住宅や商業施設における外壁塗装には、シリコン塗料やフッ素塗料などが使用されます。
中でも無機塗料と呼ばれる塗料は耐久性を高めるなどの効果があり、注目されている塗料です。無機塗料の概要とメリット・デメリットを紹介します。
外壁塗装に使用する無機塗料とは
無機塗料は一般的な塗料と違い、含まれている成分が塗料に特殊な性能を付加してくれます。無機塗料の概要や有機塗料との違いについて解説します。
有機塗料と無機塗料の違い
無機塗料とはその名の通り無機物を配合した塗料のことです。世界の物質は大きく分けて有機物と無機物の2系統に別れます。
有機物は生命から作られる物質ですが、無機物は生命が作れない物質のことです。
有機塗料と無機塗料の一番の違いは主成分とする樹脂にあります。無機塗料の主な成分はセラミックやケイ素などの無機物ですが、有機塗料は石油などの炭素を含む有機物です。
一般的に広く使われているアクリル塗料やシリコン塗料は有機塗料に当たり、基本的に経年劣化は免れません。一方無機塗料で使用される無機物自体は紫外線に当たっても劣化しない特性があります。
そのため塗料の耐候性を高くするために、無機塗料が開発されたという背景があります。
無機物だけでは塗料は作れない
無機物を主成分とする無機塗料は劣化しづらいのですが、無機物だけで塗料を作ることはできません。そのため無機塗料には有機物も配合されています。
無機物ばかりだと硬度が高すぎて塗料として使用できません。有機物を含めることで初めて塗料を形成できるのです。
仮に無機物だけで塗料が作られれば、外壁は半永久的に長持ちするでしょう。しかしそのような塗料は存在しません。無機塗料とは、有機塗料に無機物の性能を付加したものとなります。
無機塗料は耐候性が高くなるものの、含まれている有機物のため劣化を免れることはできず、いつかは塗り替えが必要となります。無機塗料だからといって万能ではないことを覚えておきましょう。
無機塗料のメリット
外壁は住宅を守る上で大切な役割を果たします。無機塗料はその外壁をサポートするために多くの付加価値を与えてくれます。無機塗料を使用することで得られるメリットを見ていきましょう。
耐用年数が長い
無機塗料の最大のメリットは、耐用年数が長くなる点です。
有機物で作られたアクリル塗料は、約5~7年の耐用年数と言われています。現在主流となっているシリコン塗料は約10~15年、グレードの高いフッ素塗料は約15~20年が目安となります。
他方、無機塗料の耐用年数は15年以上と言われており、耐久性の高さが分かるでしょう。塗料の中でも一番耐用年数が長いものだと認識されているのです。
劣化を進める一番の原因は紫外線ですが、無機物自体は劣化することはありません。
品質の高いフッ素塗料も劣化しづらい特徴を持ちますが、無機塗料ほどではないため塗りたての光沢感は無機塗料の方が長持ちします。
汚れにくい
無機塗料は親水性が高く、水となじみやすい性質を持ちます。汚れが付着しても雨水が塗膜と汚れの間に入り込み、すぐに洗い流してくれるのです。
無機物であるタイルやガラスの表面に汚れが付着しづらいのを想像すれば、その性質が分かりやすいでしょう。雨水でほとんどの汚れが落ちるため外壁を清掃する手間はほとんどありません。
またカビやコケが付着しづらい性質も備えています。これらは有機物を栄養として繁殖しますが無機塗料は有機物の含有率が比較的に少なくなるので、カビやコケの発生を抑えてくれるのです。
汚れやカビが付着すると外壁を茶色や緑で濁し、古びた印象を与えてしまいます。無機塗料であれば外観を長くキレイに保てるのです。
不燃性に優れている
ガラスやセラミックを主成分とする無機物には、炭素が含まれていないこともあり非常に燃えにくい特徴があります。無機塗料で外壁を塗装すると火事が起きても簡単には燃え広がらないでしょう。
火事が起きるなどほとんどないことかもしれませんが、もしもの場合に家を守ってくれる塗料だと安心です。仮に家が燃えてしまっても逃げる時間が多ければ生存できる可能性が高くなります。
ただし無機塗料とはいえ有機物が0ではなく、完全に燃えないわけではありません。有機塗料に比べ多少は被害を抑えられるものだと捉えて下さい。
無機塗料のデメリット
メリットの多い無機塗料にもデメリットがあります。長所だけではなく短所も押さえ塗料の選択を検討するとよいでしょう。無機塗料のデメリットを紹介します。
価格が高い
無機塗料は耐久性が高いほかさまざまなメリットがありますが、その分価格が高くなるデメリットもあります。
グレードの低いアクリル塗料の相場が1㎡当たり約1,400~1,600円であるのに対し、無機塗料は約4,300~5,500円です。高級塗料のフッ素でも約3,800~4,800円の相場なので、無機塗料は比較的費用が掛かります。
単価が数百円でも変われば全体のコストが数万~数十万円も変わるため、予算に大きく影響を与えてしまうでしょう。
価格で抵抗を感じるのであればローンを組む方法もあります。業者に相談してみるなど支払い方法を検討してみてはいかがでしょうか。
ひび割れしやすい
無機塗料に含まれている無機物は硬いため、ひび割れしやすい特徴があります。特に外壁自体にひびが生じた場合、装にもひびが入ってしまうリスクがあるでしょう。
そのため外壁の材質や状況からひび割れしやすい場合は、無機塗料の選択はおすすめできません。
また地震や台風などで住宅が大きく揺れた際は、亀裂が入りやすくなるでしょう。しかし近年は弾力性の高い無機塗料も開発されています。気になる人はこれを選択するのも一つの手段です。
塗装できない素材がある
無機塗料にも種類がありますが、外壁材と相性が悪いと塗装できない場合があります。例えば伸縮性の低い無機塗料は、気候により伸縮する外壁素材には塗装できません。
またサイディングボードやガルバリウム鋼板、木材などが外壁素材であれば無機塗料の塗装が難しい場合があります。相性を確かめずに塗装すればすぐにひびが入ってしまうでしょう。
ラジカル塗料のようにほとんど下地の素材を選ばない素材であれば施工しやすくなりますが、無機塗料はそう簡単にはいきません。
無機塗料を使用するときのポイント
業者に無機塗料で塗装を発注する際は技術力の有無など、いくつか注意しなければなりません。無機塗料で塗装する際のポイントを紹介します。
技術力のある職人に依頼する
無機塗料は伸縮性に欠けるため、均等に塗らなければなりません。ムラなく塗る技術の高い職人に依頼しなければ失敗する恐れがあります。
もし仕上がりが均等になっていなければすぐに剥がれ落ちてしまったり、ひび割れしたりしてしまうでしょう。このように無機塗料を塗装する際は業者選びが重要です。
そこで工事に対する実績が豊富である業者を選ぶとよいでしょう。また営業担当者の説明が丁寧かつ的確であることも大切なポイントです。
また地域密着を掲げている業者であれば施工後に何かあってもすぐに駆け付けてくれる可能性が高いため、近場の業者を選ぶと安心です。
塗料の品質を確認する
無機塗料は無機物の含有率に対し決まった定義はありません。そのため少しでも無機物が含まれていれば無機塗料に分類されます。当然無機物が少ないと期待する効果は薄くなるでしょう。
そのため信頼性の高い商品を選択することをおすすめします。むやみに低価格のものを選ぶと後悔する恐れがあります。
塗料の品質を重視するのであれば、大手メーカー製の商品を選ぶのが無難です。大手メーカーであれば無機物の含有量が少ないことはありません。
3大メーカーのおすすめの無機塗料
品質が確かな無機塗料を選ぶのであれば、3大大手メーカーの商品がおすすめです。それぞれのメーカーが販売する代表的な無機塗料を紹介します。
日本ペイント「アプラウドシェラスターⅡ」
日本ペイントは明治から続く塗料の老舗メーカーです。長い歴史の中で培われた技術が詰められたアプラウドシェラスターⅡは、超高耐候性、超低汚染性を備えた無機塗料になります。
これで塗装すれば紫外線や強い雨風からも外壁をしっかり守ってくれるでしょう。耐久性が高いのでメンテナンスサイクルも長期にわたり、長い目で見るとコストを抑えられるはずです。
汚れが付着しても雨ですぐに洗い流せる特徴があり、美観を長く維持しやすくなるでしょう。メンテナンスする必要がほとんどなく汚れによる劣化から外壁を守ってくれます。
防カビ・防藻性能もあるのでじめじめした環境でも安心です。
- 商品名:アプラウドシェラスターⅡ
- 公式サイト:商品ページ
エスケー化研「スーパーセラタイトF」
無機塗料の中でも1液タイプの優れた商品が「スーパーセラタイトF」です。塗料は一般的に事前の材料調合や計量が必要になりますが、この商品はその手間が要りません。
調合を間違えると本来持つ性能を上手く引き出せないことがあります。スーパーセラタイトFは1液タイプなのでそのまま使用でき、安定した性能を発揮できるのです。
ほかにも無機塗料の特徴である親水性を備えており、汚れが付着しても水ですぐに洗い流せます。防カビ・防藻性タイプで微生物汚染に対する抵抗性も優れています。
水性なので溶剤による中毒や火災の心配もなく、安心して使用できる商品です。
- 商品名:スーパーセラタイトF
- 公式サイト:商品ページ
関西ペイント「アレスダイナミックMUKI」
アレスダイナミックMUKIは無機塗料の特徴である高い耐候性と、コーティングした素材をしっかり保護するフッ素樹脂塗料の特性を合わせた商品です。耐用年数は15年以上と長く使用できます。
無機塗料の耐久性に加え、ラジカル塗料の特徴であるラジカル制御性能も備えています。樹脂が紫外線や雨水に触れると劣化因子になるラジカルが発生しますが、これを抑制する働きがあるのです。
1液タイプの水性塗料なので環境や人体に優しい特徴があります。塗装時は飛散しにくいため、周辺住宅へのご迷惑も最小限に押さえられます。
- 商品名:アレスダイナミックMUKI
- 公式サイト:商品ページ
無機塗料の特性をしっかり理解しよう
無機塗料は有機塗料に無機物を加えた塗料です。紫外線で劣化しない無機物が含まれるため耐久性が高く長持ちする特徴があります。
ただし無機物だけでは塗料を作れず有機物も配合されているため、完全に劣化しないものではありません。
親水性があり汚れを水ですぐに洗い流せるメリットや、防カビ・防藻性能を備え汚れによる劣化を抑える効果もあります。
ただし相性の悪い外壁素材が存在することやひび割れしやすいデメリットもあるため、塗装する際は注意が必要です。
特性を理解した上で無機塗料の塗装を検討してみてはいかがでしょうか。
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