近年のレンジフードタイプの換気扇は、フィルターの奥にシロッコファンと呼ばれるタイプのファンが取り付けられています。普段は見えない位置にありますが、換気扇を稼働させるごとに汚れが蓄積しています。
もちろん少しの手間はかかりますが、シロッコファンは自分で掃除することが可能です。この記事ではシロッコファンの汚れの原因から掃除方法、汚れを防ぐコツまでを詳しく解説します。
換気扇のシロッコファン掃除におすすめな道具
シロッコファンの掃除をするために用意しておきたいのは以下のアイテムです。
- アルカリ性洗剤(重曹・セスキ炭酸ソーダ・オキシクリーンなど)
- ブラシ・スポンジ
- 大きめのゴミ袋
- ゴム手袋
- 踏み台
つけ置き用のアルカリ性洗剤と、こすり洗い用のブラシやスポンジが一番大切です。つけ置きするときはシンクにお湯を溜めてもよいですが、ゴミ袋の中でつけ置きすれば、周囲に油汚れが飛び散らずに済みます。
また換気扇を分解したり、洗剤を取り扱うときには、ケガや手荒れを防ぐためにゴム手袋を着用して作業することをおすすめします。
アルカリ性洗剤はどれを使うべき?
酸化した古い油汚れを落とすには、アルカリ性の洗剤でつけ置きして中和させるのが効果的です。しかしアルカリ性洗剤はいくつも種類があるので、シロッコファンの掃除にはどれを使うのがベストなのか迷ってしまうかもしれません。
基本的には家にあるものを使いつつ、油汚れの程度によって使い分けるとよいでしょう。
市販で手に入りやすいアルカリ性粉末の種類と、それぞれのpH値をまとめました。pH値が高いほどアルカリの性質が強く、中和させる力が強いということになります。
洗剤の種類 | pH値 | こんな場合におすすめ |
---|---|---|
重曹 | pH8.4 | 軽度の油汚れ |
セスキ炭酸ソーダ | pH9.8 | 中度の油汚れ |
過炭酸ナトリウム | pH10.5 | 重度の油汚れ |
過炭酸ナトリウムが主成分となっている製品にはオキシクリーンなどがあります。
アルカリ性洗剤は金属を傷めるリスクもあるので要注意
油汚れを落とすのに効果的なアルカリ性洗剤ですが、実は金属との相性は良くありません。
金属でできたシロッコファンやフィルターにアルカリ性洗剤を使うと、金属が腐食・変色したり、塗装がはげたりするリスクもあります。強い洗浄力を持っている分、素材にもダメージを与えてしまうのです。
完璧に落としたいからといって、むやみに強いアルカリ性洗剤を使ったり、濃度を高くしたりするのは避けましょう。なるべく効果がやさしい洗剤を使い、あとは物理的にこすり洗いをするのがおすすめです。
もし油汚れがひどくなければ、アルカリ性洗剤を入れずにお湯だけでつけ置きをしてもよいでしょう。
換気扇のシロッコファンの掃除方法
換気扇のシロッコファンを掃除する手順は以下の通りです。
手順1)換気扇の電源を切り、足場を用意する
まずは安全のためにレンジフードの電源を切ります。
電源プラグとコンセントが見える位置にある場合は、プラグを抜いておくとさらに安心です。ブレーカーを落とすのも確実な方法ですが、周囲が暗いまま掃除すると危険なので、電気の供給が止まる範囲を確認してください。
また、換気扇掃除は自分の目線よりも高い位置の作業になります。背伸びをした状態でシロッコファンの分解をするのは不安定で危ないので、踏み台などの足場を用意しましょう。
手順2)ガスコンロの上を養生する
シロッコファンを分解する工程では、はがれた油汚れが下に落ちてきたり、部品が落下したりする可能性があります。ガスコンロが汚れたり傷ついたりするのを防ぐために、養生しておきましょう。
ゴミ袋をハサミで切り開いたものや、新聞紙、ダンボールなどを広げ、養生テープで固定します。
手順3)フィルターとシロッコファンを取り外す
作業の準備が終わったら、フィルターとシロッコファンを分解していきます。
写真のタイプの場合、取っ手を持ちながら奥にスライドさせると、フィルターがずれて外せます。製品によって異なるので、取扱説明書や実際のつくりを確認して外しましょう。
フィルターを外すとシロッコファンがむき出しになります。ネジを回して手前のカバーを外し、なくさないようにまとめておきましょう。
シロッコファンを中心で留めて支えているスピンナーという部品を外し、シロッコファンを取り出します。
換気扇部品の取り外し方については、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
手順4)お湯にアルカリ性洗剤を溶かし、シロッコファンを1~2時間つけ置きする
部品が入るくらい大きいゴミ袋(45Lサイズが目安)をシンクに広げ、中に50度前後のお湯を溜めます。その中に重曹、セスキ炭酸ソーダ、過炭酸ナトリウムなどのアルカリ性洗剤を溶かし、シロッコファンやカバー、フィルターなどの部品を入れて1~2時間つけ置きしてください。
水よりもお湯のほうが油汚れがやわらかくなりやすく、洗浄力も上がるので、必ずお湯を使いましょう。一般家庭の給湯器は、だいたい60度まで上がるようになっています。
ちなみに、オキシクリーンなどの過炭酸ナトリウムは、お湯に溶かすと分解され、過酸化水素を出すときに汚れを落とします。このとき、温度が高いほど分解スピードがあがり、汚れ落ちもよくなります。ただし熱すぎると一気に分解されてしまうので、つけ置きで時間をかけて汚れを落とすなら、約50度が適温です。
手順5)レンジフード内部の油汚れを拭く
つけ置きしている間に、シロッコファンを取り外した後のレンジフード側についた油汚れを掃除します。
こびりつきがひどくて拭くだけでは取れない場合、キッチンペーパーなどをアルカリ性洗剤を溶かしたスプレーでひたひたに濡らし、油汚れに貼り付けてしばらくパックしてみましょう。
それでも取れない場合、ヘラなどを使って削り落とすしかありません。何十年も掃除していないケースだと、シロッコファンの収まっていた部分にヘドロ状になった油汚れが溜まっていることもあります。
手順6)シロッコファンをブラシやスポンジでこすり洗いする
つけ置きによってシロッコファンの汚れを浮かせたら、ブラシやスポンジでしっかりとこすり落とします。ゴミ袋の中でファンを回転させるようにして動かすと掃除しやすくておすすめです。
ただし長年こびりついていた強固な油汚れは、一度では落としきれないこともあります。汚れがひどい場合は、つけ置きとこすり洗いを何度か繰り返す必要があります。
手順7)洗剤を水でよく洗い流し、乾いた布で水気を拭き取る
最後にゴミ袋の中の汚れた水を捨てて、洗剤成分が残らないようにシロッコファンやフィルターを洗い流します。すみずみまですすいだら、水気が残らないように布やタオルで拭き取りましょう。
水気が残ったまま取り付けると、湿度が上がってカビや雑菌が好む環境になってしまったり、ホコリがくっつきやすくなったりするので、この時点でしっかり乾燥させることが大切です。
手順8)シロッコファンとフィルターを元通りに取り付ける
水気をしっかり拭き取ったシロッコファンを、外したときの反対の手順で取り付けていきます。
シロッコファンが外れないときはどうする?
長年の油汚れがこびりついて固まっている場合や、前に分解した人が固く締めた場合は、なかなかネジが回らずシロッコファンを外せないことがあります。
油汚れの固着が原因であれば、その部分にドライヤーの熱風を当ててあたため、油汚れをやわらかくしてからネジを回してみましょう。
無理やり力を入れて回そうとすると、周りの部品でケガをしてしまったり、勢いあまって部品を壊してしまうかもしれません。外せそうにない場合は無理をせず、プロの換気扇クリーニング業者に依頼することをおすすめします。
換気扇のシロッコファンが汚れる3つの原因
シロッコファンが汚れる主な原因は3つあります。
油汚れ
シロッコファンに付着する代表的な汚れが、調理中に発生する油です。シロッコファンのあるレンジフードは、コンロの上に設置されています。そのため、キッチンで油を使った料理をすると。飛び散った油がシロッコファンに付着してしまうのです。
特に揚げ物や炒め物など、油を多く使う料理を頻繁に作る家庭では、レンジフードの近くに飛び散った油がシロッコファンにくっつきやすくなります。この油汚れは時間が経つと固まり、簡単には落ちません。また、油が蓄積するとファンの取り外し自体が難しくなり、掃除に余計な時間と労力がかかることもあります。
汚れが強固になってしまうまえに、こまめな掃除が重要です。
空気中のほこり
室内には目に見えないほこりが常に漂っています。換気扇が稼働すると、これらのほこりが空気と一緒にシロッコファンに吸い込まれ、羽根に付着します。
特に、先ほど触れた油汚れと結びつくことで、ファンに固着しやすくなり簡単には落ちません。放置するとファンの効率が低下したり、故障したりする原因になります。
定期的なフィルターを交換したり掃除したりすることで、換気能力を維持してシロッコファンの寿命を伸ばしましょう。
タバコの煙によるヤニ汚れ
タバコを吸う家庭では、ヤニ汚れも大きな問題です。特に室内や換気扇近くで喫煙する家族がいる場合、シロッコファンに汚れが付着しやすいため注意しましょう。
タバコの煙に含まれるタール(ヤニ)は粘着性が高く、シロッコファンに付着すると非常に落ちにくくなります。ヤニは黄色や茶色に変色するため見た目が悪くなるだけでなく、粘り気のある汚れが換気効率を低下させてしまいます。
また、蓄積しているヤニ汚れを土台に汚れがさらに溜まってしまうため、気になり始めたら早めの対策がポイントです。
シロッコファンの汚れを放置しない方が良い理由
シロッコファンの汚れを放置すると、機能低下やさまざまな問題が発生する可能性があります。快適な調理環境を保つためにも、定期的な清掃が大切です。ここでは、汚れを放置しない方が良い理由を詳しく見ていきましょう。
換気効率が低下する
油やほこりがシロッコファンに蓄積すると、ファンの回転が鈍くなり、換気能力が著しく低下します。
特に調理中に発生する煙や蒸気がうまく排出されず、キッチン内にこもってしまうと、空気の質が悪くなり調理が不快になることもあります。また、ファンの負担が増えることでシロッコファン自体の寿命を短くしてしまう可能性もあるため、こまめなメンテナンスが必要です。
音がうるさくなる
汚れたシロッコファンは、回転時に騒音を発生させることがあります。特に油汚れによりファンのバランスが崩れ、回転がスムーズに行われないと、換気扇の作動音が通常よりも大きく感じられます。
「ゴーッ」とした騒音が続くとストレスに感じてしまうこともあるでしょう。また、異常音は単に不快感を覚えるだけでなく、機器の故障の前兆である可能性もあります。仮に音が気になる場合は、早めに対処することで修理や交換にかかるコストを抑えましょう。
換気扇のシロッコファンに油汚れが溜まりにくくするコツ
シロッコファンの分解掃除はそれなりに時間も手間もかかるので、なかなか頻繁にはできないと思われた方も多いのではないでしょうか。
なるべくシロッコファンに汚れが溜まらないようにするには、日常生活でどんなことに気を付けたらよいのかまとめました。
- 不織布フィルターを貼る
- 部屋をこまめに掃除する
不織布フィルターを貼る
シロッコファンが油汚れでギトギトになるのを防ぐには、金属フィルターの上に使い捨ての不織布フィルターを貼るのが効果的です。
換気扇用の使い捨てフィルターは100均などでも売っています。交換も簡単なので、ストックしておいて茶色くなったら貼り替えましょう。
部屋をこまめに掃除する
換気扇は料理をしたときの油を含んだ空気だけでなく、部屋中の空気を吸い込みます。
例えばキッチンの床や棚、調理器具などにほこりが溜まっていると、シロッコファンに吸い込まれて油汚れと融合し、さらにしつこい汚れになる可能性があります。換気扇付近を定期的に拭き掃除して、ほこりの発生源を減らしましょう。
シロッコファンの頑固な油汚れはプロのクリーニングで一度リセットしよう
シロッコファンの油汚れがひどく、自分で落としきるのが難しい場合は、プロに依頼してクリーニングしてもらうのがおすすめです。
プロは専門的な知識と経験を持っているため、効率的かつ確実に汚れを落とすことができます。特に長年放置された頑固な汚れや、自分では手の届きにくい箇所の清掃も効率よくこなしてくれます。
また、専用の洗剤や器具を使用するため、素人では難しい徹底的な清掃が可能です。分解や組み立ての際もすべて経験豊富なプロに任せられるので、故障のリスクを最小限に抑えられます。
時間的な余裕がない方や掃除が苦手な方にとって、プロのクリーニングサービスは心強い味方です。
換気扇のクリーニングの料金相場
換気扇やレンジフードのクリーニング料金は、タイプによって異なります。料金の目安は、以下の通りです。
- レンジフードタイプ:15,000〜20,000円
- プロペラタイプ:8,000円~10,000円
一般的にプロペラファンの方が構造がシンプルなため、掃除がしやすく、費用も抑えられる傾向にあります。
一方、シロッコファンを搭載したレンジフードタイプは、複雑な構造で分解や清掃が難しく、料金もやや高くなりがちです。