住宅に防音工事をすれば、騒音の軽減や防止につながりますが、防音工事は費用がかかるものです。近隣にある施設が騒音の原因になっている場合、防音工事に補助金を出してもらえます。補助金制度対象になるケースと、申請方法について解説します。
防音工事の補助金制度の対象になるケースは3つ
住宅の防音工事を行う際に、補助金を出してもらえるケースは3つです。それぞれ地域や築年数などの要件が定められていますが、まずはどのような住宅が対象になるのかを知っておきましょう。
- 空港周辺に住んでいる
- 幹線道路周辺に住んでいる
- 自衛隊や在日米軍の飛行場周辺に住んでいる
空港周辺に住んでいる
特定空港周辺で第1種区域に指定されている地域に住んでいる場合、防音工事の補助金対象になることが法律で決められています。この場合の防音工事とは、航空機の騒による騒音障害を軽減したり、防止したりするための工事を指します。
特定空港または特定飛行場とは、東京国際空港・福岡空港・仙台空港などの国が管理する空港12カ所と、会社が管理する成田国際空港・大阪国際空港の2カ所です。
新千歳空港や県営名古屋空港など、特定空港以外でも補助金が出る空港もあります。
幹線道路周辺に住んでいる
幹線道路とは高速道路・国道・都道府県道のことで、全国・地域・都市内に形成されている骨格的な道路網を指します。幹線道路では多くの車が昼夜を問わず走行するので、近隣に住んでいると騒音に悩まされるでしょう。
「幹線道路の沿道の整備に関する法律」では、車の通行による騒音を低減・防止するための工事を促進するように記載されています。補助金が支給される対象は、定められた区域内の住宅に行う防音工事です。
自衛隊や在日米軍の飛行場周辺に住んでいる
「防衛施設周辺の生活環境の整備などに関する法律」では、自衛隊や在日米軍の航空機による騒音障害を軽減・防止するための工事に補助金を出すことを明記しています。対象は自衛隊や在日米軍の飛行場周辺で、地域や築年数などの要件を満たしている住宅です。
防衛省が定めた「住宅防音工事標準仕方書」に基づいて防音工事を行うと、原則的に国が工事費用の100%を助成してくれます。防音工事をする際にあわせて必要になった工事も、補助の対象です。
空港周辺に住んでいる場合の補助金
空港によって補助金の限度額や対象工事が異なります。空港周辺の住宅に出される補助金について、福岡空港のケースを例に解説します。
対象工事
福岡空港周辺は騒音レベルごとに、3種類に区域分けされています。
- 62dB以上:第1種区域
- 73dB以上:第2種区域
- 76dB以上:第3種区域
航空機による騒音を軽減・防止するための防音工事の補助金対象となるのは、指定告知日(1982年3月30日)より前に第1種区域に建てられた住宅です。防音サッシ・壁や天井の改修・エアコンや換気扇などの設置などの防音工事が対象とされています。
対象となる住宅は、地域や建築時期によって、未実施住宅と告示日後住宅に分けられている点に注意しましょう。工事内容や補助金の金額など、補助内容が異なります。また対象となる住宅であっても建て替えをした場合は、原則的に補助対象から外れることも覚えておきましょう。
補助金額
補助金対象の要件を満たしている住宅が防音工事を行う場合、国が定めた標準工事・標準額内の費用を補助してもらえます。空調機器以外の工事で、国が定める金額を超えた場合は、住居者自身で負担します。
防音サッシ・壁や天井の改修・エアコンや換気扇などの設置にかかる防音工事費用は、空港周辺整備機構が業者に直接支払うので、住居者が立て替える必要はありません。
告示後防音工事での空調機器に対する住居者負担は、エアコン設置の場合は3割、換気扇設置の場合は5割です。ただし、生活保護・支援給付を受けている世帯は、基準額内工事の自己負担は0円です。
申請期間と申請の流れ
福岡空港の場合、防音工事の申請期間は年度ごとに決まっています。2023年度の申込受付期間は、4月3日から5月8日まででした。調査設計期間は6月中旬から8月中旬まで、工事実施期間は9月下旬から12月中旬です。
福岡空港以外でも受付期間を設けている空港が多いため、申請を考えている場合は事前に受付期間をチェックしておきましょう。
申請をする場所は、住宅がある役場の窓口です。福岡市内に住宅がある場合のみ、福岡市役所と空港周辺整備機構の地域振興課に申請できます。
設計監理業者・工事施工業者の選択は空港周辺整備機構に委任するので、自分で選べません。空調機器のメーカーについても自分で選ぶことはできず、工事施工業者に任せる決まりになっています。
幹線道路周辺に住んでいる場合の補助金
幹線道路周辺に住んでいる場合、道路や地域によって、補助金の限度額や対象工事が異なります。東京都建設局管轄の防音工事助成を例に、対象工事や申請方法などを解説します。
対象工事
東京都建設局管轄の防音工事対象は、沿道整備道路として指定されており、特別区により防音構造に関する条例が定められている区域です。環状七号線・環状八号線・中原街道・笹目通りの周辺で、防音構造に関する条例の施行日以前から適用区域内に建っている住宅です。
申請後に東京都による騒音調査が入ります。道路交通騒音の大きさが夜間65dB以上、または昼間70dB以上の居室があると、補助金の対象になります。
防音工事の内容は壁・ドア・サッシを防音性のあるものに変える工事です。遮音効果が見込める換気扇やエアコンの設置をする場合は、壁・ドア・サッシの交換などの工事と同時に行う必要があります。
補助金額
補助金対象住宅の防音工事に出してもらえる補助金額は、実際に防音工事にかかる金額ではありません。東京都が審査した工事費用の3/4が補助されます。工事費用を超える金額は自己負担です。
住宅に住んでいる人数によって、補助を受けられる部屋数の限度と補助金額が変わります。対象の部屋数は住んでいる人数だけではなく、東京都が行う騒音調査の結果で決まることも覚えておきましょう。
東京都の予算状況によっては、支給条件を満たしていても補助を受けられないケースもあります。
申請期間と申請の流れ
防音工事を申請するためには、まずは騒音調査の申し込みが必要です。東京都による騒音調査が行われ、結果通知で補助金の対象であると認められてから、補助金の申請をすることになります。
審査が行われた後に、施工業者に防音工事を依頼します。工事完了確認後に補助金を請求し、支払われるという流れです。
申請期間は決められていませんが、騒音調査の申し込みをしてから工事を開始するまでに、約半年かかります。騒音に悩んでいる場合は、早めに動き出すようにしましょう。
自衛隊や在日米軍の飛行場周辺に住んでいる場合の補助金
自衛隊や在日米軍の飛行場周辺に住宅がある場合は、航空機の騒音に対する防音工事の補助金が支給されます。
北関東防衛局が管轄する地域の住宅防音工事の補助金を例に解説します。北関東防衛局管轄の飛行場は、厚木飛行場・横田飛行場・ 宇都宮飛行場などの9カ所です。
対象工事
自衛隊や在日米軍飛行場の第1種区域内に指定日以前から建っており、WECPNL値が75以上の住宅が補助金の対象です。指定日は飛行場によって異なるため、確認が必要です。
WECPNLとは航空機による騒音の大きさを表し、「加重等価平均感覚騒音レベル」や「うるささ指数」ともいわれます。
住宅に住んでいる人数により、補助金の支給対象となる居室の数が決まります。例えば一挙防音工事・追加防音工事なら1人世帯は2居室、2人世帯は3居室です。
防音工事の内容は、換気扇・エアコン・防音天井・防音壁・防音サッシの設置です。防音工事以外に、設計監理費も補助の対象になります。
補助金額
防衛省が定めた「住宅防音工事標準仕方書」に従って工事を行えば、原則として国に全額補助してもらえるので、住居者の負担は0円です。住宅防音工事標準仕方書には、設計計画基準や工事仕様書が詳しく指定されています。
防音工事費の限度額はWECPNL値が80以上と、75以上80未満で分けられています。さらに、農村型住宅か都市型住宅かによっても限度額が異なっているのが特徴です。作業場と居住部分が一緒になっているのが農村型住宅、それ以外が都市型住宅と定義されています。
工事する居室が1室の場合の補助額は以下の通りです。
農村型住宅 | 都市型住宅 | |
---|---|---|
75W以上80W未満 | 183万2,000円 | 167万5,000円 |
80W以上 | 314万2,000円 | 272万3,000円 |
申請期間と申請の流れ
申し込みをすると現地調査が入り、内定が出てから補助金交付申請書を提出します。申請内容を審査され補助金の交付が決定すれば、工事にとりかかれます。着工後は着手報告書・遂行状況報告書・計画変更申請書などの作成・提出が逐一必要です。
工事完了後は設計事務所と住居人で検査、確認をします。その後国もしくは国から委託を受けた人が確認します。補助事業等実績報告書を提出し、補助金等金額確定通知書が届いたら、補助金の請求・受け取りをして完了です。
国に対する請求や工事業者への支払いは、国が指定する担当者に委任しましょう。
防音工事で静かな生活を取り戻そう
国から防音工事の補助金が出されるのは、空港周辺・幹線道路周辺・自衛隊や在日米軍の飛行場に住宅がある場合の、3つのケースのみです。ただ補助金の対象にならなくても、周りの生活騒音に悩んでいて防音工事を検討している方もいるでしょう。
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