モルタル外壁のメリット・デメリットや、適切なメンテナンス方法について具体的に紹介します。自由度の高いデザイン性が魅力です。
モルタル外壁とは?
モルタルは1980年代まで広く普及していた外壁材です。
見た目はコンクリートと似ていますが、作るときの材料が異なります。モルタルとは、セメントと骨材(砂)に水を加えてやわらかくした外壁材です。
「透湿防水シート」「ラス下地板」「防水紙」「ラス(金属製の網)」を土台にして土台の上にモルタルを塗布するのが一般的な手法。
モルタルは、職人が手仕事で塗布していきます。職人のスキルやセンスが出やすくなるため、品質は必ずしも均一ではなく「どの職人に依頼するか」で外壁の見映えや仕上がりは大きく異なるでしょう。
1990年頃までモルタルが主流だった理由は?
現在は簡単・手軽なサイディング外壁が主流ですが、1990年ごろまでは「外壁といえばモルタル外壁」と考えられていました。
モルタル外壁が普及していた最大の理由は、モルタルの不燃性。
自然素材を多く取り入れていたかつての日本家屋は、火に対する耐性がありませんでした。1923年に発生した関東大震災では炎が広範囲に燃え移り、東京は一面の焼け野原に。
こういった歴史から、不燃性であるモルタルが外壁材として注目され始めます。
そして1950年に「建築基準法」が制定され、外壁材には一定の防火性能を有することが必須となり、モルタルの普及に拍車をかけました。
一方、サイディングとは?
近年主流であるサイディングとは、「サイディングボード」という板材のことです。ボードの間には継ぎ目ができるので、シーリング材を使って防水性や気密性を上げています。
多くの住宅に用いられているのは窯業(ようぎょう)サイディングといい、セメントと繊維質が8:2の割合で構成された原料の外壁材。
工場でまとめて生産でき、施工の際にも外壁にハメるだけなので、工期が短くコストが低いのが特徴です。
モルタル外壁の種類
モルタル外壁は塗り方によって、完成したときの見た目や特徴が異なります。自分の好きなデザインに仕上げましょう。
リシン仕上げ
リシン仕上げは、最もオーソドックスな仕上げです。触れるとざらっとした手触り。モルタルを塗布した後、スプレーガンで「リシン材」を吹き付けます。
リシン材にはセメント・小さな砂利・砂、さらには樹脂性の塗料が含まれています。塗布後の外壁は温かみがあり、マットで落ち着いた風合いが魅力です。
リシン仕上げは他の仕上げと比較して施工費が安価。ただし「カビやコケなどが発生しやすい」「ひび割れやすい」などの特徴もあり、小まめなメンテナンスが必要となるかもしれません。
リシンかき落とし
リシンかき落としとは、リシン仕上げの後でブラシや尖った部材で表面をひっかく方法です。
これにより、壁の見た目がより粗くザラザラしたものになります。
通常のリシン仕上げよりも重厚感が出ますが、費用は少しだけ高い点に注意です。
スタッコ仕上げ
「化粧漆喰(けしょうしっくい)」と呼ばれる「スタッコ」を専用のスプレーガンで吹き付けて仕上げます。
スタッコにはセメント・合成樹脂・骨材が含まれており、5~10mm程度の厚さになるよう外壁に吹き付けます。
スタッコ仕上げの外壁は厚みがあるのでヒビが入りづらく、見た目は高級感のある仕上がりが魅力です。
ただし凹凸が多い分乾燥しにくく、塗膜の強度にムラができることも。いったん汚れると落としにくい点にも注意が必要です。
吹き付けタイル仕上げ
モルタルを塗布した後、「タイルガン」という専用機材で塗材を吹き付けた施工方法です。
タイルという名前ですが、表面はリシンやスタッコよりも不規則な模様。丸い粒のような凹凸がついた「中粒仕上げ」や、ローラーなどでペタッとした見た目にする「押さえ仕上げ」があります。
素材に合成樹脂が含まれているので水を弾きやすく、表面は陶磁器のように滑らかです。「弾性タイル仕上げ」にすると、さらに防水性も高く、ひび割れしにくい壁になります。
左官仕上げ(ジョリパット)
左官仕上げとは、職人が自らの手でコテなどを使って仕上げる方法です。模様の種類が様々で、自由なデザイン性が人気。
近年はアイカ工業のジョリパットという仕上げ材が特に有名で、ひび割れを起こしにくいうえ、15~20年もメンテナンスフリーという特徴があります。
おしゃれな外壁にこだわる方におすすめです。
パターンローラー仕上げ
ローラーの模様は様々な種類があるため、好みに合わせて多彩な表情を外壁に与えることができます。
モルタル外壁のメリット
サイディング外壁が主流になったとはいえ、いまだにモルタル外壁を選ぶ人もいます。長く日本家屋の外壁の定番とされてきたモルタル外壁には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
豊富なデザイン
モルタルはペースト状の外壁材を職人が塗布して仕上げます。デザインや意匠の自由度は高く、理想の外壁を実現しやすくなるでしょう。
さらに多様なカラー、パターン、デザインがあり、外壁に「さざ波」「連波」などの凝った模様を入れられます。また複雑な形状の壁にも施工しやすいのがポイントです。
近年はおしゃれなデザイナーズ物件の外壁などにも、左官仕上げ(ジョリパット)のモルタル外壁が使われていることが多いようです。
耐久性が高い
モルタル外壁は適切にメンテナンスを行なえば30年以上持つといわれます。強度もそれなりにあるため、飛来物などが外壁に当たっても破損することはまれです。
またサイディング外壁のような継ぎ目がありません。サイディングボードという板をつなぎ合わせて作るサイディング外壁では、継ぎ目に使うシーリング材の補修が必要になることもあります。
モルタル外壁の場合はこの継ぎ目がないので、劣化しづらいという特徴があるのです。
優れた遮熱・防火性
モルタルの原材料はセメント・砂・水です。熱伝導性が低く、外気温の影響をさほど受けません。真夏でも室内温度が急激に上がることはありません。
一部のサイディング外壁のように高価な遮熱塗料を塗布する必要はなく、ムダなコストを掛けずに済みます。
モルタルの素材はいずれも不燃性です。そのためモルタル外壁は防火性が高く、万が一火事が発生しても延焼しにくいという点も挙げられます。
モルタル外壁では「内部が全焼しても壁だけは残った」というケースが多々あります。
モルタル外壁のデメリット
耐久性や防火性に優れるモルタル外壁ですが、デメリットといえる部分もあります。外壁でモルタル材を検討しているなら、どのような点がデメリットとなり得るかを理解しておきましょう。
汚れや劣化が目立ちやすい
モルタル外壁は表面に凹凸のあるものが多く、どうしても外壁表面に汚れがたまります。
そのため経年劣化が目立ちやすく、メンテナンスを怠ると外壁全体が薄汚れた見た目となってしまうでしょう。
汚れの原因となるのは、雨やカビなど。雨水が外壁を伝った痕がシミのように残ったり、凹凸にカビやコケの胞子が入り込んだりといったことが起きがちです。
ひび割れ(クラック)
モルタル外壁にとって最大のデメリットとも言えるのが、ひび割れ(クラック)です。
モルタル外壁は塗装の際に水を使うので、塗材が乾燥する過程で必ず収縮が起こり、ひび割れが生じやすくなります。
また素材自体の吸水性が高いことも、ひび割れの一因に。外壁内部で水分の移動が起きることで、ひび割れが発生しやすくなります。
モルタルとサイディングを比較すると
ここで、近年主流のサイディングとモルタルについて比較してみましょう。
モルタル | サイディング | |
工期 | 長い | 短い |
継ぎ目 | 無し | 有り |
デザイン性の自由度 | 高い | 低い |
耐用年数 | 30年 | 20~30年 |
メンテナンス費用 | 70~100万円 | 80~110万円 |
モルタルは職人が手作業で行うのに対し、サイディングは工場であらかじめ作られた素材を壁面にはめ込む方式ため、工期はモルタルの方が長くなってしまいます。
しかしその分、デザインの自由度や耐用年数はモルタルの方が高いという特徴が。防音性についてもサイディングよりモルタルの方が優れています。
サイディング外壁では継ぎ目ができてしまうため、そのメンテナンスが必要という点も注意です。
しかし近年、モルタル外壁は主流の施工ではないため、施工費用自体は高額になってしまいます。費用を抑えたい人には、サイディングの方がおすすめです。
モルタル外壁の劣化症状
吸水(チョーキング現象)
乾いた外壁を触ると、粉が吹いていることがあります。これがチョーキング現象です。
モルタルの防水性が下がり水分を吸収してしまったり、紫外線によって塗料が劣化したりといった原因で起こります。
もしこの現象がみられたら、メンテナンスを検討しましょう。
ヘアークラック
モルタル外壁のひび割れのうち、幅0.3mm以下、深さ4mm以下のものをヘアークラックといいます。
構造クラックとは違い、壁の内部まで錆びることがないので補修を急ぐ必要はありません。
構造クラック
構造クラックは、幅0.3mm以上、深さ4mm以上のひび割れを指します。
このくらい深く広くひび割れてしまうと、建物内部に雨水が侵食するなどした結果、鉄骨などの腐食が懸念されます。
構造クラックが出来てしまったときには、早急なメンテナンスが必要です。
カビ・コケ
凹凸の多いモルタル外壁は、カビやコケの胞子が入り込みやすいのです。
湿度が高い地域では、カビなどの発生に気を付ける必要があります。
カビやコケによってすぐさま耐久性が落ちるわけではないですが、見栄えや衛生面はよくありません。
爆裂
爆裂は、モルタルが内部からの力によって崩れてしまう現象です。
多くの場合は、クラックなどから雨水や炭酸ガスが侵入することが原因で起こります。
鉄筋が錆びて膨張することによって、外壁が押し出されてしまうのです。
重度の場合には鉄筋がむき出しになってしまうので、早急にメンテナンスが必要となります。
モルタル外壁をきれいに保つには?
モルタルはきちんとメンテナンスすれば30年も長持ちする素材です。外壁をきれいに保ち、劣化が起きたらすぐに対応するなど、普段から小まめに手を掛けておくとよいでしょう。
カビやコケ、汚れを落とす
モルタル外壁にたまったカビやコケ、汚れを手洗いで落としましょう。
中性洗剤を含ませたやわらかいブラシで軽くこすります。水で流したあと、乾いた布で水分を吸収させてお掃除完了です。
このとき注意したいのが、スチームクリーナーや高圧洗浄機などを使わないことです。ハイパワーの洗浄機を使えば外壁の汚れを一気に落とせると考える人は多いでしょう。しかし素人が行なうと、塗膜や外壁表面を傷めてしまう恐れがあります。
ブラシでこすってもモルタル外壁がきれいにならない場合は、すでに素人の手には負えません。プロのメンテナンスを検討すべき段階にきていると考えましょう。
ヘアークラックには外壁塗装で対策
モルタル外壁のトラブルを早い段階で見つけられれば、大掛かりなメンテナンスは不要です。
ひび割れが0.3mm未満のヘアークラックなら、そのまま外壁塗装しても大丈夫です。弾性のある塗料を使用しましょう。
クラックがより深いときには、シーリング材を使ったり、切込みを入れたうえで塗装する必要があります。自分の手に負えないと思ったら無理せず業者に相談してみましょう。
ミツモアで外壁塗装業者に見積もりを依頼しよう!
モルタル外壁は「耐久性・防火性が高い」「デザインの自由度が高い」などのメリットがあります。仕上がりの選択肢も豊富なので、オリジナリティの高さが魅力的ですね。
手仕事による丁寧な外壁を望む人や、「こんな外壁にしたい」という理想があるのなら、モルタル外壁を検討してみてはいかがでしょうか。
ミツモアでは豊富な経験と知識を持ったプロに外壁塗装の見積もりの依頼ができます。まずはプロに相談をしてみてはいかがでしょうか?