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土葬とはどんな埋葬方法?日本での行い方、メリットデメリットについても解説

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最終更新日: 2024年06月28日

土葬とは棺(ご遺体が納められた棺)をそのまま土に埋める埋葬方法です。

土葬といえば大昔の埋葬方法だと思われがちですが、日本では近代まで主流でなされてきました。現在でも、限られた地域で土葬が行われています。

土葬はどのような埋葬方法で、どうしたら行えるのか、日本で土葬を行うメリット・デメリットを詳しく解説します。

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この記事を監修した専門家

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔

土葬とは?

喪服姿で棺を運ぶ人たち

土葬とはどのような埋葬方法で、火葬とはどのような違いがあるのでしょうか。まずは土葬の概要について詳しく見ていきましょう。

火葬を行わずに埋葬する葬儀

土葬とはご遺体をお棺に入れ、土に埋める埋葬方法の1つです。土葬は古代からいろいろな手法でなされてきましたが、遺体をそのまま埋める方法のほか、甕(かめ)や桶などに手足を折り曲げて埋葬される「屈葬」もありました。屈葬には封印や隔離など、死者絶縁などを意図していたとも言われています。

古い時代から土葬が一般的な葬送方法でしたが、かつては土葬や火葬のほか、水葬、風葬などの遺体遺棄葬もありました。すでに8世紀には仏教の影響で火葬をした天皇もいます。また江戸のような人口の多い当時の大都市では、普通に火葬も行われていました。

なお東日本大震災のときには、一時的に「仮埋葬」という名目で土葬が実施されています。現地周辺の火葬場が被災したことで、多数の火葬対応ができなかったためです。その後、ご遺体は荼毘に付されました。

宗教と土葬の関係

埋葬方法は宗教と深い関係にあります。宗教の教えにより土葬を行う選択をしている場合が多いです。

たとえばキリスト教では「この世の終わりにすべての死者が復活する」という考え方があります。そこで「肉体がなければ復活することができない」と考えられていたことから、死者の火葬を拒むケースも珍しくありませんでした。近年ではこの考え方が見直されていて、火葬を行うことも一般的になっています。

また儒教が根付いている中国や韓国では、「火葬は遺体への冒涜」と考えて土葬が好まれていました。しかし現在の中国では土地の確保の問題から、一部を除いて火葬が義務付けられています。

日本でも土葬は可能

現在の日本では、土葬自体が法律で禁止されているわけではありません。しかし現実的には実施が難しいことから、ほとんどのケースで火葬が選ばれています。

最も大きい理由が、土地の確保が難しいためです。また衛生面への配慮も難しく、現実問題として土葬を行える墓域は数少ないといえます。

明治時代の日本では、神道推進から土葬を主張し、火葬が禁止されていた期間もありました。しかし土地の確保ができなかったことなどを理由に、わずか2年で禁止令は撤廃されています。

日本で土葬を行うには?

喪服姿で涙をぬぐう女性

日本国内でも土葬は可能ですが、行える墓域は限られています。日本で土葬を行う方法と、かかる費用の目安について確認しましょう。

市町村の許可が必要

日本国内で埋葬を行うには埋葬許可証が必要です。死亡届を市区町村役場に提出する際に申請し、取得しましょう。なお書類は火葬許可証と同じ様式です。許可証を受け取ったら、墓域の管理者に提出することで土葬の手続きが可能になります。

ただし実際には、条例で土葬が禁じられている地域が大半です。北海道、宮城県、茨城県、栃木県、山梨県、岐阜県、奈良県、鳥取県、高知県などの一部地域で行えます。

また土葬ができる地域であっても、穴の深さなどの細かな条件が課せられているケースもあるため注意が必要です。

土葬の会へ相談する

土葬ができる墓域や霊園探しはそう簡単ではありません。土葬を検討している場合は「土葬の会」へ相談をするのも1つの手です。

希望する人に対して土葬可能な施設を紹介してくれるので、自ら探す手間を省けるでしょう。

土葬にかかる費用について

土葬で埋葬する場合、火葬より費用がかかる傾向があります。

土葬にかかる費用は、50万円から300万円ほどと考えておきましょう。国内で土葬をすることはまれであり、また対応できる業者も少ないため、葬儀社や地域によって幅があります。

土葬を行うには広い土地と、土を掘り起こす作業人員が必要です。埋葬の場所や方法に制約が多く、火葬よりも必要な工程が多いため、費用も多く見積もっておきましょう。

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土葬を行うメリット・デメリット

線香とろうそく

火葬が主流になった現代で、土葬を選択するメリットはあるのでしょうか。またデメリットについてもしっかりと把握しておきましょう。

土葬のメリット

土葬は「人間は土から生まれ土に還る」という思想を体現した埋葬方法といえます

故人の遺体を燃やすことに対して抵抗感を持つ人や、土に還りたいと願う人にとっては、土葬の方が受け入れやすい埋葬方法だといえるでしょう。

火葬を敬遠している宗教では、教義を守れるといった側面もあります。

土葬のデメリット

土葬を行うデメリットは、第一に衛生面への注意が必要な点です。遺体が地下で腐ることにより、感染症や水質汚染のリスクがあります。日本では地下水を使っていることから、土葬による水質汚染の懸念は大きいといえるでしょう。

また土葬を行った箇所は日数が経つと沈んでしまい、墓石が崩れることも考えられます。墓石が長持ちしにくく、再度土を盛る手間もかかるでしょう。

土葬をするには広大な土地が必要なため、そもそも行える場所が限られています。実施すること自体が難しく、手間暇がかかるのも懸念点です。

土葬以外で自然に還る葬儀の方法は?

喪服を着た男女

「自然に還りたい」という想いがある場合は、土葬以外の方法についても検討してみましょう。

海・山に還る「散骨」

散骨とは遺骨を粉末状にし、海や山などの自然に撒く葬送スタイルです。中には遺骨をカプセルに詰め、宇宙に撒くケースもあります。お墓を作らない、自然に還る埋葬方法の1つです。

土葬との大きな違いは「火葬を行うかどうか」でしょう。散骨では火葬したあとに、お骨を粉砕して自然にまきます。

散骨は主に故人が思い入れのある場所で行いますが、自由に好きな場所で実施できるわけではありません。条例で禁止されていない場所で、なおかつ撒く土地の所有者(地主)の許諾が必要です。そのうえで「祭祀として尊厳や礼節も踏まえた儀礼として」法に触れないように行う必要があります。

やたらに撒くことで、遺骨の遺棄とみなされると「刑法」の処罰対象となる点にも注意が必要です。そのため基本的には専門業者に依頼して行いましょう。

散骨を行える条件は、厚生労働省の「散骨に関するガイドライン」に定められています。

関連記事:散骨を行う費用や手続きは?事前に確認したい注意点・マナーも解説
参考:散骨に関するガイドライン

霊園内で自然に還る「樹木葬」

樹木葬も自然葬の一種で、墓石の代わりに樹木や花を墓標にする埋葬方法です。散骨と同じく、一度火葬をする点で土葬と異なります。

墓石はどことなく暗いイメージがありますが、樹木葬なら自然で温かみのあるシンボルとなるでしょう。この樹木葬は新しい供養の形として注目を集めつつあります。

樹木葬のもう1つの特徴は、境内墓地の場合の多くが永代供養である点です。跡継ぎを必要としないため、子供のいない単身者や夫婦が利用するケースが多くなっています。

また墓石を購入する必要がないため、一般的なお墓を立てるよりも費用を大幅に抑えることが可能です。

関連記事:樹木葬とは?種類や費用、後悔しないためのポイントを解説

故人の思いに寄り添った葬儀に

棺の上に花束を乗せる人

土葬は現代の日本ではほとんど行われていませんが、かつては当たり前の埋葬方法でした。しかし現代の日本では土葬用のスペースを確保することが難しく、また衛生上の観点からも火葬が主流となっています。

ただし土葬自体が法律的に禁止されているわけではないため、検討すること自体は可能です。土葬に対応できる施設を探し、自治体のルールに沿って埋葬しなければならないため、費用や手間が増えることは覚えておきましょう。

土葬を行いたいと考えている場合、葬儀社に早めに相談するのがおすすめです。

また「自然に還りたい」という思いがある場合は、散骨や樹木葬といった別の葬法も検討するとよいでしょう。

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監修者:二村 祐輔

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)

著書・監修

『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載

など多数

コメント
自然回帰への憧憬は、私たちの素朴な想いです。その根底ある死生観は「再生」にあるでしょう。私たちは四季の循環をDNAに埋め込まれている民族です。春夏秋冬のうつろいはまさに生命の循環と同じと考えています。そういう自然に中に組み込まれていく意識から「土に還る」という言葉が生まれました。それは種蒔きから発芽、伸展、開花、結実の繰り返しを人生になぞらえ望んでいるのかもしれません。