もし自宅でシロアリの被害に遭遇した場合、ホームセンターや薬局で取り扱っているシロアリ駆除剤を購入し、自分で駆除を試みることも一つの解決策です。しかし、製品選びにおいて適切な使用目的を理解していなければ、効果は得られず、さらには健康への悪影響を及ぼす可能性もあります。
今回はシロアリ駆除剤を購入して使用する際の選ぶポイントや注意点を含め、おすすめの駆除剤について紹介します。
シロアリ駆除剤を選ぶ際のポイント
シロアリ駆除剤を選ぶとき、シロアリを駆除したいのか、それとも侵入を防ぎたいのか、使用目的によって決まります。薬剤の成分はもちろん、ヒトやペットへの安全性、使いやすさを考えたうえで選ぶようにしましょう。
使用目的がシロアリの「駆除」か「侵入防止」か
シロアリの駆除剤は、主に5種類の成分が使われています。駆除剤に含まれている主な成分ごとに用途や特徴についてまとめた表は下記のとおりです。
成分名 | 用途 | 特徴 |
ネオニコチノイド系 | シロアリ駆除 | 昆虫の神経系に作用する 忌避性がなく伝播性がある |
フェニルピラゾール系 | シロアリ駆除 | 少量で強い神経毒性を示す 忌避性が低く、遅効性と伝播性が高い |
フェニルピロール系 | シロアリ駆除 | 遅効性でゆっくり駆除
遅効性や伝播性がある |
カーバメート系 | シロアリ駆除 | 中毒症状で駆除、光や熱、酸に強い |
ピレスロイド系 | シロアリ侵入防止 | シロアリに痙攣・麻痺作用を起こす |
シロアリを駆除したい場合は、「ネオニコチノイド系」や「フェニルピラゾール系」、「フェニルピロール系」、「カーバメート系」の成分が含まれている駆除剤を選びましょう。加えて、シロアリを全滅させたいときは、非忌避性・遅効性・伝播性の3つの効果が揃っている駆除剤を選ぶのがおすすめです。
シロアリを駆除するには薬剤を食べてもらう必要があり、巣を作る害虫のため、有効成分を自分の巣に持ち帰ってもらう必要があります。あわせてシロアリには「グルーミング」という仲間同士で舐め合ってきれいにする習性があるため、有効成分をドミノのように広げることで巣全体のシロアリを駆除できます。
一方でシロアリの侵入を予防したいときは、忌避性のある「ピレスロイド系」の防除剤を使用しましょう。シロアリが嫌がって近寄らないようにすることで効果が発揮します。
ただし先にシロアリを駆除した後に使わないと、別の場所に移動してその先で被害を与える可能性があります。しっかり退治した後、すき間をなくして予防したい箇所に防除剤を使用しましょう。
ヒトやペットの安全性があるか
現在のシロアリ駆除剤は、ヒトやペットに対する健康被害の心配はほぼありません。ただし、使用に伴ってアレルゲンが飛散し、アレルギーを引き起こす可能性がある点に注意が必要です。
駆除剤の安全性を確かめる際は、シロアリ駆除剤の審査や認定を行っている「公益社団法人日本しろあり対策協会」の認定があるか、確認したうえで最適な駆除剤を選びましょう。認定された駆除剤は、「人体や環境への影響が少ない」ということが示されており、安全性の高い駆除剤だといえます。
駆除剤に含まれている主な成分ごとに比較したヒトやペットへの安全性は、下記のとおりです。
成分名 | ヒトやペットへの安全性 | 使用時の注意点 |
ネオニコチノイド系 | 比較的影響は少なくて安全性が高い | 必ずシロアリ用の駆除剤を使用すること |
フェニルピラゾール系 | 少量でも強い毒性がある | 子どもやペットがいる家庭は取り扱いに注意 |
フェニルピロール系 | 強い毒性がある |
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カーバメート系 | やや毒性が高い | 室内で使用する際は、シックハウスに注意 |
ピレスロイド系 | ヒトへの毒性は低いが、昆虫や魚類に対しては強い毒性がある |
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ヒトやペットへの安全性を考慮したうえでシロアリを駆除したいときは、影響が少ない「ネオニコチノイド系」の駆除剤を使用しましょう。昆虫の駆除のみ効果を発揮できるほか、木材を腐食しにくい効果もあります。
シロアリを確実に駆除したい場合は、少量でも駆除できる「フェニルピラゾール系」や、シロアリの呼吸を阻害させて駆除する「フェニルピロール系」の駆除剤がおすすめです。ただし効果が強い分、毒性が強いため、小さなお子さんやペットの飼っている家庭は、取り扱いに十分注意しましょう。
加えて「ナス」や「トマト」といった野菜を育てている庭に毒性の強いシロアリ駆除剤を使うと、枯れてしまう可能性があるため、成分名を確認したうえで散布しましょう。
さらに「カーバメート系」の駆除剤もおすすめです。シロアリの神経を刺激して興奮状態にさせ、中毒症状を起こした後、駆除します。熱や光に対して強く、安定性に優れていますが、シックハウス症候群の原因になる成分も含まれているため、室内で使用する際は濃度指針の値に注意しましょう。
駆除剤の形状・使いやすさ
シロアリ駆除剤には、シロアリが侵入しやすい場所に置くだけで駆除できる「設置タイプ」をはじめ、即効性がある「スプレー・注入タイプ」、駆除と予防の効果がある「散布タイプ」があります。それぞれのタイプのメリットとデメリットは、以下のとおりです。
駆除剤のタイプ | メリット | デメリット |
設置タイプ |
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スプレー・注入タイプ | 被害箇所が明確にわかっているときの駆除に有効 |
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散布タイプ | シロアリの駆除と予防の両方に効果あり | 素人が取り扱うのは難しい |
「設置タイプ」や「スプレー・注入タイプ」のシロアリ駆除剤は、ホームセンターなどで手軽に購入できます。一方で「散布タイプ」の駆除剤は専門店や通販サイトなどで購入できるものの、シロアリ駆除業者も使用するため、素人では取り扱いが難しいのが難点です。
目の前のシロアリを駆除したいときに使える駆除剤3選
シロアリ駆除剤の選び方について解説したところで、目的別に使えるおすすめの駆除剤を紹介します。最初は目の前にシロアリを見かけて駆除したいときに使える駆除剤です。
商品名 | タイプ | 成分 | おすすめの場所 | 特徴 |
キンチョウ「シロアリフォーム 500ml」 | スプレー | フェニルピラゾール系(フィプロニル) | 屋内、屋外、木製フェンス、木製デッキなど | 2種類のノズルで狭い場所でも駆除できる |
イカリ消毒「シロアリ退治スプレー木部用 420ml」 | スプレー | エトフェンクロップス | 屋外(花壇の周り、縁の下、家の周りなど) | キクイムシにも対応 |
レインボー薬品「アンツハンタープロW粒剤 400g」 | 散布 | ペルメトリン・BPMC・d-T80フタルスリン | 屋外(花壇の周り、縁の下、家の周りなど) | クロアリにも効果がある |
キンチョウ「シロアリフォーム 500ml」
屋内外や木製フェンス、廃材といった木部に20cm間隔で穴を開けた後、ノズルを差し込んで2~3秒噴射します。シロアリをはじめとしたアリ全般はもちろん、外来種のアメリカカンンザイシロアリも駆除できます。ただし、毒性が強い「フェニルピラゾール系」の成分が含まれているため、取り扱いに注意しましょう。
イカリ消毒「シロアリ退治スプレー木部用 420ml」
すでにシロアリによる被害が出ているときにおすすめの駆除剤です。被害箇所に噴射するだけでなく、巣を特定しているケースでも直接注入して駆除できます。
シロアリだけでなく、土台などに寄生するキクイムシにも効果があるほか、防除効果も備わっており、1日に3回程度噴霧すると効果が上がりやすくなります。
レインボー薬品「アンツハンタープロWシャワー 1.3L」
散布タイプのシロアリ駆除剤です。シロアリだけでなく、クロアリの駆除にも効果があり、庭や花壇の周り、縁の下に散布すると約4週間効果が持続します。
さらにシロアリの防除効果を持つピレスロイド系の薬剤も含まれているのもこの駆除剤の特徴のひとつです。
シロアリの巣をまとめて駆除したいときに使える駆除剤3選
直接シロアリを駆除するだけでなく、コロニー(巣)もまとめて駆除したいときに使える主な駆除剤は、以下のとおりです。
商品名 | タイプ | 成分 | おすすめの場所 | 特徴 |
イカリ消毒「イカリシロアリハンター」 | 設置 | ビストリフルロン | 屋内(床下) | 薬剤を噴射せず置くだけ簡単 |
アース製薬「シロアリアース 450ml」 | スプレー | ビフェントリン(ピレスロイド系)、シプロコナゾール、防カビ成分 | トイレ、浴室、台所付近、湿った土台、花壇など | 1年間食害予防効果が続く |
アイメディア「シロアリ撃退ホウ酸スプレー」 | スプレー | ポリホウ酸ナトリウム | 床下・縁側・ウッドデッキ等の家屋の木部、木製の囲い・杭・プランタ―・切り株等の木材や木製品類 | ホウ酸で徐々に死滅させる |
イカリ消毒「イカリシロアリハンター」
シロアリの被害箇所や出没した場所に設置する毒エサタイプの駆除剤です。一般の駆除剤と異なり、昆虫の成長を抑えることで駆除できるため、子どもやペットのいる家庭でも安心して使えます。
ただし設置する際は、巣やシロアリの位置をしっかり確認しないと効果は発揮できないので注意しましょう。加えて、シロアリが脱皮したときに有効成分が発揮するため、壊滅までには2~3か月かかります。なお有効期限は設置から約2年間です。
アース製薬「シロアリアース 450ml」
シロアリの被害箇所に直接噴射して使用する駆除剤です。シロアリの体に付着する特殊なパウダーが含まれているため、本体だけでなく、巣も丸ごと駆除できます。噴射後、約1年間はシロアリを寄せ付けません。
さらに防カビ剤や木材防腐剤も含まれているため、ウッドデッキをはじめとした木製の園芸用品の予防にも役立ちます。
アイメディア「シロアリ撃退ホウ酸スプレー」
ホウ酸の成分を含んだスプレータイプのシロアリ駆除剤です。床下やウッドデッキ、プランターなどにいるシロアリを噴射し、有効成分を持ち帰させた後、徐々に巣を丸ごと駆除します。
噴射後、約180日間効果があるほか、無香料の駆除剤のため、殺虫剤系の匂いが苦手な人でも安心です。
シロアリの侵入防止にも使える駆除剤6選
シロアリは駆除とあわせて寄せ付けないための予防も必要です。防除効果も備えた駆除剤について6つ紹介します。
商品名 | タイプ | 成分 | おすすめの場所 | 特徴 |
アース製薬「アースガーデン シロアリ・羽アリ撃滅 1000ml」 | スプレー | フタルスリン・ビフェントリン(ピレスロイド系) | 屋外(木製の杭、ウッドデッキ、プランター、切り株など) | 駆除・予防に使えて手軽 |
フマキラー「シロアリジェットプロ 450ml」 | スプレー | エムペントリン・トラロメトリン・ジプロコナゾール | 床下、屋外(家の周り、通気孔など) | 床下やすき間にも届く噴射ノズル |
吉田製油所「白アリミケブロック業務用 400ml」 | 散布・吹き付け | ジノテフラン・ F-69 | 床下・外壁の木部 | 希釈して広範囲に散布、木材防腐効果もある |
ケミプロ化成「土壌用白アリ防除剤 ジノテクトスプレッド 4L」 | 散布・吹き付け | ジノテフラン | 床下、建物周辺 | 土台の深くまで届き、侵食を防ぐ |
吉田製油所「白アリ通行止め 450g」 | 塗布 | ホウ酸塩 | 床下の木部、木製の囲い、ウッドデッキなど | 水に溶かし木材に塗って侵食を予防 |
ライオンケミカル「ピレキラ 虫よけパウダー 550g」 | 散布 | ビフェントリン(ピレスロイド系) | 床下、家屋の周辺、通風孔、植木鉢の周りなど | 粒状の薬剤をそのまままくだけで簡単に駆除・予防ができる |
アース製薬「アースガーデン シロアリ・羽アリ撃滅 1000ml」
スプレータイプで誰でも簡単に使用できるシロアリ駆除剤です。個体に直接スプレーすることで、強力な即効性を発揮します。加えて木材防腐成分や防カビ成分も配合しているため、ウッドデッキや木製の杭などにスプレーすると、最長6か月間シロアリを予防してくれます。
フマキラー「シロアリジェットプロ 450ml」
殺虫や予防に加え、木材防腐の効果があるシロアリ駆除剤です。常温蒸散性のエムペントリンを配合しているため、手が届きにくいところや狭いところまで確実に噴霧できます。
防除効果は約9か月持続できるほか、シロアリや羽アリだけでなく、ムカデやダンゴムシなどの害虫にも効果があります。
吉田製油所「白アリミケブロック業務用 400ml」
公益社団法人日本しろあり対策協会などから認定されたシロアリ駆除剤です。50倍に希釈した後、土台の木部に噴霧・塗布して使用します。イエシロアリやヤマトシロアリ、アメリカカンザイシロアリなどのシロアリに有効です。
ネオニコチノイド系のジノテフランという成分が含まれているため、子どもやペットのいる家庭でも安心して使えるほか、木材腐朽菌やカビにも効果があります。業務用ですが、ECサイトやホームセンターでも手軽に購入できます。
ケミプロ化成「土壌用白アリ防除剤 ジノテクトスプレッド 4L」
吉田製油所「白アリ通行止め 450g」
ライオンケミカル「ピレキラ 虫よけパウダー 550g」
建物の周りや床下、通風孔などに散布する粒状のシロアリ駆除剤です。気になる箇所にまくだけでシロアリの侵入を防げるほか、実際に害虫を見つけたときは直接散布することで駆除できます。
ただし雨が降ってしまうと、駆除剤が流れてしまって効果がなくなる場合があります。その際は上がった後に再度散布しましょう。
シロアリ駆除を自分で行う際の注意点
シロアリ駆除剤を使って自分で駆除するとき、以下のポイントに注意しましょう。
駆除剤による健康への影響を受けないための事前準備を怠らない
シロアリを駆除する際、ヒトやペットへの影響がある駆除剤を取り扱うほか、狭くて暗い床下で作業する場合があります。目や口などに駆除剤が入らないようにマスクやゴーグル、厚手の長袖を着用したり、子どもやペットを別の部屋に避難させたりして、事前準備を徹底したうえで使用するようにしましょう。
中途半端にシロアリの忌避効果があるスプレーを噴射しない
家で繁殖したシロアリを駆除したいときと、寄ってくるシロアリを予防したいときでは使うべき駆除剤は異なります。シロアリが嫌がる成分を含んだスプレーでシロアリを駆除しようとすると、家の土台の奥深くまで逃げてしまい、駆除できない可能性があります。
忌避効果のあるスプレーを使うのは、シロアリがまだ巣食っていないと分かっているときにしましょう。
自分で対処できないときはシロアリ駆除業者に依頼する
シロアリや羽アリが見つかったり、巣の場所が特定できたとしても、すべてのシロアリを駆除するのは難しいです。素人では、適切な駆除を施すのが難しく、逆にシロアリの活動場所を増やすことにつながる可能性もあります。
自分でシロアリを駆除したものの、シロアリが再発してしまったときや深刻な被害を受けてしまった場合は、専門のシロアリ駆除業者に依頼しましょう。現状を確認したうえで、的確な駆除方法を提案し、駆除または侵入予防の措置を取ってもらえます。
プロの技術に頼るなら!シロアリ駆除のミツモアで
直接シロアリを駆除したいときや巣も含めて駆除したいときなど、目的別におすすめのシロアリ駆除剤について紹介しました。自分で対処できるものの、駆除剤の撒き方が不十分だと効果は発揮できません。その際は迷わず、シロアリ駆除業者に駆除を依頼しましょう。
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