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樹木葬とは?種類や費用、後悔しないためのポイントを解説

最終更新日: 2024年06月28日

樹木葬は墓石を使わず、樹木をシンボルとして埋葬する埋葬方法です。桜やハナミズキ、もみじやクスノキといった樹木を植え、その下に故人の遺骨を埋葬します。

樹木葬は遺骨を自然に還せる、後継ぎが必要ないといったメリットがある一方、立地の悪さや、後日遺骨を取り出せないことから後悔したという声も。

樹木葬の種類や費用、気を付けたいポイントについて解説します。

この記事を監修した専門家

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔

樹木葬とは?

樹木葬は埋葬方法として自然志向の新しいイメージです。

墓石の代わりに樹木がシンボルになる

樹木葬とは墓石の代わりに、樹木をシンボルとする埋葬方法です。「自然に還る」という古くからの価値観とマッチした方法であり、日本人の死生観にも沿っています。

一般的なお墓を建てる形式と比べ、費用面や周りの人の負担が少ないことから、近年好まれている埋葬方法の1つです。

跡継ぎを必要としない永代供養の1つ

樹木葬の多くは、宗教法人が経営母体の場合、永代供養の形を取っています。永代供養とは定期的なお墓参りが難しい遺族に代わって、寺院が代わりに供養をしてくれる方法のことです。例えば納骨堂や合祀墓なども、永代供養に該当します。

利用者の多くは跡継ぎがいない単身者や夫婦です。また「子どもや孫たちに負担をかけたくない」という人も、樹木葬をはじめとした永代供養を選択しています。

遺骨の納骨方法は?

樹木葬では「自然に還る」という考えから、遺骨を骨壺から取り出し、埋葬するのが一般的です。または時間が経つと土に還る素材の骨壺を使うか、遺骨を布に包んで納骨する形をとります。

ただし改葬するなどの事情で骨壺を取り出すことが予想される場合は、個別にそれぞれの容器で埋葬する必要があるため事前確認しておきましょう。

樹木葬の立地は3種類

樹木葬は埋葬する環境によって、以下の3種類に分けられます

  • 庭園タイプ
  • 公園(霊園)タイプ
  • 里山タイプ

庭園タイプ

主に寺院の境内墓地や、霊園の一角に設けられているタイプです。限られたスペースで埋葬できるため、都心部を中心に見られます。シンボルとなる樹木や、花木を植えて埋葬します。

公園(霊園)タイプ

公園(霊園)タイプでは墓標の周囲に芝生が植えられていて、まるで公園のように環境が整備されています。実際の霊園の一画が利用されていることが多いです。霊園内に1本もしくは数本のシンボルツリーを植える場合もあれば、区画ごとに植えるケースもあります。

里山タイプ

里山タイプは里山にシンボルツリーを植えるタイプです。宗教団体が所有する里山などで「霊園許認可」を受けた場所であり、そこでは遺骨も散骨の形で自然に還されるケースが多くなっています。「自然に還る」に最も近いタイプといえるでしょう。

埋葬方法も3種類から選べる

樹木葬

樹木葬では、埋葬方法も以下3つから選べます。

  • 合祀型
  • 集合型
  • 個別型

合祀型

合祀型とは寺院などの宗教者が合同で供養祭祀する方法で、シンボルツリーも共有します。ほかの人と一緒に埋葬する分、コストがかからないので、費用負担が少ない傾向です。

集合型

集合型は、シンボルツリーは共有するものの、納骨は個別に行う方法と言われています。ただし供養祭祀については施設によって相違があるため、事前に十分確認しましょう。納骨を個別に行う分、費用は合祀型よりも高くなります。

個別型

個別型も供養祭祀については施設によって相違があるものの、個別の区画を購入することを指す場合が多いです。区画を個別購入する場合は、数種類の樹木や花の中から、好きな植物を選べる場合があり自由度が高いでしょう。

費用は3つのタイプの中では一番高いですが、通常のお墓を購入するよりは、安く済む傾向にあります。

注意点はどのタイプを選んだとしても、通常33回忌が過ぎたあとは合祀される点です。一度合祀されたら、遺骨を取り出すことができない点も留意しましょう。

樹木葬のメリット

近年注目が集まっている樹木葬ですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。樹木葬の長所を3つ紹介します。

お墓に比べ比較的費用が安い

樹木葬は一般的なお墓を建てるよりも、費用を抑えやすくなっています。一般的なお墓を建てる費用は100万~300万円です。

一方樹木葬の場合、安いものだと10万円程度で入手できます。樹木葬では区画を共有すれば、使用料も管理費もさほどかからないためです。

また管理費を支払えば、個人で管理する手間も必要ありません。忙しくて長期間お墓参りができなくても、荒れることがないのはメリットでしょう。年間の管理費がかからない樹木葬も多くなっています。

開放的で明るいイメージ

樹木葬の場合、一般的なお墓よりも明るいイメージを与えることが可能です。通常のお墓は墓石である以上、墓石や外柵などを区画ごとに建立するので、重々しく感じることもあります。

しかし樹木葬なら、霊園に木々や花が植えられており、敷地も広々と使っているため、開放的な雰囲気が感じられます

お墓参りに来た際に、少しでも明るい気持ちになれるでしょう。

宗派を問わず埋葬できる

樹木葬の場合、ほとんどが宗旨宗派を問わないで埋葬可能ですが、その後の永代供養についての対応はあらかじめ聞いておく必要があります

ただし一部の樹木葬墓地では、個別の法事は個々の宗派に従って行うことを条件としているケースもあります。利用時には条件を確認しておくことがポイントです。

樹木葬でよくあるトラブル

里山

樹木葬はメリットばかりではなく、認識しておくべきデメリットも存在します。起こりがちなトラブルを把握し、後悔しないようにしましょう。

アクセスが悪く通えない

樹木葬の墓地は都心部から遠い場所にあることの方が多いため、「距離が遠くてなかなか通えない」と後悔する人は多いです。

車でしか訪れられない場合、お墓参りに行けない方も出てきてしまうでしょう。

墓地へのアクセスのしやすさは重要なポイントです。公共の交通機関を利用できるか、親族がお参りしやすいかを事前に確認しておきましょう。

樹木が枯れることがある

シンボルツリーである樹木は、自然の産物である以上、月日が経つにつれ姿形が変わってしまいます。これは墓石を建てるお墓にはない変化です。

春や夏には草木や花が生い茂って、きれいな景観を見せていても、冬にはすべて枯れて殺風景になることもあるでしょう。植物である以上、景観が変わる可能性があることは把握する必要があります。

手入れの手間がかかることも

個別型での樹木葬では、遺族に樹木や区画の管理を任せるケースもあります。その場合樹木の剪定といった定期的なメンテナンスが必要です。

アクセスの悪さや忙しさからなかなか墓地に訪れられない場合、メンテナンスしきれず後悔する可能性があります。

遺骨を移動できない

樹木葬で合祀や合葬として埋葬された場合、あとから遺骨を取り出すことはできません。たとえば家族で納骨する墓地をあとから購入したとき、「遺骨を移動したい」と考えても難しいでしょう。

個別型でも一定の期間を過ぎると合祀型に移動するため、注意が必要です。

親族の理解を得られない

樹木葬は近年になって登場した新しい供養方法なので、伝統的な供養を重んじる家族がいる場合、理解を得られない可能性があります

合意を得ずに樹木葬を選択した場合は、あとからトラブルになる可能性が高いです。

自分の代から供養の方法が変わる点は特に説明が必要でしょう。樹木葬のデメリットも踏まえたうえで、メリットを説明することが重要です。

可能であれば現地に行き、スタッフに説明してもらうのもよいでしょう。

樹木葬に必要な費用は?

葬儀の受付と百合の花

樹木葬は一般的なお墓よりもリーズナブルに利用できます。具体的な費用を見ていきましょう。

樹木葬の費用相場

樹木葬の費用相場は、主に埋葬方法によって変わります。埋葬方法ごとの費用相場は、下記の通りです。

  • 合祀型:5万~25万円
  • 集合型:15万~60万円
  • 個別型:20万~80万円

ほかの人と一緒に供養をするか、個別に供養するかによって費用が変わります。個別の納骨や区画を用意するなら、その分費用は高くなります。立地によっても費用が変動する場合があるでしょう。

なお樹木葬と並んで代表的な自然葬である「海洋散骨」の場合、20万~30万円が相場です。

樹木葬にかかる費用の内訳

樹木葬の費用の内訳は、以下の通りです。

  • 永代供養料(合祀型の場合)
  • 埋葬時の諸経費
  • 年間管理料
  • 石碑・彫刻料(必要であれば)

樹木葬の費用の中で、大部分を占めるのが永代供養料です。永代といっても永久に供養をしてくれるわけではなく、一般的には埋葬後、33回忌までの契約となります。

埋葬諸経費とは、埋葬のための人件費などです。永代供養料に含まれているタイプもあります。

埋葬区画の「使用権」を永代供養料としている場合もあり、費用の中には何の内容が含まれているのかを事前に確かめておくと良いでしょう。

年間管理料は、無料の場合や、永代供養料と合わせて一括で支払う墓所が増えています。

石碑・彫刻料とは、共用のシンボルツリーのほかに、個別のネームプレートを彫ってもらえるオプションのサービス料です。

実際に樹木葬を選ぶ場合の手続き・流れ

費用を抑えるためには比較検討が重要です。しかし実際に自分が眠る墓所を選ぶ際にはどのように進めたらよいのでしょうか。樹木葬を選ぶ際の手続きや流れを解説します。

事前に周囲の理解を得ておく

まずは樹木葬という選択肢を取ることに、家族が納得していることが重要です。自身は樹木葬を希望していても、家族は一緒のお墓に入りたいと思っているかもしれません。

また樹木葬をするのは自分や夫婦だけなのか、それとも子どもまで樹木葬を行うのか、樹木葬を行う範囲も決めておくことが重要です。理解を得ないまま希望を押し通すと、後々トラブルのもとになりかねません。

家族が樹木葬に納得しているとは限らないので、きちんと話し合うことが大切です。

樹木葬の情報収集

樹木葬を行うことが決まったら、その墓所の情報収集をしましょう。各社のHPをチェックするだけでなく、できるだけ現地に足を運んでみることがポイントです

現地に行ってみることで「思ったよりも駅から遠い」「写真で見るよりもきれいではない」などの、マイナス面が目に付く可能性もあります。手間はかかりますが、後悔しないためにも現地の雰囲気を確認するのがおすすめです。

申し込みの流れ

希望の場所や施設が決まったら申し込みをしましょう。ほとんどの樹木葬で、生前の申し込みに対応しています。ただし人気の高い都心の公営樹木墓地などは、申し込み制限や抽選があることもあります。

契約の際には、本人確認書類の提出を求められるケースが多いので、どのような書類が必要か事前に確認しておくとスムーズです。

また使用料や管理費は契約のタイミングで支払う場合が多くなっています。あらかじめ資金を用意しておくとよいでしょう。

埋葬の流れ

自身の逝去後は、遺族に残りの手続きを行ってもらう必要があります

お葬式の火葬時に火葬許可証が必要です。火葬が済むと火葬済みの押印がなされ、埋葬許可証になったものを樹木葬の管理者に提出します。

埋葬の日時はあらかじめ連絡して了解をとっておかなければなりません。

周囲の理解を得て、埋葬方法の選択を

一昔前までは亡くなったらお墓を建て、それを子孫たちが守っていくことが一般的でした。しかし時代とともに、人々のライフスタイルが変わり、それに併せて供養の形も変わっています。

樹木葬は少子高齢化や核家族化が進んだ、現代の人々のニーズにマッチした、新しい供養の方法です

樹木葬を利用する場合は、家族とよく話し合い、全員が納得したうえで行いましょう。

埋葬の費用や墓守などで子供たちに負担をかけたくない人や単身者の方は、樹木葬を検討するのもおすすめです。

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監修者:二村 祐輔

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)