業者にシロアリの駆除を依頼すると、被害状況や床面積によっては10万円以上かかる場合があります。


高額になりがちなシロアリ駆除費用を抑えるには、国や自治体からの公的制度を利用する選択肢がある一方で、駆除そのものを対象にした補助金制度はほとんどありません。
シロアリ駆除費用を賢く抑えるための選択肢について、補助金の現状を含めて解説します。
シロアリ駆除の補助金を出すところはほとんどない
シロアリ駆除そのものを対象にした補助金を支給する自治体は、ほとんどありません。福島県金山町で1万5,000円を上限に駆除費用の補助金を出していますが、そのほかの自治体は補助金を支給していないのが現状です。
スズメバチや蚊、ハエといった害虫を駆除する際、害虫駆除補助金を支給する自治体もありますが、シロアリは基本的に対象外になります。気になる方は、市区町村の役所の窓口に問い合わせてみましょう。
火災保険も基本的にシロアリ駆除補償の適用外
個人向け火災保険に加入していても、シロアリの駆除費用に対する保険金は支払われません。一般的に突発的な事故や自然災害で自宅に被害を受けたときに支払われます。
シロアリによる被害は、時間をかけて進行する生物劣化とみなされることから補償の対象外ですが、以下のケースに該当する場合、被害の状況によっては支払われる可能性があります。
火災保険の保険金支払い対象の可能性があるケース
- 台風の被害で屋根が破損した後、雨漏りで木材が濡れた影響でシロアリが発生
- 大雪で屋根が破損し、屋根の内部が濡れたことでシロアリが発生
ただし、いずれのケースも台風や大雪といった自然災害による被害に対して保険金を支払います。支払う条件として、自然災害が原因でシロアリ被害を誘発したことを証明する必要がありますが、実際に証明するのは簡単ではありません。
保険約款の免責事項をよく確認したうえで、保険会社に相談しましょう。
シロアリ駆除費用の負担を軽減する5つの選択肢
シロアリの駆除費用に対して補助金を支給したり、火災保険が適用されるケースは、ほとんどありません。ただし、下記5つの選択肢の場合、シロアリの駆除費用の負担が軽減できる可能性があります。
1.複数の業者から見積もりを取って駆除費用を比較する
シロアリの駆除業者やホームセンターなど、複数の業者から見積もりを取って駆除費用を比較しましょう。主に確認するポイントは、費用とあわせて以下の項目です。
見積もりで比較するポイント
- 作業範囲の明確さ
- 使用する薬剤の種類や工法
- 保証期間と内容
- 追加料金の有無
- 定期点検の有無や費用
1社だけで判断せず、複数の業者からの見積もりを比較することで質の高い駆除・予防サービスを適正な価格で受けられます。
加えて「社団法人日本しろあり対策協会」認定の駆除剤の有効期限は5年のため、5年保証がついた業者を選ぶとよいでしょう。
2.確定申告の「雑損控除」でシロアリ駆除費用を申告する
シロアリ駆除にかかった費用は、確定申告で「雑損控除(ざっそんこうじょ)」として申告することで所得税の一部が還付される可能性があります。
「所定の災害や盗難などの損失費用を、所得から控除できる」税制で、所得から一定額を控除できれば、実質的に駆除費用を軽減できるでしょう。
ただし以下のケースでは、雑損控除の対象外になるので注意が必要です。
雑損控除の対象外にあたるケース
- シロアリの予防(防除)作業のみ行う
- 別荘や事業用建物でシロアリ駆除を行う
- 自分でシロアリ駆除作業を行う
雑損控除額の計算方法
雑損控除の金額は以下2つの計算式のうち、出た答えが大きいほうが適用されます。
①差引損失額-5万円
②差引損失額-(総所得金額×10%)
差引損失額とは、損害金額(駆除・修繕費用)から保険金の補填などを差し引いた金額です。
モデルケース
- シロアリ駆除の費用:30万円
- 被害箇所の修繕費用:50万円
- 保険金の補填:0円
- 総所得額:400万円
実際の計算
①(30万円+50万円-0円)-5万円=75万円
②(30万円+50万円-0円)-(400万円×10%)=40万円
雑損控除で必要な書類
シロアリ駆除費用を「雑損控除」として申告するには、下記の書類が必要です。
- 確定申告書
- 源泉徴収票
- シロアリ駆除費用・修繕費用の領収書
- マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
- 還付金を受け取る銀行口座情報
必要な書類が揃ったら、確定申告書を作成し、提出期限(例年2月16日から3月15日)までに提出すれば、指定口座に還付金が振り込まれます。
3.品確法や民法に基づく「契約不適合責任」を適用する
新築または中古物件を購入してからシロアリの被害を受けた場合、駆除費用や修繕費用を負担してもらえるか確認しましょう。
新築物件は住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)、中古物件は民法の「契約不適合責任」に基づき、契約内容と異なる欠陥があった場合に、物件の持ち主は売り主に対して修繕や損害賠償などの責任を負う制度です。
【新築住宅の場合:品確法に基づく10年間の責任】
- 対象期間:引き渡しから10年間
- 対象箇所:基礎・柱・壁などの「構造耐力上主要な部分」や、屋根・外壁などの「雨水の浸入を防止する部分」
- 条件:シロアリ被害の原因が、防蟻処理の不備などの「施工不良」にあると証明できること
たとえば、契約書に防腐防虫処理が施されていると書いてあったのに、実際は何もされておらず、シロアリが発生してしまった場合です。住宅の売り主に駆除費用と修繕費用を負担してもらうことができます。
防腐防虫処置が施されているかわからない場合には、業者に点検してもらいましょう。
【中古住宅の場合:民法に基づく責任(発見から1年以内の通知が必要)】
- 対象期間:契約不適合(シロアリ被害)を知った時から1年以内に売り主へ通知することが必要(※契約書で責任期間が短縮・免除されている場合あり)
- 条件:契約時にシロアリ被害がないと説明されていた、または被害について告知されずに売買されたなど、契約内容と異なる状態(契約不適合)であること
たとえば、売り主が「シロアリ被害を隠したまま売却した」「シロアリ被害に気づかないまま売ってしまった」場合、シロアリ駆除や修繕費用を負担してもらえます。ただし契約書に「シロアリ被害は免責」と記載されている場合は、費用は支払われないので注意しましょう。
4.賃貸物件の貸主に駆除費用を負担してもらう
賃貸物件でシロアリが発生した場合、賃貸借契約書に基づいて大家または管理会社が駆除費用を負担します。
ただし、借主が長期間部屋の掃除をしなかったり、シロアリ予防対策を怠ったりして故意、または過失で発生した場合は借主が負担しなければなりません。
シロアリが見つかったら、必ず大家や管理会社に連絡し、シロアリの駆除を依頼しましょう。連絡せずに自分で勝手にシロアリ駆除業者を手配すると、トラブルになるので注意が必要です。
5.自治体の住宅リフォーム補助金を活用する
シロアリ駆除の費用そのものに補助金や保険は使えませんが、被害を受けた住宅の改修に補助金を用意している自治体があります。
具体的に補助金を提供しているのは、下記2つの自治体です。
提供している地方自治体の補助金 | 支給額 |
---|---|
長崎県長崎市「ながさき住みよ家リフォーム補助金」 | 改修工事費用の10%(上限額:5万円) |
埼玉県川越市「川越市住宅改修補助金制度」 | 改修工事費用の5%(上限額:5万円) |
1.長崎県長崎市「ながさき住みよ家リフォーム補助金」
長崎市に在住する住民を対象に抽選で当選した人が申請できる補助金です。シロアリ被害に遭って住宅の改修工事が必要な場合、条件を満たせば住宅の改修工事の際に補助金を利用できる可能性があります。
支給額 | 改修工事費用の10%(上限額:5万円) |
主な要件 | ・市民が市内に所有する住宅に対し、市内の施工業者が工事をすること ・工事費用が税抜き20万円以上であること ・補助金の交付決定から90日以内に着工できること など |
補助対象 | ・床張替え(畳からフロアーへの改修も含む) ・床組等の改修(大工工事) ・天井張替え(クロス張替え含む) ・屋根(屋上)防水シート張替え など |
参考 | 令和7年度「ながさき住みよ家リフォーム補助金」 |
2.埼玉県川越市「川越市住宅改修補助金制度」
基礎・壁等の補強工事や床組みの補修工事など、既存住宅のリフォーム工事に対して一定の補助金が交付される補助金制度です。
シロアリ被害を受けた部分を修繕する際、対象の工事を行う場合は補助を受けられる可能性があります。
支給額 | 改修工事費用の5%(上限額:5万円) |
主な要件 | ・市民が市内に所有する住宅に対し、市内の施工業者が工事をすること ・工事費用が税抜き20万円以上であること ・定められた期間内に行われた工事であること など |
補助対象 | ・基礎や壁等の補強工事 ・壁紙、床の張替え、窓、天井等の内装工事 ・床組みの補修工事 ・屋根の改修(塗装、葺き替え、防水工事) など |
参考 | 令和7年度 川越市住宅改修補助金制度 |
シロアリ発生前の予防に使える補助金
シロアリを駆除しても、被害を受けないように防除作業することも大切です。シロアリの予防のみを目的にした工事の補助は受けられませんが、一定の要件を満たせば、下記のように国や自治体の補助制度を利用できる可能性があります。
提供している国・地方自治体の補助金 | 支給額 |
---|---|
国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」 | リフォーム工事費用の1/3(上限額:80万円~210万円) |
埼玉県川口市「川口市住宅リフォーム補助金」 | 改修工事費用の5%(上限額:10万円) |
東京都大田区「住宅リフォーム助成事業」 | 改修工事費用の10%(上限額:20万円) |
1.国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」
既存の戸建、または共同住宅を対象に耐震性や床下の劣化対策などを目的にしたリフォーム工事費用を支給する国の制度です。
劣化対策や耐震性の基準を満たしたり、維持保全計画の作成など、事細かな条件が定められています。
支給額 | リフォーム工事費用の1/3(上限額:80万円~210万円) |
主な要件 | ・工事前にインスペクション(住宅診断)を実施すること ・リフォーム後に劣化対策や耐震性の基準を満たすこと ・省エネ対策や高齢者等対策などの基準を1つ以上満たすこと など |
補助対象 | ・基礎や壁等の補強工事 ・壁紙、床の張替え、窓、天井等の内装工事 ・床組みの補修工事 ・屋根の改修(塗装、葺き替え、防水工事) など |
参考 | 長期優良住宅化リフォーム推進事業|国土交通省 |
2.埼玉県川口市「川口市住宅リフォーム補助金」
川口市に在住する住民を対象に20万円以上のリフォーム工事を行う場合、10万円を上限に工事費用を補助する制度です。防蟻・防腐処理(シロアリ予防)も補助の対象で、予防工事を依頼する前に交付の申請をしましょう。
支給額 | 20万円以上の改修工事を行う場合、工事費用の5%(上限額:10万円) |
主な要件 | ・市民が市内に所有する住宅に対し、市内の施工業者が工事をすること ・工事費用が税込み20万円以上であること ・定められた期間内に契約された工事であること など |
参考 | 令和7年度(2025年度)川口市住宅リフォーム補助金 |
3.東京都大田区「住宅リフォーム助成事業」
防犯性能や住宅の長寿命化などに関するリフォーム費用を助成する制度です。シロアリ予防の費用も床下の防蟻・防虫処理として対象になります。
支給額 | 改修工事費用の10%(上限額:20万円) |
主な要件 | ・市民が市内に所有する住宅に対し、市内の施工業者が工事をすること ・工事費用が税抜き10万円以上であること ・定められた期間内に着工・交付の申請ができること など |
参考 | 住宅リフォーム助成事業|東京都大田区 |
シロアリの駆除負担を軽減するなら相見積もりで
シロアリの駆除や予防工事にかかる費用を補助する国や自治体の制度は、あまり多くありません。その一方で防蟻・防腐処理目的に限らず、自宅のリフォーム工事を行う場合は工事費用の5%〜10%を支給する制度が整っています。
シロアリの駆除を業者に依頼しても、10万円以上かかる場合もあるので、少しでも負担を軽減するには、複数の業者から見積もりを取って駆除や予防工事を依頼することが大切です。
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