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山林所得とは?計算方法や確定申告の方法を徹底解説!

最終更新日: 2023年12月28日

私たちが得られる収入を確定申告する際、所得は課税方法や獲得方法によって10種類に分類されています。

その中でも山林について生じる所得は山林所得として申告する必要があります。では山林所得はどのように課税されるのでしょうか?

この記事では、山林所得の定義や課税方法、確定申告する方法などについて解説します。

この記事の監修税理士

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

風間優作(かざまゆうさく) 1985年千葉県銚子市出身。兵庫県立大学大学院卒業。 上場会社経理部にて経理実務を経験した後、Big4監査法人及び税理士法人にて、公認会計士・税理士としての実務を経験し独立開業。現在は会計監査やIPO支援だけではなく、個人・法人の税務から売上アップ・資金繰りコンサルなど幅広く対応している。

 

山林所得とは

山林所得とは

山林所得とは、山林を立木のまま、または伐採して譲渡することで生じる所得と定義されています。ただし山林の譲渡に関してすべてが山林所得になるわけではありません。

山林所得に該当する条件や山林所得に該当しない場合の条件、また、該当しない場合の所得分類について解説します。

山林所得とは何か

山林所得とは、山林の譲渡など山林に関して生じた所得のことです。

なぜ山林所得が事業所得などと異なって扱われているのでしょうか?その理由は所得を獲得するまでに長時間を必要とするからです。

山林所得を得るまでには山林を生育してそれを伐採し、他人に譲渡することで初めて所得が得られます。このような所得の獲得方法は一般の事業所得と異なっているため、所得税法上、課税上で一定の配慮をするために別の所得扱い(分離課税)となっています。

山林所得とならない場合

先ほど紹介したように、山林で生じる所得のすべてが山林所得になるわけではありません。山林所得に分類されるかどうかは山林の保有期間によって決まります。

所得を判断する区分 所得の種類
保有期間が5年以内 事業的規模 事業所得
事業的規模でない 雑所得
保有期間が5年を超える 山林所得

保有期間が5年を超えるなら山林所得となりますが、5年以内であれば事業所得か雑所得に分類されます。

また、山ごと山林を譲渡する場合、山林部分の譲渡により得られる所得は山林所得になるのですが、土地部分は譲渡所得として扱わなければなりません。

山林所得、事業所得、雑所得の区別

ここからはそれぞれの所得の区別について紹介します。まず、事業的規模の定義ですが、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかが判断基準です。しかし、実務上は50ヘクタール以上の山林を保有している場合、事業的規模として扱います。

  • 保有期間が5年を超える場合、山林所得として扱う。
  • 保有期間が5年以内でかつ事業的規模であれば、事業所得として扱う。
  • 保有期間が5年以内でかつ事業的規模でない場合は雑所得として扱う。

なおいずれの所得に分類するかで適用される税率が異なります。きちんと分類するようにしましょう。

 山林所得の計算方法

山林所得の計算方法の画像
山林所得の計算方法

先ほど紹介したように山林所得はその所得の特性から課税上、一定の配慮がなされています。たとえば、山林所得には特有の特別控除を適用できます。

また山林所得は広義での事業所得になるので、青色申告特別控除を適用することが可能です。ここからは山林所得の計算方法や概算経費控除を適用したときの計算方法について解説していきます。

 山林所得の計算方法

山林所得の計算方法は以下の通りです。

総収入金額-必要経費-森林計画特別控除-特別控除額(最高50万円)ー青色申告特別控除(最高10万円)=山林所得の金額

総収入金額とは山林を譲渡して得た収入金額のことです。なお、伐採した山林で自分の家を建てるなど自家消費した場合は消費したときの時価を収入として計算してください。

必要経費とは、山林の育成費や山林の維持管理のために必要な管理費、伐採費などを計上することです。森林計画特別控除とは、森林経営計画に則って山林を伐採もしくは譲渡した際に控除されます。

森林計画特別控除額は収入金額基準と所得基準で計算した金額のうち、低い金額の方が適用されます。特別控除額は50万円(収入金額-必要経費の額が限度)の控除が適用可能です。さらに青色申告特別控除が適用されると、山林所得から最大10万円が控除されます。

概算経費控除を適用した時の計算方法

概算経費控除とは、15年前の12月31日以前から所有していた山林で得られた所得の経費について、詳細に計算する必要がない算定方法のことを言います。山林所得の特性上、所得が生じるまでに長時間がかかります。

そのため、15年以上かけて生じた山林所得については詳細な経費の計算を求めないというのがこの制度です。原則的な計算との選択適用(有利選択)をしてください。詳細な必要経費の計算が実務的に可能であれば、両方計算したうえで有利な方を選ぶこともできます。

概算経費控除を適用したときの計算式は以下の通りです。

総収入金額-譲渡経費-(総収入金額-譲渡経費)×50%-森林計画特別控除-特別控除額(最高50万円)=山林所得の金額

概算経費控除が適用されると(総収入金額-譲渡経費)の金額の50%を育成や維持管理に要した経費としてみなして計算することが可能です。

山林所得にかかる税額の計算方法

税理士の計算の画像
税理士の計算

先ほどまでは所得額の算出方法について紹介しました。次はこの所得額に税率をかけて所得税や住民税を算出します。

なお山林所得は他の所得と計算方法が異なることから、分離課税で計算されます。所得税や住民税の計算方法について、また、山林所得にかかる消費税についても見ていきましょう。

山林所得の税額は「分離5分5乗課税方式」で計算する

山林所得の税率は分離5分5乗課税方式が適用されています。分離5分5乗課税方式とは所得税の超過累進税率を緩和するための計算方式です。計算式は以下の通りです。

山林所得の税額=課税山林所得×20%×(課税山林所得×20%の額の)税率×5

課税山林所得が500万円を例として税額を計算します。分離5分5乗課税方式で上記の計算式に当てはめると

山林所得の税額=500万円×20%×税率5%(100万円となるため)×5=25万円

なお、分離5分5乗課税方式を適用しない課税方式である場合の税額は以下の通りです。

山林所得の税額=500万円×税率20%-控除額427,500円=57.25万円

分離5分5乗課税方式を適用したほうが、超過累進課税が緩やかであることが分かります。

具体的な計算例

では、実際に山林所得による所得税額を計算してみましょう。Aさんは山林を事業規模で8年間所有しています。昨年の1年間、山林の譲渡に関して以下のようなお金の流れになりました。(この例では山林所得以外の所得も発生しており、山林所得以外の所得、所得控除等、復興特別所得税については考慮しない)

項目 金額
総収入金額 500万円
必要経費 150万円
森林計画特別控除 0円
特別控除 50万円

Aさんが昨年得た所得は山林所得扱いとなります。そのため、課税所得は先ほど紹介した式を用いて計算することができます。(青色申告特別控除は適用しないものとする)

課税山林所得=500万円-150万円-0円-50万円=300万円

この時の山林所得による税額は以下の通りです。

税額=300万円×20%×税率5%(60万円のため)×5=15万円

住民税も5分5乗課税方式?

2006年までは分離5分5乗課税方式で計算されていました。2023年現在では、山林所得に関する住民税の税率は10%に統一されています。課税山林所得が600万円だとすると住民税額は60万円となります。

実は消費税もかかる

山林所得についても事業所得や不動産所得と同様に消費税がかかります。なお個人事業で山林所得が生じ、かつ基準期間における課税売上高が1000万円以下の場合、消費税を申告する必要はありません。詳しくは税理士などの専門家に相談してみましょう。

山林所得を確定申告する方法

確定申告の修正申告書
山林所得の確定申告は以下の通りです。

山林所得は事業の1つであるため、所得が発生した場合は確定申告しないといけません。しかし、山林所得による確定申告を行うには少し複雑であるため、いくつか注意するべき点があります。最後は山林所得を確定申告する方法や確定申告する際のポイント・注意点ついて紹介します。

山林所得収支内訳書を用いた確定申告の仕方

山林所得については山林所得収支内訳書を用いて確定申告を行いましょう。他の確定申告書類と異なり、国税庁の公式サイトからダウンロードする必要があります。まずは下記URLから山林所得収支内訳書をダウンロードしてください。

ダウンロードが完了したら、以下の手順に沿って山林所得収支内訳書を書いてください。

【山林所得収支内訳書の書き方】

①適用を受ける特例適用条文を書く

②山林の所在地番、面積、樹種や樹齢、本数や材積を書く

③譲渡代金の総額を書く

④山林の伐採に要した人件費、運搬費、仲介手数料等の総額を書く

⑤売却した山林の取得費や管理費の総額を書く

⑥森林計画特別控除の特例を受ける場合に書く

⑦特別控除額500,000万円を書く。青色申告特別控除を受ける場合は二段書き

詳しくは国税庁のWEBサイトにも詳しく記載されています。

令和5年分山林所得の申告のしかた

確定申告は引き渡しの翌年2~3月におこなう

山林所得の確定申告は、山林の引き渡しがあった翌年の2月中旬から3月中旬までに所轄の税務署で行うことと決められています。山林所得者の居住地を管轄している税務署と異なる可能性があるため、山林所得が生じた場合には注意が必要です。

山林所得は損益通算が可能

損益通算とは所得金額の計算上生じた損失のうち、所定の所得については一定の順序に従って、ほかの所得の金額から控除することを言います。損益通算が可能な所得は山林所得だけでなく、不動産所得・事業所得・譲渡所得・退職所得も可能です。

例えば、山林所得で山林の販売収入よりも山林の管理費(必要経費)の方が50万円多くかかったとします。通常は赤字分による税金の還付はないため、税額は0円として計算されます。しかし、同じ納税者で事業所得が100万円だとすると、山林所得の50万円分の赤字を控除し、事業所得を50万円として計算することが可能です。

これを損益通算と言い、山林所得による赤字分をほかの所得金額から控除することができます。

監修税理士のコメント

風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川

山林所得は、一生に1度も発生しない方や、発生しても人生に1度だけという方が多いかもしれません。頻繁に発生する所得ではありませんが、発生する場合には金額が大きくなる可能性があるため、改めて適用できる制度や控除計算に間違いがないか、お近くの税務署や税理士等の専門家と相談をしながら申告を進めるのが良いかと思います。

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ここまで簡単に山林所得について解説してきましたが、山林所得の確定申告は独特なのでミスしたまま提出してしまう恐れがあります。

このような場合は確定申告の代行ができる税理士に依頼することも選択肢のひとつです。ただし、税理士はプロであるため、相応の報酬が必要です。報酬の金額は各事務所によって異なりますが、通常は山林所得の金額が高くなるにつれて報酬額が高くなるでしょう。

ある程度の報酬は必要ですが、山林所得の確定申告の書き方が分からない場合は税理士に依頼するようにしましょう。

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