ミツモアメディア

散骨を行う費用や手続きは?事前に確認したい注意点・マナーも解説

最終更新日: 2024年02月07日

散骨とは、故人の遺骨を主に海などの自然にまく葬送方法です

生前から海が好きだったり、海に関わる仕事をしていたりと、海への思い入れがある方が行うケースが多いでしょう。またお墓の後継者がいない際や、子孫への負担を減らしたいと考えた際に、墓じまいの一環で散骨をする場合もあります。

ただし後に何も残らないため、手を合わせる場所がなくなったり、親族の理解を得られなかったりというデメリットもあり、注意が必要です。

散骨を実際に行う際の費用と手続き方法、トラブルを防ぐためのポイントを確認しましょう。

この記事を監修した専門家

葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
岩田昌幸

散骨とは?

散骨のイメージイラスト

散骨とは故人の遺骨を粉状にして、自然に還す葬送方法です。樹木葬と併せて自然葬と呼ばれることもありますが、樹木葬は墓地として認められた場所に納骨するため、散骨とは異なります。

現在の日本では「墓地以外に焼骨の埋蔵をしてはいけない」という法律があるものの非公式ながら「葬送のためであり、節度を持って行う分には問題ない」という関係省庁の私見により1990年代より行われていました。

こうした状況を踏まえ、厚生労働省では2020年に「散骨に関するガイドライン」が取りまとめられています。

墓じまい後に散骨処分するケースも

少子高齢化や核家族化が進み、昨今では「自分たちの代で墓じまいを」と考える人も少なくありません。墓じまいとは墓石を撤去して更地にし、墓地の区画の使用権を返却することです。

しかし墓じまいをすると、遺骨の取り扱いに困るでしょう。そこで「墓じまい後の遺骨処分」の方法として、散骨を選択するケースが増えています

墓じまい後は合葬墓に入れるなどの方法もありますが、立地や費用などの理由で散骨が選ばれることもあるのです。

散骨の主な種類とかかる費用

散骨はまく場所によって種類が分かれており、費用も異なります。それぞれの種類の特徴や費用の相場を解説します。

「海洋散骨」の特徴と費用

海にまく海洋散骨は、散骨の中でも比較的ポピュラーな方法です。国内の海はもちろん、思い入れのある海外の海などに散骨するケースも珍しくありません。

海洋散骨の費用相場は「自分の家族のみで行う場合」「ほかの家族と一緒に行う場合」によって異なります。

自分の家族のみで船を貸し切る「貸切乗船散骨」なら、20万円~30万円が相場です。

また他のご遺族と船に乗り、合同で散骨をする「合同乗船散骨」は10万~20万円、船には乗らずに業者に委託して散骨してもらう「委託散骨」では5万円程度で依頼できます。

「山林散骨」の特徴と費用

山林散骨地を行える散骨島として知られているのは、島根県にあるカズラ島です。

山林散骨の費用は、散骨場所と、「個別散骨」「合同散骨」「委託散骨」いずれかによって異なります。散骨するポイントまで特定できる個別散骨は20万円前後、合葬墓のように他人と同じ場所への散骨は10万円前後、立会なしで委託散骨をする場合は5万円前後です。

なお山林散骨の場合いくつか注意点が複数あります。

まず、あらかじめ特定された区域(河川及び湖沼を除く)でしか行えません。許可のない土地に勝手にまくと、違法となる可能性があります。

必ず所有者の許可が必要で、かつ散骨禁止条例を出している自治体もあり、実際には山林散骨はあまり行われていません。また散骨地は墓地ではないので、「焼骨の埋蔵」をすることは「墓地・埋葬等に関する法律」により禁止です。上から土をかけることは一切できないので注意しましょう。

また散骨地は墓地として許可された場所ではないため、永続性のある土地であるとは限らず、別の目的に開発される可能性もあります。寺院内であっても、墓地とは性格が異なり、建物が建ったりすることも考えられるので注意が必要です。

新しい散骨「宇宙散骨」

技術が発達した現代では、宇宙に散骨することも可能になりました。「一度は宇宙に行ってみたい」と思う人にはおすすめの、ロマンがある方法でしょう。

宇宙散骨とは、故人の遺灰などを納めたカプセルをロケットに載せて宇宙空間に打ち上げる葬送方法です。アメリカで打ち上げられる人工衛星と一緒に遺骨が搭載される仕組みで、日本でも宇宙散骨を取り扱っている代理店がいくつかあります。

ただし宇宙空間へ放たれる遺骨の量は1g~7g程度と微量で、残った遺骨はその他の遺骨は墓地に納めるか海洋散骨を検討するなど、残った遺骨の行き先も考えておく必要があります。

宇宙散骨の費用は、人工衛星に搭載するような場合だと50万~200万円程度かかると考えておきましょう。

散骨するときの手続き

散骨する際、法的な手続きは不要です。散骨は「墓地、埋葬等に関する法律」に規定されていないため、法的な許可や手続きは必要ありません。

なお遺骨を火葬した際には、埋火葬許可証に火葬済印が押されて返却されます。

もし手元に少しでも遺骨をとっておきたい場合は、返却された埋火葬許可証は保管しておきましょう。

散骨を行うメリット

緑を背景にした橙色の遺骨入れ

散骨は墓地への納骨と比べどのような利点があるのでしょうか。散骨ならではのメリットを3つ解説します。

費用を抑えられる

散骨は一般的なお墓を建てる場合と比べ、コストが安く済みます。

お墓を建てる場合の費用相場は、約200万円といわれています。しかし委託散骨なら5万円程度でできる場合があるので、コストを抑えたい人にはおすすめです

子孫への負担が少ない

お墓を管理するには定期的なメンテナンスが必要です。またご逝去から何日、何年といったタイミングで法要も行います。

散骨の場合は、お墓の管理費や法要のお布施が必要ないため、子孫への負担を減らせるでしょう。仏壇や位牌はあってもなくても構いません。

現在は少子化により子どもがいない場合や、1人だけの家庭も多いです。お墓を引き継ぐ人がいないことによる心配も不要です。

故人の遺志を叶えられる

一昔前までは、散骨は葬送方法として想定されていなかったため法的整備もなく、一般的ではありませんでした。たとえ「自然に還りたい」という考えを持っていても、その実現は非常に難しかったでしょう。

しかし現在では散骨が可能になり、葬送方法の選択肢が広がっています。宇宙散骨というロマンのある方法も登場しており、費用はかかりますが、宇宙に行くという夢も叶えられます。

散骨を行うデメリット

供えられた花越しに見える墓石

散骨をすると証明書のようなものはもらえますが、それ以外に故人が生きたことを示すものはありません。

手元に遺骨が残らない点に、後悔する可能性があることには注意が必要です。

お墓参りができない

散骨の場合はお墓を建てないため、お墓参りができなくなります。仮に家のお墓があったとしても、散骨した方の遺骨は納骨されていません。

故人の子どもや孫であれば、散骨した場所を訪れることで故人を偲ぶことは可能です。しかし故人が眠っていることがわかるシンボルがないため、面識のある遺族も、段々と場所の記憶が薄れていく可能性もあります。

仏壇や位牌も用意しない場合は特に、直接会ったことのない子孫は、故人が存在したことを認識するのが難しくなるでしょう。

親族の理解を得にくい

故人が散骨を希望していたとしても、親族が全員それを受け入れられるとは限りません。

従来通りお墓に入ることをよしとする親族からは、散骨に対してネガティブなイメージを持たれてしまう恐れがあります。特にお墓参りができない点は懸念を持たれる可能性が高いでしょう。

そうした際は、分骨という方法も1つの手です。分骨は遺骨の一部を散骨し、もう一部はお墓に納骨する方法なので、親族と故人双方の希望を叶えられるでしょう。

散骨は自分でもできる?

遺骨を持つ男性

散骨をする際には、基本的には業者に頼むのがおすすめです。散骨する際には、必ず遺骨を粉砕する必要があります。

故人の遺骨を、ご遺族がハンマーなどで粉骨するのは、精神的にも負担がかかるものです。特別な事情がない限りは、業者に散骨を頼みましょう。

業者に頼む際は立ち合いか全委託

業者に依頼する場合は、立ち会い散骨と委託散骨の2種類があります。立ち会い散骨とは、粉骨や散骨を遺族の立ち会いの下で行う方法です。

委託散骨とは遺族が散骨に立ち会わず、一切の工程を業者に任せる方法を指します。遺骨を送ったらあとは何もする必要がなく、後日散骨の様子を収めた写真や証明書が送られます。

自分で行う場合の注意点

どうしても自分で粉骨から散骨まで行いたい場合は、遺骨をハンマーで細かく砕くか、粉砕機をレンタルして粉骨してから行います。部位が推定できる程の大きさの人骨をまく行為は、死体遺棄罪に問われる可能性があるため注意が必要です。

海洋散骨なら他人に迷惑がかからないように、また環境に配慮して実施しましょう。自分の所有地への散骨は、条例で認められている範囲内なら可能ですが、風評被害には留意します。また上から葉や土をかけてはいけません。

たとえ自分が所有する土地であっても、条例で散骨が禁止されている場合は散骨ができません。下記のような場所では、散骨が禁止されていることがほとんどです。

  • 水源地
  • 住宅の近く
  • 観光地
  • 河川や湖・海水浴場

なお遺骨が風に乗って近隣の家に飛来しないよう、風向きにも注意する必要があります。散骨をしていることに近隣の住民が気づいた場合、快く思わないこともあるでしょう。

業者に依頼して散骨する場合、十分に配慮して行うことがほとんどのため心配は不要です。

散骨を行う際のマナー

薄桃色の数珠

散骨をするときには、周囲に分からないように配慮する必要があります。また散骨後に、土をかぶせるといった行為はしてはいけません。

喪服や数珠は着用しない

散骨する場所では、なるべく喪服を避けるのが無難です。

海洋散骨の場合、集合場所は公共の船着き場やアリーナであることが多くなっています。そこにはレジャーで訪れる人も多くいるため、喪服を着た人たちがぞろぞろと船に乗り込んでいく姿を見るのは心穏やかではないでしょう。

山林散骨の場合も、山奥で喪服を着た人たちが何かをしているのを見た人が驚くかもしれません。場所選びも含め、散骨では周囲に迷惑をかけないことが重要です。

埋蔵にあたる行為はNG

散骨をするところに穴を掘ったり、散骨したところに葉や土をかぶせる行為は禁止です。

この行為は「埋蔵」とみなされ、墓地以外で焼骨の埋蔵、遺体の埋葬をしてはいけないという法律に抵触してしまいます。私有地であっても埋蔵はNGです。

散骨を考えるなら安心できる業者に

百合の花と喪服で手を合わせる女性

散骨は「自然に還る」という個人の願いをかなえられる葬送方法です。日本では葬送を目的として、常識的な範囲で行うなら問題ないとされています。

しかし散骨は墓地以外の場所に遺骨をまく以上、周囲への配慮が必須です。またどこでも散骨してよいわけではありません。

ご自身で粉骨から行うには精神的な負担もかかるため、できれば業者に依頼するのがおすすめです。

業者選びに迷ったら、ミツモアで効率よく探しましょう。ミツモアでは簡単な質問に答えるだけで、最大5社に対して見積もりを依頼できます。

故人が亡くなったあとは各種手続きで立て込むため、ミツモアを使ってスムーズに散骨の手配をしましょう。

ミツモアで葬儀・お葬式を依頼する

監修者:岩田昌幸

葬送儀礼マナー普及協会 代表理事

葬送儀礼(臨終から葬儀、お墓、先祖供養等)が多様化している中で、「なぜそのようにふるまうのか」といった本来の意味を理解し、そうした考え方や習慣を身につけられるよう「葬送儀礼マナー検定」を実施しています。メディア監修多数、終活・葬儀・お墓関連セミナーも実施しています。

コメント
主に海に遺骨をまく「散骨」は、海に思い入れのある方や墓じまいをしたい方に選択される葬送方法の1つです。ご遺族の手元に遺骨が残らない点を十分考慮したうえで、検討するとよいでしょう。実際に行う場合は専門の業者にお願いするのがおすすめです。