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訪問介護はどんなサービス?利用までの流れと介護事業者の選び方を紹介

最終更新日: 2024年02月07日

訪問介護とは介護員が利用者(要介護者)の住まいを直接訪れて、日々の生活や通院をサポートする介護サービスです。

少子高齢化に伴って、ご家族が介護を行うケースが増えています。そうしたなか、訪問介護は負担を軽減する重要なサービスです。

訪問介護の対象者や具体的なサービス内容、利用料、メリット・デメリット、サービス事業所の選び方を確認しましょう。

この記事を監修した専門家

ケアタウン総合研究所 代表
高室 成幸

訪問介護とは

食事介助をする人

訪問介護は専門資格を取得した介護士(ホームヘルパー)が、利用者の住まいを訪問してケアを行う介護サービスです。自分の力だけで生活するのがむずかしくなった要介護高齢者や、介護者である家族をサポートます。

訪問介護は介護員1人が訪問し、1対1でケアを行うのが一般的です。

施設介護や在宅介護との違い

訪問介護と合わせてよく聞く用語に「施設介護」と「在宅介護」がありますが、そもそもサービスの提供形態が異なります。

施設介護は特別養護老人ホームや老人保健施設、有料老人ホームをはじめとする、介護施設で行われるサービスです。利用者(要介護者)は施設内にいる介護スタッフや、看護師のケアを受けられます。数人のスタッフが数人の利用者をケアするのも特徴で、基本的に24時間体制です。

在宅介護は利用者(要介護者)の住まいに介護員が訪問するスタイルもあれば、住まいから日中に通所施設に通って半日~1日を過ごすスタイルもあります。また数日から1週間、施設でお泊りをする短期入所スタイルもあり、さまざまです。

いずれも制度上は明確に区分されています。

なお障害者サービスの「居宅介護」は、身体・精神・知的障害で障害支援区分1以上と認定された18歳以上の方、または18歳未満で障害支援区分1に相当する方が対象です。

訪問介護の対象者と自己負担額

車いすの模型と見積書

訪問介護の対象者と、利用料について解説します。

訪問介護の対象者

訪問介護の利用対象は、以下の条件を満たす方です。

  • 介護保険の被保険者
  • 要介護認定・要支援認定を受けていて、要介護度が「要介護1~5」の方

介護保険の被保険者は、第1号被保険者と第2号被保険者に分かれています。第1号被保険者は65歳以上の高齢者、第2号被保険者は40~64歳で特定疾病を保有している人です。

要介護認定・要支援認定とは、どの程度まで自立した生活ができ、どの程度の介護が必要かを示す基準です。要支援には1~2の区分が、要介護には1~5の区分があり、市区町村の認定調査と審査によって区分が決まります。訪問介護が受けられるのは、基本的に「要介護1」以上です。ただし要支援1~2の場合でも、利用回数に制限のある「介護予防訪問介護」の利用が可能です。

訪問介護の自己負担額は1~3割

訪問介護サービスの利用料は、大部分が介護保険によってまかなわれます。利用者の負担分は、実際のサービス料金の「1割のみ」です

ただし要介護者の所得が一定以上だと、負担分が2割~3割になるケースもあります。

訪問介護の具体的な利用料金は、ケアの内容とサービスを受けた時間によって決まるのが一般的です。具体的なサービス内容と料金を確認しましょう。

訪問介護のサービス内容

車いすの人の介助をする人

訪問介護の代表的なサービスは「生活援助」「身体介護」「通院のサポート」です。それぞれの内容と、利用料金を確認しましょう。

生活援助

「生活援助」は利用者の代わりに、日常的な家事全般をサポートする介護サービスです

たとえば利用者の好み・健康状態に合わせた料理から、部屋の掃除や整理整頓、衣類の洗濯や補修などを行います。また買い物や薬の受け取りなどを代行するケースもあります

生活援助の対象者は原則として一人暮らし生活者です。家族が同居している場合、生活援助のサービスは利用できません。ただし同居家族に障害や疾病がある、配偶者も要介護高齢者であるなど、やむを得ない理由がある場合は例外とされます。

自己負担が1割の場合、生活援助サービス1回にかかる自己負担額は以下です。

  • 20分以上45分未満:181円
  • 45分以上:225円

身体介護

身体介護では利用者の日常生活のさまざまな生活動作をサポートします。生活援助と比べて、より要介護度の高い人向けのケアといえるでしょう。身体に直接触れて行われます。

具体的なサービス内容は、「食事介助」「入浴介助」「排泄介助」「更衣介助」「整容介助」「移動介助」「体位変換」などです。

入浴介助では通常の入浴のほか、部分浴や身体を拭く清拭、洗髪などの介助をするケースもあります。整容介助とは洗面・歯磨き・爪切り・ヘアケアなどのサポートです。また体位変換は床ずれなどを予防するための姿勢交換です。移動介助は歩く・起き上がる・座るといった動作をサポートします。

身体介護サービスを受ける場合、サービス1回分の自己負担額(1割)は以下です。

  • 20分未満:167円
  • 20分以上30分未満:250円
  • 30分以上1時間未満:396円
  • 1時間以上:579円

通院のサポート

通院のサポートは、介護スタッフが運転する車で、利用者をクリニックや病院まで送迎するサービスです。足腰が不自由な人であれば、車の乗り降りや移動も手伝ってもらえます。

利用者が認知症の場合には、介護スタッフが代わりに病院での手続きや精算を行うケースもあるでしょう。通院のサポートの対象者は、要介護1以上の方です。

またどこへ行くのにも利用できるわけではなく、利用目的に制限がある点には注意しましょう。基本的には通院のためだけに利用できます。

通院のサポートにかかる負担額は、一律で99円です。移送にかかった運賃も別途必要になります。

介護タクシーも活用できる

介護タクシーとは、要介護者や車いすの方が利用できるタクシーです。多くの場合、運転手がヘルパー資格を持っていて、乗降や移動などの必要なサポートをしてくれます。

通常のタクシーとは異なり、リフトやスロープが付いていたり、回転シートが備え付けられていたりするワンボックスカーが多いのが特徴です

介護タクシーは訪問介護サービスの一環として、ケアプランに組み込まれていれば介護保険を適用できます利用できる目的は、通院の他に補聴器・メガネの調整や購入、預金の引き下ろし、役所での手続きなどです。

個人的な外出に関しては、利用料金は全額自己負担となります。ドライブや旅行、趣味の買い物など、ケアプランに含まれない利用は個人的外出とみなされる点に注意しましょう。

訪問介護で受けられないサービス

利用者(要介護者)のサポートに直接関係がない場合、訪問介護サービスは依頼できません。たとえば利用者の家族のために家事をする、来客に対応するなどです。

また生活援助も、日常生活を送るために必要な最低限の範囲内までとされます。草むしり・ペットの世話・大掃除・窓のガラス磨き・正月の準備といった支援は依頼できません。

訪問介護の目的はあくまでも要介護者の援助であり、家事代行サービスなどとは根本的に異なります。また医療資格が必要な医療行為も、訪問介護では受けられない点に留意しましょう。

訪問介護のメリット・デメリット

考え事をする女性

訪問介護の具体的なメリットとデメリットを解説します。良い点も悪い点も把握したうえで、他の介護サービスと比較すると良いでしょう。

訪問介護のメリット

訪問介護の大きなメリットは、住み慣れた住環境で介護サービスを受けられる点です。新しい環境に適応するストレスがかからず、利用者の安心感につながるでしょう。

柔軟性の高さも訪問サービスの利点です。利用者や家族の状況・ニーズに合わせて、サービスを無駄なく組み合わせられます。

同居している家族の精神的・肉体的・時間的な負担も、大幅に軽減されるでしょう。家族と離れて暮らす一人暮らしの高齢者であれば、サービスの定期利用により、健康状態や安否の確認が可能です。

訪問介護のデメリット

訪問介護は24時間いつでもケアを受けられるわけではありません。そのため施設介護と比べて、どうしても家族に負担がかかります

また利用者の要介護度が高い状態で訪問介護を続けるのであれば、バリアフリーなど住環境の整備必要になるでしょう。住宅のリフォームには、高額な費用が必要です。

また見ず知らずの人間が自宅に訪れることが、ストレスに感じる人もいます。訪問介護を利用する際にはあらかじめ家族で話し合い、お互いが納得できる形でサービスを受けることが重要です。

訪問介護を利用する手順

白衣の女性から説明を受ける男性

実際に訪問介護を利用するまでの具体的な流れを紹介します。

要介護認定・要支援認定の申請をする

訪問介護を利用するためには、まず要介護認定・要支援認定の申請が必要です。要介護認定・要支援認定の申請は、市区町村の役所に設置されている介護保険担当窓口、または地域包括支援センターで行います。

ご自身で申請することが難しい場合は、家族や居宅介護支援事業者・介護保険施設・社会保険労務士による代行も可能です。

申請後は、任命された調査員が自宅を訪れて、日常生活の状況確認や身体機能をチェックします。調査内容をもとに市町村に設置された専門家による審査が行われ、1カ月後に要介護度・要支援度の認定結果を受け取れる流れです。

ケアプランの作成・介護業者の選定

要介護認定・要支援認定を受けたら、ケアプランを作成する流れとなりますケアプランとは「要介護者が自立した暮らしをするために、どのような暮らしをめざし、そのためにはどのような介護サービスをどれくらいの頻度で利用するのか」を見える化した計画書です

ケアプランは地域のケアマネジャー(介護支援専門員)と一緒に作成します。ケアマネジャーを探すときは、市区町村や地域包括支援センターの窓口で相談したり、窓口に置かれている市町村の介護事業所をまとめた『ハートページ』という冊子を参考にしたりすると良いでしょう。『ハートページ』の呼び方はさまざまです。

居宅介護支援事務所を紹介してもらった後は、どのようなケアマネジャーを希望するか(例:年齢、性別、タイプ)を伝えることもやってみましょう。

ケアマネジャーは要介護者の自宅を訪問し、本人や家族との面談を通じてケアプランを作成します自分たちと相性が合わないと感じた場合には変更も可能です。

その後ケアプランに基づいて、訪問介護事業所と契約を結ぶと、訪問介護サービスがスタートします。

介護事業者を選ぶポイント

訪問介護事業者を選ぶときにチェックすべきポイントの1つが、スタッフの人数です。多くのスタッフが在籍している事業者であれば、それだけ相性のよいスタッフを見つけやすくなります。

また常勤職員と非常勤職職員の割合も、あらかじめ確認しておきましょう。常勤職員が多い業者は、社内連携がとりやすく、情報共有がしっかり行われている可能性が高いです。安心してサービスが受けられるでしょう。

スタッフの言葉遣いや態度に違和感がないかも重要です。サービスの内容や費用について詳細に説明してくれる、疑問点に丁寧に答えてくれる業者であれば、信頼関係を築きやすいでしょう。

訪問介護を利用して介護の負担を減らそう

杖の人の手を取る女性

訪問介護とは介護のプロがサービス利用者の住居を訪問して、さまざまなケアを行うサービスです。利用すれば介護を担う家族の負担を、大幅に軽減できるでしょう。

ただし24時間付きっきりでケアが受けられるわけではないため、利用者や家族の状況によって、訪問サービスを利用するか、施設介護を利用するか決めるのがおすすめです。

葬儀社を探すならミツモアで

ご家族や本人が終活を意識されているのであれば、葬儀についても検討しておくのがおすすめです。ミツモアのアンケート(2022年9月実施)によると、葬儀について生前に相談しておいた方が、内容も予算も満足度が高いという結果が出ています。

ご本人やご家族ともに納得のいく葬儀を上げるためにも、早めに準備すると良いでしょう。

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監修者:高室 成幸(ケアタウン総合研究所 代表)

全国のケアマネジャーから「わかりやすくて元気が湧いてくる講師」として人気。市町村の地域包括支援センターなどでは地域包括ケアシステムをテーマにした講師として活躍。介護施設の施設長・管理職向けの研修も実績も多い。著書・監修書多数。雑誌の介護特集のコメンテーターとしても活躍。
※詳細:https://caretown.com/

所属
日本ケアマネジメント学会会員
次世代ケアマネジメント研究会 副理事長 など

著書・監修
『子どもに頼らない幸せ介護計画』(WAVE出版)
『新・ケアマネジメントの仕事術』 (中央法規出版)
『身近な人の施設介護を考えるときに読む本』(自由国民社)
『施設ケアプラン記載事例集』(日総研出版)
『介護の「困った」「知りたい」がわかる本』(宝島社)
『ケアマネジャー手帳2023』(中央法規出版)
など著書・監修書多数。

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