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出棺では何をする?遺族・参列者が押さえるべき当日の流れとマナー

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最終更新日: 2024年06月28日

出棺とは棺を安置している施設から出すことをいいますが、主に葬儀・告別式の後に、ご遺体を火葬場に向けて運ぶときに使います。

出棺前に行う見送りの儀式全体を、出棺と呼ぶこともあるでしょう。出棺の儀は、参列者が故人に別れを告げる最後の儀式と言えます。

滞りなく出棺するために、出棺の儀から火葬場へ移動するまでの流れを把握しておきましょう。火葬場で必要になる持ち物や、出棺時に喪主が行う挨拶の例文も解説します。

この記事を監修した専門家

葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
岩田昌幸

出棺とは?

出棺とは棺を安置している施設から出すことです。しかし一般的には、葬儀・告別式の後に、ご遺体を火葬場に向けて運ぶときに使います。

火葬場まで同行するのは多くの場合、故人の身内や親族など、かなり近しい関係にあった人のみです。そのため出棺前に、参列者全員で故人とのお別れの儀式「出棺の儀」を行います。

出棺の儀は火葬場まで同行しない人が故人を見送る時間であると同時に、喪主から参列者にお礼を伝えるシーンでもあるでしょう。出棺の流れを把握し、心を込めて挨拶できるゆとりを持っておきましょう。

出棺の儀の流れ

葬儀が終了し僧侶が退場したあと、出棺の儀に移ります。地域によってもさまざまな慣習がありますが、一般的な流れを見ていきましょう。

「別れ花」で故人に花を手向ける

「別れ花」とは参列者が棺に花を入れる儀式です。花をいれる由来は諸説ありますが、美しい花に囲まれて旅立ってほしいという願いを込める方が多いでしょう。

喪主、喪主の配偶者、家族、親族というように、故人に近い関係の順に、棺の中を花で飾っていきます。別れ花に使用される花は、白い菊・百合・カーネーション・胡蝶蘭など祭壇で飾られた花です。ただし遺族が希望すれば、別に用意した花を入れることもできます。

このタイミングで、副葬品として故人の思い出の品を入れることもあるでしょう。燃えにくいものや爆発・破裂の可能性があるもの、溶け残って遺骨に損傷を与える可能性のあるものは避けます。判断に迷う場合は葬儀社に相談すると安心です。

別れ花に参加しない一般参列者は、基本的に別れ花の儀の最中は外で待ちます。ただし喪主や遺族、生前の本人の意向などにより、対面を希望する参列者が加わるケースもあるでしょう。

「釘打ち」をし、棺のふたを閉じる

別れ花の後は、棺のふたに釘を打って開かないようにする「釘打ち」の儀式です。棺のふたを閉じた後、葬儀社の担当が棺に浅く釘を打ちます。そのあと故人との関係性が濃い順番に、石や金づちを使って釘を数回叩く流れです。

釘打ちの儀を行う理由は、ふたを開かないようにすることで、故人との本当のお別れであることを遺族が理解し、思いを断ち切るためという説があります。

しかし昨今、「釘打ちの儀」は省略されるケースが多いです。釘を叩く大きな衝撃音に耐え難いというご遺族への配慮や、火葬時に釘が燃え残るという問題があるためと言われています。

喪主より出棺の挨拶

出棺前には、喪主が家族を代表し、参列者に向けて挨拶をします。自己紹介から始め、葬儀に参列してもらったことに対する感謝、生前の厚誼に対する感謝や今後の支援のお願いと、これから荼毘に付すことを簡潔に告げましょう

挨拶は2分程度にまとめると良いです。挨拶の際には喪主と親族が一列に並び、挨拶終了時に親戚一同で一礼します。

地域や葬儀社などによっては、霊柩車に棺を乗せた後のタイミングで、挨拶を行うケースがある点も覚えておきましょう。

棺を霊柩車に運ぶ

喪主の挨拶が終わったら棺を霊柩車に運びます。棺は非常に重いため、遺族や友人などの6~8人程で運ぶケースが多いです。

足側から運ぶのか、頭側から運ぶのかは地域によって異なります。

棺を霊柩車に運んでいる間は、一般的に喪主が位牌を持ち、その他の家族が遺影を持つのが一般的です。

火葬場へ移動

棺を霊柩車に運び終えたら火葬場に移動します。故人が乗る霊柩車に、喪主が位牌または遺影を持って同乗しましょう。霊柩車ではなく、お供車という別の車に乗る地域もあります。

火葬場に同行する遺族や親戚、近しい友人は、別で用意した車に乗るのが一般的です。自家用車やタクシーも使えますが、葬儀社にハイヤーやマイクロバスを手配してもらうと安心でしょう。

火葬場では「納めの式」として読経を行うため、僧侶に同行してもらうケースも多いです。僧侶には霊柩車に続く1代目の車両の、上座に座ってもらいましょう。車の上座とは運転手の後ろの席です。

参列者は屋外に立って見送ります。霊柩車が見えなくなったら散会です。

火葬場で必要な持ち物

書類

火葬場に行く際は、火葬場に提出する書類を忘れないようにしましょう。また心づけのためのお金や、火葬場に来てくれた人をもてなすための軽食を用意することもあります。火葬場に移動する車を事前に停めておける場合、あらかじめ持ち物と積んでおくと安心です。

火葬許可証

火葬許可証は火葬を行うために必須の書類です忘れた場合、火葬ができないため忘れずに持参しましょう。火葬場に到着したら管理事務所に提出します。

火葬許可証は、臨終後に医師によって作成された「死亡診断書(死体検案書)」を、死亡届とともに役所に提出することで取得が可能です。葬儀社が使者として提出した場合は、葬儀社がそのまま保管している可能性もあるため、事前に提出者を確認しておきましょう。

火葬許可証を火葬場に提出すると、火葬後に「火葬執行済」の証印と日付が入れられます。火葬済印が押された火葬許可証(※)は納骨の際に必要となる重要な書類です。なくさないように保管しておきましょう。

※本書類は埋葬許可証と称されることもありますが、正確には埋葬は土葬を意味する言葉なので、火葬済印が押された火葬許可証が正しい言い方です。

運転手や僧侶への心づけ

霊柩車の運転手や火葬場の係員、僧侶などに渡す「心づけ」も用意します。チップのようなものなので、必ず渡さなければならないものではありません。公営火葬場では心付けは不要で、民営でも近年は心づけを受け取っていない火葬場多いです。

心付けを渡す場合は、霊柩車の運転手と火葬場の係員には3,000~5,000円、ハイヤー・マイクロバスの運転手と休憩室の係員には2,000~3,000円を目安にしましょう。封筒には「御礼」または「志」と表書きします。

僧侶に渡す心づけは車代と食事代です。車代は僧侶が自家用車で火葬場まで来た場合のみ、実費に5,000円程度を上乗せします。火葬の後に食事を振る舞うことがありますが、僧侶が同席しない場合には食事代を渡しましょう。料理代に2,000~3,000円を上乗せした金額が目安です。「御車代」「御食事代」と表書きしましょう。

軽食とお茶菓子

火葬が終わるまで1~2時間程度かかるため、その間は火葬場の控室で、故人の話をしながら待機します。そのときに食べられる軽食や、お菓子を用意しておきましょう

なお火葬場によっては軽食やお茶菓子を用意してくれたり、持ち込みを禁止していたりする場合もあります。用意する労力が無駄にならないよう、事前に確認しておくと安心です。

火葬に同行する人数が多いと、必要な軽食やお茶菓子の量も多くなり運搬が大変です。出棺時に慌てることのないよう、あらかじめ火葬場に移動する車に積んでおくといいでしょう。

関連記事:火葬の流れや準備することは?火葬前、火葬後の流れも詳しく解説

出棺時の挨拶の例文

スーツを着て白い手袋をして挨拶する男性

出棺の儀で最後に行う喪主の挨拶を紹介します。故人との関係性に合わせて自己紹介の部分を変えると良いでしょう。

挨拶する際は、忌み言葉や重ね言葉を使わないように注意します。忌み言葉とは「消える・落ちる・大変」など不吉なイメージを連想させる言葉、重ね言葉とは「ますます・たびたび・いよいよ」などです。

ただし実際の現場ではそこまで細かくチェックしている方はほとんどいません。気にしすぎてしまうより、故人に対する素直な思いを伝えた方が自然です。

親が亡くなり長男が挨拶する場合の例文

私は故人の長男〇〇でございます。喪主としてご挨拶を申し上げます。

本日はお忙しい中、故△△の葬儀・告別式にご参列いただき、誠にありがとうございます。

皆様から心のこもったお別れの挨拶を頂戴し、さぞかし父も喜んでいることと存じます。生前中のご厚誼に、厚く御礼申し上げます。

(故人の思い出やエピソードを少し入れる。どのような父親であったかなど)

遺された私どもはまだまだ未熟者ではございますが、故人の教えを守って精進していく所存です。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようお願いいたします。

本日は誠にありがとうございました。

故人の配偶者が挨拶する場合の例文

遺族を代表いたしまして、皆様にひとことご挨拶を申し上げます。私は故人○○の夫(妻)△△でございます。

本日はご多用にもかかわらず、ご会葬・ご焼香を賜り、誠にありがとうございました。

(故人とのエピソードを少し入れる。結婚生活何年であったか、どのような存在の夫もしくは妻であったかなど)

これからの人生、○○との思い出を胸に、遺された家族で支え合い生きていきたいと思います。故人の生前と同様に、皆様のお力添えをいただければ幸いに存じます。

本日は会社の皆様、ご友人の皆様、お忙しい中ご会葬をいただきまして、本当にありがとうございました。

大切な身内と悔いのない最後のお別れを

数珠を持ち手を合わせる男女

出棺はご遺体を葬儀会場や安置場所から火葬場に移動させる行為です。その直前に行う「出棺の儀」は、多くの参列者にとって故人と対面する最後の機会となるでしょう。

「別れ花」や「釘打ちの儀式」など、地域によってしきたりの異なる儀式もあります。地域の風習に詳しい葬儀社に依頼すれば、滞りなく進行できるでしょう。

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監修者:岩田昌幸

葬送儀礼マナー普及協会 代表理事

葬送儀礼(臨終から葬儀、お墓、先祖供養等)が多様化している中で、「なぜそのようにふるまうのか」といった本来の意味を理解し、そうした考え方や習慣を身につけられるよう「葬送儀礼マナー検定」を実施しています。メディア監修多数、終活・葬儀・お墓関連セミナーも実施しています。

コメント
出棺時のしきたりは地域によってさまざまです。たとえば茶碗を割ったり、棺をぐるぐる回したりする地域もあります。どういった慣習であっても、故人をお見送りする気持ちを大切して行いましょう。

参考:一般社団法人葬送儀礼マナー普及協会