火葬場や飼い主のスケジュールの関係で、ペットが亡くなった当日に火葬をしたいというケースもあり得るでしょう。ペットの火葬は当日でもできるのか?という疑問にお答えします。
亡くなった後に火葬するまで遺体を安置する方法も解説します。
ペットの火葬は死んでしまった当日でも可能
人間と異なり、当日に火葬しても法律的な問題はない
人が亡くなったときには、火葬まで24時間空けることが法律で定められています。これは宗教にまつわる事情や、蘇生する可能性があることなどがおもな理由です。
人の葬儀に関わった人の中には、ペットの火葬も1日空ける必要があるのではと疑問に感じる人もいるでしょう。しかしペットの場合はこの法律は適用されないので、火葬が当日でも問題はありません。
ただしペットが犬の場合は、住んでいる地域の役所に「死亡届」を提出する必要があります。火葬の手続きなどで慌ただしい中、後回しにしがちですが忘れないように注意しましょう。
お別れの仕方は人それぞれ
ペットとのお別れはいつかは来るものだと覚悟はしていても、実際に死を目の当たりにすると、つらいものです。ペットが死んでしまっても、火葬するまではその姿を見たり触れたりできるので、できる限りゆっくりお別れしたいという人もいるでしょう。
一方ですぐに葬儀を上げて、きれいな体の状態のまま天国へ旅立たせてやりたいという人もいます。このようにペットとのお別れに対しては、人それぞれ考え方が異なるので、死んでしまった当日に火葬しても問題はありません。
ただすぐに火葬を行わない場合は、火葬までのタイムリミットを把握しておくのが大切です。時間が経つとともに遺体は腐敗が進みます。火葬は亡くなった日からだいたい2日目までに済ませた方がよいでしょう。
当日に火葬する場合の依頼先
ペットを当日に火葬することになった場合、急な話なので火葬場探しが難航するかもしれません。当日でも火葬を依頼しやすい事業者や施設を挙げます。
移動・出張火葬
移動型のペット火葬車で、自宅など希望の場所まで来てくれる移動・出張火葬は、霊園への移動手段がない人にとって便利な火葬方法です。
ペット火葬車は専用の火葬炉を搭載した車で、普通乗用車のバンタイプが一般的です。そのため自宅やその近辺に、適したスペースがあればその場で火葬を行えます。
またペット火葬車の大きな特徴が、24時間対応している業者が多い点です。遅い時間の対応も可能なので、日中に時間を割くのが難しい人にとっては、メリットといえます。
業者によっては火葬車を複数台所有しているケースも多く、当日の火葬が比較的実現しやすいでしょう。
一方で移動型のペット火葬車では、火葬までしか対応しない場合が多いため、返骨後の埋葬については自分で手配する必要があります。ペット火葬車に依頼する際は、埋葬方法についてどうするか決めておくのがおすすめです。
24時間対応の霊園
ペット霊園の中には24時間対応しているところもあります。業者や選ぶプランによって異なりますが、当日の火葬も実現しやすい傾向です。
またペット霊園には納骨堂やお墓を併設しているケースが多く、火葬後の遺骨はそのまま希望の場所に預けられます。火葬から埋葬まで霊園に任せられる点は、大きなメリットといえるでしょう。
ただこうした24時間対応のペット霊園は、都市部に多い傾向です。そのため都市部以外に住んでいる場合は、近くに24時間対応の霊園がなかったり、距離が離れていたりと、利用が難しいケースもあります。
自治体の火葬
ペットの火葬は各自治体でも対応しているケースが多いでしょう。自治体に依頼する際は、自治体の清掃局もしくはクリーンセンターにペットを持ち込むと、火葬されます。
火葬方法は自治体によってさまざまですが、ほかの動物と合同で焼却処分されるため、基本的に遺骨を拾うことはできません。しかし自治体によっては祭壇が用意されている場合や、骨壺に遺骨を入れて返してもらえる場合もあります。
民間のペット火葬業者を利用するよりも、料金が抑えられる点も特徴です。自治体によりペットの火葬方法や費用が異なるので、詳細を知りたい場合は居住地の自治体に問い合わせるのがおすすめです。
ペットの遺体の安置方法
ペットが死んでしまった当日に火葬する場合でも、死後は遺体が硬直するため、安置が重要です。ペットの遺体の適切な安置方法について解説します。
安置に必要なもの
安置の前に必要なものを準備しておくと、いざというときもスムーズです。準備に必要なものは以下の通りです。
- 棺の代わりとなる箱や段ボール
- 体の下に敷くバスタオルや毛布
- ペットシートや新聞紙:時間が経過すると体液が出る可能性があるため
- タオルやガーゼ類:身体の汚れをきれいにするため
- ブラシ:毛並みを整えるため
- 保冷剤:遺体を冷やし腐敗を遅らせるため
いずれもペットが普段使っていたものや、自宅にあるものでまかなえます。心を落ち着けて、1つずつ準備しましょう。
安置する方法
ペットが死んでしまうと、2~3時間後から死後硬直が始まります。死後硬直は1日ほど経つと解けますが、当日に火葬を行う場合はその前に引き渡すことになります。必ず身体が硬くなり始める前に姿勢を整えてあげましょう。
安置する際は自然に眠っているような姿勢に近づけ、体と手足を丸めるようにします。目や口が開いていたら、やさしく閉じてあげましょう。
その他ブラッシングして毛並みを整えたり、表面の汚れを拭きとったりして、きれいな状態にしてあげます。
箱の底に新聞紙やペットシートを敷き、そこへ状態を整えたペットの遺体を入れます。体の下には敷物としてバスタオルや毛布を入れると安心です。
保冷剤を体に当てて安置すると、体の温度が低く保たれ腐敗の進行が遅くなるので、火葬まで時間が空く場合は活用しましょう。
安置場所の選び方
死んでしまった当日に火葬ができるのであれば、遺体の安置場所はリビングでも可能です。火葬の日が翌日以降になる場合は、できるだけ日差しが当たらない部屋や、エアコンなどの風が当たらない部屋を選びましょう。
息を引き取った瞬間から、ペットの遺体は徐々に腐敗が始まります。特に夏場の室内は温度が高く、腐敗が早く進みやすいため、安置場所や方法に注意が必要です。
ペットの火葬当日の流れ
ペットの火葬を業者に依頼する際は、事前に当日の流れを事前に把握しておくと、スムーズに進行できます。火葬当日の具体的な流れについて確認しましょう。
火葬前に最後のお別れ
ペットを火葬する方法として、ペット霊園や出張火葬などさまざまな選択肢がありますが、いずれの方法でも火葬前にはお別れの時間が設けられています。
お別れの時間は10~20分程度が一般的です。この時間がペットとのお別れできる最後のタイミングなので、悔いのないお見送りをするために準備しておきましょう。
ペットへの手紙や花、愛用のおもちゃなど、一緒に火葬してもらうお供え品を用意する人もいます。霊園によって副葬品や一緒に入れられるものが異なるので、事前に確認しておくと安心です。
火葬中の過ごし方
お別れが終わると実際の火葬に移ります。火葬にかかる時間は、ペットの大きさによって異なりますが、1時間前後が目安です。
選ぶ業者によって火葬中の過ごし方は異なり、待機所やロビーで待つ場合もあれば、精進落としの食事をしながら待つ場合もあります。自宅での出張火葬を利用する場合は、火葬を行う間は自宅や駐車場で待機します。
火葬中の過ごし方は業者によって異なるので、詳しく知りたい場合は事前に問い合わせておきましょう。
収骨または返骨
火葬が終わると行われるのが収骨です。火葬に立ち会った家族がペットの遺骨を1つずつ拾い上げ、骨壺に収めます。
ペットの遺骨を拾うのが心理的につらい人は、業者による収骨も可能な場合があります。また自分たちでは収骨をせず、収骨から納骨までを業者に任せる方法も選択肢の1つです。
収骨後は霊園にそのまま納骨する方法か、自宅へ持ち帰る方法が一般的です。ペットの葬儀について決める際には、あらかじめ納骨方法についても検討しておくとよいでしょう。
ペットの火葬当日はしっかりお別れを
楽しい時間を共に過ごしてきたペットとのお別れは、家族にとってつらい時間です。ペットを手厚く供養するためにも、自分たちの気持ちに区切りを付けるためにも、ペット火葬は多くの人に選ばれています。
業者によって火葬のプランはさまざまなので、ペットをどのような形で見送りたいのか事前に決めておくのがベストです。
事前に準備するものや火葬当日の流れを確認し、ペットの火葬当日は大切なペットとの最後のお別れをしましょう。
監修者:谷口史奈
獣医師
猫の診療室モモ 院長
安達文化学園 専門学校ビジョナリーアーツ 非常勤講師
動物病院に3年、猫専門病院に2年半勤務したのち、2016年8月に猫専門病院「猫の診療室モモ」を開院。
主な監修書籍
- 「NyAERA 2023」(朝日新聞出版)2023年2月発行
- 「ネコお得技大全2022 完全版」(晋遊舎)2022年5月発行
- 「ネコとの新生活完全ガイド」(晋遊舎)2022年4月発行
- 「ネコDK the Best 2021-22」(晋遊舎)2021年11月発行
など多数
コメント
ペットの死に直面すると、気が動転してしまって重大な決断ができなくなることもあるかと思います。いつかは必ず訪れるお別れのときのために、お近くの業者を調べておくと安心です。お別れは悲しいですが、悔いのないお別れをすることで、いつしかペットとの楽しかった場面をたくさん思い出せる日が来ると思います。