サイディングの縦張りと横張りの違いは?
縦張り水はけがよく、メンテナンスがしやすい反面、外壁中央に水切り板金が目立ってしまいます。一方横張りの場合は通気性が良く、デザインが豊富です。デメリットはつなぎ目に水が溜まりやすく、縦方向に何本も入るシーリングが目立ってしまいます。 基本的には縦張りと横張りで費用に違いはありません。
縦張りと横張りどっちを選ぶべき?
メンテナンスのしやすさを重視するなら「縦張り工法」、デザインを重視するなら「横張り工法」がおすすめです。将来的に外壁塗装をするのであれば、シーリング箇所が少なく、雨水が侵入しにくい縦張り工法が向いているでしょう。一方横張り工法はデザインが豊富で、メーカーからもたくさんの種類がでているため、好みのデザインを見つけやすいです。
サイディングの縦張り・横張りに深く関係する通気構法について
まずサイディングの縦張りと横張りの違いの前に「通気構法」というものを覚えておいてください。簡単に言うと外壁の最下部から入った空気を、軒天または屋根に向かって流れるようにする施工方法です。サイディングの裏側に空気が流れる層を作り、熱や湿気を溜まりにくくする効果があります。
最近の住宅は「高気密・高断熱住宅」が主流となっているので、外壁の裏側に熱や湿気が溜まりやすくなっています。通気構法を用いることで熱や湿気の問題が改善され、外壁や住宅が長持ちするというわけです。
通気構法とサイディングの関係性についてお伝えすると以下のようになります。
- 縦張りサイディング:通気構法に向いてない
- 横張りサイディング:通気構法に向いている
ただし縦張りサイディングだと通気が取れないというわけではありません。工夫次第で改善できるので「縦張りは良くない」というわけではないのです。詳しくは記事の後半で解説します。
サイディングの縦張り・横張りの違いを比較!
サイディングの縦張りと横張りの違いを表にまとめました。
|
縦張りサイディング |
横張りサイディング |
見た目 |
外壁の中間に水切り板金が目立つ |
シーリングが目立つ |
目地(継ぎ目)の方向 |
横方向(水切り板金が使われる) |
縦方向(シーリングが使われる) |
下地の方向 |
横方向 |
縦方向 |
メリット |
・水はけが良い
・メンテナンスがしやすい |
・通気性が良い
・デザインが豊富 |
デメリット |
・通気性が悪い
・外壁中央に水切り板金が目立つ |
・水はけが悪く劣化しやすい(つなぎ目に水が溜まりやすい)
・縦方向に何本もシーリング目地が入る |
費用 |
基本的には同じ、縦張りの方がシーリング箇所が少ないため費用が少し安くなる |
基本的には縦張りのメリットが横張りのデメリットに、縦張りのデメリットが横張りのメリットになっています。
それぞれに良いところ・悪いところがあるものの、メーカーの製品を見てみると横張りのサイディングが主流で使われていることが分かります。サイディングの種類は大きく分けて以下の2つ。
- 横張り用(横張りにしか使えないタイプ)
- 縦/横兼用(どちらでも使えるタイプ)
縦張り専用のサイディングはほとんどありません。通気構法に向いていることから、横張りサイディングが多く選ばれているのでしょう。
しかし後ほど詳しく解説しますが、縦張りでも通気性を良くする方法があります。そのため通気性の良し悪しは、そこまで気にしなくても大丈夫なケースが多いのです。
ちなみに費用に関してはそこまで大きな差はありません。使う部材が多少変わってくる程度です。同じグレードの製品であれば、縦張りでも横張りでもだいたい同じくらいの費用になるはずですよ。
ただ縦張りの方がシーリング箇所が少なくなるため、シーリング費用の分だけ差が出ると考えてください。シーリングとは外壁の目地(継ぎ目)に充填するゴム製の素材です。
縦張りサイディングの特徴や見た目・機能
縦張りサイディングの大きな特徴は、外壁全体の中間に「水切り」という目地があること。サイディングの寸法は約3mしかなく、縦張りの場合はどうしても中間に目地を作らなくてはいけません。
特注で3m以上のサイディングを用意することもできますが、種類が限られてくるので基本的には3mと考えてください。
上の画像では目地が1箇所ですが、3mごとに目地ができるため住宅の高さが6m以上の場合は2箇所に入ってしまいます。ここに関しては好みの問題ですが、段差が気になる人にとってはデメリットになるでしょう。
ただその分シーリングは限られた場所にしか使われないため、縦張りならシーリングの補修費用が抑えられます。
ちなみに中間部分(水切り部分)には板金という金属が使われています。中間を板金ではなくシーリングで埋めるのはNGです。年数が経って外壁が下がったり、シーリングが劣化して雨漏りしたりする可能性があるからです。
縦張りのデメリット:下地が横方向だから通気効率が悪い
縦張りサイディングはそのままだと通気性が悪いというデメリットがあります。
その理由は下地(サイディングの下に張るもの)の向きにあります。縦張りの場合は住宅に対して横方向に下地が入るため、空気が上に抜けにくく通気性が悪くなってしまうのです。
ただし縦張りサイディングを使う場合も、下地を工夫してあげることで通気性を良くすることができます。例えば、
- きちんと空気が上に流れるように下地に隙間を作る
- 空気が通るように切り欠きがある「通気胴縁」を下地に使う
通気胴縁には20~30cmほどの間隔で、胴縁の片面に通気のための切り欠き(欠けた部分)があるのが一般的。その切り欠きから空気が抜けて上に流れていくようになっているんです。
縦張りサイディングは下地の影響で通気が苦手ですが、下地を工夫すれば問題なく使用できます。横張りサイディングに比べると通気性がやや劣るというだけなので、そこまで不安になることはありません。
縦張りのメリット:外壁に雨が溜まりくく、水はけが良い
縦張りサイディングは横方向に外壁のつなぎ目(目地とは違うサイディング同士の合わせ目)ができないので、雨が降っても水が溜まりにくくなっています。
もしつなぎ目に雨が入っても下に向かって流れてくれるため、縦張りは雨漏りが起きにくい構造と言えるでしょう。
もちろん横張りでも雨漏りの心配はありませんが、できる限り外壁は長持ちさせたいもの。縦張りならシーリング補修も少なく済むので、メンテナンスや管理に手間がかからない張り方と言えるでしょう。
横張りサイディングの特徴や見た目・機能
最近の住宅ではサイディングを横張りするのが主流になっています。通気構法に向いている造りになっているため、家を建てる時に勧められた人も多いのではないでしょうか。
しかし横張りサイディングはシーリング箇所が多くなります。基本的にはサイディングの長さに合わせて、だいたい3m間隔で下から上まで目地(継ぎ目)ができるからです(上の画像を参照)。
縦張りの時は目地に水切り用の板金を使いましたが、横張りの場合は目地をシーリングで埋めるのです。横張りは中間水切りに板金がない分スッキリとしていますが、シーリング処理をする箇所が増えてしまいます。
まとめると、横張りはシーリング処理が必要になるので、以下のようなことを頭に入れておきましょう。
- 水切り板金を使わなくて済むが、上から下まで目地が何本かできる
- 目地のシーリング処理に費用がかかる
- シーリングが劣化してきた場合の補修箇所/費用も増える
下地が縦方向だから通気性が良い
横張りサイディングの特徴は通気性の良さにあります。下地が住宅に対して縦方向に入るため、外壁裏の空気の流れがスムーズです。
基本的に柱や間柱(柱と柱の間に入る構造材)に下地を打ち付けていくだけなので、下地の打ち付けも難しくありません。窓の周りは少し隙間を作ってあげる必要はありますが、縦張りサイディングよりも下地がシンプルになります。
サイディング同士のつなぎ目に水が溜まりやすい
横張りサイディングはつなぎ目(目地とは違うサイディング同士の合わせ目)が横方向にできるため、隙間に雨が入るとなかなか水が切れません。外壁が新しいうちは問題ないのですが、年数が経つと隙間が広がり雨が入りやすくなってしまいます。
劣化が進むと外壁の塗装の効果が切れて水に弱くなり、つなぎ目から入った雨が原因で剥がれが起きてしまうケースが多いです。横張りサイディングの弱点とも言える部分ですね。
外壁の性能が良くなっているため昔よりは強度は上がっていますが、年数が経つにつれて傷みやすくなる部分なので注意してください。
こんな人にはこっちがおすすめ!縦張りと横張りの選び方
サイディングの選び方はメンテナンスのしやすさ・デザインで選ぶのをおすすめします。
- メンテナンスのしやすさなら「縦張りサイディング」
- デザインの豊富さなら「横張りサイディング」
縦張りサイディングはシーリング箇所も少なく、雨水が侵入しにくいのでメンテナンスがしやすくなっています。将来的に外壁塗装をするのであれば、縦張りサイディングの方が向いているでしょう。シーリング箇所が少なければ、補修費用も安く抑えられますよ。
デザインが豊富なのは横張りサイディング。メーカーからも色々なデザインが出ているので、好みのものを見つけやすくなります。
また以下のような点を判断材料にするのも良いでしょう。
- 多くの人が採用しており、業者からも提案されやすいのが横張り
- 外壁の中央に水切り板金をつけたくないなら横張り
- 縦方向に何本も目地を入れたくないなら縦張り
通気性に関してはどちらも下地さえきちんとすれば問題ないので、そこまで難しく考える必要はありません。通気性が悪い縦張りを選んだとしても、先ほど解説したように下地を工夫することできちんと通気が取れるようになるからです。
ただ念の為、縦張りサイディングを選ぶ場合は「外壁の通気は問題ないですか?」と担当者に聞いてみると良いでしょう。
施工業者を探す際は、ぜひミツモアを利用してみてください。簡単な質問に答えるだけで、それを見た複数の業者から見積もりを出してもらえます。費用や内容・補償などを比較してあなたにピッタリのところを選べますよ。事前にチャットもできるので、サイディングの張り方で迷っていることを伝えてみてください。
後からサイディングの向きを変えられる?
外壁の張り替えリフォームをすれば後からでも外壁の向きを変えられます。
ただ塗装をする費用よりも高くなってしまう(2倍ほどにもなる)ため、できれば最初から失敗しないように選んだ方が良いでしょう。
縦張り・横張りの施工内容や費用はほとんど同じ!サイディングの張り方を比較
サイディングは縦張りでも横張りでも施工費用に大きな差はありません。費用に関しては住宅の造りや大きさ、サイディングのグレードが影響してきます。
サイディング施工にかかる日数も基本的には同じくらいで、30坪の住宅で1週間ほどが目安です。
ただ横張りサイディングの方が作業がしやすいため、少し早く終わることがあります。横張りは下から順番に張り付けていくので、足場の上下移動がないからスムーズに進むんです。
逆に縦張りは3mの長さを縦方向に張るため、足場の上り下りによるタイムロスが出てきます。作業する人数によっても変わりますが、複雑な造りの住宅で縦張りを選択すると、1週間以上かかるケースもあるでしょう。
縦張り・横張りの施工方法の違い
サイディングは基本的に次の手順で施工していきます。
- 防水シート貼り
- 下地の取り付け
- 役物(やくもの)の取り付け
- 外壁を張り付ける
雨水の侵入を防ぐ防水シートを外壁全体に貼り付けるのが基本。防水シートは透湿性があるため、湿気を逃して結露を防ぐ効果があります。その上に胴縁を縦もしくは横方向に取り付けて、サイディングを釘やビスで固定できるように下地を作っていきます。
役物とは外壁の角に取り付けるコーナー用の部材や、水切り板金(縦張りで使う)のことですね。役物を取り付けてからメインとなる外壁本体を張っていくのが一般的です。
縦張りか横張りかによって微妙な違いはあれど、基本的には同じ手順で進められていきます。
厚み15mm以上の窯業系サイディング(住宅で主流なサイディング)では「金具留め」という方法で張るのが標準施工となっています。外壁のつなぎ目部分を金具で留めていく工法です。
しかし横張りの場合は「通気金具留め」という工法になることがあります。一般的な金具よりも厚みがある「通気金具」というものを使うため、下地がなくても外壁の裏に通気が取れるようになっています。
このように微妙な違いはありますが、そこまで大きく影響はしません。
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