海から近い地域に移住をする場合、注意しなければならないのが塩害です。住居に塩害対策をしていないと建物が劣化したり、思わぬ費用が発生したりする可能性があります。塩害の原因と症状を紹介したうえで、具体的な対策方法や専門業者の選び方を解説します。
そもそも塩害とは?
そもそも塩害とは、どのような現象を指すのでしょうか。塩害の定義や原因、被害について解説していきます。
海水の塩分による被害
塩害とは、海水の蒸発によって塩分を多く含んだ空気が付着・侵入することで、建物の腐食やサビが進行し、劣化が早まる現象のことです。海の近くの地域にある住居や店舗、工場などの建物が、塩害による被害を受ける可能性があります。
基本的には海に近ければ近いほど塩害の影響も大きくなりますが、潮風はかなり遠くまで運ばれるため、海から離れていても油断は禁物です。
塩害が起こる原因
塩害の原因は、潮風にさらされることで、コンクリートに含まれる塩分が一定濃度を超えてしまうことです。
セメントで囲われた鉄筋は、アルカリ性の膜を形成することでさびにくい性質を持っています。しかしコンクリートの塩分濃度が高まると、塩化物イオンがこの鉄筋の膜を破壊してしまうのです。
さらに鉄筋は腐食すると膨張していく性質があり、コンクリートには少しずつひび割れが入ります。その隙間からさらに塩化物イオンが侵入するため、腐食は急速に進んでしまうのです。
塩害を放置するとどうなる?
塩害を受けた建物を放置しておくと、劣化がどんどん進行していきます。結果として建物のメンテナンス費用がかさんでしまい、家計の圧迫にもつながるでしょう。
また建物の耐久性が下がることで耐用年数が短くなり、想定よりも早く住めなくなる可能性もゼロではありません。これらの事態を食い止めるためにも、海の近くの建物には、塩害対策が必要不可欠です。
具体的な対策方法については、後ほどくわしく解説をしていきます。
建物に対する塩害の具体的な症状
ここからは塩害によって建物が受ける被害を具体的に深掘りしていきます。迅速に対策していくためにも、塩害の症状はしっかりと把握しておきましょう。
金属のサビ
塩害の最も代表的な症状は、塩化物イオンによる金属のサビです。潮風にさらされることで
- 建物の屋根
- 外壁
- ドア
- シャッター
- 看板
- ポスト
- 室外機
など外気に触れる箇所の金属部分にサビが発生します。さらにサビが原因で金属に穴があいてしまい、雨漏りの原因となるケースも少なくありません。
塩害による金属のサビの進行スピードは想像以上に早いため、気が付いた時には手遅れという可能性もあるでしょう。最悪の場合には、その建物に住めなくなってしまうこともあり得ます。
換気口が海側にある場合には、潮風が室内に侵入してしまう可能性も考えられます。室内であれば確実に安全とは言い切れない点も、塩害の恐ろしいところのひとつです。
塗装の剥がれ
金属のサビ以外の塩害の症状として挙げられるのが、屋根や外壁に大量の塩分が付着することによる塗装の剥がれです。
塗装が剥がれることは、建物全体の劣化・腐食につながります。剥がれている箇所を見つけたら、迅速に補修を行いましょう。
補修は専門業者に依頼する必要があるため、家計にとってその費用は手痛い打撃です。
電気設備の故障
塩害の被害は建物外装の劣化にとどまらず、電線や電気設備の故障を引き起こす場合もあります。
例えば軒下などに設置されている分電盤などに塩分が付着すれば、内部のパーツが腐食して漏電・破損の原因になるのです。破損箇所に雨水が侵入することで、電気設備がショートし、停電や火災につながる可能性もゼロではありません。
潮風に含まれる塩化ナトリウムは電気を通しやすい性質があるため、こちらもショートの原因になり得ます。海が近い地域では、塩害の影響で電車がストップすることもあるくらいです。
窓ガラスのくもり
窓ガラスのくもりも、塩害による症状のひとつといえます。塩分が窓ガラスに付着することで、白くなってしまうのがその原因です。
窓ガラスに付着した塩分を放置しておくと、やがて結晶化してしまい、少し擦れるだけでも窓ガラスに傷ができてしまいます。海の近くの地域では砂埃が飛んでくることがあり、やはり窓ガラスを傷つけます。
特に庇などがあり雨水がかからない場合には、定期的な窓拭きが必要です。窓ガラスのくもりを予防するには、非常に手間がかかります。
塩害が起きやすい地域
塩害が起きやすい地域には、いくつかの共通する特徴があります。塩害が起こりやすい地域に住んでいる人、あるいはその地域への引っ越しを検討している人は、塩害の可能性があるため注意しましょう。
海から5キロ圏内の場所
塩分は風に乗ってかなり遠方まで運ばれるため、海から5km圏内の場所に関しては、塩害が起きる可能性は高いです。特に海から500m以内は「重塩害地域」と呼ばれており、被害が大きくなります。
風の強さや地形によっては、10km以上離れている場所でも塩害が生じる可能性があります。5km圏内というのは、あくまでもひとつの目安として考えましょう。
潮の香りがする場所
塩害が生じる可能性があるかどうかを判断する基準として挙げられるのが、海からの距離以外では「潮の香りがするかどうか」です。
潮の香りがするということは、空気中に塩分が多く含まれているということになります。ただし同じ地域であっても風の強さなどによって潮の香りの有無は変わるため、時間帯を変えて何度かチェックしてみると良いでしょう。
海からの距離や潮の香りでの判断が難しい時は、地域の建物やガードレールなどを観察してみるのも一案です。海側にひどいサビがある地域は、塩害が起きている可能性を考慮しましょう。
塩害被害の多い県もチェック
塩害の被害が特に多い都県として挙げられるのは、以下の都県です。
- 千葉県
- 東京都
- 神奈川県
- 静岡県
- 愛知県
- 愛媛県
- 茨城県
日本は島国のため多くの都道府県が海に接しており、関東を中心として全国的に少なからず塩害が発生しています。反面、海に隣接していない海なし県の多くは、塩害の被害が少ないです。
もちろん上記の都県であっても、海からの距離があれば被害が発生しない地域もあります。しかし気が付かないうちに建物の劣化が進んでいる可能性はあるため、日ごろから注意をするに越したことはありません。
すぐに行える塩害対策
塩害の原因や症状、発生しやすい場所を見てきたところで、ここからは具体的な塩害対策について解説をします。まずは、すぐにでも行える比較的簡単な塩害対策からです。
定期的な外壁掃除
最も基本的かつ簡単な塩害対策は、定期的に外壁掃除を行うことです。外壁に付着した塩分を洗い落とすことで、建物の劣化・腐食を防ぐことができます。
海からの距離や被害の受けやすさなどによるものの、外壁掃除を行うタイミングの目安は、半年~1年に1度ほどが適切です。ただし掃除をするなかで外壁材や塗料などが剥がれてしまうと、潮風から建物を守れなくなって逆効果になります。
タワシや高圧洗浄機などは利用せずに、柔らかいブラシで丁寧に汚れを落とします。掃除のための時間を取るのが難しい場合には、専門業者に依頼をするのもひとつの手です。
専門業者の選び方については、後ほどくわしく解説をしていきます。
電気機器を屋内に設置
塩害によって劣化や破損、ショートなどが起こる可能性のある電気機器は、潮風にさらさないために、できるだけ屋内に設置するようにしましょう。これだけでも火災や停電のリスクを減少させることが可能です。
換気口や室外機など屋外に置かざるをえない機器に関しても、海とは反対側に設置をすることで、潮風の影響をある程度は抑制できます。くわえて塩害仕様が施されている室外機や、換気口用の除塩フィルターを利用するのも一案です。
換気扇やエアコンから室内に塩分が侵入してしまうのを防ぐために、ぜひとも検討してみてはいかがでしょうか。
家の劣化を防ぐ塩害対策
ここからは、より大掛かりな塩害対策を紹介していきます。先述の対策と比べると手間はかかるものの、高い効果が見込めるため、可能であれば実践してみましょう。
耐久性のある外壁材を使う
トタンをはじめとする金属製の外壁材は、塩害の被害を受けやすいのが難点です。代わりに耐塩性・耐久性の強い外壁材を使えば、塩害による被害を減少させることができるでしょう。
塩害に強い外壁材としては「タイル」「ガルバリウム鋼板」「樹脂サイディング」などが挙げられます。
「タイル」は耐久性が高く、高級感のある外壁材です。ただし工事費用が高く、7~10年ほどでメンテナンスが必要になるのがデメリットといえるでしょう。
複数の金属を重ねる「ガルバリウム鋼板」は、金属製の外壁材のなかでは比較的さびにくく、リーズナブルに導入できるのがメリットです。ただしタイルや樹脂サイディングと比べると耐久性に劣り、定期的なメンテナンスが欠かせません。
最後の「樹脂サイディング」は、メンテナンス費用がほとんどかからず、塩害による色落ちにも強いのが特徴です。やや安価なデザイン性が気にならないのであれば、おすすめの外壁材といえるでしょう。
塗料を塗り替える
塩害により剥がれた塗料の塗り替えには、大きな手間や費用がかかります。そこで塩害を受ける前に、外壁の塗料を耐塩性・耐久性のある「無機塗料」あるいは「フッ素塗料」に塗り替えるのも、有効な塩害対策のひとつです。
「無機塗料」は耐久性が高く、耐用年数も20~22年と長いため、かなり優秀な塗料といえるでしょう。
雨が降ると、外壁に付着した塩分を自然に流してくれるため、外壁を洗う手間が減らせます。ただ、そうした機能の分だけ価格が高いため、ある程度の予算が必要です。
一方「フッ素塗料」は耐用年数が15〜20年と無機塗料より短めですが、より低価格で導入できるのがメリットです。
どちらの塗料も、ウレタン系・シリコン系の塗料と比べると値は張ります。しかし塗り替えの回数が少なくなる分、長期的なコストパフォーマンスは高いです。
外壁をムラなく塗装するのは難しく、かなりの時間もかかるため、基本的にはDIYではなく専門業者を利用するのがおすすめです。
業者を選ぶ際のポイント
塩害対策を行う際には、専門の業者に依頼をするのがスピーディーかつ確実です。ここからは、自分に合った業者を選ぶ上でのポイントを紹介していきます。
塩害に対しての知識が豊富か
塩害対策を知識を依頼するうえでは、地域密着型の業者を選ぶのがおすすめです。
塩害が多い地域の店舗であれば、過去にいくつもの塩害対策を行ってきた経験があるはずです。経験が多ければ、塩害に対する知識も豊富である可能性が高いでしょう。
逆にいくら外壁工事の経験が豊富な業者であっても、塩害に対しての知識がなければ、適切な塩害対策はできないかもしれません。
一度施行してもらってもすぐに外壁材や塗装が剥げてしまうようでは、よけいに費用がかさむだけです。家計のためにも、業者の選択は慎重に行いましょう。
複数の業者を比較しよう
気になる業者があってもすぐには依頼をせず、ほかの業者と比較してみます。見積りだけであれば、無料で行ってくれる場合も多いため、複数の業者から見積りをとってサービス内容を比較しましょう。
チェックするポイントとしては、実績や価格に加えて、具体的な作業内容が明示されているかも重要です。見積りの内容が曖昧だと、後から追加費用の請求がくるなどして、結果的に予算を超えてしまう可能性もあります。
くわえて施工保証が付いている業者であれば、もしもの時にも安心してアフターケアを受けることが可能です。
これらのポイントを総合的に判断したうえで、最適な業者を選びましょう。
塩害は早めの対策が大事
何の対策もとらずに塩害を放置してしまうと、大切な住居の劣化を早めるだけでなく、火災などのトラブルに発展する可能性もあります。また塩害による被害が悪化してからだと、メンテナンスの費用もかさんでしまうでしょう。
海の近くに移住するのであれば、できるだけ早めに塩害対策をすべきです。今すぐにでも行える対策はもちろん、塗料・外壁材を使用する本格的な施工も、優秀な専門業者に依頼をすればスムーズに行われます。
安心・安全な暮らしのためにも、被害が発生する前に対策をしておくようにしましょう。
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