ヤマモミジは日本海側で主に自生しているカエデ科の樹木です。庭木のほか、盆栽としても楽しめます。育てる際は日当たりと水はけに注意し、害虫が寄りつかない環境を整えましょう。寒暖差がある場所で育てることで、美しい紅葉を鑑賞できるようになります。
ヤマモミジはどんな植物か
カエデ科の一種であるヤマモミジは、カエデと何が違うのでしょうか。同じモミジでも品種によって生態は異なります。ヤマモミジの特徴とあわせて見ていきましょう。
ヤマモミジの特徴
名称 | ヤマモミジ |
科目・属目 | ムクロジ科カエデ属 |
特徴 | 落葉樹、15m 程度にまで成長 |
開花時期・紅葉時期 | 開花:4~5月、紅葉:10~11月 |
生育環境 | 適度な湿気(池や湖など) |
生育場所 | 北海道、本州の北中部(青森県から島根県) |
日本の気候風土に合っている自生の植物
ヤマモミジは主に山で見かける樹木で、自生している地域は日本海側が中心です。冬季が近づくと一気に葉を落とす落葉樹で、秋には赤や黄色などに葉の色が変わります。
木は15mほどまで成長し、5〜10cmくらいの葉をつけます。乾燥を嫌う性質があり、高温多湿の日本の気候風土に合っている樹木といえそうです。適度な湿気のある環境で育ちやすいため、池や湖など水辺に生えていることが多いでしょう。
ただし、日陰で育ったヤマモミジは、紅葉の時期にきれいな色をつけにくい傾向があります。生育には適度な日当たりも必要なのです。
ヤマモミジの育て方
自宅の敷地内でヤマモミジを育てたい場合、どういった点がポイントになるのでしょうか。植える場所や湿度、肥料などについて説明していきます。
【育て方のポイント】
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水はけのよい土壌を好むが、乾燥は苦手
ヤマモミジは乾燥が苦手なため、一定の湿度を維持することが上手に育てるコツです。湿度を意識して水辺に植えることももちろん可能ですが、水はけが悪い場所に植えると、過度な湿気により根が腐ってしまう恐れがあります。植える際はどこであっても、水はけのよさを気にしましょう。
根腐れを起こしてしまうと枯れてしまう可能性がありますので注意しましょう。
庭に地植えする場合は、基本的に水やりは不要です。盆栽や植木で育てる場合は、季節によって水やりの回数を変えましょう。夏は朝夕で2回、冬は数日に1回の頻度で十分です。
肥料は最低限でOK
ヤマモミジに肥料を与えるタイミングは、落葉後の冬がベストです。寒肥して油粕や緩効性化成肥料などを与えましょう。これらの肥料はホームセンターや通販で購入できます。5kg入りで1,000円ほどです。
肥料を多く与えすぎると、残りすぎた肥料の成分がヤマモミジの生育によくない影響を及ぼす可能性があるため、肥料の量には注意する必要があります。
紅葉のポイントは、日当たりと寒暖差
ヤマモミジは強い日差しに当たり続けると、紅葉の時期に赤く色づかずに変色してしまいます。しかしある程度の日差しは生育に欠かせません。植える際は日陰と西日が強い場所を避けましょう。
秋にきれいな紅葉を拝むためには、寒暖差が重要な要素です。たとえばヤマモミジを植えた盆栽がずっと空調の効いた室内にある場合、昼と夜で温度が変わらず、寒暖差が生まれません。
生育自体に害はありませんが、美しい紅葉を見たい場合は室内に留めおくのではなく、屋外に置いて暖かさと寒さの両方に触れさせましょう。
自分で行う剪定は最低限に
ヤマモミジを育てる場合、剪定も必要です。自分で行う方法と業者に依頼する方法がありますが、自分で行う場合は過度な剪定は控えるべきでしょう。その理由を説明します。
【剪定のポイント】
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成長の早いヤマモミジは、放っておくと枝が混み合ったり間延びしたりして樹形が崩れがちです。とはいえ基本的には自然な樹形を楽しむ樹木のため、神経質になって剪定する必要はありません。
葉が落ちたらすぐに剪定を
剪定するタイミングには気をつけましょう。10月下旬~12月の落葉の時期に剪定を行うのが一般的です。その時期を過ぎてから枝を切ると、切った場所から樹液が出てしまう恐れがあります。ヤマモミジの生育を阻んでしまうため、葉が落ちたタイミングですぐ剪定しましょう。
葉が落ちた直後は枝を視認しやすく、剪定がしやすくなるのが利点です。
剪定する際の注意点
剪定はやみくもにすればいいというものではありません。
剪定する枝は枯れた枝や徒長した枝、他の枝に絡みついている枝などです。剪定後は枝の切り口に保護液を塗り、雑菌の侵入を防ぎましょう。
庭が狭いなどの理由でサイズを抑えたい場合、それ以外に伸びている枝を切るケースもあります。剪定時は最終的なフォルムを頭の中でイメージしながら作業すると理想の形に近づきやすいでしょう。
剪定が難しい場合はプロに依頼も
ちょうどよいサイズにするための剪定は難易度が高いため、プロに依頼する方法もあります。価格は業者や剪定するヤマモミジのサイズによって異なるのが一般的です。相場は7mを超えるものの場合で1万5,000円程度、3m未満の低木で3,000円程度とみておきましょう。
病害虫は、見つけ次第対策を
ヤマモミジを育成する際に気になるのが、病気や害虫の存在です。ヤマモミジを守り、きれいな外観を保つために正しい対処法を学びましょう。
うどんこ病やすす病にかかりやすい
ヤマモミジの育成で気をつけるべき病気は、うどんこ病とすす病です。
【うどんこ病】
うどんこ病は葉に白いカビが生える病気で、見た目が悪くなり、観賞に適さなくなってしまいます。症状が進むと、葉や枝の形が変わってしまうこともあるでしょう。
【すす病】
すす病は葉や茎に黒いすすが出る病気です。すすに見える物体は正確には黒い色をした菌糸で、すす病にかかると光合成が邪魔されます。それにより、紅葉の時期になっても赤く色づかない恐れがあるのです。
どちらの病気も過度な湿気によって発症する可能性が高くなります。病気にかからないようにするには、水はけをよくすることが有効です。ヤマモミジを植える際は、風通しのよさを重視しましょう。
病気にかかってしまったら、うどんこ病・すす病に効く殺菌剤を使用します。ホームセンターなどで入手可能です。
アブラムシ、カイガラムシなどに要注意
害虫にも注意が必要で、特にアブラムシがつきやすいといわれています。ヤマモミジの葉から養分を摂取し、発育不良や変形を促進させる厄介な虫です。
ほかに気を付けるべき害虫として、カイガラムシも挙げられます。ヤマモミジの幹から汁を吸い、生育を邪魔したり枝を枯れさせたりします。カイガラムシやアブラムシを見つけたら、早めに駆除しましょう。
浸透移行性(植物の中を薬剤の成分が移行する性質のもの)の粒剤や、スプレータイプの殺虫剤での駆除が主な対処法です。いずれもドラッグストアやホームセンター、ネット通販にて1,000円前後で購入できます。
似た植物との違い
モミジとカエデの違い
実はモミジもカエデも、同じ植物だということをご存じでしょうか。カテゴリーとしては「ムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属」に属します。では、なぜ二つの名前に分かれているのでしょうか?
日本では、葉が五つに分かれているかどうかで呼び方が変わるのです。分かれていれば「モミジ」、分かれていなければ「カエデ」と呼ばれます。つまりヤマモミジは「葉が五つに分かれたムクロジ科カエデ属の樹木」という位置づけです。
モミジという名前がどこから来たかというと、元をたどると、「葉が赤や黄色に色づく」という意味で使われていた古語である「もみづ」が由来といわれています。
イロハモミジとオオモミジとの違い
「ヤマモミジ」と似た種類に「イロハモミジ」と「オオモミジ」があります。この3つは見た目が似ているため、混同されやすいでしょう。
イロハモミジはヤマモミジよりも葉がやや小ぶりです。ヤマモミジは紅葉の時期に赤や黄色などに色づく一方、イロハモミジはほぼ色づき方が赤で統一されている点が異なります。
オオモミジはヤマモミジと比べ、葉の縁のギザギザが目立ちません。果実はヤマモミジより大きい形をしています。
自生している地域にも違いがあり、ヤマモミジは日本海側に多く見られるのに対し、イロハモミジとオオモミジは太平洋側に多く見られます。
庭木や盆栽にも。ヤマモミジの楽しみ方
ヤマモミジは紅葉狩りで楽しめるほか、個人で育てて鑑賞することもできます。ヤマモミジの幅広い楽しみ方を紹介していきます。
庭木、シンボルツリーとして育てる
季節によって移り変わる色鮮やかな葉が魅力のヤマモミジは、観賞用として優れた魅力があります。庭木として庭園を彩ったり、シンボルツリーとして庭のテイストを変えたりする際にも活躍してくれるでしょう。
ヤマモミジは水辺での生育に適しており、庭園に池があればその近くでも育てられます。紅葉の季節には、葉の赤と水の青が美しい対比を生み出すはずです。
庭木にする場合、大きさが心配という人もいるかもしれません。剪定次第でサイズ調整がある程度可能なため、庭が広くない場合でも十分元気に育ちます。
盆栽や苔玉にして、室内で育てる
剪定することを考慮しても、ヤマモミジを植えるだけのスペースが庭にない場合、盆栽として楽しむ方法もあります。玄関先にヤマモミジの盆栽を飾っておくだけで、趣ある風景を作り出せるでしょう。
また、苔玉にして飾るのもおしゃれです。苔玉とは、植物の根を園芸用に用意した土で丸く包んで、周りを苔植物と糸で固定する飾り方をいいます。盆栽が落ち着いた大人の雰囲気を演出できる一方、苔玉はかわいらしいシルエットで空間に癒し効果をもたらします。
緑色の葉や花も楽しめる
モミジと聞くとまず秋の時期の紅葉狩りが連想されますが、ヤマモミジは紅葉シーズン以外も楽しめます。ヤマモミジが春につける緑色の葉は、紅葉に負けないくらいの美しさです。
ヤマモミジは葉だけでなく花も観賞できることをご存じでしょうか。5月から6月頃に、淡い黄色や紅色の花を咲かせます。開花時期が終わると、小さな赤とんぼのような形をした赤い実がなります。
春から秋にかけてさまざまな姿が見られるため、庭で育てれば飽きることなく季節の移り変わりを楽しめるでしょう。
ヤマモミジを育てて、庭で紅葉狩り
ヤマモミジの育成には病気や害虫などの問題が発生することもありますが、季節によって緑や紅葉を鑑賞できる美しい樹木です。
山に出かけるアクティブな紅葉狩りも素敵ですが、ヤマモミジを育てて庭でのんびりと紅葉狩りを楽しんではいかがでしょうか。