マンションの排水管洗浄は大がかりな作業ですし「本当に必要なのだろうか?」「できればやりたくない」と悩んでいる管理人や管理会社の方も多いでしょう。
そこでこの記事では、マンションの排水管洗浄の必要性や費用・依頼の流れなどを幅広く解説していきます。
実は排水管洗浄をせず長い間放置していると、マンション全体につまりや逆流が発生してしまうことも。そうなると苦情が殺到するだけでなく、新規の住民も寄り付かなくなってしまう可能性があります。
とはいえなるべく費用や大がかりな作業は避けたいものですよね。そのため排水管洗浄の最適な頻度やなるべく安く済ませる方法なども解説していきます。
マンションの排水管洗浄をする必要性!放置しておくのはリスクが高い
マンションの排水管洗浄は定期的に行う必要があります。理由は以下の2つです。
- マンションの構造上、排水管の汚れが一箇所に蓄積しやすいから
- 排水管の汚れを放置すると悪臭や詰まりを引き起こすから
理由①:マンションの構造上、排水管の汚れが一箇所に蓄積しやすいから
マンション各部屋にある排水管は全て、共用部分の「排水縦管(はいすいたてかん)」と呼ばれる排水管につながっています。排水縦管とは、2階以上の配管をつなぐために垂直に設置された管のこと。縦管から各階に枝分かれして排水管が広がっているイメージですね。
【イメージ】
- 赤:共用の縦管
- 青:各部屋に伸びた排水管
つまり全部屋の生活排水が、縦管に集中する構造になっているのです。そのためマンションの排水管構造には、以下のようなリスクがあります。
- 汚れの蓄積スピードが早い
- 共用部分の排水管が詰まると、マンション全部屋に汚水が逆流する可能性がある
排水管の汚れを放置した結果、マンション住民全体に影響が及ぶことがあるのです。
理由②:排水管の汚れを放置すると悪臭や詰まりを引き起こすから
マンションの排水管汚れを放置すると、段階的に次のようなことが起こります。
<第一段階>
- 排水管から悪臭がする
- 水を流した時にゴボゴボと音が出る
生活に支障はないけれど不快な状態ですね。
<第二段階>
- 排水管が劣化し破損する
- 排水管が完全に詰まり、汚水が逆流する
マンション各部屋の生活に支障が出る段階です。ここまで進むと、以下のようなトラブルが現れます。
- エラー表示が出て洗濯機が動かなくなる
- 汚水が大量に逆流することで床下に染みができ、住民トラブルに発展することがある
- マンションの資産価値が低下する
- 排水管の大規模修繕で高い修繕費用が必要になる
実際に「30年間一度も排水管洗浄をしなかったことで水が流れなくなり、住民からの苦情に発展した」という事例もあります。
排水管が詰まるまで放置していると管の劣化が進みやすく、洗浄だけではどうにもならないことがほとんど。排水管の交換が必要になると、規模にもよりますが100万円ほどの費用が必要です。また住民からの苦情や漏水トラブルは、新規居住者が寄り付かなくなる要因にもなるでしょう。
【法的な義務は?】排水管洗浄をしなくても違反にはならないが「努力義務」はある
マンションの排水管洗浄は法律で明確に義務付けられているものではありません。
しかし「建築物環境衛生管理基準」の排水の項目には「排水に関する設備の正常な機能が阻害されることにより汚水等の漏出等が生じないように、設備の補修及び掃除を行わなくてはなりません。」とあります。そのため基本的に排水管清掃には積極的に取り組むべきでしょう。
「建築物環境衛生管理基準」に適合していないという理由だけでは、罰則や行政措置にはならないとされています。しかし建築物内の人の健康を損なう恐れがある場合は、行政から改善命令が出されたり、設備等の使用停止や使用制限を課されたりすることがあるので注意しましょう。
ちなみに「建築物環境衛生管理基準」は、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」の第四条によって規定されています。
マンションの排水管洗浄をする頻度!最適なタイミングは?
マンションの排水管洗浄の頻度は、できれば年に1回程度行うのが理想とされています。ここまで解説してきた通り、排水管を洗浄せず放置しておくことはリスクであり、また洗浄の努力義務が課されているからです。
しかし「そこまでやっていられない」と考える管理者もいらっしゃるでしょう。その場合は2~3年に1回を目安に洗浄をするのが良いとされています。
ただし築10年以上のマンションの場合は、なるべく1~2年に一度実施できると安心です。あまり高頻度で行うのは費用が心配という方は、後述する「費用をなるべく抑える方法」を参考にしてみてください。
マンションの排水管洗浄が必要な箇所!具体的にどこを洗浄する?
マンションの排水管洗浄が必要な場所は、大きく分けて「共有部分」と「個別(専用)部分」があります。
共有部分は先ほど解説した「排水縦管」ですね。各部屋の排水管が集まるところなので、定期的な洗浄が必要です。
個別部分の排水管で洗浄が必要な箇所は「雑排水管」という部分。雑排水管が通っている箇所は主に次のような場所です。
雑排水管が通っている箇所 | 排水管汚れの原因になるもの |
洗面所 | ・ワックスなどの整髪剤
・ペットの毛 ・誤って流してしまった異物(金属やプラスチックなど) |
キッチンのシンク | ・油
・食品ゴミ ・強酸性/強アルカリ性の洗浄薬剤 |
洗濯機 | ・糸くず
・洗剤カス |
風呂場 | ・毛髪やペットの毛
・垢 |
雑排水管は「トイレ以外の生活用水が流れる排水管」のことを指します。
トイレの排水管は「汚水管」といい、通常は排水管洗浄の対象外です。理由は管の口径が広く設計されており、汚物が詰まらない構造になっているから。汚水管が詰まったという連絡が頻繁に寄せられていなければ、特段対応は不要です。仮に洗浄する場合は、便器を外す大がかりな工事になります。
マンションの排水管洗浄にかかる費用相場!こんな場合は高くなる
マンションの排水管洗浄にかかる費用内訳は「排水管洗浄料金(戸数分の料金)」と「追加料金」で構成されています。
排水管洗浄料金はマンション規模によって単価が異なります。相場は以下の通りです。
<マンションの排水管洗浄の費用相場>
マンションの戸数 | 一戸あたりの費用 |
~14 | 4,500円~5,000円 |
15~30 | 4,000円~4,500円 |
31~50 | 3,500円~4,000円 |
51~100 | 3,200円~3,800円 |
101~ | 3,000円~3,500円 |
基本的には戸数が増えるほど1戸あたりの金額が安くなります。ただし100戸以上の場合は「要相談」となっていることもあります。
また場合によっては追加料金がかかることも。以下の条件に当てはまる場合は、オプションとして追加料金が発生する可能性があります。
- 高層階の作業(5階以上・10階以上など)
- 著しい詰まりの除去作業
- 築年数が古く配管が傷んでいる
- 土日祝日作業
- 夜間作業
- 特殊な配管構造
最終的な料金は業者による現地調査後に確定します。より精確な見積もりが知りたい場合は、マンションの詳しい状況などを細かく業者に伝えましょう。
そもそも排水管洗浄はどこに依頼する?
マンションの排水管洗浄は自力で行うのが難しいため、専門の業者に依頼することになります。
- 水道修理業者
- ビルメンテナンス業者
など
いずれの業者も排水管洗浄の方法はほぼ共通。高圧洗浄を中心に、ワイヤーやロッドといった洗浄アイテムを併用しながら作業していきます。
マンションの排水管洗浄をなるべく安く済ませるコツ
マンションの排水管洗浄を依頼する際は、複数社の見積もりや提案金額を比較して決めるのがおすすめです。
上述のように排水管洗浄は戸数によって相談が必要な場合があったり、条件によってオプションが必要になったりするからです。1つの業者の料金を見ただけでは、それが自分のマンションの規模や状態に適切なのかどうかが分からないですよね。
「でも複数社を比較するのは大変」「そもそもどんな業者に問い合わせをすれば良いか分からない」という場合は、ぜひミツモアを利用してみてください。ミツモアはあなたの地域や求めるサービス内容を入力するだけで、複数の排水管洗浄業者からおおまかな見積もりを提案してもらえるサービスです。
手間をかけずに複数社の提案や口コミなどを比較できるため、より安く信頼できるところを見つけられますよ。依頼前にチャットで相談することもできるので、マンションの状態や疑問点を伝えてより正確な金額を教えてもらうこともできます。
ミツモアの見積もり取得は無料です。ぜひお気軽に試してみてください。
マンションの排水管を洗浄する方法!業者が行う作業内容を紹介
では業者に依頼すると、どのような作業を行ってくれるのでしょうか。一般的な排水管洗浄方法を3つ紹介します。
排水管洗浄方法①:高圧洗浄【一般的な洗浄方法】
最もオーソドックスなのが高圧洗浄です。
専用ホースを排水管内に入れて高圧の水を噴射し、汚れなどのこびりつきを落とします。洗浄力が高く曲がった排水管の奥まで洗える方法です。「高圧洗浄ポンプ搭載車」という、高圧ポンプや水タンクなどを搭載した車を使用します。
高圧洗浄の手順は一般的に以下の通りです。
- マンション各部屋の玄関から高圧洗浄車のホースを入れる
- 排水管内にホースを差し込み、高圧水を噴射する
- 下層階からスタートし徐々に上の階層に移動して、同様に作業する
下の階から順に作業するのは、排水管の詰まりや汚水逆流を防止するため。ただし築年数が浅い・高層マンションで作業をするなど、状況によっては上の階から作業を行う場合もあります。
また住民が家にいるタイミングによっては、必ずしも下層階から作業できないケースも考えられます。適切な理由があれば上の階からの作業でも問題ないため、不明点があれば直接業者に確認することが大切です。
排水管洗浄方法②:ワイヤーやロッド【傷んだ排水管も手作業で優しく洗える】
「ワイヤーブラシ」や「ロッド」などの棒状の洗浄アイテムを使う方法です。これらを押し引きして管内の汚れをかき出します。
洗浄力自体は高圧洗浄に劣りますが、ピンポイントで汚れをかき出せるのが強み。また手作業で力調節ができるため、排水管を傷める心配はほとんどありません。
ただしこれらの方法のみでマンションの排水管全てを洗浄することはあまりなく、通常は高圧洗浄と併用して使用されます。
排水管洗浄方法③:薬剤【機器を使えない場合】
全く力を加えずに洗浄できるのが、薬剤を使用した洗浄方法です。直接洗浄する方が効果はありますが、何らかの理由で機器類を排水管内に入れられない場合に使用します。
マンションの排水管洗浄の流れや期間!依頼から洗浄までのスケジュールを確認しよう
実際にマンションの排水管洗浄を行うことに決まったら、余裕を持ってスケジュールを立てましょう。排水管洗浄は以下の流れで行われます。
- 排水管洗浄業者の選定
- 排水管洗浄業者による下見の立ち会い
- マンション住民に排水管洗浄作業の通知
- (前回対応してくれなかった住民への対応)
- 排水管周辺の片付け
- 作業日当日の立ち会い
業者選定から洗浄作業実施まで2ヶ月程度はかかることを見越して、準備を始めていきましょう。
なぜ2ヶ月も前から準備が必要なのかいうと、マンションの全住民に協力を要請する必要があるからです。排水管洗浄業者はマンションの各部屋に入って作業をします。つまり排水管の洗浄日にはマンションの全住民が、指定した時間に部屋にいてもらわなくてはならないのです。当日は全住民に対応してもらうことを目指し、排水管洗浄のスケジュールを立てていきましょう。
マンションの排水管洗浄の流れ①:排水管洗浄業者の選定【2ヶ月前が目安】
まずは排水管洗浄業者を選定します。排水管洗浄業者を選ぶ際は、複数業者の見積もり比較が基本。以下のポイントをチェックし、最適な業者を選びましょう。
- マンションの排水管洗浄実績があるか
- 見積もり金額が他と比較して高すぎないか・安すぎないか
- 1年間の保証が付帯されているか
- 作業が下請けに依頼されないか
「飛び込み営業」や「安さを強調したチラシ」から申し込むのは、高額請求につながった被害事例もあるため避けましょう。見積もりの内容が明快、かつ作業方法を丁寧に説明してくれる業者を選ぶと安心です。
洗浄技術に自信があることを示す「保証」の有無も重要。ただし保証があるとはいえ、使用者の過失が大きい場合は有償になるケースもあります。保証の条件はしっかりと確認してください。
ミツモアを使えば料金の比較や口コミの確認・保証内容の質問などが簡単に行えます。無料でできるのでぜひ試してみてください。
マンションの排水管洗浄の流れ②:排水管洗浄業者の現地調査立ち会い
排水管洗浄業者が実際にマンションを訪れ、現地調査を行います。現地調査の内容は排水管の経路やマンホールの位置をチェックするなどといった確認作業です。
「マンションの図面」が必要になることもあるため、準備すべきものについて業者に確認しておきましょう。
マンションの排水管洗浄の流れ③:住民に排水管洗浄の通知【1ヶ月前が目安】
マンションの全住民に向けて、排水管洗浄日の通知を行います。伝えるべきことは以下の4点です。
- 排水管洗浄日と当日在宅してもらう時間帯
- 排水管洗浄日までに排水管周辺を片付けてもらうこと
- 当日は確実に在宅し、業者に対応してもらうこと
- 作業中は玄関ドアを開放する必要があること(必要に応じて害虫対策を行ってもらうこと)
通知方法は様々ですが、以下の方法のうち複数種類を併用するとより確実です。漏れなく全員に通知できるように対応しましょう。
- チラシのポスティング
- 回覧板
- ラインやメール
- 掲示板への張り紙
マンションの排水管洗浄の流れ④:以前対応してくれなかった住民への直対応
過去にマンションの排水管洗浄をしたことがある場合に必要な作業です。
前回の排水管洗浄時に不在で洗浄できなかった住民に事前連絡を徹底し、今回は洗浄日に確実に在宅してもらえるように働きかけましょう。
場合によっては電話や対面で直接依頼することも重要。なお今回も洗浄日に在宅できない場合は、鍵を預かることが可能かどうか話し合ってみましょう。
マンションの排水管洗浄の流れ⑤:排水管周辺の片付け
排水管洗浄日当日が近づいてきたら、業者がスムーズに作業できるよう排水管回りの片付けが必要です。片付けの内容については通知時に住民に伝えておきましょう。
<片付けしておくべき箇所>
- 台所のシンク回り
- 洗面所
- 風呂場
- 脱衣所
- 洗濯機周辺
- シンク下の収納(配管が見えている箇所)
<片付け方法>
- 周辺に置いてあるものを棚の中などにしまう
- シンク下の収納で、配管回りに置いてあるものを別の場所に移動させる
- 排水口に髪の毛などが詰まっている場合は取り除いておく
- 排水口の中が見えないくらい汚れている場合は、表面の汚れを取り除いておく
<該当する場合は事前に連絡してもらう必要があるケース>
- ドラム式洗濯機や大型の洗濯機などで排水口が隠れてしまっている場合
洗濯機が大きいと、排水管の洗浄ができない場合があります。該当する住民からは事前に連絡をもらってください。洗濯機が大きい場合どのような対応になるのか、マンション管理者から業者に確認を取りましょう。
マンションの排水管洗浄の流れ⑥:作業当日の立ち会い
排水管洗浄の当日は、以下の順序で作業が実施されます。基本的にマンション管理者および住民による立ち会いが必要です。
- 共用部分の排水管を洗浄(管理者が立ち会い)
- 下層階から各部屋の排水管を洗浄(各部屋の住民が立ち会い)
- 洗浄完了の確認(管理者が立ち会い)
作業時間は1部屋10分前後が目安です。
洗浄後すぐに排水管の異常が発生した場合は、洗浄作業が原因で管を傷めた可能性があります。住民から連絡を受け次第、速やかに排水管洗浄業者に連絡しましょう。