葬儀で香典をいただいた方には、後日香典返しを贈る必要があります。香典返しを送るタイミングや品物、金額相場は以下の通りです。
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香典返しを送るタイミング |
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香典返しの金額相場 |
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おすすめの品物 |
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香典返しは本来喪主が持参して直接渡すのが通例でしたが、近年ではお礼状を添えての郵送が一般的になっています。
香典返しを送るタイミングの詳細に加え、挨拶状の内容や例文、香典返しが不要なケースもあわせて確認しましょう。
この記事を監修した専門家
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日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔
香典返しはいつ送る?
まずは香典返しを送る時期を確認しましょう。一般的には後日に送るパターンと、葬儀当日にその場で渡す2つのパターンが主流です。
忌が明けてから1カ月以内
香典返しは葬儀や告別式で参列者から受け取った香典に対して、無事に忌明け法要を終えた報告と、感謝の気持ちを伝えるために送る品物です。そのため四十九日の忌明けから、1カ月以内に送るのが一般的です。
ただし仏式では49日後が忌明けとなりますが、キリスト教は30日後、神式は50日後など、宗教によって謹慎すべき期間が異なります。そのため亡くなった日から30日~80日後を目安に考えておくと良いでしょう。
なお亡くなってから7日目の、初七日忌法要過ぎに渡す場合もあるようです。会社の人に早めにお礼を述べたい時などは、職場に品物を持っていき直接お礼を言います。
当日に渡すパターンもある
最近では葬儀の当日に香典返しを渡す、「当日返し」「即日返し」というスタイルも増えています。
当日返しの場合は参列者全員に同じものを渡すため、品物選びや送付かかる労力を減らせるのが特徴です。また配送料も削減できるので、遺族にとっての負担が少なくなることから選ばれています。
なお香典の金額が高額だった人には、後日あらためて送るなど、かえって手間がかかる場合もあるため注意しましょう。
香典返しの金額の相場は?
続いては香典返しの金額についてです。香典の額は人によって異なるため、それぞれいくら分を返せばいいのか迷ってしまうこともあるでしょう。香典返しの一般的な相場について解説します。
香典の1/2~1/3が一般的
香典返しの金額は、受け取った香典の半額程度を返す「半返し」が一般的です。
故人との関係性などによっても異なりますが、香典の相場はおよそ5,000円~1万円とされています。そのため香典返しの金額の相場は、2,500円~5,000円ほどと考えておくといいでしょう。
ただし関西など地域によっては「3分の1返し」が、基本になっているところもあります。特有のしきたりが存在する地域もあるため、迷ったときには家族や親族、地域の人などに確認しておくと安心です。
香典が高額の場合
親族や故人に近しい人からの香典は、5万~10万円ほどと高額なケースもあります。高額な香典の場合、必ずしも半返しする必要はなく、3分の1や4分の1程度でも失礼には当たりません。
そもそも高額な香典を包む目的は、遺族への扶助の気持ちがあるためでしょう。「足しにしてほしい」「負担を減らしてほしい」という思いが込められているため、半額を返すのはむしろ、相手の気持ちに反することにもなりかねません。
高額な香典については感謝の気持ちをしっかり伝えつつ、3分の1もしくは4分の1ほどの額のお返しを送るのが、ベストでしょう。
当日返しの場合は一律
各参列者が持ってくる香典の額を、事前に知ることはできません。
そのため当日返しの場合は、相場の5,000円~1万円を受け取ると想定して、2,000円~3,000円の品物を一律で用意しておくのが一般的です。
受け取った香典の額に対して、用意したお返しでは不十分であると感じる場合は、後日あらためてお礼の品を贈ります。仮に3,000円の香典返しを用意していたとして、1万円の香典をくれた人に対して、後日品物を送るかどうかの判断は人によってさまざまです。
1つの目安として、2万円以上の高額な香典をもらった場合には、あらためてお礼の品を贈るといいでしょう。
香典返しに適している品物は?
香典返しに適している品物と、避けるべき品物について紹介します。
後に残らない食品や消耗品
香典返しに選ばれる品物は、食品や消耗品が一般的です。人の死はおめでたいことではないため、「不幸が残らない」という意味で、後に残らないものがいいとされています。
たとえば以下を選ぶと良いでしょう。
- 嗜好品
- お茶・コーヒー・飲み物・お菓子
- 実用品
- ステックシュガー・調味料・お米・サラダ・オイル・洗剤・せっけん
- 繊維製品
- 白いタオル・シーツ・ハンカチ
食品や消耗品のなかでも、それぞれ意味を持つ品物を送ります。
洗剤やせっけんは使うと無くなるうえ、「不幸を洗い流す」という意味も含まれているためおすすめです。
白いタオルやシーツは、家庭の中の消耗品という位置づけで、昔は貴重なものとして重宝されていました。また陶器は故人が土に帰るという意味があるそうです。
弔事用カタログギフト
近年では香典返しとして、カタログギフトを送るケースも増えています。相手がそれぞれ好きなものを選べるだけでなく、遺族側の品物選びの手間を省ける点が、カタログギフトのメリットです。
弔事用のカタログギフトが存在するため、利用すると良いでしょう。
結婚祝いや出産祝いといったお祝い事用のカタログギフトに比べて、デザインやラインナップが香典返しを意識した内容になっています。そのため受け取った側も違和感なく利用できるでしょう。
「四足もの・生臭もの」はタブーといわれている
肉や魚などの「四足もの・生臭もの」は、仏教において殺生を連想させるものであるため、昔からタブーとされています。マナーの問題だけでなく、腐りやすいという側面からも、生ものを送るのは避けた方がいいでしょう。ただしカタログギフトを送る場合、肉や魚がラインナップに入っていても問題ありません。
祝い事を象徴する鰹節や昆布、お酒などの嗜好品も避けた方が無難です。商品券や現金といった明らかに金額が分かるものも、人によってはいい印象を抱かないため注意しましょう。
香典返しの挨拶状・お礼状について
香典返しを郵送する場合には、挨拶状・お礼状を添えるのがマナーです。和紙を使った奉書(ほうしょ)、カード、はがきに手書きまたは印刷しましょう。
内容や例文、注意点について説明します。
挨拶状・お礼状の内容
挨拶状・お礼状では、相手に対して以下の内容を伝えます。
- いただいた香典へのお礼
- 無事に四十九日忌法要が済んだことの報告
- 香典返しの品を送る旨
- 直接お渡しできないことへのお詫び
まずは葬儀や告別式への参列といただいた香典に対してのお礼を述べ、四十九日法要が無事に済んだことを報告します。
そして香典返しを送る案内と同時に、略儀で済ませることへのお詫びを添えるのが一般的です。また故人との生前の付き合いについて、感謝を伝える場合もあります。
挨拶状・お礼状の例文
最も一般的な仏式の例文を紹介します。
先般 父○○儀 葬儀に際しましてはご芳志を賜りまして誠に有難く厚く御礼申し上げます
おかげさまで四十九日の法要を無事に済ませましたことをご報告いたします
つきましては供養のしるしに心ばかりの品をお届け差し上げました
どうぞお納めくださいますようお願い申し上げます
本来であれば直接ご挨拶を申し上げるべきところ略儀ながら書中を以ってご挨拶申し上げます
令和○年○月○日 〇〇〇〇(氏名)
宗教によって使用する用語などが異なるため、神式やキリスト教の場合は内容を調整して送りましょう。
たとえば「法要」は神式では霊前祭、キリスト教では追悼式・記念式と表現します。また「供養」も仏式用語のため、神式やキリスト教では使用しません。
挨拶状・お礼状を書く際の注意点
挨拶状・お礼状の作成には守るべきマナーがあります。次の4つのポイントに注意して作成しましょう。
- 句読点を使用しない
- 重ね言葉を使用しない
- 時候の挨拶を入れない
- 「拝啓・敬具」などの頭語と結語はそろえる
挨拶状・お礼状には「、」「。」といった句読点や、「ますます」「たびたび」などの、重ね言葉は使用しません。また紙の書き出しとして一般的な時候の挨拶は、香典返しの挨拶状としては適切でないため省略します。
「拝啓」などの頭語を入れる場合は、必ず「敬具」など結語も文末に入れるのがルールです。頭語と結語のどちらも入れるか、どちらも入れないかで統一しましょう。
香典返しが不要なケース
基本的に香典返しは必ず贈るものですが、なかには不要なケースもあります。香典返しが不要な2つのパターンについて、把握しておきましょう。
香典返しを辞退された場合
一家の大黒柱が亡くなった場合などに、残された家族への負担を減らすため、香典返しを辞退されるケースがあります。相手側が辞退の意思を示したにもかかわらず香典返しを贈ってしまうと、心遣いを無視したことになり失礼にあたります。
相手が香典返しを辞退した場合には、挨拶状・お礼状のみを送るのがベターです。相手の厚意をありがたく受け取り、品物は贈らずとも、感謝の気持ちはきちんと伝えるようにしましょう。
香典が会社名義である場合
香典の贈り主が会社名義である場合は、福利厚生費や慶弔費など、会社の経費として計上されているため香典返しは不要です。
贈り主が「会社名+社長名」となっていると、会社からなのか社長個人からなのか、判断がつかないこともあります。その場合は会社の総務部などに確認しましょう。社長個人からの香典であれば香典返しを贈ります。
会社の上司や同僚などから連名で香典をいただくケースは、香典返しは必要です。ただし連名の場合は1人あたりの金額も少ないため、職場に全員で分けられるお菓子などを持参して、感謝を伝えると良いでしょう。
会社の人からの香典にはお返しが不要というわけではありません。会社名義なのか、個人名義なのかによって、お返しの要否を判断しましょう。
香典返しを正しく贈って感謝を伝えよう
香典返しはお礼の品の送付というだけでなく、サポートしてくれた方々への、感謝の気持ちを伝える大切なステップです。喪主という立場は人生で何度も経験することではないため、香典返しの相場やタイミングなど分からないことも多いでしょう。
地域性や宗教によって異なる点もあるものの、基本的なルールは同じです。香典返しにおけるルールやマナーをしっかりと守り、相手に失礼のないようにしっかりと感謝を伝えましょう。
監修者:二村 祐輔
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日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
香典はお葬式が地域共同体の相互扶助でなされていた時代の名残ともいえます。当時は儀式遂行の葬具づくりや供物、またそこに携わる人々の飲食の材料を供出することが香典でした。江戸時代の「香典控え」などには米何俵、あるいは餅などのいただきものが多く記載され、現金は見当たりません。ですからお互いのこととして「お返し」はなかったと思います。自身の労力や供物の提供は、今度自分が受けることで相殺されるのです。