グループホームとは認知症高齢者や知的障がい者、精神障がい者が家庭的な雰囲気のなか、自立した生活を送れるようにサポートする施設です。
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一般に「グループホーム」というと、認知症高齢者が共同生活をする「認知症グループホーム」を指すことが多いでしょう。
全国で利用が広がっている認知症グループホームは、具体的にどういった施設なのか、他の高齢者施設と何が違うのかを見ていきましょう。入居条件や費用についても解説します。
この記事を監修した専門家
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ケアタウン総合研究所 代表
高室 成幸
認知症グループホームとは?
認知症グループホームは認知症の高齢者が、家庭的な雰囲気のなか、少人数(1ユニット5~9人)が共同で生活するための「生活の場所」です。
認知症の専門知識を有するスタッフのサポートを受けながら、それぞれが生活のなかの役割を担い、家庭的な雰囲気のなかで共同生活を送る場所として、全国的に広まっています。
認知症の高齢者が住みやすいように、設備の多くはバリアフリーです。新築のホームもあれば、住み慣れた昭和の暮らしに近い雰囲気を大切にした民家改修型のホームもあります。市町村の住民票がある人で認知症となった人のみが入居できる地域密着型の施設です。
少人数の「ユニット」で生活する
10人未満(5人~9人)の少人数グループで生活するのがグループホームの特徴です。入居者同士が家事を分担し、認知症に関する専門知識を持つスタッフの支援を受けながら、自立した生活を送ります。
施設内のグループの呼び方は「ユニット」です。グループホームに入居するユニットの上限は2つまでが一般的ですが、一部、3ユニットまで認めている市町村もあります。
他の高齢者施設との違いは?
老人ホーム(有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、老人保健施設など)とグループホームは、設立された目的だけでなくスタッフの配置や設備などが異なります。
老人ホームは老後の生活を穏やかに送るための施設です。日常の家事や食事の用意などは、施設のスタッフが担当します。
一方で認知症グループホームは、専門スタッフの支援を受けながら、認知症の高齢者が共同で生活するための場です。掃除や洗濯といった生活に必要な要素は、入居者自身が協力して行います。
認知症グループホームは、本体の施設から移動時間がおおよそ20分以内の「サテライト型」をつくることもできます。
認知症グループホームで受けられるサービス
認知症グループホームは事業所によって特徴はありますが、基本的に提供されるサービスは次の項目です。
- 日常生活の支援:日常生活に必要な各種サポート(日頃の家事は入居者が共同で行う)
- 機能訓練:生活機能を維持するための運動機能等の訓練
- 地域交流・レクリエーション:脳と心に刺激を与え、楽しく生活するためのサポート
- 看取りサービス:亡くなるまでの看取りにかかわるサービス
また利用者(要介護者)の状態によっては、食事の提供や介助、移動・入浴・排泄の介助を受けられます。
認知症グループホームのメリット
認知症の高齢者がグループホームを選択するメリットとして、以下の点が挙げられます。利用するかどうかの判断にしましょう。
認知症の症状緩和に役立つ
認知症グループホームでは専門スタッフの支援を受けながら日常の家事をこなす、つまり生活の中で役割を担います。そのおかげで自己有能感が得られ、認知機能が維持され、認知症の進行を遅らせたり、症状を緩和したりするのに役立ちます。
さまざまな機能訓練やレクリエーション、地域交流なども充実しており、家庭的な環境でさみしさを感じずに生活できるのもメリットです。
認知症の専門ケアスタッフが常駐している
認知症ケアの専門スタッフがいるので、他の施設ではていねいに行えない専門的なかかわり(コミュニケーションなど)が受けられます。認知症高齢者への生活の支援からメンタルケアまで、幅広く対応できるのが特徴です。
アルツハイマー型、脳血管型、レビー小体型など、入居者それぞれの認知症疾患の特性に応じたサポートを受けられるので、家族も安心して預けられます。ただし医療機関ではないため、認知症にかかわる治療は受けられません。
入居に必要な条件は?
認知症グループホームの入居に求められる条件のなかには、一般的な老人ホームとは異なる条件もあるので、事前によく確認しておきましょう。
グループホームに入居できる条件
認知症グループホームに入居できるのは原則として、施設が立地する同じ市町村に住民票がある、次のいずれかの人です。
- 65歳以上の高齢者であり、医師から認知症と診断されている人
- 「要支援2」もしくは「要介護1」以上の認定を受けた人
さらにユニット単位で生活するので「共同生活を送るのに支障がない人」でなければいけません。
施設側の判断で入居できない可能性もある
たとえ認知症グループホームの入居条件を満たしていても、施設側の判断により入居できなかったり、途中で退所になってしまったりする場合があります。
具体的には認知症状が重く暴言・暴力などで他の入居者に迷惑をかけてしまう人、在宅酸素や胃ろうなどの医療重度の高齢者は入居できない可能性があるので、まずは施設に確認しましょう。
こうした基準は老人ホームと変わらず、共同生活を平穏に送れることが、入居の基本条件といえます。
障がい者や生活保護受給者は入居できる?
障がい者の場合、認知症の高齢者と同様に、共同生活をする専用のグループホームがあります。
また生活保護を受けている高齢者でも、一定の条件をクリアしていれば、受け入れているグループホームはあります。
詳しい条件については、各施設に問い合わせが必要です。ただ認知症や障害など、特定の症状に悩まされている高齢者を受け入れる施設は、全国に増えています。
認知症グループホームの施設数や立地や環境、入居状況は市町村の介護保険課か地域包括支援センターに相談するか、インターネットで検索してみましょう。
認知症グループホームの費用
グループホームの利用料金は施設によって多少の差があります。詳しくは各施設に問い合わせるか、インターネットで検索すると知ることは可能です。大体の費用は事前に把握しておきましょう。
入居時に必要な費用
認知症グループホームに入居するにあたって、まず「入居一時金」が必要です。これは不動産の賃貸物件の敷金や保証金のようなものから、入居にあたっての費用の一部とされるものまであり、金額は施設によって多少の差があります。
設備の充実した施設では100万円近くかかるケースもありますが、一般的には10万~20万円が相場です。
一時金は退去時に返還される場合とされない場合があります。ただし居室や設備の修繕や清掃の必要がある場合や、月々の利用料の滞納などが発生していた場合は、充当分を差し引かれることになります。預けた分が全額戻ってくるとは限りません。
毎月かかる費用
入居の際に必要な一時金に加えて、専門スタッフからサービスを受けるための「介護サービス費」が毎月必要です。介護サービス費も、施設や入居者の認知症の度合いなどによって、金額に幅があります。
たとえば要支援2の診断を受けている高齢者なら約2.3万円、要介護5の診断を受けている人ならば約2.6万円などです。
高額に感じられる人もいるかもしれませんが、介護保険が適用できるので、ある程度は費用が抑えられるでしょう。
また入居者の食費や、電気代・水道代などの光熱費に加えて、施設の賃料も必要です。これらを全て合わせると、月に12万~20万円程度の料金がかかるでしょう。
さらに利用するサービスによっては、加算金が発生するケースもあります。たとえば夜間の見守り、高度な専門知識を有するスタッフからのケア、適切な看護体制を整えるための費用などです。施設によって追加費用が必要なサービスは異なります。
毎月必要な費用は、専門スタッフからサービスを受けるための「介護サービス費」です。介護保険から提供される介護サービス費は要介護度や各種の特別加算などによって、費用に幅があります。
- 特別加算の例:口腔・栄養スクリーニング加算、認知症ケア加算、生活機能向上連携加算など
たとえば要介護2の診断を受けている高齢者なら約2.4万円、要介護5の診断を受けている人ならば約2.6万円などです。これらは1割自己負担の費用となります。
また入居者の食費や、電気代・水道代などの光熱費に加えて、施設の賃料(月々の入居料)も必要です。これらを全て合わせると、月に12万~20万円程度の料金がかかることになります。とりわけ賃料は首都圏と地方では異なるため、総費用も数万円単位で変動するでしょう。
さらに利用するサービスによっては「特別加算」の料金が発生するケースもあります。高度な認知症の専門知識を有するスタッフからのケア、適切な看護体制を整えるための費用などです。施設によって追加にかかる費用が必要なサービスは異なります。
在宅でケアにかかる費用や介護負担、認知症の本人とかかわる心理的負担などを想定して、かかる費用の「価値」を検討しましょう。
認知症グループホームの選び方
認知症グループホームは施設が新築か民家改修か、首都圏か地方か、提供している介護サービスや生活支援サービスによって費用が異なります。
費用は月々数年間~10年間以上にわたり支払いつづけるものです。無理なく支払える料金なのかどうか、計画を立てるのはもちろん、提供される介護・医療サービスの内容と費用、施設の雰囲気を含めて検討することが重要です。
希望する市町村によって入居できる施設数や立地、環境等の制約はあります。インターネットや地図検索を活用して調べ、本人にとって最もよい環境のグループホームを選びましょう。
グループホームを選ぶ際に、「とくに注意をしたいポイント」を2点紹介します。
介護・医療サービスの内容
認知症グループホームは病院ではないため、本格的な医療行為は受けられません。しかしスタッフの認知症に関する専門知識と専門のスキルにより、心地よいケアを受けることはできます。注意したいのは、施設によって「ケアに差」があることです。
どのような認知症ケアが受けられるのか、医療にかかわるサポートのレベルは必ずチェックしておきましょう。たとえば服薬介助、体調の管理、通院介助、緊急時の対応などです。事前にサービス内容や設備を調べ、複数のグループホームを比較検討すると良いでしょう。
なお本人の認知症の症状のレベルや居住地(住民票のある場所)などによって、選べるグループホームが限定される可能性もあり、注意が必要です。
施設の雰囲気や入居者の状態
入居者の表情を見て、落ち着いた穏やかな会話がされているか、介護スタッフが適度な距離感で入居者と接しているか。それらが確認できれば、家族も安心して親を預けられるはずです。
介護スタッフの語りかける表情や言葉づかい、入居者との接し方だけでなく、入居者同士の様子や関係性などを確認しましょう。
たとえ費用が比較的安価だったり設備が充実していても、介護スタッフや入居者の雰囲気が悪ければ、入居者する本人は快適に過ごすことが難しくなります。これらは実際に見学してみないとわからないことなので、できる限り足を運んでチェックするようにしましょう。
グループホームによってはお試し入居や数日間のショートステイなどが利用できる場合もあります。自費となりますが、積極的に利用するのがおすすめです。
認知症のケアにグループホームを検討しよう
認知症グループホームは認知症の高齢者のケアをするための施設で、少人数で共同生活を送るのが基本です。
入居を検討するなら65歳以上で認知症の診断を受けているかなど、いくつかの条件をクリアする必要があります。費用や提供されるケアの内容は施設によって多少異なるので、設備や雰囲気などを含めて、事前によく確認しておきましょう。
実際に足を運んで環境や設備、雰囲気、入居者とスタッフの関わり方などをチェックすることが大事です。複数の施設を比較検討した上で、安心して身内を任せられるグループホームを選びましょう。
監修者:高室 成幸(ケアタウン総合研究所 代表)
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全国のケアマネジャーから「わかりやすくて元気が湧いてくる講師」として人気。市町村の地域包括支援センターなどでは地域包括ケアシステムをテーマにした講師として活躍。介護施設の施設長・管理職向けの研修も実績も多い。著書・監修書多数。雑誌の介護特集のコメンテーターとしても活躍。
※詳細:https://caretown.com/
所属
日本ケアマネジメント学会会員
次世代ケアマネジメント研究会 副理事長 など
著書・監修
『子どもに頼らない幸せ介護計画』(WAVE出版)
『新・ケアマネジメントの仕事術』 (中央法規出版)
『身近な人の施設介護を考えるときに読む本』(自由国民社)
『施設ケアプラン記載事例集』(日総研出版)
『介護の「困った」「知りたい」がわかる本』(宝島社)
『ケアマネジャー手帳2023』(中央法規出版)
など著書・監修書多数。
コメント
認知症グループホームは「認知症ケアの切り札」です。家族ではむずかしいコミュニケーションも専門のスタッフが関わることで、穏やかに心地よく暮らすことができます。できることを入居者同士が担い、「支え合う関係」になることが認知症の進行の抑制にも効果が生まれ、心穏やかな日々を送ることが期待されています。