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エンバーミングとは?湯灌との違いは?必要なケースや費用・作業の流れも解説

最終更新日: 2024年06月28日

エンバーミングは日本語で「遺体衛生保全」といい、ご遺体を衛生的に保つため消毒、防腐処置を施します。実施するには高額な費用がかかるため、必要性を的確に判断することが重要です。

エンバーミングが必要なケースや費用、処置の手順を解説します。ご遺体の処置方法として混同されることが多い、湯灌やエンゼルケアとの違いも確認しましょう。

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この記事を監修した専門家

株式会社SAKURA 代表取締役/一級葬祭ディレクター
近藤 卓司

エンバーミングとは

エンバーミングのイメージイラスト

エンバーミングとはご遺体の修復作業や殺菌・防腐処置です。ご遺体から血液を抜いて代わりに防腐剤を注入したり、腐敗を進行させる原因となる体内の内容物を取り除いたりします。損傷箇所の修復や、生前の姿に近くするといった目的で行われることが多いです。

エンバーミングの殺菌・防腐処置によりご遺体の腐敗を遅らせれば、死後最大50日目までご遺体の保存が可能とされています。エンバーミングを適切に施すことで、衛生面を保ちながら、生前の姿に近い状態で故人を見送れるでしょう。

エンバーミングが必要なケース

考え事をする女性

エンバーミングはご遺体の腐敗を遅らせるのに、効果的な処置ですが、必ず施さなければいけない処置ではありません。一方でエンバーミングが求められるケースも存在します。エンバーミングが必要とされる代表的な例を確認しましょう。

ご遺体の損傷が激しい場合

亡くなる直前まで闘病生活を送っていたり、事故にあったりすると、元気な頃の姿から大きく変わっているケースがあります。さらに死後に腐敗が進むと、黄疸や水疱ができるほか、血色が悪くなり、生前の姿から変わり果てていくかもしれません。

故人の尊厳を保つことはもちろん、遺族や葬儀の参列者が故人の生前の姿を思い出して、穏やかな気持ちで見送れるようにするためにも、エンバーミングによる処置は重要と言えます。

故人が感染症にかかっていた場合

故人が感染症にかかった状態で亡くなると、体液にふれたときに感染症に感染する恐れがあり危険です。また処置を施さずご遺体の腐敗が進んでしまうと、細菌やウイルスが増殖してしまいます。

エンバーミングで殺菌・防腐処置をして体液を抜けば、細菌の増殖を抑えられるでしょう。感染症予防の観点でもエンバーミングは重要です。

ご遺体を空輸する必要がある場合

特殊なケースですが、国外にご遺体を空輸で運ぶ場合は、原則としてエンバーミングは必要不可欠と言えるでしょう。ご遺体を空輸する場合には火葬まで日数がかかるため、腐敗を遅らせるためにエンバーミングが求められます。

さらに空輸する場合にはドライアイスを使用できないケースが多いです。とくに海外の国々ではご遺体を持ち込む際に、エンバーミングによる処置を条件としているケースが多く見られます。

ご自宅で長期間安置する場合

故人が亡くなってから火葬までの期間が長い場合は、エンバーミングを依頼しても良いでしょう。エンバーミングによる処置を行わない場合は、ドライアイスでご遺体の腐敗を遅らせるのが一般的です。ドライアイスは1日当たり1万円前後かかります。

霊安室であれば衛生的に安置できますが、1日当たり無料~3万円と幅があるほか、長期間の利用は難しい場合もあるでしょう。

ご遺体の状態と安置期間を考慮して、費用対効果が高く、かつ衛生的な方法を選択するのがおすすめです。

エンバーミングにかかる費用

エンバーミングにかかる費用

エンバーミングにかかる費用は15万~25万円が一般的な相場です。エンバーミングには専門の技術と知識が必要で、「エンバーマー」という専門資格を持つ人だけが処置できます。

価格はご遺体の損傷度合いに左右され、状態が悪いとより高額になる点に注意しましょう。さらにエンバーミング自体の費用以外に、エンバーミング施設への搬送費用や棺代、衣装代もかかる場合があります。

エンバーミングを行う流れ

死亡診断書とペン

エンバーミングは専門的な技術と、知識を必要とする処置のため、遺族や親族が何らかの作業をする必要はありません。

しかし具体的な作業内容を把握しておけば、安心してエンバーミングを任せられるでしょう。エンバーミングの手順を解説します。

書類の提出と搬送

まずはエンバーミングを葬儀社に申し込みます。申し込みには「エンバーミング依頼書(エンバーミング同意書)」と「死亡診断書(死体検案書)」の、2つの書類が必要です

申し込みが受理されたら、病院や葬儀社の安置室からエンバーミング施設までご遺体を運びましょう。エンバーミングには特殊な技術を用いるため、設備が揃った施設で行う必要があります。

エンバーミングに着手する前に、故人の生前の写真を渡しておくと良いでしょう。生前の姿が分かると、遺族の意図に合った処置がしやすくなります。

消毒・洗浄

ご遺体の損傷状態と腐敗の進行度合いを確認した上で、身体全体の消毒と洗浄を行います。アルコール綿で表面を清拭するだけの場合もあれば、シャワーや入浴により清潔にするケースもあるでしょう。

特に顔周りの消毒・洗浄は、念入りに行われます。口腔内の消毒や洗顔、保湿剤の貼付が行われるほか、ひげや産毛を処理して整えてもらうことも可能です。

体内の洗浄と防腐保全処置

エンバーミングのメインは、体内の洗浄と防腐処理です。消化器官内には食物や水分、痰などが残っています。腐敗を防ぐために、体内の残留物を除去した上で、防腐処理を施します。

1~1.5cmほどご遺体を切開して、体内の血液を排出するのも重要な作業です。血液を全て抜いたら、代わりに防腐液を注入します。

最後に切開した箇所と大きな損傷箇所を修復して、処置は完了です。

着付け後、安置先へ搬送

エンバーミングの処置が終わったら、ご遺体に服を着せます。伝統的には死装束を着せて穢れのなさを示しますが、衣装に厳しい決まりはありません。故人が愛着を持っていた服を着せてあげることも可能です。

最後に顔や髪を整え、ご自宅などの安置場所へ搬送します

ご遺族の希望によっては、搬送前に死化粧を実施することもあるでしょう。死化粧はエンバーマーではなく、納棺師や死化粧師に依頼したり、遺族が自ら化粧を施したりする場合もあります。

「エンゼルケア」「湯灌」との違い

死化粧の様子

エンゼルケアと湯灌も、ご遺体の処置方法を表す用語です。エンバーミング混同して用いられる場合も見受けられますが、れぞれ処置の内容や行う意味が異なります。間違って依頼しないように注意しましょう。

エンゼルケアとは

「エンゼルケア」は故人が亡くなった直後に行う、身体を整えるケアの総称です。もともとは病院で行う医学的な処置を指していましたが、院外でも遺体の処置が行われるようになったことから、遺体の処置全般を意味するようになりました。

そのためエンゼルケアは医療処理だけでなく、湯灌や死化粧も含みます。なおエンゼルケアにエンバーミングは含まれません

エンゼルケアの医療処理では、医療機器の抜去に加えて口腔内や鼻腔内のケア、体液や排泄物の漏れ防止を主に行います。

エンバーミングは体液を抜き取り腐敗の進行を遅らせますが、エンゼルケアは表面を整える処置に留まります。

湯灌とは

湯灌は故人の現世での穢れを洗い流すという目的のもと行います。身体を拭いたり洗ったりもしますが、身体や魂を浄めるといった宗教的な意味合いもあるのが特徴です。

衛生を保つことが目的ではないため、エンバーミングとは行う意味も内容も大きく異なります。

湯灌は洗体・洗髪がメインであるのに対し、エンバーミングは消毒や体液の処理を実施する処置です。

なお医療処置であるエンバーミングにご遺族は立ち会えませんが、宗教儀式の湯灌では、ご遺族や親族が立ち合えます。

エンバーミングでご遺体を保全しよう

エンバーミングのイメージイラスト

エンバーミングはご遺体の体内にも手を加えて、腐敗を遅らせる処置です。表面的な処置に留まるエンゼルケアや、湯灌とは大きく異なります。

闘病や事故でご遺体の損傷が激しい場合や、ご遺体を空輸する必要がある場合に、エンバーミングの処置を施すことが多いです。

故人のご遺体に必ずエンバーミングを施す必要はないため、状況や遺族・親族の思いに合わせて、適切な判断をすることが重要でしょう。

エンバーミングを実施したい、または相談したい場合、対応に慣れている葬儀社に依頼するのがおすすめです。ミツモアなら最大5社から見積もりを取れ、それぞれチャットで事前に相談できるので、エンバーミングに詳しい葬儀社を見つけられるでしょう。

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監修者:近藤 卓司

株式会社SAKURA 代表取締役
厚生労働省認定 一級葬祭ディレクター

1964年東京都生まれ、中央大学卒。大手互助会で大型葬儀や社葬、合同葬を担当。独自の音楽葬スタイルを研究し、世に広めるため家族葬専門葬儀社を経て株式会社 SAKURAへ転職。2012年代表取締役に就任後、音楽葬プランの立ち上げ、日本のおもてなしの原点である茶道の取り入れを含め、葬儀プランをすべて見直す。これまでに3,000名以上のお葬式を手掛ける、現役の一級葬祭ディレクター。

著書・監修

  • 『わたしの葬式心得』(幻冬舎) 2016/07/01発行

コメント
大切な方との最後の時間をご家族が安心して触れ合いながらお過ごし出来るようにするためにエンバーミングを施す事は、1つの選択肢とも言えるでしょう。亡くなられた方の表情や傷、お身体の変化に適切な処置を施す事が「故人の尊厳を守る」と言うことになります。
エンバーミングを施した後のご遺体の安置環境には十分に気を配る必要があります。エンバーミングに経験豊富な葬儀社に相談しながら進めて行くと良いでしょう。