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【図解あり】管理監督者とは?判断基準やトラブル解決例も解説

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最終更新日: 2024年03月04日

「管理監督者」とは、労働条件の決定やそのほかの労務管理において、経営者と一体的な立場にある者のことを指します。一般社員のように労働基準法に定められている「労働時間」や「休憩」、「休日」などの制限を受けないのが特徴です。

しかしいざ管理監督者と聞いても「本当に自分は管理監督者なの?」「管理監督者って言われたけど、何が社員と違う?」など疑問が噴出するでしょう。

この記事では、管理監督者の定義や一般労働者との違い、休暇や残業代の扱いについてわかりやすく解説します。

管理監督者とは

パソコンに向かう上司と部下

管理監督者とは、経営者と一体的な立場にあり、同等の権限で労働条件の決定や労務管理を行う者を指します。労働基準法に定められている労働時間や休憩、休日などの制限を一般社員のように受けないのが特徴です。

労働基準法において定義されている

管理監督者は、行政解釈において「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と定義されており、労働基準法では次のように定められています。

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
出典:e-GOV『労働基準法』

この定義から管理監督者の立場にある者は、労働時間や休憩や休日に関する労働基準法の適用外にあるのです。

労働基準法における定義により、管理監督者が残業や休日出勤をした場合でも、企業に残業代や休日出勤手当の支払い義務はないでしょう。

なお管理監督者の配置は条文で定められていません。

そのため管理監督者の配置は義務ではなく、企業によって配置するかしないか対応が異なります。

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管理監督者とみなされる要件

管理監督者の4つの定義

管理監督者とみなされる要件については厚生労働省によって定められており、次の4つの基準を満たしている必要があります。

・労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること

・労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること

・現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること

・賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

出典:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省

職務内容

管理監督者は、経営者と一体的な立場として労働時間の規制の枠を超えて活動しなければならない重要な職務を有している必要があります。

例えば残業代がつかない、所定労働日などに関係なく稼働する・休めるなどが挙げられます。

一般的な社員は、毎日の労働時間や休憩・休日に関する規定が決められています。しかし管理労働者が規定に従って活動していると、企業経営に支障が出るほど、重要な役割を持っている必要があるということです。

責任と権限

職務内容に加えて、労働時間や休憩・休日などに関する規制の枠を超えて活動しなければならないほどの重要な責任と権限を有している必要もあります。

企業の労働条件や労務管理において、経営者と一体的な立場にあるためには、経営者から相応の責任と権限を委譲されていなければなりません。

例えば採用・解雇・人事考課に関する権限と責任を与えられれば、管理労働者としての条件を満たしています。

「課長」や「部長」といった役職であっても、それに見あった権限や裁量が認められていなければ、管理監督者とはみなされないわけです。そのため「部下がいない場合」や「人事権や労務管理の権限がない場合」は管理該当者として認められません。

勤務態様

日々の勤務態様は一般的な社員とは一線を画した、労働基準法における規制にはなじまない立場でなければなりません。

どんな時でも経営上の重要な判断や対応が必要とされる立場であり、自らの裁量で労働時間を度外視しての活動が許されている必要があります。

例えば、管理労働者であれば遅刻早退起因での、人事考課における負の評価はなされません。ですが反面人員不足で業務を補うため長時間労働を余儀なくされることは問題ではなくなります。

逆に、規制の範囲内でのみ活動が許されているような立場の社員は、名目上どのような役職で呼ばれていたとしても管理監督者ではありません。

賃金をはじめとした各種待遇

給与や賞与、その他の待遇においても、一般社員と比べて相応の優遇措置が取られていなければなりません。

つまり職務内容や責任にふさわしい待遇が保障されている必要があり、一般的な社員と同程度の給与や賞与しか提供されていないならば、管理監督者とはみなされないわけです。

例えば、管理労働者であれば一般社員と比べて時間給や支払われた賃金の総額が必ず多くなければなりません。

雇用形態に関しての基準はありませんが、権限や責任の範囲を考えると、実質的にフルタイム以外の社員を管理監督者とするのは難しいでしょう。

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管理監督者の特徴

管理監督者と一般従業員

管理監督者の特徴は大きく分けて次の5点です。

  • 残業代や休日手当が支払われない
  • 有給休暇や深夜残業手当は適用される
  • 安全配慮義務あり
  • 労働者代表の対象から除外される
  • 36協定の対象外

一般的な社員のように、残業代や休日手当が支払われませんが、有給休暇や深夜残業手当などは労働基準法の規定が適用されるといった特徴があります。

残業代や休日手当が支払われない

所定の労働時間を超えて働いた場合に発生する残業代や、休日出勤をした際の報酬である休日手当などが支払われないのが管理監督者の特徴です。

企業側が積極的に支払うのは問題ありませんが、労働基準法の第37条に規定されている「割増賃金の規定」は適用されないので、企業は残業代や休日手当を管理監督者に支払う義務はありません。

※出典:e-GOV『労働基準法37条』

有給休暇や深夜残業手当は適用される

残業代や休日手当の支払い義務はありませんが、有給休暇や深夜残業手当は労働基準法の規定が適用されます。

特に2019年から、年に10日以上の有給休暇が与えられている労働者すべてに「年5日の有給休暇の取得」が義務化されており、管理監督者もこれに当てはまることは覚えておきましょう。

加えて、22時から翌日の5時まで管理監督者が働いた場合には、一般社員と同様に深夜残業手当を支払う必要があります。

安全配慮義務あり

管理監督者は企業の安全配慮義務が適用されます。安全配慮義務とは、従業員が安全と健康を確保しながら働けるように企業が果たすべき配慮義務のことです。

労働契約法の第5条によって定められており、これは管理監督者にも適用されるものです。そのため、企業は管理監督者への安全配慮義務を果たさなければなりません。

管理監督者は労働時間や休憩、休日などの制限がないことから、長時間労働に陥ってしまうケースも考えられます。管理監督者が健康を害さないよう、企業は労働時間の管理を行う必要があるといえるでしょう。

関連記事:安全配慮義務とは?法令違反とみなされるケースや企業がするべき対策を解説|ミツモア

労働者代表の対象から除外される

管理監督者は労働者代表の対象から除外されます。

労働者代表とは、労働者の過半数を代表する者のことを指し、労働組合のない企業においては選出が義務付けられています。

しかし、労働者代表を規定する労働基準法施行規則第6条の2では、管理者代表を対象から除外しているのです。そのため、管理監督者は労働者代表になることができません。

参考:労働基準法施行規則|e-GOV 法令検索

36協定の対象外

管理監督者は36協定の対象外となり、その規制を受けません。36協定とは「時間外、休日労働に関する協定届」のことで、法定労働時間である「1日8時間、1週40時間以内」を超えて働く場合に必要となります。

管理監督者に関しては労働基準法における「労働時間」規定の適用外のため、36協定も同様に対象外となるのです。

しかし、安全配慮義務については適用されるため、やはり長時間労働を避ける体制づくりが企業に求められます。

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管理監督者と管理職の違い

ミーティングに参加するチームメンバー

「管理監督者」と「管理職」はよく混同されがち。大きな違いは労働基準法では以下で明文化されています。

区分 特徴
管理監督者
  • 労働条件の決定やそのほかの労務管理において、経営者と一体的な立場にある者のこと
  • 労働基準法において明確な定義づけがされている
  • 「職務内容」「責任と権限」「勤務形態」「待遇」の要件を満たした者が認められる
管理職
  • 社内において部下を管理する立場にある者の総称
  • 定義が確立していない
  • 「課長職以上の従業員」「部長職以上の従業員」など企業が定めた要件を満たした者が認められる

いわゆる「課長」や「部長」のような、企業における管理職と管理監督者を同一視している人も少なくありません。

両者を同じ立場とみなしている企業も多いですが、どの社員を管理職にするかは企業の裁量に委ねられています。しかし、管理監督者は労働基準法に定義されている立場であり、一定の条件を満たしていなければなりません。

管理職の一部が管理監督者に該当するとイメージすると、わかりやすいのではないでしょうか。

管理監督者に関するトラブル「名ばかり管理職」

トラブルを未然に防ごう

管理監督者は、度々企業と労働者に関してトラブルになることがあります。管理監督者に関するトラブルで多く挙げられる「名ばかり管理職」は、かつて社会問題としても話題になりました。

「名ばかり管理職」とは労働基準法において「管理職」に該当するにも関わらず、従業員を管理監督者とし時間外労働や休日労働の賃金を支給しない行為を指します。

「名ばかり管理職」の判断基準は以下のとおり。

  • 会社の決定事項は伝えるだけ。決定権はなく会議にも参加できない
  • 採用の権利がない
  • 部下の評価権利がない
  • 遅刻や早退の控除がある(欠勤は除く)
  • 役職手当が少額(0円〜3万円)
  • 一般労働者と賃金の総額が変わらない
  • 一般労働者と時間に対する休養が変わらないもしくは低い

判断基準を満たしながら管理監督者とされ、残業代や休日労働代が支払われない場合は「名ばかり管理職」となります。

自身が「名ばかり管理職」に該当する可能性がある場合は、未払い賃金の請求に動きましょう。

基本的に未払い賃金に関しては、3年内であればどの労働者でも請求権を持っています。どうしても企業が請求に応じない場合は労働基準監督署にご相談ください。また弁護士などに相談し民事訴訟に発展することも視野に入れると良いでしょう。

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管理監督者をめぐる民事裁判の事例

パソコン業務をする従業員

管理監督者に当てはまるかどうかについては、これまでいくつかの民事裁判を通じて判断された例があります。会社が請求に応じなかったり、労働基準監督署などの公的機関に相談しても問題が解決しない場合は、民事裁判を考えることになるでしょう。

判例をもとに、ご自身の問題が解決するかどうかイメージしてみてください。

管理監督者ではないとして割増賃金の支払い義務が発生した例

【大手ファーストチェーン店の事例】

  • 原告:大手ファーストフードチェーン店の店長
  • 被告:会社
  • 概要:「店長」という肩書きに基づき管理監督者として扱われ、割増賃金が支払われていなかったことから、未払い残業代などの支払いを会社に求めた。

この事例で裁判所は、原告が職務内容や労務管理、待遇などにおいて、経営者と一体的な立場ではなかったこと、労働時間に関する裁量権を持っていなかったことから、管理監督者としては認められないという判決を下しています。

そのため割増賃金の支払い義務が生じ、被告の会社は時間外労働や休日労働に対する賃金を支払うこととなりました。

【書籍の訪問販売会社の事例】

  • 原告:書籍などの訪問販売を行う支店の販売主任
  • 被告:会社
  • 概要:書籍の訪問販売を行う会社の支店における販売主任およびプロモーター社員が、時間外手当および休日手当を会社に請求した事例。管理監督者あるいは事業場外みなし労働時間制の適用者としてこれらの手当が支払われないのは不当だと主張した。

当事例においても、裁判所は原告が管理監督者に該当しないとの判決を出しました。

原告の勤怠時間がタイムカードにより厳格に管理されていて、自身の勤務時間における自由裁量を持っていなかったことや、営業方針の決定や販売計画などの策定に関して、同支店の課長に対して指揮命令を行う権限がなかったことが判決の理由となっています。

管理監督者であるとして割増賃金の支払い義務が発生しなかった例

【病院の事例】

  • 原告:人事第二課長 (本部)
  • 被告:医療法人
  • 概要:看護師の募集業務において、本部を含む各病院における人事関係職員の指揮命令を実施していた課長職の事務職員が、時間外労働や休日出勤、深夜労働における割増賃金の支払いを被告である医療法人に求めた。

この事例においては、裁判所は原告が管理監督者に該当するとの判決を下し、割増賃金の支払い義務は発生しませんでした。

判決の理由として、人事関係の指揮命令において看護師の採否の判断や配置など、労務管理における立場が経営者と一体的な立場にあったことが挙げられます。

またタイムカードによる勤怠管理を実施していたものの、実際の労働時間は自由な裁量に任せられていたり、時間外手当の代わりとして特別調整手当や責任手当が付与されていたことも判決を決定づける要因となりました。

管理監督者に関する契約回り

管理監督者を任命する場合、労働条件の通知は必須となります。また、就業規則の文言を改訂することも必須ではありませんが行った方が良いでしょう。

労働条件通知書の発行

管理監督者に任命するときは、労働基準法第15条において「必ず明示しなければならないこと」と定められてる事項が必ず変更されるため、該当の労働者へ通知する必要があります。

通知方法は『通知書』での発行は努力義務となっているため、口頭でも法律的には問題ありません。ただし今後のトラブルなどを防ぐためにも労働条件通知書での発行をおすすめします。

労基法第15条では、以下のように定められています。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない

この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

引用:労働基準法の基礎知識|厚生労働省

就業規則の改訂

管理監督者を初めて任命する際は、就業規則の改訂をおすすめします。こちらも法律で必須とはされていませんが、労働者への誤認識を減らす意味でも改定するべきなのです。

主に、労働時間・休憩・休日の規定について、管理監督者の範囲を明確化し「管理監督者には労働時間・休憩・休日の規定は適用しない」などといった文言を加えるなどの方法が考えられます。

また支給される手当の種類や金額なども明文化すると、トラブルが減るでしょう。

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働き方改革関連法案における変更点【2019年4月~】

管理監督者と従業員

2019年4月に施行された「働き方改革関連法案」では、管理監督者に関する項目に変更がありました。

変更内容は管理監督者自身の労働時間を事業者が把握しなければならないものとなっています。

管理監督者も労働時間把握の対象に

働き方改革関連法案の施行により、事業者が管理監督者の労働時間を把握することを義務付けられました。

義務化の内容については、働き方改革関連法案に基づいて改正された「労働安全衛生法」により法律として明文化され、以下の内容で記載されています。

改正労働安全衛生法第66条の8の3

事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。

出典:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について |厚生労働省

これまでは2017年に厚生労働省が発表した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき「管理監督者についても、健康確保の観点から労働時間の把握が望ましい」旨の記載にとどまっていました。

しかし、今回の法改正により使用者に明確な義務づけがなされたため、管理監督者についても「勤怠管理システム」や「タイムカード」などを使った客観的な方法により、労働時間の記録と把握を行う必要性があります。

また、労働時間の状況を記録したデータに関しては3年間の保存義務が発生する点にも注意しておきましょう。

次の記事ではおすすめの勤怠管理システムを紹介しています。ぜひ、あわせて参考にしてください。

関連記事:勤怠管理システムおすすめ46選!特徴や機能で徹底比較

休暇や残業などの扱いに注意

ミーティングする人々

管理監督者の定義と一般的な管理職との違い、そして管理監督者とみなされる条件を解説しました。

管理職と管理監督者が同じ立場と思っている人は多いですが、職務内容や責任範囲、待遇などの条件が満たされていなければ、法的に管理監督者とはみなされない可能性があります。

特に、近年は管理監督者となる条件を満たしていないにもかかわらず、社員に管理職の肩書を与えて、割増賃金などを支払わない「名ばかり管理職」が問題に。

社員を不当に働かせているとなれば、企業の信用問題にも関わります。自身が管理監督者とみなされるかどうかを確認し、不当な場合は会社に交渉しましょう。それでも改善されない場合は、労働問題ホットラインや法テラスなどに相談しても良いかもしれません。

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