし、樹勢を著しく弱めます。
見つけた場合は、ピンセットで取り除くか薬剤散布しましょう。
薬剤はトレボン乳剤やスミチオンが毒性が低く市販されているのでおすすめです。
害虫:ムツノキハバチ
ムツノキハバチは、五葉松の葉に穴をあける小型のハバチの一種で、体長5-8mmの黒や赤褐色の昆虫です。
幼虫時に集団で葉を食害し、葉に不規則な穴をあけて葉脈だけを残して食べることが特徴です。
大量発生すると光合成能力を低下させ、樹勢を弱める原因となります。
薬剤で除去する場合「オルトランDX粒剤」がおすすめです。
病気:葉ふるい病
葉ふるい病は、五葉松の葉に発生する真菌性の病気で、葉に褐色や黒褐色の斑点が現れ、最終的には葉が落下してしまいます。
高湿度や通気性の悪い環境で発生しやすく、梅雨時期から初秋にかけて蔓延します。
感染した葉は徐々に枯れ、樹木の光合成能力を低下させていくので、適切な剪定で通気性を改善し、必要に応じて殺菌剤を使用しましょう。
病気:松枯れ
松枯れは、マツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリが媒介する最も深刻な五葉松の病気です。
マツノザイセンチュウが樹木の内部に侵入し、水分の移動を阻害して最終的に樹木を枯死させます。
感染すると葉が黄色から茶色に変色して枝が枯れ始め、感染した樹木は短期間で枯死する可能性があるので、感染がみられた五葉松は焼却処分し、伝染を防ぐことが大事です。
庭師に五葉松の剪定を依頼する費用相場
五葉松の剪定は、他の庭木とは異なる作業が多く、難しいと感じる方が多いです。
五葉松の剪定を業者に依頼すると、上記で紹介した病害虫の予防策や対策を確認してくれる業者も多くいるので、不安に感じている方は依頼を検討してみるのがおすすめです。
剪定をプロに依頼する際は費用の算出方法に「日当制」と「単価制」の2通りが存在しますが、松は基本的に木の高さなどによって、料金が変わる「単価制」によって費用が計算されることが多いです。
【単価制】剪定する松1本に対して金額を設定する方法
単価制の場合は、五葉松の高さや種類によって差があります。
「ミツモア」に登録している事業者の松の剪定料金の目安をまとめました。
| 高さ | 金額 |
|---|---|
| 2m以下 | 9,000~10,000円 |
| 2~3m | 15,300~18,900円 |
| 3~4m | 24,650~30,450円 |
| 4~5m | 39,000~46,200円 |
| 5~6m | 51,000~63,000円 |
| 6~7m | 65,000~75,000円 |
※ミツモアの過去3年間(2022年1月1日~2024年12月31日)の見積もり依頼データから算出
【日給制】職人の日当をベースに算出する方法
日当制の場合も職人の技能によって金額は異なりますが、1人あたりの1日の金額は15,000~30,000円が相場です。
五葉松の剪定はプロの庭師に依頼するのがおすすめ
「親から五葉松を引き継いだけど剪定の方法が全く分からない」「キレイな形を保ちたいけど、一人では不安。」といった場合はプロに任せて剪定してもらうのがオススメです。
松の剪定をプロに依頼する流れ
松の剪定をプロに依頼するには、まず自宅に訪問してくれる近くの庭師を探す必要があります。
「ミツモア」では、地域で活躍する植木屋・庭師をかんたんに見つけられます。

「依頼内容」「希望の日程」「作業場所」などの質問に答えると、最大5社から自動であなたにカスタマイズされた見積もりが届きます。
見積もりの料金や口コミ評価を比較して、気になる庭師に剪定を依頼してみましょう。正式な依頼前に、チャットで疑問点を相談することもできます。
自動の見積もりをもらうだけなら無料でできるので、自宅の庭木の剪定料金を確認してみてはいかがでしょうか?








